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2005年07月14日

Hevner

Hevner, Alan R., Salvatore T. March, Jinsoo Park and Sudha Ram, “Design Science in Information Systems Research,” MIS Quarterly, Vol. 28, No. 1, 2004, pp.75-106.

テクノロジと行動をISで説明するには別々の二つに分けて述べるは難しい。テクノロジと行動はISおよびISリサーチにおいても分けて考えるのは難しい。また、ITの人工物はconstruct(vocabulary and symbols), models(abstractions and representations), methods(algorithms and practices), instantiations(implemented and prototype system)のように広く定義される。このように定義されることによってIS研究者たちが組織内のISを発展、実行することによって自然に発生する問題を処理し、理解することを可能にする。つまり、IS研究においては「behavioral-science:行動科学」と「design-science:認知科学」に分けて考えられるし、その二つのアプローチからの成り立つIS研究のシナジー効果も得られる。
IS研究のフレームワークは興味のある問題スペースとして定義される「環境(人、組織、テクノロジ)」とIS研究を行うことにあたって生じる「知識ベース」から成り立つ。組織内で人々によって認められて、その中で、ゴール、仕事、問題解決と同じくビジネスニーズを定める機会がある。また、ビジネスニーズは組織的戦略、構造、文化、既存のビジネスプロセスから評価・判断される。一方、知識ベースは基礎と 方法論からなる。IS研究での行動科学と認知科学の貢献はISを適切な環境でビジネスニーズに適用されることとこれからの研究と実験のための知識ベースを増やしていることであろう。
正確なデータに根拠を置いて典型的な分析手方を用いる行動科学アプローチからのIS研究調査はDevelopとJustifyの究明であり、人工物の有効性や性質を評価するために最小限の数値的なデータを用いる認知科学アプローチからのIS研究調査はBuildとEvaluateとして評価される。
最後には、IS研究においてdesign-scienceのためのガイドラインとして、①人工物としてのデザイン、②関連問題、③デザイン評価(有用性、性質、有効性)、④調査貢献、⑤調査の厳密、⑥探索デザイン、⑦調査の伝達などの7つがあげられる。実際にガイドラインがよく生かされている論文をあげ、実践での例を挙げている。

<コメント>
IS調査において定量的なデータや定性的なデータを用いる場合、理論の客観性をどうやって保つのかというところが一番苦心するところだと思う。上記のように行動科学的なアプローチからの定量的なデータを用いてIS調査のJustifyの究明は可能であるが、Artifactsの有用性や有効性を明らかにする場合にはその認知科学のArtifactsのEvaluateが必要であろう。つまり、行動科学と認知科学の両方をうまく活用することでIS研究調査においてのシナジー効果が得られるだろう。                   <池銀貞>

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Hevner,March,Park and Ram, “Design Science in Information Systems Research,”
Benbasat,Zmud, "The Identity Crisis within the IS Discipline: Defining and Communicating the Discipline's core properies,"

Hevner, Alan R., Salvatore T. March, Jinsoo Park and Sudha Ram, “Design Science in Information Systems Research,” MIS Quarterly, Vol. 28, No. 1, 2004, pp.75-106.

■概要
IS分野のリサーチの多くは行動科学(behavioral-science)と設計科学(design-science)の2つのパラダイムで特徴づけられる。前者の目的は真実の探求で、人間や組織行動を説明したり予測する理論を発展させたり、正しいことを確かめるものだ。後者の目的は有用性で、新しくイノベイティブな人工物を創り出すことによって人間や組織の能力の限界を拡張することをめざす。すなわち設計科学では、知識や問題領域の理解やその解決方法は、設計された人工物により達成される。IS研究は行動科学と設計科学のパラダイムを結びつけるもので、ビジネス戦略と組織的インフラ、IT戦略とISインフラの相互作用を扱う(図1)。
本論の目的は、IS研究を理解、実行、評価するための「フレームワーク」や「ガイドライン」を通じて、IS研究における設計科学の効果を記述することである。
IS研究の「フレームワーク」は図2で提示される。IS研究の問題領域として定義される『環境』(人々、組織、技術)があり、組織内の人々により認知されたビジネスニーズが存在する。『IS研究』は、ビジネスニーズに対し、行動科学の理論を発展/設計科学の人工物を構築するフェーズと、様々な方法でそれを正当化したり評価するフェーズから成る。『知識ベース』は、基礎的な事象や方法論から構成され、IS研究に応用可能な知識を提供する。行動科学・設計科学のIS研究における貢献は、それらがビジネスニーズに応用されたときや未来の研究に対するナレッジベースの内容を付加したときに査定される。ただし理論を正当化する行動科学は、存在しない問題を解くには適していない。他方、設計科学研究は未解決の問題を独特の革新的な方法で扱い、必要な知識をコード化し、ベストプラクティスをつくる。
このように設計科学は本質的に問題解決プロセスであり、研究の基本原則は7つの「ガイドライン」で提示される(表1)。1)人工物としてのデザイン(研究は実行可能な人工物を作り出す)、2)問題の関連性(研究の目的は重要問題の技術的解決策を得ること)、3)設計の評価(人工物の利便性、質、効果は、厳格に吟味された方法で評価される)、4)研究の貢献(効果的な設計科学研究は立証可能で明確な貢献が必要)、5)研究の厳密性(設計された人工物の構成と評価の両面で、厳密な方法論が適用される)、6)プロセスとしての設計(有効な人工物探求は原則に基づいた手段を必要とする)、7)研究コミュニケーション(設計科学研究は、経営、技術の両分野で効果が提供される)。
 続いて、ガイドラインのIS研究への応用について、3つの典型的な論文を選び、7つのガイドラインを説明している。設計科学研究は「新しい人工物はどんな利便性をもたらすのか」「その利便性を現すものは何か」を問うものである。もし既存の人工物で十分な場合、新しい人工物をつくりだす設計科学研究は不要であり、新しい人工物が現実社会を十分に表現しない場合は有効性を持たない。
以上、我々は行動科学と設計科学の両方のパラダイムがIS研究の効果や妥当性を強化するのに必要であることを論じた。IS研究は人間、組織、技術の交差点にある。研究方法の厳密さ、妥当性、分野の境界、行動、技術など、IS研究に蔓延している基礎的なジレンマを解決するうえでも、設計科学のパラダイムは重要な役割を演じるようになるだろう。またISマネージャーは、組織をゴールに導くために、IT人工物の創造、発展、改善などの設計行為に積極的に関与するようになるだろう。今後、設計科学の研究者は、IT人工物の能力とインパクトをマネージャーに与えることに挑戦すべきだ。


