“デート”(糸井重里)をめぐる社会学的想像力:1991.3
 
1. 構造分析
2. 長嶋さんからの模範回答
3. ゲームの達人からの回答
-1 状況分析
-2 戦略:知性の差別化戦略
-3 戦略:美貌の痴呆化戦略
-4 戦略:“やさしさ”の戦略
-5 長時間プレイへの回答
4. 山口さんちのマサオ君からの回答
-1 モデルとしての「蒲田行進曲」
-2 長時間プレイへの回答
5. code99からの回答
6. code99:期末レポート"date"
3−2.戦略:知性の差別化戦略

3人の資源リストを分析すると、“僕”の強みになる可能性は『知性』にあります。この点では“僕”は彼女よりも優位な位置にあります。そこで、この資源を徹底的にアピールすることが、ファースト・ステップです。ただし“僕”の知性は、いわゆる学業成績としては表現されていません。この点ではライバルの副主将にはかないません。そこで、知性の差別化を全面にプッシュすることが重要になります。

差別化の基準は『真面目な知性/楽しい知性』です。真面目な知性はライバルに典型的な知性なので、それは所詮、つまらなく・通俗的で・点取り虫的な知性にすぎない、というイメージを無意識に連想させるように仕掛けを組まなければなりません。対照的に、楽しい知性(ゲイ・サイエンス)は、ニューアカ的で・ユニークで・脱既成教育的な知性であって、それこそが“僕”の知性感覚に似合っていると、さりげなくアピールする戦略が必要です。

戦術としては、サブリミナル・テープをすぐに購入してプレゼントし、彼女の知性観を変更する方法が最適でしょう。そうやって、学校教育至上主義的歴史研究知性ではなく、路上観察学的知性の優位を彼女の無意識の世界にストレートにアピールしておけば、準備はもう万全です。


このように、知性には2つの大きな流れがあり、副主将と“僕”は、その得意の分野にかんして異なっているだけで、副主将の知性が素敵ならば、“僕”の知性だって素敵なはずだ、ということを分かってもらわなければなりません。学内の知性王が副主将ならば、学外の知性王はまさに“僕”なのだ、という知性の特化/分化を理解させることが肝心なのです。そうすれば、分野は違えど二人は同じ知性王なのだという点を媒介にして、副主将から“僕”への愛のシフトは容易になるのです。