社会ヴィジョンの変容と世代の多様化
 
序論
1. 20世紀の「拡大」ヴィジョン
-1 拡大ヴィジョン実現への5つのモメンタム
  -2 時代の変化と拡大ヴィジョンの変遷
  -3 今後の拡大ヴィジョンへの期待
2 カルチャー・コーホートと社会ヴィジョン
  -1 カルチャー・コーホートの構成
  -2 年代別の生活=文化情報の解釈
-3 カルチャー・コーホート(C・C)別の期待と関心
3. 21世紀の「創出」ヴィジョン
  -1 「創出」という社会ヴィジョンへの期待
  -2 創出ヴィジョン実現への5つの社会的モメンタム
2−1カルチャー・コーホートの構成

カルチャー・コーホート・アプローチは、社会や文化という時代状況を反映させた「年代」軸と、個人の誕生から死までの生き方や生活を反映させた「年齢」軸、という2つの軸をクロスさせた「世代」(この意味での世代を、ここではC・Cと呼ぶ)と、その集合と相互の関連性という視点から、時代状況を解釈する方法である。この場合、C・Cとは、年代と年齢の接点であり、「いつの年代に、何歳であるか」という状況を意味する。つまりカルチャー・コーホート・アプローチとは、社会と個人の接点にある「何歳の時にどの年代を生きた」という情報(各世代の時代性への共有感覚)から、世代(=C・C)と社会(つまりC・Cの集合と関連性)の意味を解釈する方法であり、そのことで、社会ヴィジョンを、さまざまな世代=C・Cの視点からより具体的にかつ多様に解釈する方法である。

このアプローチについては、つぎの点を明確にしなければならない。

(1)年代の情報
ここでは、年代については、前述したように、大きくは20年間の拡大ヴィジョン(軍事・経済=所得・金融資産)についての社会システム・レベルでの情報をもとに、その枠の中で、どのような生活・文化上の情報が重要であるかを、C・C(世代)の視点から検討する。

(2)年齢の情報
また、年齢については、つぎのライフ・ステージ別の生活期待とそれを支える社会関係をもとに、各C・Cの情報を解釈することにする。


(3)情報としてのカルチャー
カルチャー・コーホート・アプローチで利用する情報は、カルチャーの情報であるが、これは、生活情報と文化情報の両方からなり、しかも、その両者を等価な情報と扱う。つまり情報という観点からすれば、これらの情報は同じ扱いが可能である。生活情報は現実の生活のなかで意味をもつ、いわばリアルな情報であり、文化情報とは、メディアを通して生活に影響力をもった情報であり、テレビであり、マンガであり、この種のメディアを媒介にして生活に影響力をもった情報である。ここでは、マンガの主人公の生き方も、現実の人々の生き方も、情報論的な影響力という点では、あきらかに等価である。これがカルチャー・コーホート・アプローチである。