Benbasat, Izak and Robert W. Zmud, "The Identity Crisis within the IS Discipline: Defining and Communicating the Discipline's core properties," MIS Quarterly, Vol. 27, No. 2, 2003, pp. 183-194.

■概要
IS研究においては、中心的研究領域がアイディンティティ・クライシスに陥っているが、本稿で筆者らは、なぜIS分野のアイデンティティを確立することが重要なのか、IS分野のコアとなる特質は何か、なぜIS研究者がアイデンティティの確立に失敗してきたのかを説明し、IS領域を定義する現象やコンセプトについて結論する。
Aldrichによれば、新しい分野の研究者は、有効なルーティンやコンピタンスを作り出すこと(learning-issue)、各要素間の結びつきを発見すること(legitimacy-issue)という2つの問題に直面する。IS分野はlearning-issueを解決するには大きな進展をみたものの中心的、核となる特質の欠落から、legitimacy-issueには問題が多い。特にIS研究の学際的性格から、研究者は多様なバックグラウンドを持ち、理論、方法論、テーマが多様化し、定義に多様性が生じるため、認知的なlegitimacy-issueはあいまいだ。
 IS分野のアイデンティティを確立するうえでは2つの問題がある。1点はerrors of exclusionで、IT artifactやelement間に直接的な変数相互の関係(nomological net)がない、すなわち、IS研究のモデルは、IS分野の核となる特性を反映していないことだ。反対に2点目は、errors of inclusionで、IS研究モデルが、他の領域の要素を含むことだ。これは我々の所期の目的であるITの役割を明らかにする研究からフォーカスをずらし、またIS分野に貢献すべきエネルギーを、周辺的な追加理論に費やすことになる。
 つまり我々のリサーチクエスチョンは、ISの現象を理解する活動に焦点をあてるべきだ。

■コメント
Benbasat&ZmudはIS研究の研究領域があいまいなため、研究でもっとも重要な変数間のリンク(相互作用)を無視したり、逆に関連のない要素を取り込んでフォーカスがずれるなど、IS研究のアイデンティティ・クライシスを提唱している。自身の研究分野に即して考えると、「映像情報発信を誰でも行えるようになる」という新たな人工物を研究する際、研究領域があいまいなため、ISとして核となる要素(変数)が研究者ごとに異なり、このことが研究はもとより、実際の現場にも、多義的な価値よりむしろ混乱を生じさせているように感じている。Benbasatらの議論に納得した。
 他方、Hever&Ramの論文では、IS研究を行動科学と設計科学の接点にある意義深いものと位置づけ、両者は相互補完的であるとしつつ、既存理論で解決できないことが多いため、新たな人工物設計により組織や人間の能力を拡張する設計科学が今後は重要性を増すことを説いている。
 自身の研究は、「新たな人工物設計により組織や人間の能力を拡張する設計科学」と位置づけたいと考えるが、同時に、新たな人工物によって変化した人間や組織行動はどのような理論で説明、予測できるか、分野のコアとなる特性や理論的枠組みについても常に考慮することにより、何よりも、現場に貢献する研究を行うことを目指したい。
(2005年7月14日 高橋明子)

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2005年07月13日

Hevner, Alan R., Salvatore T. March, Jinsoo Park and Sudha Ram, “Design Science in Information Systems Research,” MIS Quarterly, Vol. 28, No. 1, 2004, pp.75-106. / Benbasat, Izak and Robert W. Zmud, "The Identity Crisis within the IS Discipline: Defining

Hevner, Alan R., Salvatore T. March, Jinsoo Park and Sudha Ram, “Design Science in Information Systems Research,” MIS Quarterly, Vol. 28, No. 1, 2004, pp.75-106.

