20001年度研究会1概要             

ナショナリズム研究

(Learning the Base of Nationalism Studies)

担当者 小熊英二(総合政策学部)B型

1、主題と目標

 国際情勢をはじめ、民族問題にたいする関心が高まっている。グローバリゼーションとナショナリズムの対立ということが語られるばかりでなく、国内でも在日韓国・朝鮮人やアイヌ、外国人労働者などの問題が存在するし、歴史問題などをめぐってナショナリズムの是非をめぐる論議もかまびすしい。

 ナショナリズムの問題が近年になって注目されているのは、偶然ではなく必然である。一昔前までは、社会の近代化が進めばナショナリズムや民族意識などというものはしだいに消えてゆくはずだと考えられていたのだが、その予測は裏切られた。その理由はいくつかあるが、まず第一に、交通や情報の発達のために人間が移動する機会が多くなり、慣習も言語もちがう人間どうしの接触が増大したこと。第二に、世界経済の格差が広がっているために、先進国に流入する労働者が増えていること。そして第三に、マイノリティの権利獲得意識が高まり、「民族」単位で権利を主張する動きが強まっていることなどが挙げられる。こうした傾向は今後強まりこそすれ、弱まることはないだろう。

 この研究会では、ナショナリズムの諸問題について社会科学の視点から多様なアプローチをかけてみたい。これは現在もっとも進展が著しい分野の一つであり、さまざまな学問分野で成果があげられている。たとえば社会学では差別/偏見研究やエスニック・アイデンティティの形成の問題が研究され、政治学では多元主義国家論などが論じられ、歴史学では植民地支配や少数者差別の見直しが進展し、さらに文学ではポストコロニアル批評といった試みが行なわれているのである。

 研究会では、これらのさまざまな研究の一端を知ることで、問題を掘り下げると同時に、人文/社会科学の応用的な学習を図ることを目標する。問題意識と、社会科学の応用への関心をもつ方に、受講していただきたい。

 

2、研究会スケジュール

 1回目のオリエンテーションを経て、発表と講義を行なってゆく。

3、評価方法

 最後のレポートを提出してもらう。目安としては五千字から一万字くらい。テーマは追って指定。

4、基本テキスト

 各回で図書を指定し、担当者に報告させる予定だが、現状認識的な本と理論的な本を組み合わせる。参考文献としてとりあえず予定しているのは以下のものなど(変更の可能性あり)。

 福岡安則「在日韓国・朝鮮人」(中公新書)

 梶田孝道編「国際社会学」(名古屋大学出版会)

 明石正雄・飯野正子「エスニック・アメリカ」(有斐閣選書)

 アンダーソン「想像の共同体」(NTT出版)

 サイード「オリエンタリズム」(平凡社)

 スピヴァック「サバルタンは語ることができるか」(みすず書房)

 ウォーラーステイン「史的システムとしての資本主義」(岩波書店)

 コーン「ナショナリズム」(平凡社)

 吉野耕作「文化ナショナリズムの社会学」(名古屋大学出版会)

 田中克彦「ことばと国家」(岩波新書)

 

5、履修条件

 やる気があればかまわないが、履修者があまりに多数の場合には、過去の担当者の研究会や「社会環境論」を履修ないし聴講した者を優先する。人数さえ収まれば聴講も認める。

 

 

<講義まとめ>
全体説明
「アメリカ」
「ヨーロッパ」
「第三世界」
「外国人労働者」
「在日」
「言語」
「国民国家」
「想像の共同体」
「世界システム」

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