土屋大洋「データ駆動社会の構築へ向けて」『月刊経団連』2019年4月号、22〜23頁。
まだ現物を見ていないのですが。
同僚の神保謙教授、廣瀬陽子教授とのトリオ掲載ですね。めずらしい。
土屋大洋のブログ
土屋大洋「インド工科大学で聞いた『インドでAIの呪いは起きるのか』」『Newsweek日本版』2018年9月13日。
また2カ月間隔が空いてしまいました。
インドは2回目ですが、まだつかめた感じがしません。
持永大、村野正泰、土屋大洋『サイバー空間を支配する者—21世紀の国家、組織、個人の戦略—』日本経済新聞出版社、2018年。
三菱総研の持永さんと村野さんとともにまとめました。サイバーセキュリティ以外にも広くサイバー問題を扱っています。
350ページを超えますが、手に取ると意外に軽く感じます。
Motohiro Tsuchiya, “Systematic Government Access to Private-Sector Data in Japan,” Fred H. Cate and James X. Dempsey, eds., Bulk Collection: Systematic Government Access to Private-Sector Data, Oxford University Press, 2017, Chapter 13.
ふと思い出して調べてみたら、書いた原稿が本になっていました。見本を送ってくれるというから待っていたのですが、そのうちに忘れていました。なんで送ってくれないのでしょう。
ただし、これは前に書いたジャーナルの論文にいくつか修正をしたものが採録されているので、完全に新しいものではありません。
それに高い!
土屋大洋「この一冊 インターネットガバナンス ローラ・デナルディス著 管理の課題、多様な視点から解説」『日本経済新聞』2015年11月15日。
日曜日の日経書評欄に『インターネットガバナンス』の書評を載せてもらう。原稿はロンドンに行く前に書き、ロンドン滞在中に最終のゲラ確認を行った。
最初は気づいていなかったが、後で著者のローラ・デナルディスには会ったことがあることを思い出した。2009年2月、ボストン滞在中にイェールでのセミナー発表に呼んでくれたのだ。雪嵐が来ていて、イェール滞在はゆっくりできず、デナルディスとも挨拶程度で終わってしまったので、彼女は私のことは覚えていないだろう。今は同プロジェクトのAffiliated Fellowになっているようだ。
書評そのものには十分に書き切れなかったが、第9章の「インターネットガバナンスの暗黒技法」は今の私の関心からしてかなりおもしろい。政治に翻弄されるインターネットの自由を垣間見ることができる。
ロンドンからの帰国便ではおもしろい映画がなかったので、ベン・マッキンタイアー(小林朋則訳)『キム・フィルビー』(中央公論新社、2015年)を読み始めた。眠ってしまったのでまだ半分しか読めていないが、おもしろい。なぜ彼が「キム」と呼ばれるのか理解できないでいたが、父親が付けたニックネームのようだ。
イギリス社会は魅力的だが、当時の社会的風潮と教育システムが、フィルビーのような複雑な人格を作り出してしまったかと思うと考えさせられるものがある。たくさんのイギリス人と話してきた後でこの本を読むと味わい深い。
そうそう、ロンドンでは『SPECTRE』が公開されていたが、観る時間がなかった。イギリスでこそ観たかった。残念だ。
6月15日、志摩で新しい海底ケーブルFASTERの陸揚げがあり、KDDI総研のご厚意で見学させていただいた。詳しい内容はすでにGigazineで報告されているので、簡単に。
FASTERは関東または関西で大きな災害が発生した時にも対応できるように、千葉県の千倉と三重県の志摩の両方で陸揚げされた。千倉のほうは陸から海底にドリリングをしてパイプを通し、そこにケーブルを通してしまうので、あまり見所がないそうだ。志摩のほうは19世紀と基本的に変わらない陸揚げをするとのことで、見学会が設けられた。
見学会は早朝5時集合である。見学者は前泊しないと間に合わない。最寄り駅は名古屋から近鉄で2時間半かかる。5時にホテルを出て海岸に到着すると、すでに関係者の皆さんが準備をしている。