【要約】
情報システム研究は、大きく分けて”behavioral science”と”design science”の二つに分けられる。behavioral scienceは、人や組織の行動に関する理論の探索・構築を行うものである。design scienceとは一方で、新たなイノベーティブな人工物を創出することにより、人や組織の境界の拡大を目指すものである。このどちらの手法も情報システム研究においては、方法論の土台となっており、両者とも重要である。behavioral scienceは、認識されたビジネスのニーズに関連する理論構築や現象の予測を目的とし、真実の発見をゴールとする。design scienceとは、認識されたビジネスのニーズに関連する人工物のデザインに関する構築と評価を行うことを目的とし、実用性をゴールとする。
本稿では、特にdesign scienceに着目し、概念的なフレームワークと理解・実行・評価のためのガイドラインを示すことを目的とする。design scienceにおいては、知識やある課題とその解決方法を人工物のデザインにより解決する。
ガイドラインは以下の7項目により構成される。1)design science型の研究では、実行可能な人工物を構成、モデル、手法により創出しなくてはならない。 2)design scienceの目的は、重要かつ実質的な価値のあるビジネス上の課題について、技術的な解決策を開発し提示することである。3)デザインした人工物に関する有効性、質、影響力は、着実に実行することが可能な評価手法によって厳密に示さなくてはならない。評価手法については、「観察」、「分析」、「実験」、「検証」、「記述」などの方法がある。4)効果的なdesign scienceによる研究は、人工物のデザイン、デザインの土台、デザインの方法論などの領域に対して、明確かつ確証的な貢献を提供しなくてはならない。5)design science研究は、人工物のデザインに関する構成と評価に関する厳密な手法に基づいていなくてはならない。 6)効果的な人工物は、環境による法則を満たしながら、求められる結果を出すための探索に基づいていなくてはならない。特にデザインと評価の繰り返しのプロセスが重要である。 7)design science研究は、技術指向、経営指向の両方の読者にとって効果的な説明を示さなくてはならない。
このガイドラインを具体的な事例として示すために、Gravish and Gerdes(1998)、Aalst and Kumar (2003)、Markus, Majchrzak, and Gasser (2002)による論文について、「問題との適合性」、「研究の厳密性」、「探索プロセスによるデザイン」、「人工物としてのデザイン」、「デザインの評価」、「研究の貢献」、「研究によるコミュニケーション」の観点から評価を行った。

Benbasat, Izak and Robert W. Zmud, "The Identity Crisis within the IS Discipline: Defining and Communicating the Discipline's core properties," MIS Quarterly, Vol. 27, No. 2, 2003, pp. 183-194.

【要約】
 情報システム研究のdisciplineについて、情報システムに関する現象のみを見た情報システムと関連性の深い研究と、情報システム及びその周辺環境の現象まで含めた情報システムと関連性の薄い研究など多義的になっており、アイデンティティ・クライシスが発生している。本稿では、なぜ情報システム研究におけるアイデンティティの確立が重要であるかを示し、その構築を試みる。アイデンティティの確立のためには、領域と知識的核の定義が重要である。つまり、情報システム研究のアイデンティティの確立は、情報システム研究におけるコンセプトと現象という研究領域の核となる資産を定義することである。
新しい研究領域の開拓においては、learning issueとlegitimacy issueが必要である。情報システム研究においては、learning issueは成立しつつあるが、legitimacy issueは、課題として残されたままである。legitimacy issueは、認知的なものと社会政治的なものがあり、社会政治的なものについては進展が見られる。情報システム研究のような学際的領域においては、特に認知的なlegitimacyの構築が重要となる。
多くの情報システム研究は、error of exclusionとerrors of inclusionの二つの課題がある。error of exclusionとは、人工物をめぐる研究が他の分野の理論に基づいており、研究領域が曖昧になっているということである。Errors of inclusionは、情報システム研究が他の理論を活用しながらも、情報システムと周辺とのインタラクションの関係が明らかにされていないということである。
上記の問題を解決するために、以下の3点を考慮することにより、error of exclusionとerror of inclusionの解決が可能である。
1)情報システムそのものの構造のみならず、Nomological Net(ITマネジメントの方法論、利用法、インパクト、運用上のプラクティスなどの情報システムによる影響)まで対象としているか。
2)情報システムにおけるNomological Netの外部の分析を行っているか。
3)情報システムにおけるNomological Netの関係性の分析を行っているか。

