2004年4月アーカイブ
ボストンのフリーダム・トレイルをたどっていたら、横にボーダーズ(本屋)があったので思わず入ってしまった。そうしたら、ジョセフ・ナイがこんな本を出していることにも気がついた。
Power in the Global Information Age: From Realism to Globalization (Amazon.com)
2004年5月発行とあるから出たばっかり。
内容は1970年代から書いてきた代表的な論文をテーマごとに並べなおしたもの。
おもしろいのは、一番最後の「Praxis and theory」という文章。ナイはよく知られているように、学者であるとともに、国務省や国防総省でも仕事をしてきた。生まれてから今までの自分の人生を振り返ってみて、二つの道を行き来したことが良かったと書いている。ただ、幼少時代は農業をやりたかったり、学部を卒業した後は海兵隊に入ろうとしたり、紆余曲折があったことも書いてある。博士課程での勉強は苦痛だったが、論文を書くのは楽しかったそうだ。学者の人生を考える上でとても興味深い文章。
この問題はもうだいぶ議論されている。CFPでも話題になった。しかし、今日、MITのオートIDラボに行ったら、予想以上におもしろい話が聞けてびっくりした。CFPのプライバシー論者たちとは正反対といっていい。でもそういう考えもあるかと思わされた。帰りの飛行機の中でレポートを書いてみよう。
Soft Power: The Means to Success in World Politics (Amazon.com)
ジョセフ・ナイの新著がいつの間にか出ていた。ソフトパワー論の総決算というところか。
序文にも書いてあるけど、ソフトパワーはどうも誤解されている気がする。本当は安全保障を論じるための概念で、コンテンツ産業育成のための議論ではない。
Bush touts broadband, high-tech jobs
ブッシュはブロードバンドへの課税禁止を打ち出した。う〜ん。
Clinton's 'My Life' hits stores in June
クリントン前大統領の回想録が6月末に出るそうだ。なんと初版150万部。ヒラリーが100万部だったから50万部多い。ヒラリーの回想録は総計200万部売れている。クリントンはこの本で1200万ドル(12億円以上)もかせぐ。もう借金は返し終わっているのだろうか。
問題はクリントンが本の宣伝ツアーを7月以降に行うことでケリーの選挙戦がかき乱されるのではないかということ。
米国のホームレス管理データベース計画、懸念されるプライバシー
CFPのセッションの一つが記事になっている。
Kerry's broadband policy plans emerging (news.com)
ブッシュ大統領に続いてケリー候補もブロードバンド政策を発表する予定のようだ。両者とも「universal broadband」を目指すらしいがうまくいくのか。民主党は電波の開放も視野にやっているという。
「IT産業が米大統領選を左右する?――支持するのはブッシュかケリーか」でも書いたが、パパ・ブッシュ再選のための選挙(1992年)ではインターネット政策が大きな鍵になった。今回は安全保障・治安維持政策に隠れているが、どうなるか。
Teens Ring Up Market Share: Extras Help Cell Phone Firms Woo Youths (Washington Post)
アメリカの携帯電話会社は、若者が収益源になるということにようやく気づいたらしい。写真のやりとりやリングトーン(着メロ)のダウンロードで月75ドル使っている子供が出てきたことに驚いている。これまでアメリカの携帯電話がお金を持っているビジネス・ユーザーに焦点を当ててきた。それが失敗の原因だったのだ。
