社会ヴィジョンの変容と世代の多様化
 
序論
1. 20世紀の「拡大」ヴィジョン
-1 拡大ヴィジョン実現への5つのモメンタム
  -2 時代の変化と拡大ヴィジョンの変遷
  -3 今後の拡大ヴィジョンへの期待
2 カルチャー・コーホートと社会ヴィジョン
  -1 カルチャー・コーホートの構成
  -2 年代別の生活=文化情報の解釈
-3 カルチャー・コーホート(C・C)別の期待と関心
3. 21世紀の「創出」ヴィジョン
  -1 「創出」という社会ヴィジョンへの期待
  -2 創出ヴィジョン実現への5つの社会的モメンタム
1−3今後の拡大ヴィジョンへの期待

このような拡大ヴィジョンは、まだその勢力を失ってはいない。現在、それはすでに新しい拡大ヴィジョンとして社会的な期待をあつめている。それが情報化への拡大ヴィジョンである。このヴィジョンは、これからの20年間を主導する重要なヴィジョンであると、予感される。

(1)1995ー2014:情報的な拡大ヴィジョンに導かれる時代
今日、バブルがはじけ、新しい拡大のヴィジョンが求められている。それが情報化の夢であることは確かである。このヴィジョンの実現を求めて、日本社会は新しい拡大を指向していくのであろう。新しい情報化の波は、バブルではじけて傷ついた日本社会を再生するシナリオとして、誰もが期待するヴィジョンである。マルチメディアやネットワークのヴィジョンが大いに語られ、そこに新しい日本社会の拡大の夢を託そうという社会的期待への合意がすでに形成されている。情報産業は社会のリーディング産業としての期待をかけられ、その拡大にこそ次の日本社会の再生の契機が潜んでいると確信されている。
しかしすでに予想されるように、今の情報化のヴィジョンへの過熱した期待が、その実現を追求すると同時に、その後に大いなる挫折を味わうというサイクルがくることをも学習しなければならない。拡大のヴィジョンにコミットするかぎり、成功と挫折はサイクルとして必然である。とすれば、2015年には、情報化の拡大ヴィジョンが挫折を経験し、その後にさらなる新しい拡大のヴィジョンを求めて新しい模索が始まる、と予感される。
しかし、そうなのだろうか。それには、2つの点を考察することが必要である。一つは、この新しい拡大のヴィジョンである情報化のもつ社会システムへの根元的な意味を探ることである。そして、もう一つは、いままでの拡大ヴィジョンが実現してきたさまざまな社会経済的な成果を生活・文化という視点から再解釈し、そこに拡大ヴィジョンを超える新しいヴィジョンの萌芽を探るという作業が必要なのである。

それを、ここでは、カルチャー・コーホート・アプローチと呼ぶ。