【コメント】
研究手法として、分析アプローチとデザインアプローチがあり、私の研究はデザインアプローチであるが、その方法論について知見がなかったため、Henver他[2004]のガイドランを有効活用していく。
私の博士の研究は、厳密に言うと「情報システム」の研究ではないが、インキュベーション・プラットフォームも学際的研究であり、本質的にはerrors of exclusionとerrors of inclusionに関する課題が含まれており、Benbasat他[2003]も示唆に富んでいた。博士論文の推進にあたり、インキュベーション・プラットフォームの領域とフレームワークの定義を行うことをまず検討していきたい。 (牧 兼充)

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2005年07月12日

佐藤郁哉、『フィールドワークの技法-問いを育てる、仮説をきたえる」、新曜社、2002年.

佐藤郁哉、『フィールドワークの技法-問いを育てる、仮説をきたえる」、新曜社、2002年.

 本著は「どのようにして実際にフィールドワークを行えばいいのか?」という疑問に対して、2章(調査)、3章(RQの整理と明確化)、4章(フィールドノートの取り方)、5章(聞き取り)、6章(エスノグラフィーの書き上げ)というテクニックを述べ、さらに底にある調査に対する基本的な考え方を示そうとしている。
 第2章 (調査)
(1)アクセス まず、調査や取材を行う現場の人々から許可をもらう必要があり、特に決定権を有するゲートキーパーを見極める重要となる。そのためにはフィールドワーカーの異人性を消す必要があり、有力な「ツテ」と最終的な調査報告書が対象にとって不本意な物にならないことを示すビジョンと配慮が必要となる。
(2)役割関係 参与観察を行う上では、インフォーマント(調査対象者)とのラポール(信頼関係)が重要であり、自分の身分や行おうとしている調査の概要を納得してもらえる説明の仕方を考える必要がある。しかし、調査活動そのものが信頼関係を損なうとしても原則うやむやにするべきではなく、慎重に配慮して行うべきである。また、「教えを受ける」師匠-弟子型の関係であれば、その際には自分の無知を率直に認めて現場の人々から謙虚に学ぼうという姿勢が好感を得る。フィールドワークに型はなく、さまざまな技法を併用するため、人間関係も多様なものにならざるを得ない。その対応の差が現地の人に不快感を与えないよう配慮する必要となる。また、当事者と局外者の二つの視点を持つことが重要で、特定の人々のみと親しくなり、一面的になる危険性を意識せねばならず、一定距離をおいた関与が良いリサーチには重要となる。
 第3章(RQの整理と明確化)
フィールドワークは、調査を通して、問題そのものの本質を明らかにすることが目的である。また、その過程では、「理論的にも実践的にも意義のある問い(RQ)は何か?」という、「問いそのものについての問い」に対する答えを見つけ出し、具体的な一つ一つのRQの関係を整理する問題構造化作業が中核となる。そのRQに対応する仮説を構築していく作業も並行するが、1、2度の検証で明確な結果がでるような単純なものは少ない。仮説とRQの関係は、計画予備段階、中間段階、最終段階の3つのフェーズがあり、何度も問いが練り直され、段階ごとに仮説構成が行われていくのである。
 第4章(フィールドノーツの付け方)
現場メモと清書版フィールドノーツに関しての具体的なテクニックを示している。フィールドノーツのポイントは、(1)全体の構図をつかむ鳥の目と、ディティールを描く虫の目のバランス。(2)未来の自分は全くの別人だということ、(3)通常の清書とは異なり、忠実な絵の再現のようなものであること、(4)ストーリー性をもたせることが望ましいことを強調している。なお、RQが最も明確になるのは、むしろフィールドワークの作業をあらかた終えて報告書としての民族誌を書いている時のことの方が多いということである。そのため、中間報告書や章立ての作業もなるべく早めに行った方がいいことを指摘している。
 第5章(聞き取り)
インフォーマル・インタビューにおいて、問わずがたりに耳を傾けることの重要性を。フォーマル・インタビューに関しては、録音機器の使用法、資料や依頼文の作り方など、詳細に書かれている。調べる対象によって異なる質問がでて当然の場合もあるとして、質問票を用いるより有意義な結果がでる事例も示している。
 第6章(民族誌の書き方)
わきゼリフ(つぶやき・つっこみ)、注釈(考察)、同時進行的覚え書き(総括ノート)。それらをコーディング(系統化)。そして理論的覚え書き(理論的考察・アイデアを一続きの文章で書く、私的メモ)、統合的覚え書き(総合的考察、読者を意識したもの)の延長線上に中間報告書が存在するとしている。

【コメント】修士1年 脇谷康宏
先日、研究の示唆をもらいにお時間をいただいたものの、直後にメモをまとめた内容はあまりに貧弱だったために、大いに反省していたところです。早速次回から取り入れたいと思います。具体的に手順を積まれると、想像以上でした。まずは問題意識と予想レベルを仮説とリサーチクエスチョンまで昇華させたいと思います…。

