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1.20世紀の「拡大」ヴィジョン
20世紀、とくに戦後の50年を考えた時、そこで一貫して期待されていた社会ヴィジョンは、それ以前(戦前)の時代との連続性をも含んで、「拡大」というヴィジョンとして描けよう。それは、拡大が社会目的の達成手段として機能するという意味よりも、「拡大それ自体が意味をもつ」までに、価値付与された社会ヴィジョンであった。まさに、「大きいことはいいこと」であり、その大きいことが目指す社会目的自体への言及は、ある意味では自明であったがために、明示されることはなかった。「なんでもいいから、大きくしろ」というヴィジョンが、社会的な価値をもちえた時代であった。
もちろん、そこにある社会目的は「貧しさからの離脱」である。豊かさを獲得する手段として、拡大のヴィジョンが支持されたことは自明である。しかし歴史的にみれば、その手段としての拡大のヴィジョンだけに翻弄された時代であった、ということも、あながち誤りではなかろう。それほど、20世紀の日本社会は、がむしゃらなまでの拡大ヴィジョンに大きな希望を抱き、その実現に邁進し時代である。
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