あの頃は良かった

 CENS-GFF Workshop on “The Geostrategic Implications of Cyberspace”にお招きいただき、シンガポールに来ました。久しぶりのシンガポール、噂に聞いていたビルの上の船が見えました。

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 初日の第2パネルで私はプレゼンテーション。第1パネルがいまいち停滞気味だったので、その間にスライドを作り直しておもしろく修正。相変わらずへたくそな英語ですが、笑いはたくさんとれました。次のIBMの人もエキサイトして話していたのでおもしろいパネルになりました。

 私のプレゼンテーションの中で、日本ではインテリジェンスが弱いままで、サイバーセキュリティを担当しているNISC(内閣情報セキュリティセンター)とインテリジェンスを担当している内閣情報調査室(内調)の間に距離があると発言したところ、終わった後のランチタイムに当のNISCと内調の人が挨拶に来てびっくり。

 ブレイクアウトセッションの後、第3パネルでは司会を仰せつかりました。3人のパネリストは、弁護士、法学教授、米国務省の役人で、それぞれ難しい法律用語を使い、米国法や国際法を引用するので何を言っているのかよく分かりませんでしたが、質問もたくさん出て無事に終了したので、良かったとしましょう。

 最後は夕食会。ホテル内のレストランでバイキング(英語ではバフェーと言いますね)。小さめだけどロブスター食べ放題、オイスター食べ放題、カニ足食べ放題。すばらしい。

 隣に座ったCentre of Excellence for National Security(CENS)の代表代理のBilveer Singh先生は日本の温泉好きと聞いてびっくり。その頭で温泉に入るときはどうするのでしょうと聞こうかと思ったけど、やめておきました。

 反対の隣に座ったのはイギリスのエネルギーの研究者。福島の原発の話などをしているとき、「思い出してごらんよ。2000年は良かったよね。世界は平和で、経済も好調だった。その後の世界がこんなことになるなんて思わなかったよねえ」と言われて、その通りだなあと感傷的になりました。

 2000年、30歳の私は研究者として駆け出しで、デジタル・デバイドなんかをやりながら、初めての本を出す努力をし、アメリカにでも行ってみるかと準備をしていました。サイバーセキュリティもインテリジェンスも研究テーマにはなっていなくて、インターネットがこれほど安全保障につながるとも思っていませんでした。地震も津波も原発問題もない、平和な時代でした。失われて初めて実感するものですね。

「透明性革命」とネットワーク

土屋大洋「『透明性革命』とネットワーク」『治安フォーラム』2011年8月号、34〜41ページ。

 本当は3月に締切だったものの、震災で私の原稿提出が遅れ、雑誌側も震災特集を急遽組むことになり、ようやく掲載になりました。

 先日の情報通信学会では明治大学の江下雅之先生が関連する発表をされていましたし、名古屋商科大学の山本達也くんも言っていましたが、アラブの一連のデモではアルジャジーラなどの既存メディアも重要だったとのこと。その辺は残念ながらこの原稿ではカバーできていません。

 ただ、拙著『ネットワーク・ヘゲモニー』ではカバーできていなかった中東デモやウィキリークスの問題をフォローできています。