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2005年07月07日

The Discovery of Grounded Theory

データ対話型理論(grounded theory)は分析者があくまで現象に関わることがらをデータとして読みとり変換し、そのデータとの相互作用から理論を生み出すことである。 理論は、調査が行なわれている状況に適合し、かつ実際に利用される場合にも有効性を発揮するものでなければならない。 この理論は研究対象に密着した領域密着理論とそれよりも抽象度が高くそのため説明範囲もより拡大されるフォーマル理論と分けられる。 相対的には領域密着理論に比重をおきつつ、より抽象度の高いフォーマル理論もしくはそれをめざす理論を産出するための方法的な道筋を示している。 理論を産出するための道具としては、①「カテゴリー」と「諸特性」、②カテゴリーと諸特性から関連づけられる「仮説」、③収集されるデータの質と量の多様性を示す「データの切片」、④必要なデータ収集の程度と方向を示す「理論的サンプリング」、⑤一貫して理論産出すすめる動因となる「絶えざる比較法」などである。 
データの利用においては質的データと量的データがあげられるが、この本の著者らは質的データに根ざした領域密着理論の産出に重みをおいてある。 質的データの確保としてはフィールドワークと図書館での文書資料の類似点および図書館利用の限界を示している。 量的データの場合データ間の違いによる検証は大変容易に行われるものであって、データ間の違いによる事実の検証と説明は理論産出のプロセスに包摂される可能性がある。 理論産出という目的からみた場合、量的手法による調査の成果ではないのである。 また、理論を産出するための手法である絶えざる比較法と理論的サンプリングは、できごとを比較する際、研究対象であるカテゴリーについてそれ自体の内的な展開や他のカテゴリーとの変化していく関係という観点から理解できる。 比較分析にはいくつかの比較集団の体系的な選択、比較することで、その目的としては①正確な証拠、②経験的一般化、③概念の特定化、④理論の検証、⑤理論の産出である。 
最後に、データ対話型理論が実践的に適用されるためには次のような4つがあげられる。 理論が活用される特定の対象領域に金身乙に適合してもの(理論の適合性)、その特定の対象領域の一般の人々にも平易に理解できるもの(理論の理解)、その特定対象領域内のある特定のタイプの状況にだけではなくさまざまな幅広い日常生活状況に対して十分適用可能な一般性を持ち合わせるもの(理論の一般性)、その理論が変化していく状況の構造と展開を部分的にでもコントロールできるようなもの(状況のコントロール)の4つが相互に深い関連をもつことである。
<コメント>
データ対話型理論が質的データに根ざした領域密着理論の産出に比重をおいていることが分かった。 その領域密着理論をまたフォーマル理論へと展開していく可能性は十分であろう。 私はある理論と理論の現実適応性に差が生じているのではないかということで、その理論には理論性は十分あるかもしれないが、現実的な適応性は低いため理論の適応性がないと断言したことがある。 しかし、今考えると領域密着理論からフォーマル理論への展開した理論であり、私が指摘したことはフォーマル理論でよく見かけられる誤解にされる一部分であったことがわかった。 <池 銀貞>

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企業者ネットワーキングの世界

ネットワーキングは、人と人との結びつきをつくり出す意図的な行為である。個の個たる所以を失わせることなく人とのつながりを創造的に生かすことである。異質との接触、対対等の関係、ゆるやかな相互依存・連鎖がネットワーキングを特徴づける。ネットワーキングとは連帯しあいながらも個を生かす行為である。また、本書では企業者はネットワーキングを通じて人々との間のアイデア、情報や資源などの結合の担い手、自分で会社を起こす「企業者」という側面から捉えている。つまり、企業者ネットワーキングというのは、企業者が人との創造的なつながりを形成いくことである。この本はその企業者のネットワーキングの実践の記録とその論理的解明を目指している。理論的な背景としては企業者論、社会的交換理論、資源動員論と自助動員論、及び社会的ネットワーク理論のそれぞれの研究領域と相互に関連しあっている。特に、企業者ネットワーキングの7つのパラドクスを抽出し、理論的にも実践的にも企業者のネットワーキングのあり方を示している。
本書はMIT Enterprise Forumと the Smaller Business Association of New England,(SBANE)の2つのネットワーキング組織の比較および、企業者コミュニティの構成員の職種や仕事の性質、ネットワーキング組織の成長段階別の比較が行われる。(MIT Enterprise Forumと the Smaller Business Associationは以下「MITフォーラム会」と「SBANEダイアローグ会」と略称する。)その比較の内容としてはMITフォーラム会が敷居の低い公開の討論(フォーラム)の場であるのに対し、SBANEダイアローグ会はもっと敷居の高い深い対話(ダイアローグ)の場である。この2つの組織は弱連結(MITフォーラム会)と今強連結(SBANEダイアローグ会)の対比や用具性と表出性の対比などから示唆される次元や属性の特徴が分かってくる。MITフォーラム会とSBANEダイアローグ会は弱連結と強連結のネットワーク組織としての比較によって、構成員のネットワーキングの特徴が示すことができる。弱連結と強連結は組織のネットワークの構成員のつながりの度合いだけでなく、情緒、情報、文化においても同じ特徴をあらわす。
強連結よりも弱連結のほうが異なる世界を結びつける架け橋連結として作用しやすいのである。集まりと集まりとの間のマクロの統合は、弱連結による緩やかな連帯によって結成される。弱い結びつきでしかつながっていない人々との方が情報の入手、異質な発想との接触、思いもかけぬ人への紹介・アクセスの可能性の視点からは強連結より強いである。これを「弱連結の強み」という。
<コメント>
日本よりは韓国のほうが全般的に強連結の特徴を持っている社会だと思う。インタネットの普及によって韓国社会にも弱連結の色合いが強いネット社会浸透し、日本より早くネット社会が広がっていくと思う。これは文化の弱連結、強連結によって説明できるのではないかと思う。弱連結の集団の特徴がよくみられるのがネット上のコミュニティで、そのコミュニティを有効に活用することは新たな弱連結社会へのシフトを意味するのでは。        <池銀貞>

