情報通信政策: 2008年4月アーカイブ
ジュネーブでの二日目の発表で一番おもしろかったのはTony Rutkowskiのものだ。彼は、100年前に起きたことが繰り返されると言った。100年前、無線電信の技術と標準が入り乱れ、それを何とかするために万国無線電信会議が開かれ、国際的な調整が行われた。やがてこれが国連の専門機関である国際電気通信連合(ITU)へとつながっていく。同じことが今起きており、やがて政府がインターネットを規制し、コントロールするようになるというのだ。
彼の名前は10年以上前から知っていた。Internet Society(ISOC)のExecutive Directorだったからだ。彼はインターネット・コミュニティの役割を支持するのかと思いきや、すでに彼は見限っていて、EFFやCDT、ACLUは必ず負けるとまで言い切っていた。インターネットは政府が支配するところになるというのだ。つまり、歴史は繰り返されるという。
私は彼とは違う主張をしたのだけど、どうなるのだろう。強い政府規制を求める国の政府代表に、「私は政府規制は反対だし、やるとしたらインターネット・コミュニティの支持を得る努力をしたほうが良い、WSISの混乱を見たら分かるだろう」と述べたら、露骨に嫌な顔をしていた(もう呼んでもらえないね)。政府はネットを規制したいようだ。もし彼らが正しければ、私は『情報とグローバル・ガバナンス』を書き直さなくてはいけなくなる。
昨日は国連がこの問題を取り上げてくれたことにのんきに喜んでいたが、考えてみれば、いままでハンズ・オフ・アプローチでやってきたインターネット・ガバナンスに政府規制の手が伸びてきているということだ。デジタル・デバイドは政府介入の糸口となったわけだけど、情報通信技術が国家安全保障に本格的に影響するようになってきた今、黙ってはいられなくなってきたようだ。研究者としてはおもしろいけれども、ユーザーとしてはおもしろくない。
土屋大洋「邪魔者はつぶしてしまえ?」産経新聞【ねっと系】スクロール(2008年4月16日)。
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