ワシントンDCのホテルの予約がなかなかとれなかったので、おかしいなあと思っていたら、大規模なデモとぶつかっていた。昨日(24日)は世界銀行とIMFに反対するデモ隊が市内に繰り出して、警官隊と衝突していたらしい。
今日(25日)は「プロ・チョイス」の人たちが全米から集まっている。朝からニュース各局は中継をしている。プロ・チョイスの人たちは民主党支持層と重なるから、反ブッシュの色合いも強い。
今日の午前中は予定がないから、メトロ(地下鉄)に乗って、モール(ワシントンDC市内を横断する公園)に行ってみた。日曜日の朝のメトロはたいていがらがらなのに、今日は上りが満員。バッジやプラカードをつけた人が乗り込んでいる。スミソニアン駅を降りるとモールまで長い人の列ができている。
モールにはうじゃうじゃ人がつめかけている。日本なら黒山の人だかりというのだろうけど、髪の毛が黒くないし、みんな色鮮やかなTシャツやプラカードをつけているから華やかだ。
(この写真は合成写真みたいに見えるけど本物です。)
プロ・チョイスは女性の権利と自由のための運動だけど、それを支持する男性もそれなりに来ている。ただ、どうもヨーロッパ系の人が多くて、アジア系やアフリカ系の人は少ないように見える。年齢は子供から年配までさまざま。掛け声もいさましい。ある種、お祭りのようでもある。
しかし、プロ・チョイス対プロ・ライフの対立は、アメリカ政治の大きな軸の一つだ。これだけ深刻な問題を回避せずに、自分の意見をこうやって大声で叫ぶ政治文化は、日本と違うなと思ってしまう。少なくともこの問題に対して、これだけの人間が日本で一同に会することはないだろう。演説台があり、あちこちに巨大モニターとスピーカーが設置されていることから見ても、かなり組織化された運動ではあるが、実際にこれだけの人が動員されているのを目の当たりにすると、政治的なパワーを感じてしまう。
帰りの電車の中で「賢力と愚力」という言葉が思い浮かんだ。こうした大衆が動かす政治を政治家たちは衆愚政治と呼んで蔑んできた。しかし、賢い人たちがやっている賢力政治は権力政治とほぼ等しいと受け止められている。賢力と愚力の間にはそれほど開きがないのかもしれない。もし、大衆が情報技術を使って賢力を持つようになったら、政治は大きく変わるのだろうか。
バークレーに初めて来た。しかし、CFPの会場になっているホテルが大学から遠くて、一度しかいけなかったのが残念。しかし、なんだか小汚いというのが感想。
ホテルそのものは良かった。部屋の中では有線のブロードバンド(といっても128Kbps)、会議場やロビーでは無線の11bが使えた。
部屋からははるか遠くにサンフランシスコ湾をはさんでサンフランシスコが見える。夜になると欠けた月が見えてきれいだった。
Internet Archive、こいつはすごいプロジェクトだ。人類のすべての知識にユニバーサルにアクセスできるようにするという。(今のところアメリカ中心だけど)全世界の出版・公表された本、音楽、映像、ソフトウェア、ウェブページを収集して公開している。
クリエイティブ・コモンズのライセンスは使ってないけど、思想は知っているらしい。CFPのとりで講演したBrewster Kahle氏は、レッシグ教授に言及していた。
米国では電子投票の問題は予想以上に深刻なようだ。
2004年4月23日付けの『San Francisco Chronicle』紙のA1面で「Electronic voting machines dealt blow: Panel wants to pull plug in 4 counties」と題する記事が掲載され、カリフォルニア州の4つの郡で電子投票機の使用禁止が決まったとある。
CFPで配布されたverfiedvoting.orgの資料によると、過去2年間、全米各地の少なくとも15回の選挙で問題が起きている。
CFP最終日には電子投票による模擬選挙も行われた。