沖合にはすでに前日からケーブルを積んだケーブル敷設船がスタンバイ。ここから、ブイを付けたケーブルが引っ張り出されてきて陸に揚げる。
浜側では、各種機械が設置されている。海中の防波ブロックを避けて引き上げられたケーブルは、海岸ですぐに直角に曲げられ、陸揚局近くまで引っ張られる。
作業前に関係者代表が集まって安全祈願祭。日本酒を捧げる。この後、ケーブル船から徐々にケーブルが引っ張られてくるが、かなり時間がかかるとのことで、他の皆さんはいったん引き上げる。私は作業完了前に大学に戻らなくてはならなかったので、そのまま海岸に居残る。関係者の皆さんと話したり、陸揚局の中を見せてもらって過ごす。他の皆さんは朝食をとってから8時にホテルに再集合して海岸に戻ってくるはずだった。ところが、ケーブルは7時半には陸揚げされてしまった。次の写真は、先端が陸に上がったところ。
居残っていたので、この瞬間が見られたのは良かった。すいすいとケーブルは揚がってくるが、時間が早まったのは関係者の作業が非常にスムーズだったからだ。前述のGigazineの報告でもこの瞬間は捉えられていない。
ケーブルが無事に上がってきたところで、シャンペンでお祝い。さっきは日本酒だったのに節操ないなと思うが、シャンペンを割るのは万国共通の習慣だそうだ。
私はこの時点で帰らなくてはいけないので、先に失礼した。
ケーブルの陸揚げはなかなか見るチャンスがない。日程的にきつかったが、授業にも間に合ったので、とても良い機会だった。どうやって陸揚げするかは知識としては知っていたが、自分の目で見られたのは大きい。KDDI総研およびKDDI、NECの皆さんに感謝したい。
サイバーセキュリティをやっている人たちの多くがエストニアのタリンでCyConに出ているとき、私はベルギーのブリュッセルで開かれた2nd International Conference on Internet Scienceに出ていた。
羽田からドイツのミュンヘンに到着し、ブリュッセル行きの飛行機の乗り換えに50分しかないのでちょっと嫌だなあと思いながら長い廊下を進み、ようやく乗り継ぎ便の掲示板にたどり着くと、乗り継ぎ便にキャンセルの表示が出ている。おいおいと思ってルフトハンザのサービスカウンターを探し、「乗り継ぎ便がキャンセルみたいなんだけど」というと、係員はじーっと端末の画面を見つめた後、別便の搭乗券を出してくれた。「なぜキャンセルになったか知っていますか」と聞かれたが、全然分からない。「とにかく急いでゲートに行ってください。すぐに出ます」とのこと。
小走りでゲートに向かうと、係員が「ブリュッセル行き!」と叫んでいる。サービスカウンターの係員がゲートに電話してくれたそうだ。「あなたが最後なので急いで。下でバスが待ってますから」と英語で言われた後、「どうぞ良い旅を」と日本語でいわれた。ありがたいことだ。
何とか飛行機の一番後ろの窓際の席に滑り込む。機内放送を聞くと、どうやらこの便は午前9時半に予定されていた便だそうだ。すでに午後6時過ぎである。ずーっとこの人たちは空港で待っていたのだろう。私はラッキーだ。どうやらブリュッセル空港の管制システムに故障が起きているらしく、1時間に5本しか着陸させていなかったが、10本にまで増便されたのでようやく飛べるとのこと。サイバー攻撃かと思いながらも、たどり着けそうで良かったとほっとする。
ブリュッセル空港に着くと、飛行機に乗れない人たちがあふれかえっている。気の毒だ。私は幸い、当初予定より20分遅れぐらいで到着できたから良かった。出て来ないんじゃないかと思った荷物も無事に出てきた。
翌日から会議に参加。この会議は、
The 2nd international conference on Internet Science “Societies, governance and innovation” will be organised in Brussels from May 27 to 29, 2015, under the aegis of the European Commission, by the EINS project, the FP7 European Network of Excellence in Internet Science.
