ボストン: 2008年6月アーカイブ

散髪

| | コメント(0) | トラックバック(0)

散髪はアメリカ生活で困ることの一つだ。前にワシントンに滞在したときも苦労している。

すでに帰国したOさんから、彼のアパートの近くにあるレバノン人経営の散髪屋は大丈夫だと聞いていた。今日は帰りにそこへ行こうと意を決して家を出た。

MITのオフィスで仕事しながら、みんな散髪はどうしているのだろうと思って、ネットで検索してみると、MITのCOOP(生協)で切っている人がいた。この人は、ケンドールではなく、少し離れたスチューデント・センターのCOOPで切ったと書いているけど、ケンドールの生協にも床屋があるのを思い出した。フード・コート側にとても小さな入り口があるのだ。

ダメ元で行ってみようと思い立ち、入ってみるとアジア系の男性がいる。「髪を切って欲しいんだけど」と言うと、今暇だからいいよとのこと。本当にちょうど暇だったらしく、私が席に座ると次から次へとお客さんが来る。私の後にはアポが入っているらしく、みんな断っている。私はラッキーだったようだ。

彼は22歳の時にベトナムから家族と移民してきたそうだ。こちらに来てから英語と散髪を習い、15年ほどここでやっているという。アジア人の髪は難しいけど、俺はquick and goodだよという。

日本と比べるとずいぶん簡単だ。最初にスプレーで髪を濡らしてから、バリカン(?)で耳周りを切ってしまう。その後、上の方を櫛でときながらはさみでばさばさ切っていく。最後に櫛で整えて終わり。シャンプーとかひげそりとか整髪料でのセットとかそんなものはない。10分ぐらいで終わり(そう言えば、日本にもこんな床屋があるね)。

確かに期待以上のうまさだった。これなら通える。MITの皆さん、Kevinに頼むと良いですよ。ただし、もう一人いるらしい(今日はいなかった)女性の美容師はアジア人の髪が苦手らしいので要注意。

アメリカの歴史を学ぶという名目でケープ・コッドとプリマスに行ってきた。ケープ・コッドはボストンから車で2〜3時間で行ける避暑地で、大西洋に腕のように飛び出している半島である。ケネディ家の別荘もある。

一日目は先端の町、プロビンス・タウンを目指す。ハイウェイの途中にある休憩所に旅行案内所があり、地図をもらおうと立ち寄ると、朝鮮戦争に行ったことがあるというおじいちゃんがいた。教えてもらって外を見ると、米国旗の横に韓国の旗がかかっている。ここでボランティア・ガイドをしながら募金も集めているらしい。戦争の後は工作機械メーカーで働いたそうで、YKKが取引先だったため、日本にも100回行ったと言っていた。こんな人が田舎にいるから奥深い。一通り話を聞いて、プロビンス・タウンでランチの良いお店はないかと聞いてみると、ロブスター・ポットが良いという。このお店は『地球の歩き方』にも書いてあった。

車に戻ってまたハイウェイを走りながら、『地球の歩き方』は、ウィキペディア・モデルの先行例だよなと思う。世界中を旅行した人が自分の体験談を書きつづり、それを手紙やファックスで編集部に送り、それを編集部がまとめて出版してきた。大した謝礼があるわけでもないのにみんな喜んで情報提供してきた。日本人がウィキペディアが好きなのもそういう先行例があったからか。

20080605shellfish.jpgはたして、ロブスター・ポットはうまかった。ロブスターももちろん良かったが、写真にあるShellfish Algarveという貝のブイヤベースもうまい。何種類かの貝やイカの他に細麺のパスタが入っている。しかし、ニンニクがきついので翌日までにおう。 20080605whydah.jpg食事の後、これも『地球の歩き方』に出ているWhydah Pirate Museumという海賊のミュージアムに行く。ここは、ケープ・コッド沖で莫大な財宝を積んだまま沈んだ海賊船ウィダーの引き上げプロジェクトについてのミュージアムである。海賊の生活がどのようなものだったか、どうやって海賊船を引き上げたか、どんなお宝が入っていたかなどが分かる。お宝ハンターにとっては最高のサクセス・ストーリーだ。館内で見られるビデオはヒストリー・チャンネルが作ったようだ。楽しそうだなあ。

散策した後、半島の真ん中辺りにあるハイアニスという街に泊まる。翌日はフェリーでナンタケット島に行くつもりだったが、天気が悪いのであきらめ、ケネディ大統領のミュージアムに行く。ケネディ家はハイアニスに別荘を持っていて、ヨットやゴルフをして過ごした。ミュージアムといっても、飾ってあるのは主としてハイアニスで過ごしたケネディ家の写真である。ビデオと写真を見ながら、ケネディ家がアメリカ人のあこがれるライフ・スタイルを実践していたのだなあと思う。