あらかじめ主催者側がソフトウェアを操作しておいたので、電子投票の結果とバックアップでとっておいた投票用紙の結果が異なることになった。ソフトウェアを操作した犯人はその理由を「チョコレートが欲しかったから」と述べた。そう、プログラミングができる人がいて、ソースコードにアクセスできれば、電子投票の結果を変えてしまうことなど簡単なのだ。
無論、紙で投票してもさまざまな問題は起こる。検証できる=紙の投票ではない。しかし、集計の迅速さと正確さをはかりにかけたら、正確さが当然優先されるべきだろう。今のところどちらが正確な投票結果を残せるかというと紙ではないか、というのがパネルの結論。
米中が貿易摩擦解決に向けて合意(CNET)
WAPIの仕様は、中国政府がワイヤレスネットワーク経由でやりとりされる国民のあらゆる通信を解読できるようにつくられている。
勘弁してよ。なるほど中国からCFPに参加者がいないわけだ。日本からは今年は5人かな。うち2人はカリフォルニア在住。
日経デジタルコアのネット時評に「電子投票の裏側」が掲載された。
元ネタになったルービンたちが、ちょうどEFFのパイオニア賞を受賞した。
CFPのキーノートも電子投票がテーマだった。このディル教授も電子投票に疑問を呈している。監査(audit)ができない投票はダメで、今のところは紙が唯一のソリューションだといっていた。
一方で、インドでは大々的に導入したらしい。
http://japanese.meetup.com/members/?fulltop=1&localeId=406
びっくりだなあ。毎月第二火曜日は世界中で日本語の練習をしているそうだ。
Moveon.orgと並んでMeetup.comは注目だ。
ワークショップに出たら、やはりこのタクシーの問題が気になった人がいたようだ。彼によると、写真を撮っただけではその人が誰なのかはわからないけれども、タクシーの中にRFIDのリーダーをつけておいて、その人が持っているタグの記録をできる限り読んでしまえば、どこかのデータベースで引っかかるようになるだろうという。犯罪者は裸でないとダメだね。
機内で見た映画は『Runaway Jury』。テレビドラマ『プラクティス』の主役の俳優(名前知りません)が出てきたので、彼が主役かと思ったらいきなり殺されてしまった。
法廷ものだけど飽きさせない。原作はやっぱりジョン・グリシャム。しかし、今回はあまり法律のテクニカルなところは問題にならない。むしろ、法廷の周りで陪審員コンサルタントが何をしているかが見どころ。
ジーン・ハックマンとダスティン・ホフマンの曲者ぶりがおもしろい。でもジーン・ハックマンの勝ちかな。ヒロインは『ハムナプトラ』のヒロインだった人(この人も名前知りません)。
日本で大ヒットすることはないんじゃないかと思うけど、私の好みではある。
1時間遅れでサンフランシスコに到着。入国のセキュリティが厳しくなったというが、何の問題もなく通過。「ビジネスって何?」「会議出席です」「何の会議?」「コンピュータ関連の会議です」「どこで?」「サンフランシスコとワシントンDCとボストンです」で終わり。
前の人はビザを持っていたみたいで、指紋をとられていた。入国審査官の前に、小さな電子式指紋読み取り装置が据え付けてあって、左手の人差し指、右手の人差し指を順番に乗せるだけでいいらしい。
サンフランシスコ空港からバークレーまでタクシーに乗る。ぼおっと窓の外を見ていると、窓に「YOU ARE ON CAMERA(カメラに撮られてますよ)」と書いてある。「何?」と思って反対側を見ると同じステッカーが貼ってある。
カメラはどこだと探すと、バックミラーのところに確かについている。
「Fare View in Operation」とも書いてあるから、料金トラブル防止のためらしい。しかし、それだけじゃないだろう!? いやはやアメリカもすごいことになってきている。こんなのありか?