となっていて、EINSの一環になっている。中心人物の一人で旧友のChris Marsdenに誘ってもらって参加した。クリスは会う度にどんどん立派な先生になっていくので驚いてしまう。
キーノートスピーカーとして呼んでもらったが、この会議にはキーノートスピーカーがたくさんいて、合間に学生たちの発表が続く。私は朝一番のキーノートで、時間を守って話した。ところが、私の次のキーノートスピーカーは、24時間ロンドンの空港に閉じ込められたせいなのか、延々と話し続け、その結果、その後のスケジュールがグダグタになってしまう。学生たちはやたらとせかされて十分に話せなかったのに、欧州議会のメンバーのキーノートやその他のキーノートは誰も止めずにしゃべり続けるので、ずいぶん予定時間を超えて終了。スケジュールに厳しいアメリカのカンファレンスとはずいぶん違うなと感じる。
翌日も似たような感じでキーノートスピーチと学生の発表が行われた。意外だったのは、そもそも「Internet Scienceとは何なのか」という点でまだ合意がないということ。そのためのパネルディスカッションもあって、討論者の一人が、「それはfunなんだよ」といっていたのが印象的。定義にも何にもなっていないけど。
学生論文の優勝はセレブたちの写真漏洩に関する研究論文が選ばれ、500ユーロの巨大チェックが送られた。
次回は来年5月にイタリアのフィレンツェで開催とのこと。日程が合えば参加してみたい。
帰国便に乗る朝、ホテルの窓から空を見ると飛行機雲がたくさん出ていたので、飛行機が飛んでいることが分かった。良かった。
1年間の在外研究から帰国して20日ほどが経った。20日間のうち、5日間ほどはワシントンDC出張だったが、東京もあっという間に暖かくなってきた。
1年間ハワイにいたというと、驚かれ、あきれられ、うらやましがられることが多かった。ハワイというと観光イメージが強烈に強く、ビーチで遊んできたのだろうと思われる。もちろん、休みの日にはビーチにも行った。過去20年以上、ほとんどビーチには行かなかったから、その分を取り返した気はする。しかし、ただ行くだけではもったいないので、関連する取材もした。
そもそも、ハワイに行くことにした理由は三つ。一つは太平洋島嶼国のデジタル・デバイド、特に海底ケーブルの調査である。最初にパラオに行ったのは2010年。そこであまりにもインターネットが遅くて驚いた。それ以来、パラオを中心に太平洋島嶼国のことが気になり、調べてきた。
太平洋島嶼国の研究機関として最も有名なのがハワイにあるイースト・ウエスト・センター(東西センター)である。ここは、ハワイ大学マノア・キャンパスの敷地内にあるので、よくハワイ大学の一部だと勘違いされているが、組織的には別で、ハワイ大学が州立大学なのに対し、イースト・ウエスト・センターは連邦政府の資金で運営されている。そのため、ハワイ州の休日には休みを取らず、連邦政府の休みの日だけ休みになる。
あいにく、太平洋島嶼国の研究は十分には進まず、成果はあまり出なかったが、ハワイ大学社会科学研究所から共著本の英訳を出すことができた。私は編者ではないが、現地にいたこともあってそれなりに編集を手伝った。
Motohiro Tsuchiya, “Digital Divide in the Pacific Island Countries: Possibility of Submarine Cable Installation for Palau,” Minoru Sugaya and Christina Higa, eds., Pacific Island Regional and International Cooperation: ICT Policy and Development, Honolulu: Social Science Research Institute, University of Hawaii, 2014, ISBN 978-0-692-03007-3, pp. 169-188.
