よもやま話: 2009年5月アーカイブ

 ゴールデンウィークが終わってからようやく調子が出てきたなあと思っていたら、その分、忙しくなってきて、もう息切れ気味になっている。

 週末になって気分転換がしたくなり、読んでいなかったマルコム・グラッドウェルの『ティッピング・ポイント(The Tipping Point)』と『第1感(blink)』を続けて読む。アメリカにいるとき、『Outliers』がベストセラーになっていて(翻訳のタイトルは『天才!』らしい。注文したけどまだ届いていない)、audible.comからダウンロードした朗読版を聞いていた。『Outliers』のおかげで『ティッピング・ポイント』も『第1感』もアメリカの本屋で平積みになっていたので、読みたいなあと思っていた。
 『ティッピング・ポイント』のtipとは傾くこと。物事が一気に傾くところがティッピング・ポイント。創発(emergence)の概念と似ている(たぶん同じだ)。バラバシやワッツが紹介するネットワーク理論の考え方も入っている。インフルエンザが騒がれている今の時期に読むとちょっとおもしろい。きっとコネクターと呼ばれるばらまき屋がウイルスを広めているのだろう。潜伏期間があることを考えると、コネクターが飛行機に乗って世界中を飛び回るのを止めるのは不可能だ。
 『第1感』の最初に出てくるクーロス像と愛情ラボのエピソードはどこかで読んだ気がした。書いてありそうな本を30分ほどあさってみたが見つからない。どこだったかなあと考えたら、ある講演会で紹介されていたのだった。講演会の資料をひっくり返したら書いてあった。私の第1感はいまいち切れが悪い。しかし、「なんとなく」が第1感では重要だ。第1感のアイデアはスロウィッキーの『「みんなの意見」は案外正しい』に近いが、『第1感』では専門家の能力により力点が置かれている。

 同じようなアイデアが創発して、大きな流れを作り出している気がする。インターネットが出てこなければこれだけネットワークへの注目は高まらなかったかもしれないが、ネットワークの概念はインターネットにとどまらない。

 次は何を読もうかと思いながらスケジュール表をちらっと見ると、これから2週間はメチャクチャ忙しそうだ。業績につながらない締切が少なくとも6つある。授業もある。ICPCもある。第1感じゃなくても危険なことが分かる。