#TKさんに写真を明るくしてもらったので差し替えました。ありがとう。
ついでに長らく気付かなかった言葉。スパムの発信名としてよく付いてくる「Some Bozo」というのは南米かどこかでよくある名前かと思いこんでいた。「ソメ・ボゾ」と読むのかと。
しかし、『スマートモブズ』を訳していたときに「bozo filter」というのが出てきて、ああそうかと気が付いた。「ある愚か者」という意味だった。
■bozo {名-1} : (血の巡りの悪い)男、やつ / 【用例・名-1】 Who's this bozo? : こいつは誰だ? ■bozo {名-2} : ばか者、愚か者、あほ、間抜け、能なし、脳たりん ■bozo button : 《コ》ボーゾーボタン、不要メール削除プログラム ■bozo filter : 《コ》迷惑文除去ソフト、不要メール・不要メッセージ削除プログラム
(英辞郎より)
「ある愚か者」と名乗ってスパムを送ってくるのは一種のユーモアのつもりなのだろうか。顔が見てみたい。
今日からアメリカ出張。バークレーでCFP2004に出た後、ワシントンDCとボストンを回る。
CFPは、ネット・プライバシー関連では有名な会議。毎年西海岸と東海岸を往復している。前回2002年に出たときはPGPのフィル・ジマーマンにインタビューできた。「Computers, Freedom and Privacy Conference」という名前はアメリカ人にもインパクトがあるようで、「何だそれ?!」といわれることが多い。
今年はRFIDとポスト9.11関連の話題が多そうだ。クリエイティブ・コモンズのBOFもある。ちなみに、BOFとは、
■birds of a feather {1} : 同じ羽毛の鳥、似たような連中{れんちゅう}、同じ穴のムジナ、同類{どうるい}(の徒) ■birds of a feather {2} : 同じ興味を持つ人たちの集まり◆【同】Special Interest Group
のこと(英辞郎より)。こういう業界用語は最初に聞くと訳が分からない。
SYさんが教えてくれた。
もともとコラボレーションしていた二人だけど、レッシグ教授の新著『Free Culture』の前書きではFSFのストールマンのことをたくさん書いている。より関係が密接になったということかな。
ニューヨーク州司法当局は、費用が急騰した時期を経て、現在年間40万〜50万ドルの通信傍受費用を支払っているという。
やっぱりけっこうやっているなあという感想。1ドル100円とすると4000万円〜5000万円。50州で単純に50倍すると、20億円〜25億円。
これは携帯電話だけだから、固定電話やインターネットの通信傍受がさらに加算される。記事にあるように、携帯電話は高いのだろうけど、それにしてもなあ。これも犯罪やテロを防ぐコストだと思えば、安いのか、高いのか。
Steven C. Clemons, "Visas for America: The Folly of Discouraging Visitors," International Herald Tribune , 10 April 2004.
メールを交換したことのあるクレモンスさんが送ってくれた。
アメリカは9.11後にビザの申請料を65ドルから100ドルに上げた。しかも、ビザ発給が認められなくてもこの料金は返金されない。途上国の人々にとっては大金だ。おまけに発給拒否率は9.11後に上がってきている。アメリカが内向きになって外から来る才能を拒むのは、結局はアメリカのためにならない、というのが彼の主張。
ビザ拒否率のデータも公開。
http://www.steveclemons.com/visafees.htm
でも、こういうまっとうな意見は無視されるんだろうなあ。
坪内淳「「アメリカ時代の終わり」と日本のグランド・ストラテジー―日米同盟という「応急措置」の先にあるもの」『世界と議会』2004年3月号。
坪内先生は相変わらず歯切れがいい。なるほど「イラク問題」ではなく「アメリカ問題」のほうが深刻という指摘。
この戦争に「大義」があったのかどうかは、問題の本質ではないのである。アメリカがそのように「判断」し、それを単独で実行する「能力」を持っているということこそが、現在の国際関係の最大の特徴であり、それが「アメリカ問題」である。
日本の対米政策が「忠米」という指摘も面白い。きっと日米同盟堅持派からは批判が浴びせられるのだろうが、それこそがおかしいというのが坪内先生の指摘だ。
「グランド・ストラテジー」という言葉は、リデルハートが『戦略論』の中で使い、最近では(坪内先生が翻訳した)カプチャンの『アメリカ時代の終わり』で使われている。
「ポスト・ポスト冷戦」の時代(9.11後の時代)は、「グランド・ストラテジーを競う時代」になるかもしれない。言い換えればそれが「新しい帝国主義の時代」かもしれない。
日本でもグランド・ストラテジーを研究する研究者や研究所がたくさん出てこないとまずい。まずいぞ!