ハワイに行くことにした二つ目の理由は、ハワイそのものの海底ケーブルの歴史がおもしろかったからである。すでにこれについては、田所昌幸、阿川尚之編『海洋国家としてのアメリカ―パクス・アメリカーナへの道―』(千倉書房、2013年)触れていることだが、ハワイ大学、ハワイ州立図書館、ビショップ・ミュージアムにある資料をもう一度掘り起こして調べたかった。
こちらについても、成果は活字になっていないが、持ち帰った資料をまとめる作業をこれからしたい。ビショップ・ミュージアムには、1902年にハワイにつながった最初の海底ケーブルのスライスが展示されていた。また、そのケーブルの残骸が海の底に眠っており、水中カメラで撮影もしてきた(だからビーチに行ったのだ!)。
ハワイのビーチと言えば、ハナウマ湾が有名だが、ここにも1950年代の電話用の海底ケーブルが残っている(もう使われていない)。こちらも撮影してきた。
ハワイに行った三つ目の理由は、ハワイが安全保障上の拠点だからである。米軍と言えば、法律上は陸軍、海軍、空軍、海兵隊、そして沿岸警備隊の五軍となっている。しかし、実際には統合軍といって、六つの地域別統合軍と三つの機能別統合軍に編成されている。アジア太平洋地域を担当するのは太平洋軍であり、その司令部はハワイに置かれている。
よく、在日米軍や在韓米軍と言われるが、それぞれを指揮しているのはハワイの太平洋軍司令部である。在日米軍司令部は言わば太平洋軍司令部の出先機関みたいなものであり、いざ有事の際に指揮権を持つのはハワイである。ハワイ滞在中、元太平洋軍司令官にインタビューする機会があった。彼は、太平洋軍司令官としての自分を止められるのは大統領と国防長官だけだったと言っていた。30万人といわれる太平洋軍の存在を無視してアジア太平洋の安全保障は語れない。
さらに言えば、サイバースペースの安全保障、つまりサイバーセキュリティにおいてもハワイは重要な拠点である。米国の国家安全保障局(NSA)の本部とサイバー軍の司令部はワシントンDCに近いメリーランド州のフォート・ミードにある。しかし、アジア太平洋地域を監視するNSAの拠点は、これまたハワイにある。だからこそ、エドワード・スノーデンは、香港に渡る前にハワイで1年間を過ごし、そこでトップ・シークレットの書類をダウンロードした。
こうした理由があってハワイで1年間を過ごした。結局のところ、世の中のニーズはサイバーセキュリティにあるので、多くの時間をそちらに割かざるを得なかったし、アウトプットもそちらが多かった。その一つは角川インターネット講座の一つとして出た『仮想戦争の終わり』である。
土屋大洋監修『仮想戦争の終わり―サイバー戦争とセキュリティ―』KADOKAWA、2014年(角川インターネット講座第13巻)。
また、拓殖大学海外事情研究所の『海外事情』や、日本国際政治学会の『国際政治』にも原稿を載せてもらった。
土屋大洋「米国のサイバーセキュリティ政策」拓殖大学海外事情研究所編『海外事情』第62巻3号、2014年3月、46〜59頁。
土屋大洋「サイバーセキュリティとインテリジェンス機関―米英における技術変化のインパクト―」『国際政治』第179号、2015年、44〜56頁。
『治安フォーラム』という雑誌でも連載を続けてきた。
土屋大洋「国連を舞台にしたサイバーセキュリティ交渉」『治安フォーラム』2014年3月号、45〜48頁。
土屋大洋「国境を越えるサイバー犯罪のための協力」『治安フォーラム』2014年5月号、48〜51頁。
土屋大洋「サイバーセキュリティのグローバル・ガバナンス」『治安フォーラム』2014年7月号、47〜50頁。
土屋大洋「IT企業とNSAの密接な関係」『治安フォーラム』2014年8月号、66〜69頁。
土屋大洋「米サイバー軍と国家安全保障局の第二幕」『治安フォーラム』2014年9月号、48〜51頁。
土屋大洋「米軍が目指す統合情報環境(JIE)」『治安フォーラム』2014年10月号、62〜65頁。
土屋大洋「政府とハッカーの分裂」『治安フォーラム』2014年11月号、37〜40頁。
土屋大洋「米国のサイバー攻撃非難に反発する中国」『治安フォーラム』2014年12月号、32〜35頁。
土屋大洋「インテリジェンスの倫理」『治安フォーラム』2015年2月号、59〜62頁。
土屋大洋「インテリジェンスと国民性」『治安フォーラム』2015年3月号、40〜43頁。
そして、来月には、千倉書房から単著本を出してもらえることになっている。この本には幸いにもKDDI財団から出版助成をいただくことができた。
土屋大洋『サイバーセキュリティと国際政治』千倉書房(2015年4月末発売予定)。
これから社会復帰しながら、ツイッターやブログの更新頻度も上げていこうと思う。
Motohiro Tsuchiya, “Digital Divide in the Pacific Island Countries: Possibility of Submarine Cable Installation for Palau,” Minoru Sugaya and Christina Higa, eds., Pacific Island Regional and International Cooperation: ICT Policy and Development, Honolulu: Social Science Research Institute, University of Hawaii, 2014, ISBN 978-0-692-03007-3, pp. 169-188.
