土屋大洋「サイバー攻撃のアトリビューションは魅力的な仕事である」『Newsweek日本版』2016年4月22日。
ここで紹介している論文を読んで、アトリビューションに対する見方がずいぶん変わりました。
土屋大洋のブログ
土屋大洋「サイバー攻撃のアトリビューションは魅力的な仕事である」『Newsweek日本版』2016年4月22日。
ここで紹介している論文を読んで、アトリビューションに対する見方がずいぶん変わりました。
ハワイに行くたびに遊びに行っているんだろうとご批判をいただくが、昨年出した『サイバーセキュリティと国際政治』(千倉書房)の前書きで書いたとおり、米国の太平洋軍(PACOM)に関心を持ってきた。太平洋軍はアジア太平洋全域を管轄している。「ハリウッドからボリウッドまで、ペンギンからシロクマまで」と言われるように、米国西海岸からインド洋まで、そして北極海から南極大陸沿岸までの広大な地域を管轄としている。そして、その司令部がハワイにある。その管轄範囲には日本や朝鮮半島、台湾も含まれており、東アジアの有事の際に使われる「米軍」とは太平洋軍のことに他ならない。
ハワイに1年間いたとき、もし米中開戦ということになれば、かつての日本帝国海軍のように、中国人民解放軍もハワイをたたくだろうと確信めいた感覚を何度も得た。それぐらい、ハワイは軍事的な拠点として重要である。その感覚を共有する人は他にもいるようで、P・W・シンガーとオーガスト・コールが書いた『中国軍を駆逐せよ! ゴースト・フリート出撃す(上・下)』(二見文庫、2016年)では、サイバー攻撃を駆使して人民解放軍がハワイを占領してしまう。ハワイの土地勘が多少ある身としては、ああ、あそこかあ、と思うシーンがたくさんあった。サイバーセキュリティに関心のある方々には必読の小説である。
昨年度から、慶應の「スーパーグローバル大学創成支援」事業の一環として「アジア太平洋地域の安全保障体制」というプロジェクトを動かしてきた。太平洋軍を研究するためのプロジェクトである。その1年目の成果を以下にまとめた。
http://web.sfc.keio.ac.jp/~taiyo/pacom/
いずれこのページは正式な慶應の事業ページの下に移されると思うが、そちらができるまでの一時的なものとして作っておく。そのときにはもっとファンシーなデザインになるはずだが、今は必要最低限だけ。ハワイにあるイースト・ウエスト・センターのデニー・ロイさんと私のワーキングペーパーも載せた。ワーキングペーパーなので、まだまだクオリティの高い論文にはなっていない段階だが、ひとまず1年目の成果として掲載してある。
なぜこんなに太平洋軍についての研究が少ないのかと思っていたが、やってみると、資料が限られている上に、太平洋軍そのものへのアクセスが厳しいことが原因だと気づかされた。ウェブ上にはそれなりに英語の資料があるが、行間を読まないと理解しにくい。行間を読むために現場の人たちの話を聞こうとしても、なかなか会うことができない。ワシントンDCでは人と会って情報交換するのが当たり前の文化だが、軍隊相手ではそうはいかない。ハワイの人はたいていフレンドリーだが、基地の中にいる軍人たちに会うのはとても難しい。まして、私は民間人であり、外国人でもあるから、彼らにとっては私と会うことにメリットはなく、むしろリスクでもある。ハワイでも日本でもいろいろな方々が支援してくださっているが、なかなかまとまった成果にはつながらない。
とはいえ、飽きっぽい私としては、サイバーセキュリティ以外にもテーマを抱えておくことは重要なリサーチ・ハックでもある。サイバーセキュリティ、海底ケーブル、太平洋軍の三つが今のところの研究課題である。どこか一つで行き詰まったときに、一時的に別のテーマに切り替えておくと道が開けることがある。とはいえ、二兎ならぬ三兎を追うことでリソースが分散し、どれも成果が出ないことにもなりかねない。三つのテーマは緩やかにはつながっているので、うまく関連づけることだろう。
太平洋軍については、今秋のSFCのオープンリサーチフォーラム(ORF)で、できれば公開シンポをやりたい。今年度もそのうちにハワイに行くことになると思うが、遊びに行くのではない。サーフィンは一度もしたことがない。
土屋大洋「電子戦再考:米陸軍で「サイバー電磁活動」の検討が始まっている」『Newsweek日本版』2016年4月4日。
電子戦についてはちょうどCNNが4月15日付けで「米軍、ISIS掃討に電子戦機投入 通信能力を攻撃か」という記事を出しています。どうなることやら。
土屋大洋「日米サイバーセキュリティ協力の課題」笹川平和財団「日米安全保障専門家会議」報告書、2016年3月。
少し前に公開されていたのを忘れていました。