週末に山梨県の釈迦堂遺跡を見てきた。ここは中央自動車道を建設するときに地面を掘ったら出てきた遺跡。高速道路のパーキング・エリアから博物館に行くことができる。だいたい3800年前頃までの縄文人たちの生活の様子が再現されている。
面白いのは作った土偶をわざわざ壊して、破片をバラバラにして埋めたらしいということ。何のためなのだろう。
そもそも、土偶がなぜ作られたのかはっきりしないらしい。博物館の中のパネルによれば、(1)子供のおもちゃ、(2)装飾品、(3)女神像、(4)病気・傷害・災害の形代(かたしろ:身代わりのこと)、(5)埋葬具、(6)宗教的儀式の祭具、(7)護符(ごふ:守り札のこと)などの諸説があるそうだ。
昔の知恵を忘れてしまうのは何となく悲しい。ネイティブ・アメリカンのイロコイ族は一万年の記憶を語り継いでいるそうだが(ポーラ・アンダーウッド『一万年の旅路』)、そんな部族はめったにない。
金曜日(9日)に三田で今学期初講義をやった。予想以上に多くて驚いた。念のため150部シラバスを作っていったが足りなかった。しかし、「厳しいよ〜。CもDもつけますよ」と言ったら少し減った。
教室は昨年よりもやや広めの階段教室。やりにくい。黒板ではなくてホワイトボードになったから、書きにくいし、教室の後ろの人も読みづらいに違いない。できれば変えて欲しい。
http://compress.sfc.keio.ac.jp/clip/article.jsp?id=news04040904
SFCクリップで簡単に紹介してもらった。これを見た何人かからメールももらった。少し恥ずかしい。
日本国際問題研究所のニューズレター『焦点 世界のいまを読む』第7号(2004年4月)に友田錫氏が欧州中央情報局のことを書いている。
テロとの戦いで最も重要な情報能力強化について、EU本部提案の欧州版CIAである「欧州中央情報局」の創設は情報独占にこだわる英、独、仏の反対で実現せず、情報交換と政策調整にあたるテロ担当官の新設や容疑者データベースの創設にとどまった。
なかなか興味深い。独仏は英米のインテリジェンス活動に反対するという構図だと思っていたが、そうでもなくなってきているということか。
知人から聞いたのだが、家を建てる時の設計図は著作権を無視して使われることがあるらしい。例えば、大手の住宅メーカーに行って相談に乗ってもらう。その過程で設計図を書いてもらう。しかし、そのメーカーに建築は依頼せず、別の工務店に設計図を持ち込んで家を建ててもらうということがよくあるらしい。
下記のリンクにもあるように、著作権上は明記されていないが、設計図にも、建築物にも著作権がある。
http://www.jia.or.jp/activity/s_committee/kensetu_jia/2003/05_cals.htm
建築業界では著作権に関してルーズな慣行があるのだろうか。
いい建築物や家具などいろいろなものの設計図にクリエイティブ・コモンズのライセンスを付けてくれればいいのにと思う。文章や絵の複製というのも重要だが、設計図に基づいて何か作ってみるということもまた、クリエイティビティを刺激する営みだと思う。
「国際政治における情報の機能」という題で原稿を頼まれていた。1万字とそれほど長くないけど昨年秋に依頼をされて、締切は3月末日。ずっと頭の中で構想は練っていたのだが、ここ数週間のゴタゴタで結局締切に間に合わなかった。お詫びして締切を延ばしてもらい、昨晩午前3時に書き上げてメールで送った。
たぶん依頼を出した方は考えていなかったはずだが、私に頼んだ時点で「国際政治における情報の機能」はインテリジェンスの問題になってしまった。ひょっとするとNGが出てしまうかもしれない。うまくいけば夏には出るようだが、どうなるか。
そして、今日は別の原稿(短いコラム)の締切。これも頭の中にはずっとあったが書けてない。今日が締切なら今日の夕方までには出すべきだが、昼間はいろいろあって書けなかった。このブログを書いている暇があったら原稿を書けばいいのだが、いまいち筆が進まない。今日もあと1時間あまりになってしまった。