慶應のメディアコミュニケーション研究所の菅谷実先生とハワイ大学のクリスティーナ・ヒガさんの編著本が出ました。私もパラオの海底ケーブルについて一章書いています。
これは、菅谷実編著『太平洋島嶼地域における情報通信政策と国際協力』(慶應義塾大学出版会、2013年)の翻訳版になります。
土屋大洋「サイバースペースのガバナンス」日本国際問題研究所編(平成25年度外務省外交・安全保障調査研究事業(調査研究事業))「グローバル・コモンズ(サイバー空間、宇宙、北極海)における日米同盟の新しい課題」2014年3月、27〜41頁。
昨年度の報告書が掲載されました。
KDDI総研の皆さんのご厚意で、たくさんの研究者の皆さんと一緒に千葉県千倉の千倉海底線中継所を見学させていただいた。
言うまでもなく、日本最大の海底ケーブル陸揚げ局である。最近のケーブルで言えば、グーグルも参加し、2011年の東北地方太平洋沖地震でも切れなかったUNITYや、日本とアジアを結ぶ大動脈となりつつあるSJCがここにつながっている。この二つが千倉で北米とアジア諸国を結びつけていることになる。
なぜ千倉なのか。地球儀を引っ張り出してきて、アメリカ西海岸とアジアとの間に線を引くと最短距離になるからである。メルカトル図法の地図では分かりにくいのだ。
学術的関心を超えて単なる海底ケーブルのオタクになりつつある自分を感じつつ、大変勉強になる見学会だった。(帰りのサービスエリアで買った海産物のお土産を、帰宅してからよく見たら瀬戸内海産だったのにはちょっとがっかりした。)
KDDI総研の皆さん、昨年の長崎に続いて、どうもありがとうございました!
(ちなみに、先日、海底ケーブルのことを書かせてもらった『海洋国家としてのアメリカ』の出版社は千倉書房だが、千葉県の千倉とは関係ない。社名の由来は創業者が千倉豊氏だからである。しかし、縁起は良い。できれば千倉書房にもう一冊、海底ケーブルの本を書かせてもらいたい。)
韓国の先生と雑談していたら、「e知園」の問題が韓国で議論になっているという。「e知園」なんて聞いたことなかった。何なんだろう。
忘れないようにひとまずメモ。
土屋大洋「サイバースペースのガバナンス」日本国際問題研究所「グローバル・コモンズ(サイバー空間、宇宙、北極海)における日米同盟の新しい課題 分析レポート」、2013年8月。
まあ、新しいことは書いてないですが、一応。年度末までに倍の長さの報告書にしないといけないそうです。
Mito Akiyoshi, Motohiro Tsuchiya and Takako Sano, “Missing in the Midst of Abundance: The Case of Broadband Adoption in Japan,” Massimo Ragnedda and Glenn W. Mushert, eds., The Digital Divide: The Internet and Social Inequality in International Perspective, London: Routledge, 2013, pp. 85-103.
専修大学の秋吉美都先生と総務省の佐野貴子さんと行った共同研究が英語の本に収録された。良かった、良かった。もっと英語の成果は増やしていきたい。国際会議で話す機会はずいぶん増えたけど、それだけでは業績にはならない。こうして活字にならないとね。この英語版は、もともとワシントンDCのTPRCでの報告が元になっている。同じ共同研究の日本語の成果はこちら。
サイバーセキュリティ関係のニュースが続き、対応に追われているが、それとはあまり関係ない成果が出た。
土屋大洋「海底ケーブルとデジタル・デバイド――パラオを事例に」菅谷実編著『太平洋島嶼地域における情報通信政策と国際協力』慶應義塾大学出版会、2013年、第9章。
数年続けてきた菅谷先生のプロジェクトの成果。このプロジェクトでパラオに行かせてもらったのは、良いきっかけだった。
土屋大洋「太平洋における海底ケーブルの発達―情報社会を支える大動脈―」慶應義塾大学JSPワーキングペーパー、第2号、2012年10月。
日本研究プラットフォームのワーキングペーパーがアップロードされた。これはアメリカ学会の学会誌『アメリカ研究』に書いたものをアップデートしたもの。特にハワイにおける海底ケーブル接続について加筆している。
これと少し似ているが、違うバージョンが、今年中に出版される本に収録されるはず。はず。はず。だが先行き不透明。その出版社の近刊案内はからっぽである! またすごーく時間のかかるプロジェクトなんだろうか。