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Allison,Graham T., ”Essence of Decision: Explaining the Cuban Missile Crisis,” Little, Brown and Company, 1971. (邦訳:宮里政玄訳,『決定の本質: キューバ・ミサイル危機の分析』、中央公論社、1977年.)

■概要
 本書は、1962年10月のキューバ・ミサイル危機の中心的問題(a:キューバにおけるソ連ミサイルの建設、b:アメリカの海上封鎖、c:ソ連のミサイル撤去、d:ミサイル危機の教訓)について、3つの「概念レンズ(概念モデル)」を用いて検討したものである。殆どの分析者は第1(古典)モデルを用い、合理的行為者と呼ぶ基本的概念モデルに拠って政府の政策を説明するが、第2(組織過程)モデル、第3(政府内=官僚政治)モデルは、よりより説明と予測を生み出すための基礎となる。概念モデルは、単なる視角やアプローチではなく、一群の前提とカテゴリーからなり、分析者の関心や解答に影響を及ぼす。
 第1モデルは、広い脈絡、国家的パターンに焦点をあて、組織的、政治的複雑さを、政府又は国家という単一の行為(ある意図や選択をあらわす行動)に単純化する。人間の行動を説明するのに、目的と合理的選択を前提として考えるこの一般的アプローチが果たした貢献は大きい。しかし説明の対象が一個人の行動ではなく大きな組織、場合によっては政府の場合は、組織過程や官僚政治などの重要な要因を無視することになる。第2モデルは、第1モデルを補完するもので、政府の行為は統一された指導者グループによって部分的に調整された組織的出力であると考え、情報や選択肢や行為を生み出す組織的ルーティンを明らかにする。しかし指導者は一元的なグループではなく、第3モデルは、第2モデルのコンテクストのなかで、政府の決定と行為は国内の政治から派生する結果とし、政府の個々の指導者と主要な政府の選択を決定する指導者間のより細かい分析に焦点をあてる。
3つのモデルは、同じ出来事(問い)に対して異なった解答を構築する。同時に、異なった出来事について異なった説明を付与する。即ち、レンズ(モデル)は、ある特定の要因を拡大するものだ。レンズが異なれば、何が妥当し、何が重要であるかという判断も異なる。
 具体的には、第1モデルは1)問題、2)選択肢、3)各選択肢に伴う戦略的コストと利得、4)国家の価値及び共通原理のパターン、5)国際的戦略市場の圧力に着目する。第2モデルは、1)政府の組織と組織的要素、2)行為するのはどの組織か、3) 問題に関する情報を提供するのに組織が持つレパートリー、プログラム、SOP(Standard Operation Procedure)は何か、4)問題解決の選択肢を導くレパートリー、プログラム等は何か、5)選択的行為を執行するのに持つレパートリー、プログラム等は何かを中心的課題とする。第3モデルは、1)問題に関する行為を生み出す行為回路にはどういうものがあるか、2)中枢プレイヤー及びその地位、3)職務や過去の姿勢が中枢プレイヤーに与える影響、4)最終期限、5)ファール・アップ(混乱)が生じそうな場面を中心的課題とする。
得られた教訓もモデルにより異なる。第1モデルは、二超大国の死活的利益が関わる状況下では、核戦争への突入は非合理的選択とみなされ、自らの決意を伝達する限定的行為(封鎖)を見出し、問題を解決する(ミサイル撤去)する。しかし第2モデルはこの決定の背後には重大な組織的硬直性があり、過ちすらあったとし、米ソの政府のような巨大な機構間の核危機は本来的に不安定という教訓を導く。第3モデルは危機処理の過程はあいまいで危険性が高く、アメリカ政府の指導者は核危機に発展する行為を選択することもありうるとする。
 対外政策の最もすぐれた分析は、3つの概念モデルの諸要素を説明にうまく織り込んだものである。