おまけにTK氏からは今週中に別のコラムを書けと言ってきている(つらいぞ)。ううう。3カ月引き伸ばしている英文原稿はどうなるのだろうか。このまま月末の出張に突入してしまいそうだ。いや行く前にさらに別の原稿の締切もある。今日来た原稿依頼はKK氏に転送しよう。すまん。
たぶん1999年に韓国のブロードバンドを調査に行ったとき、はじめて「アパートLAN」という言葉を聞いた。韓国の「アパート」は日本でいう「マンション」や「団地」にあたるが、アパートの中の各家庭でブロードバンドが使えるようにしてあった。アパート単位でサービスを導入しているようだった。
引っ越しを考えているので、昨日、物件を見て回った。今計画・販売中で、2年後に入居可能になるマンションは、当然のように100Mbpsのブロードバンドが入っている。しかし、2年前に売り出して、ちょうど今、入居が始まっているマンションはなんと10Mbpsのままなのだ。それも、マンション単位で契約しているので、個別の設定ができない。管理費の中に料金が含まれていて、サービスをアップグレードするには、住民の総意をとりつけないといけない可能性がある。これは致命的だ。
すぐにでも入居したい私にとっては考えてもいい物件だったが、インターネットが10Mbpsで、それ以上は速くならないと聞いてあっさり嫌になった。電話線を使ってADSLを個別に使うこともできるということだったが、大した差はない。
おそらく2年後には1Gbpsのサービスを始めるところもあるのではないだろうか。各戸につながる大きなパイプと、機器設置スペースをあらかじめ確保しておき、各戸で個別にプロバイダーと契約できるようにしてあるマンションはないのだろうか。不動産業界はその辺にまだうといのかなあと思ってしまう。
通読すると面白くないが、抜き書きしてみると味わいがある。もう入手できないのが残念。
=====
ケネス・J・アロー(村上泰亮訳)『組織の限界』岩波書店、1999年。
p. vii
政治的組織が挫折するにもかかわらず、形式的構造に乏しい知的組織が力を発揮するということは、まさしく組織理論が取り組むべき論点の多様性の例示でもある。
p. 28
そしてわれわれは、過去の誤ちを認め、方向を変更する可能性をつねに開いておかなければならない。
p. 29
「組織」という言葉は、前章での議論で注意しておいたように、十分広く解釈すべきである。公式#フォーマル#組織、すなわち企業、労働組合、大学、政府などが、組織のすべてではない。倫理的な規則や市場システムそれ自体も、組織として解釈することができる。市場システムは、まさしくコミュニケーションと共同的意思決定のための高度な手段を備えている。
p. 30
組織の目的とは、多くの(事実上はすべての)決定が、実際に成果をあげるためには多数の個人の参加を必要とするという事実を十分に生かそうとするところにある。とくに既に注意しておいたように、組織とは価格システムがうまく働かない状況のもとで、集団的行動の利点を実現する手段なのである。
p. 35
本質的な原因は、契約に関する両当事者間の情報の不平等というところにある。
p. 50
以下で示されるテーマは、情報チャネルとその使用に伴なう不確実性、不可分割性、資本集約性の組み合わせより成る。そしてそこから導かれるのは、(a)組織の現実の構造や行動は、偶然的事件、言いかえれば、歴史に大きく依存するかもしれないということであり、(b)効率性のみの追求は、いっそうの変化に対する柔軟性と感応性の欠如につながるかもしれないということである。
意思決定は、必然的に情報の関数である。かくて、ある一群の意思決定に必要な情報を集めないという決定が下されれば、それら一群の決定は行動計画ならざるものとなる。
p. 71
