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2.ネットワークの社会的意味
1)情報探索と情報支援
従来の情報/コミュニケーション論の基本は情報発信/情報所有の考え方である。つまり情報発信するには情報を所有していなければならず、しかも情報発信に価値を発生させるにはその情報が希少でなければならず、その希少な情報を所有することではじめて情報発信が社会的意味をもつ、という論理である。しかしネットワーク環境では、人々は情報発信を最優先しない。まずここで重要なことは「人は情報を所有していなくても主体的にネットワーク環境に参加できる」という認識である。欲しい情報が手元には何もないという条件がネットワークでのコミュニケーションを始動させる第1歩である。人は情報を所有していないから、ネットワーク環境で情報を求めて探索する。だからサーチエンジンがネットワークでは不可欠なツールなのである。つぎに「自分のほしい情報はネットワークで誰かが保有している」という認識も重要である。しかもその誰かは、情報を保有しているけれど、発信しないでじっと待っているだけである。そしてそこにサーチエンジンを介してアクセスしたとき、自分のほしい情報が得られるという仕組みがネットワーク環境である。
誰もが情報を所有していないから、情報の希少性は問題にならない。情報を保有しているのはアクセス先で、しかもその先方はネットワーク上に無限に散在してじっと待つだけだから、情報を所有する意志はそこにはない。だからすべての先方はネットワーク上に情報を公開しているだけである。とすると、ここから情報は探索行為を支援するために存在する、という関係が発生する。それが情報を共有することで成立するネットワークの本質/精神である。ネットワークにおける関係の基本は、したがって、情報所有と情報発信ではなく、情報非所有と情報探索であり、その行動を支持する情報支援と情報共有の関係である。これは既存のコミュニケーション行動を根本から変革する大きな認識枠組である。
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