ケープ・コッドを出て半島の付け根にあるプリマスへ。1620年にメイフラワー号に乗ってピルグリムたちがやってきたところである。17世紀の様子を再現したプリマス・プランテーションという一種のテーマ・パークがある。ネイティブ・アメリカンの生活とイギリス人の生活がそれぞれ再現されていて興味深い。それぞれの言い分が分かるようになっていて、一方的な歴史観の押しつけにならないように配慮されている。

そこから3マイル離れたところに係留されているメイフラワーII号のチケットもコンビネーションで買える。車に乗ってメイフラワーII号を目指す。その近くにはプリマス・ロックというピルグリムたちが最初に足を乗せた石が残っているのだが、あいにく上に被さっている神殿風の建物が再建中で見られなかった。しかし、その横にある解説板を読むと、その石が最初の石として特定されたのは上陸から120年もたった後で、歴史的事実というよりも、象徴でしかないそうだ。こうやって歴史は作られる。

20080606mayflower.jpgさて、メイフラワーII号。ここで『地球の歩き方』に混乱させられた。『地球の歩き方』には「1620年9月6日、102人のピルグリムファーザーズを乗せたメイフラワーII世号が自由を求めて新大陸へと出航した。」「メイフラワーII世号は、最初のアメリカ移民を運んだ船として知られている」などと書いてある。じゃあ、メイフラワーは二隻あったのか。もう一隻はどうなったのか。先にアメリカに着いたんだっけ、別の場所に着いたんだっけ、と気になり始めた(歴史をちゃんと勉強していないことがばれる)。

近くの売店に入り、解説書を読んでようやく理解した。『地球の歩き方』が間違っている。ピルグリムたちが乗ってきたのはメイフラワー号であって、メイフラワーII世号ではない。メイフラワーII世号とは、この目の前にある復元船のことで、これは1955年に作られたものだ。メイフラワー号が実際にどのような船だったのか資料がないため、想像で復元されたのがメイフラワーII世号である。この船は実際にイギリスからアメリカまで航海している。

そうすると、「II世号」というのもおかしくて、単に「II号」としたほうがいいのではないか。

歩き方が意図的に間違えたとはまったく思わないが、これもウィキペディア的な間違いなんではないだろうか。ウィキペディアの記述は完璧ではない。地球のある方も完璧ではない。それを受け入れた上で自分で確かめてあるのが『地球の歩き方』の楽しみなのだ。おかげで私はこのことをより強く記憶に焼き付けることができる。しかし、帰宅して調べてみると、メイフラワーII号の記述ははるかに詳しく、正確だった(少なくとも私に間違いは見つけられない)。たくさんの人がチェックするとどんどん良くなる。『地球の歩き方』の間違いに気がついても私は直接書き換えられないし、時間もかかる。やはりネットの勝ちなのかな……。

同じアパートに住む先輩日本人夫婦にいろいろ教えてもらう。大笑いしながらも考えさせられたのがアメリカ経済の仕組み。

奥さんが料理教室に参加しようとしたときのこと、「お皿を持ってない」と言ったところ、「お店から借りればいいのよ」とアメリカ人の先生。「???」と思ったけど、よくよく聞いてみると、いったんお店からお皿を買い、料理教室で使ってからきれいに洗って、「やっぱり気に入らないからリターン(返品)」と言ってお店に持っていくのだという。それでお店は全額返してくれる。その商品はまた棚に並べられる。

噂には聞いていたが、本当らしい。

アメフトのスーパーボールの前に大型テレビがすごい勢いで売れる。スーパーボールが終わると、テレビは同じ勢いでリターンされる。販売店は売れれば売れただけ、メーカーからキックバックがあり、返品された商品はメーカーに突き返すだけだから痛くもかゆくもない。メーカーはそんなことは織り込み済みの値段を付けているので仕方ないと思っている(それでも日本より安い?)。

どちらも売上には計上される。しかし、本当の売上と言えるのだろうか。利益は出ているのか。訳の分からないアメリカ経済。消費者保護の下に変なことになっていませんかね。

「どうでも良いものから試してみて、『リターン』て言えるようになれば、アメリカ生活に慣れた証拠ね」との奥さんのアドバイス。なるほど~。

ところで、入居前に申し込んでおいたのに電気代の請求が全く来ない。どうなっているのかと思って電力会社に問い合わせてみると、申し込みに不備があったので申し込みはキャンセルされているとのこと。「問題があれば連絡します」って最初のメールに書いてあったのになあ。どう見てもそっちの責任でしょ。やれやれ、また交渉か。でも電気はずっと使えているからこのまま放って置こうかなあ。

アメリカ経済は大丈夫ですか。ガソリン対策の前にやることあるでしょ。

このアーカイブについて

このページには、2008年6月以降に書かれたブログ記事のうちボストンカテゴリに属しているものが含まれています。

前のアーカイブはボストン: 2008年5月です。

次のアーカイブはボストン: 2008年7月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

Powered by Movable Type 4.01