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18.豊かな情報社会
新しい社会が確実に動きだした。この予感だけは事実である。しかしそれがどのような結果を迎えるのか、まだ分からない。「豊かな情報社会」という、いままでにない豊かな社会を前提に、そこに新しい情報環境が付加されることで、まったく新しい社会的融合が起こり、効率的で合理的なモダンの社会を超えた社会が生成されつつある。(図10)
ここでは、たぶん貧富の社会カテゴリーを超えた次の社会カテゴリーの登場が期待されているのだろう。その萌芽は2つある。1つは「美醜」であり、もう1つは「賢愚」である。美醜は、いままでは芸術という隔離された特殊な領域に占有(封じ込まれていた)されていたカテゴリーであるが、それが新しい社会では社会カテゴリーとして全面に登場しよう。豊かな社会を身体で表現する若い女性たちの登場と、情報社会におけるマルチメディアの社会的認知は、この美醜のカテゴリーの社会化を予感させる。
賢愚も、いままでは知識人という隔離された特殊な社会領域に占有されていたカテゴリーであるが、ここでも社会との現実的な関係を強く意識した開かれた大学(その典型が、SFC)が社会的認知され、さらに情報社会におけるネットワークやデータベースの発想が知的環境をどこまでもオープンにすることで、この賢愚のカテゴリーの社会化をも誘発しようとしている。
新しい豊かな情報社会は、この2つの社会カテゴリーを融合して新しいカテゴリーを生成するとき、その実態を明確にするのであろう。そのときまで、いろいろなヴィジョンを掲げられ、それぞれに共感する社会層との間で、さまざまな葛藤があることだろう。
何が起こるのか、まだ分からない。ただいえることは、その葛藤のプロセスでも、情報をめぐるテクノロジーが大きな影響力をもたらすことだけは確実である。そのテクノロジーは、SFのように、新しい社会のヴィジョンを描くフロントランナーである。
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