組織にはさまざまの共通な性質があるが、なかでも権威#オーソリティ#による配分というやり方が広く行なわれている点に特徴がある。事実上普遍的といってよい現象であるが、いかなる規模の組織においても、ある個人によって行なわれた決定が、他の個人によって実行されるのである。権威が正当性を与えられている領域はそれぞれ限定されているかもしれないし、あるレベルにおける命令の受け手が、彼自身権威を与えられているような自分の領域を持っているかもしれない。しかし、これらの限定の範囲内で、命令のやりとりは、ある人をして、ある他の人になにをなすべきかを教えさせるのであって、このような命令のやりとりこそ、組織の機能するメカニズムの基本部分である。
p. 82
権威の価値がもっとも純粋にあらわれる例は軍隊である。そしてもちろん多くの面において、軍隊は事実最初の組織であって、その後国家に成長する。広く分散した情報と、迅速な決定の必要という条件が与えられている以上、戦術的なレベルでは権威による統制が成功のために不可欠である。
p. 82
権威に対立する逆の極端な代案は、合意#コンセンサス#である。(略)私が理解するかぎり、合意とは、個々人の利害を集計するところの、無理のないそして受け入れられた手段を意味する。
p. 86
制裁の存在は権威への服従の十分条件ではない。明らかに、もしもある程度以上の数の従業員が命令に従わなければ、そのような命令は強制できない。
横浜で「日米交流150周年記念式典」が開かれた。1854年に日米和親条約が結ばれたことを記念したもの。小泉首相やベーカー駐日米大使などが来ていた。日本語で挨拶した米国人学生のスピーチが見事だった。
式典の後で開かれたレセプションはあまりの大人数で芋洗い状態。食べ物もぜんぜん足りなかった。
http://www.linux-magazine.com/issue/42/Linux_World_News.pdf(pdfファイル)
Linux-magazineにクリエイティブ・コモンズの日本での活動について紹介記事が出た。「日本ではブログに使われている例が多くて、大手が商用利用している例はあまりない」とやや否定的に書かれてしまったので少し反省。メディアへのコメントは難しい。
ktaguma`s Fotolog(2004年3月31日)に元の職場の私の机をとった写真が出ている。乱雑で美しくない。さわやかで知的な作業場を持ってみたい。
知的生産のための環境に興味を持っていろいろ本を読んでみたけど、なかなかピンと来るものがない。ジャーナリストでバリバリ仕事している人の部屋などは乱雑極まりないことが多い。頭の中が整理されていればいいのかもしれないが、「この資料があの時見つかっていればもっといい原稿が書けたのに」と思うことがよくある。読んだ資料全部を頭の中にためておけるほど私は記憶力がよくない。
本を全部スキャンしてハードディスクに入れておくという人も出てきているようだが、手間の割に使い勝手は悪いのではないかと考えてしまう。
立花隆や猪瀬直樹のように蔵書のためのビルを建てる余裕はないからなあ。21世紀前半(私が死ぬまで?)は悩み続ける気がする。
新年度を機に有楽町の献血センターに行って献血をしてきた。久しぶりの献血。献血手帳を持っていなかったので、以前の記録を調べてもらったら、今よりも体重が7キロも少なかった。いかん。
水分をガブガブとっていざ献血に臨む。前回と同じ400ml。しかし、やはり前回と同じく気分が悪くなる。もともと血の話には弱いのだが、見てもいないのに想像するだけで気持ち悪くなる。耳元で何やら機械がプシューとなるといっそうムカムカしてくる。
結局、400mlとり終わった頃には顔面蒼白。手にも血の気がない。椅子の背もたれをバタリと倒して、足まで高くしてもらう。何だか目がグルグル回って吐き気がおそってくる。小一時間、そのまま横になっているが、ちっとも血圧が上がらない。
ほうほうの体で外に出るが、その後は仕事にならなかった。
何かいいことがあったら献血することにしているのだが、今回はつらかった。昨晩、歓送会で飲み過ぎたのがいけないのかもしれない。幸い、肝臓の数値は正常だった。
「いいこと」とは、新しい仕事が見つかったこと。これを機にブログを再開したいと思う。