■コメント
 対外政策研究においては、概念モデルを国家とするか、組織とするか、組織内の個人(政治家、官僚)とするかにより、同一の事象から異なったアウトカムが導かれる。さらには事象の見方(中心課題や得られる教訓)さえも異なる。しかし各概念モデルは相互補完的で、各モデルの諸要素を説明にうまく織り込むことが必要である。
 対外政策研究のみならず、自身の研究においても、映像メディアという広い分析枠組み(第1モデル?)にフォーカスしつつ、プレイヤーやリーダー等の個人の行為(第3モデル)にも留意したい。組織的枠組み(第2モデル)は自身の研究興味ではないが、組織にフォーカスすると全く異なる分析が行えることは実感として持っており、異なる分析枠組みに常に目配りする姿勢を持ちたい。(2005年7月7日 高橋明子)

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2005年07月04日

Checkland, Peter B., “SYSTEMS THINKING, SYSTEMS PRACTICE,” John Wiley & Sons, 1981.(高原康彦・中野文平(監訳)、飯島淳一・木嶋恭一・佐藤亮・高井徹雄・高原康彦・出口弘・堀内正博(共訳)、『新しいシステムアプローチ-システム思考とシステム実践-』、1985年.)

■概要
本書は、還元主義的科学では説明しきれない複雑性を理解するための全体論的アプローチ、システム思考について述べたものである。我々がおかれている状況を理解するのに有効な方法の一つは、西洋文明の文化的発明である科学的アプローチ、即ち還元主義、再現性、反証可能性を使うことだ。ただし諸科学は、物理学、科学、生物学、心理学、社会科学という序列で、後者ほど複雑性を増し、複雑性があるレベルになると創発的性質が生じ、下位レベルのものでは説明しきれなくなる。そうした複雑性を理解するためのシステム思考は、創発性、階層性、通信(コミュニケーション)と制御を二対の中心概念とする。
システムには自然システム、人工的物理的システム(ハンマー、路面電車、ロケット)、人工的抽象システム(数学や詩、哲学)、人間活動システム(合目的的purpositive人間活動の集合)がある。人間活動システムは前3者と異なり、人間が設計、改善(工学)するもので、人間行為者が知覚したものにどのような意味づけを行おうと自由であり、単一の検証可能な解釈はありえない。社会システムは自然システムと人間活動システムの境界に置かれる。
現実世界問題の状況を、工学概念を使い改善する方法として、既知の目的を実現するために代替手段間の選択を行うシステム工学や、ランド社が開発したシステム分析が模索されたが、ハードなシステム工学は、構造化されていない現実世界の問題(ソフトシステムズ)にはうまく適用できない。
ソフトな人間活動システムでは、研究者が調査対象の外の観察者としてとどまらず、関連したグループの参加者となる。研究者は行為の参加者となり変化の過程それ自体が研究題目になる(170p)。また問題とは何かということ自体が研究の一部であり、問題の認識は常に主観的で時間とともに変化する。方法論は、7つのステップからなる。①②認知された問題が置かれている状況(問題自身ではなく)を、構造概念と過程概念、その関係によって表現する。③この調査を背景に、問題を解くあるいは改善することに関連するシステムの候補集合を作成。問題の核心部分に対して適切と思われる特定の観点で一つの全体を観る(=根底定義)を行い、この観点から論理的にシステム的帰結を導く。根底定義は、システム分析者と問題所有者が実行可能で望ましいとみなす変革を実施した場合の、問題状況の最終的改善に関する仮説群(問題が何であるか)である。④根底定義に対応して人間活動システムの概念モデルがつくられる。概念モデルは活動システム(システムが行わなければならない活動)のモデルで故に構成要素は動詞である。⑤できあがった概念モデル(④)と現実世界の問題状況で実際に観察されたもの(②)とを比較する。⑥比較段階で改革案(あるシステムの製作・実現)について論争が起きる。論争の目的は改革案が望ましく実行可能であるか、システム論的に望ましく文化的に実行可能であるかという2点である。⑦最後に改革案の実施が現在の問題の新しい定義となり①に戻る。以上のステージのうち、①②⑤⑥⑦は現実世界の活動で、③④はシステム思考レベルの活動である。また知覚(①②)、賓述(③④)、比較(⑤)、行為決定(⑥)という基本的精神活動がシステム論の考えを使って定式化されている。①~⑦は順序だてて行う必要はない。この方法論で人間活動に意味づけを行うが、それは根底定義の世界観(観察者の世界観)の下で(のみ)意味を持つ。人間システムを表現する単一の記述は存在せず、異なる世界観を体現する1組の記述だけが存在する。
ソフトシステムズ方法論の性質は、a)根底定義にCATWOE(customer、actor、transformation process、Weltanschauung、owner、environmenal constraints)を含む。b)根底定義では組織体の基本課業を表現可能、c)分析レベル(Whats、hows)の明確化、d)社会システムを役割の集合と役割を判断する価値観の集合とみなすと、構造と過程がわかる、e)奉仕されるシステムの定義とモデルが、求めるシステムの定義とモデルに先んじて必要。f)問題解決、問題内容システムの2システムを含む。
ソフトシステムズ方法論は、定義が明確でない現実世界問題と取り組むためのシステム論に基づく方法論で、問題があると考えている人が少なくとも一人はいる状況の中に新しい知見を見出すシステムである。社会の実在は所与のものではなく過程であり、絶えず新しい社会的世界が構成メンバーにより創造される、学習のシステムである。
■コメント
 現実社会の問題のなかに新しい知見を見出すため、研究者も行為の参画者となり、研究者の世界観で問題をモデル化するアクションリサーチのアプローチを宣言している。自身の研究はこの方法論以外にない。実際の研究設計をソフトシステムズアプローチに即して見直したい。(2005年7月3日高橋明子)

