ネットワークはねむらない
 
1. ネットワーク、まずはリンクが大切
2. ネットワークは、ねむらない
3. ネットワークは、身体に装着される
4. ネットワークは、境界を無視する
5. ネットワークは、グローバル・シチズンを求める
6. ネットワークは、情報発信をしない
7. ネットワークは、情報所有を求めない
8. ネットワークは、ボランティアを求める
9. ネットワークは、ポップメディアだ(自由の参加)
10. ネットワークは、ポップメディアだ(編集の参加)
11. ネットワークには、アバンダス(豊かさ)がにあう
12. ネットワークは、既存のコミュニケーション論では解けない
13. ネットワークは、匿名性(マス)を嫌う
14. ネットワークは、マッチングが命
15. ネットワークは、無数の物語をつくりだす
16. ネットワークは、信頼関係の根拠を自己責任に求める
17. ネットワークは、個人をかえる
18. ネットワークは、コミュニケーションのモードを多様化する
19. ネットワークは、行動ではなく、情報の論理に生きる
20. ネットワークは、エイジェントによって自己の拡張をもたらす
21. 携帯家族のすすめ
22. 新しい家族の絆---幻想から構造へ--
23. 専業主婦は、もういない
24. 恋愛の絆では、ネットワークを維持できない
25. 第3の絆、友情で家族は生成できるのか?
25.第3の絆、友情で家族は生成できるのか?

きょうだい関係は、広がりをもつ。「きょうだいは、他人の始まり」という諺があるように、きょうだい関係は、親にも配偶者にも拘束されないから、つねに外部へのつながりをもって家族を維持している。

核家族では、恋愛の絆が男女関係に閉じているので、家族の境界を越えて、家族としての広がりはない。どこまでも閉じることで、核家族が機能する。これにたいして、親子関係からなる伝統的家族では、血縁が、その縦のつながりとして、家族を拡張する機能を果たすので、ここに親族が形成される。その親族の最大の拡張として、伝統的な国家が成立するのである。

きょうだい関係は、血縁の縦系列の拡張とは対照的に、横のつながりの拡張をもたらす。家族を超えた拡張性をもつという点では、恋愛の絆とは違って血縁に似ているが、その拡張性の方向にかんして、血縁とは明らかに異なっている。では、それは何か。

(1)きょうだい関係は、よわい者(フラジャイル)同士のつながりである。したがって、この関係を維持するには、権力(血縁における親)と恋愛の場合ように、所有による関係づけではなく、非所有(何もない、だから助けて)をもとに生成される「探索と支援」の関係に頼らざるをえない。

(2)その探索と支援は、狭い家族の領域では、まったく充足されないから、つねに外部へと関係づけが拡張される。自分の家族は、その意味では、非常に弱い拘束しかもたず、その境界は柔らかくならざるをえない。自分の家族は、したがって、閉じることなく、外部への依存(探索と支援)を前提として構成される。

(3)きょうだいは、性別を問わないから、家族は、男女のカップルを前提とすることはない。ゲイ/レズビアンの家族も、ここでは成立可能である。

(4)通常の弱者である子供や高齢者は、その扶養を外部に委託される存在である。しかし、そもそも家族の主たる構成者さえも弱い存在(概念としてであるが)であるから、ここでは、家族全員がみんな弱い者でしかない。とすれば、子供や高齢者を、自分の家族の内部に抱えて面倒をみなければならない、という資格も規範もここにはない。素直に外部との関係で扶養することが望ましい、という論理が導かれる。

(5)きょうだいの絆である「友情(きょうだい愛)」とは何か。恋愛の愛が相手を奪うことであるのに対して、友情の愛は、相手を支えることである。自分が強いから奪うのと対照的に、ここでは、自分は弱いから相手を支える(尽くす)のである。これは、ボランティアの精神そのものである。友情(友愛/フレンドシップ/パートナーシップ)は、その意味では、ボランティアとしての振る舞いである。つまり友情はネットワークにおける精神そのものである。ネットワーク環境になかで家族を構成しようとすれば、二人は、それが男女関係であっても、恋愛である以上に友愛(ボランティアの精神)の絆を優先して、自分の家族を生成しようとする。

このようにみると、ネットワーク環境と家族との関係では、きょうだいの絆の原理がもっともふさわしい。親子関係にみる階層的な関係(血縁)も、男女(夫婦)関係にみる機能関係(恋愛)も、ネットワーク環境を支える関係としての適合性が欠落している。そして第3の絆であるきょうだい関係が示す友愛/ボランティアの精神だけが、ネットワーク的な関係を支持する。とすれば、新しいネットワーク社会には、新しい第3の絆をもとに、新しい家族が構成されなければならない。それが、携帯家族を支える新しい絆である。