と思ったら……、その本の初校ゲラを返していなかったことに気づいて呆然としている。他の著者がまだだからゆっくりで良いとは言われたものの、すっかり意識から遠ざかっていた。まずい。
ロンドンに行く前に中国の上海と杭州にも行ってきた。
今学期卒業する学生のひとりが、中国のアニメ(動漫)産業について卒論を書いてくれた。それによると、上海から新幹線で1時間のところにある杭州が一大拠点になっているとのこと。ちょうど上海に行かなくてはならない用事もあったので、同僚と院生と行ってきた。
杭州は毎年4月末から5月にアニメフェスティバルを開催しており、日本のコミケ並みの賑わいになるらしい。
今回の強力な助っ人は北京在住のAさん。この分野の専門家なので、Aさんが一時帰国されたときに手伝ってくださいよとお願いしたら、大変なことになった。杭州政府の担当者や地元企業の社長さん、若い幹部などがぞろぞろと出てきてくれた。
日本のマンガやアニメはよくサブカル(サブカルチャー)と呼ばれる。それは、ハイカルチャーに対抗するカウンターカルチャーでもない別の文化的様式だろう。しかし、中国政府の宣伝・プロパガンダのツールとしてもともと位置づけられてきた中国の映画や動漫は、日本の影響を強く受けつつも、どこか少し違う。社会的問題を背景としてメッセージ性の高い動漫はまだ作れず、そのため、大人向けの動漫もほとんどない。いわば、「従順な」という意味の「コンフォーマブル(conformable)」を付けた「コンカル」という感じだ。
議論をしながらもう一つ分かったのは、分業化がまだそれほど進んでいないので、利益を分け合う構造になっており、それなりにみんなが潤うようになっている。日本のマンガやアニメに携わる若者たちが貧窮しているのとは様相が違い、それなりに良い仕事として認知されていることだ。
これからどうなるのかはまだ私には分からないが、見ているとおもしろいテーマだろうと思う。
秋吉美都、土屋大洋、佐野貴子「日本におけるブロードバンド利用―知識と活用に関する格差の影響―」総務省情報通信政策研究所編『情報通信政策レビュー』第6号、2013年3月8日。
数年続けてきた共同研究の成果が出た。このペーパーは2011年のTPRCで発表したものを加筆・修正したバージョンでもある。このTPRCバージョンはもうすぐ英語の学術書にも収録される予定。この日本語論文は査読でそれなりに苦しんだけど、実り多い共同研究だった。
同じ『情報通信政策レビュー』第6号には、G-SECのグレゴリー・ディーエル君の「英国のサイバーセキュリティ戦略—脅威からリスクへの認識変化と組織的対応—」も収録された。めでたい。
これも先日のこと、ある研究所の壁に貼られていた2001年の海底ケーブル地図を見ていたら、パラオの近くにSEACNという海底ケーブルが引かれている。そんな話は聞いたことがないし、現在の海底ケーブル地図には出ていない。
おかしいなと思ってググってみると、SEACN(South East Asia Cable Network)は、インドのDishnet DSLという会社が敷設しようとしていたが、パートナーのTyComという会社が投資資金を引き揚げてしまったために、プロジェクトが中止になったようだ。
Dishnet DSL abandons submarine cable project (Monday 9 June 2003)
2003年のニュースだが、2001年のITバブルがはじけた余波だったのだろうか。
Dishnet shelves $1.2bn undersea cable project
この記事を読むと、
Post 9/11, TyCom’s financials along with those of a host of other US companies came under the scrutiny of the US market regulator.
とある。9/11の影響か。
2001年3月のニュースを見ると、パラオをつなぐという話は書かれていない。やはり素通りの計画だったのだろうか。
DishnetDSL-TyCom route survey on
TyComという会社はよく分からないが、インドのTATAに2004年に買収されたようだ。
Motohiro Tsuchiya, “Systematic Government Access to Private-Sector Data in Japan,” International Data Privacy Law, vol. 2, no. 4, November 2012, pp. 239-244.
すでにオンライン版は紹介済みだけど、紙版が出たので再掲。