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金井壽宏、『企業者ネットワーキングの世界―MITとボストン近辺の企業者コミュニティの探求』、白桃書房、1994年.

金井壽宏、『企業者ネットワーキングの世界―MITとボストン近辺の企業者コミュニティの探求』、白桃書房、1994年.
【要約】
本書は、企業者のネットワーキング活動という実践的な課題に関するアカデミックな研究である。MITエンタープライズ・フォーラムとSBANEエグゼクティブ・ダイアローグ・プログラムについて理論化のための記述を行い、ネットワーキング組織には、フォーラム型とダイアローグ型という理念的構成概念を提示した。
この概念の違いを生む属性としては、(1)参入の条件(オープン・メンバーシップもしくは会員資格の欠如に対して限定的あるいは閉鎖的メンバーシップ)、(2)運営基盤と手続き、(3)連結あるいはつながり方の基盤、(4)便益のタイプ の4点が異なる。運営基盤の手続きとしては、高回転率と低回転率、低コミットメントと高コミットメント、散発的・非定期的な参加と恒常的・定期的な参加、連鎖効果を通じて広がる間接的相互接触の活用とフェース・ツー・フェースの直接的接触の重視などがある。連結基盤としては、弱連結と強連結、多様性・非連続性と共通基盤と連続性、ルース・カップリングとタイト・カップリングなどである。便益のタイプとしては、用具的と表出的がある。なお、この理念体系を示したものの現実的に完全に分離することは不可能であり、それぞれの事例についても相互に特性が混ざり合っている。
 本書の構成と研究の方法論を以下に示す。
第2章では、この研究テーマにかかわる既存研究を再検討して、研究面での課題を探る。具体的には、企業者論、社会的ネットワーク論、交換理論、資源動員論、組織間関係論などを論じる。これらの先行研究レビューにより、ネットワーキングに関する微妙なパラドックスが明らかになり、これをレインボーパラドクスとしてまとめた。第3章では、リサーチ・クエスチョン及びその研究の方法論について論じる。複数の方法を併用するmethodological triangulation、の方法論、エスノグラフィックの方法論、理論的なサンプリングによる「現場発の理論」について述べる。
第4章、第5章では、2つのネットワーク組織のエスノグラフィーによる定性的記述を行う。それぞれの会の参加者自らのものの見方の記述を目的としており、現地人の視点に忠実なケース記述になるように配慮した。また比較ケース分析を通じて解明される理論的問題やパラドクスの解釈がケースの記述に混入しないように配慮した。
第6章では、前2章の記述の理論的会社を試み、第4章の内容をフォーラム型、第5章をダイアローグ型と定義した。それぞれのケースが示唆する理念について、理論的属性や次元について究明した。この章はネットワーキング組織のデザインのためのヒントが多数含まれている。第7章では、質問表調査によって二つの組織体から収集した、大規模で体系的なデータに基づいて、第6章で提示した理論的な類型論の現実妥当性を確認した。
第8章では、本書について、第二章で示したいくつかの理論的なパラドクスと照らしあわせて、実証研究からなにがわかるのか、なにが依然としてわかっていないのかの議論を行った。

【コメント】
 本書は、私の博士論文の研究を行うにあたって、先行研究、仮説やリサーチ・クエスチョンの導出方法、エスノグラフィックに基づいたケースの記述、質問紙調査、理論の抽出のそれぞれが、研究の方法論として参考になる。フォーラム型とダイアローグ型という分類方法は、私の目指すインキュベーションネットワークにおけるグローバル性とローカル性の分析のための示唆が多数含まれる。また本書の理論は、SIV Networking Seminarなどの実務のデザインにも有効活用している。 (牧 兼充)

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