NYのダム、ウクライナの変電所…サイバー攻撃で狙われる制御システム

土屋大洋「NYのダム、ウクライナの変電所…サイバー攻撃で狙われる制御システム」『Newsweek日本版』2016年1月8日。

 ウクライナのニュースはもっと日本でも大きく取り上げられても良いはずなのに、日本のメディアは比較的静かな感じがします(フジテレビの夕方のニュース番組で津田大介さんが取り上げておられましたが)。ワシントンDCでのワークショップでは誰もが言及していました。

 コラムの前半部分に関連する番組が1月24日(日)夜11時半からNHK(Eテレ)の「サイエンスZERO」で放送されます。制御システムのセキュリティについて解説があります。ちょっと恥ずかしい登場の仕方で、私も出演します。

ワシントンDC

 3泊5日でワシントンDCへ。なんと、往路の機内で知り合い3人に会う。彼らは私とは別の会議。驚いた。

 到着日の翌日はフリーにしておいた。年末年始の仕事が忙しく、かなりへばり気味だったので、食事以外のアポは入れなかった。

 ホテルやカフェで仕事をする合間、授業のネタ探しも兼ねて本屋に行こうとするが、12th StreetにあったはずのBarnes & Nobleが閉店してしまっている。とても残念だ。18th StreetにあったBordersもずいぶん前に閉店した。

 頼みの綱は、学術系に強いReiter’s Booksだが、ここも移転し、店がとても小さくなっていて、本の数もとても少ない。かなり残念。

 良かったのは、新しいReiter’s Booksの店舗に行くことで、世界銀行とIMFのビルを確認できたことだ。知識としてワシントンDCにあることは知っていたが、ようやく位置を確認できた。

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 足を伸ばして、地下鉄オレンジ・ラインのクラレンドンにあるBarnes & Nobleものぞくが、ここも一般書が中心なので、授業に役立つ学術系の本はあまりない。

 夜、会食の後、ワシントンDC三田会の集まりにも15分だけ参加。会場のバーがいっぱいで席がない上に、時差と疲労で飲める状態でもなく、翌朝一番のワークショップでの報告の準備もできていないので、早々に退散。それでも、旧友の顔を見て、思わぬ人に会えたのも良かった。

 ホワイトハウス近くのバーを出ると、外で雪が舞っていて、きれいだなーという気分と勘弁してくれーという気分が一緒におそってきたが、すぐにやんでしまった。

 今回のメインはクローズドのワークショップ。日中韓米露の研究者が集まり、サイバーセキュリティと戦略的安定性について議論。オフレコとのことなので、みんな言いたい放題言っていて、けっこうおもしろかった。懐かしい顔にも何人か会えた。

 新しいプロジェクトも立ち上げることになりそうだ。またワシントンDCに来る機会もできるだろう。

 土曜日の朝にSFCで仕事があったので、ワークショップ終了後の金曜日の夜の便でLAに飛び、そこから羽田行きの便に乗る。直行便なら14時間ぐらいなのに、乗り継ぎにすると合計で20時間ぐらいかかる。なんだか残念だ。

 ワシントンDCからLAまでの機内では、疲れて仕事ができる状態ではなかったので、買ったまま読んでいなかった『工学部ヒラノ教授』と『工学部ヒラノ教授のアメリカ武者修行』を読む。どっちもとても参考になったが、特にアメリカの大学制度について詳しく書いてある後者が印象的だ。アメリカの場合、研究者は一度競争から落ちるとカムバックできないらしい。一流大学で教員&研究者になるには、一流大学で学位を取った後、3年+3年の有期の間に論文を量産しないといけない。そこで躓くと、後は転げ落ちて、教育マシーンになるか、何者でもないという意味で透明人間になるという。工学系の話が書いてあるが、文系も似たようなものなんだろうか。

 LAから羽田の便は、一眠りしてから、何か映画はないかと探し、『The Man from U.N.C.L.E.』を見る。完全エンタメ志向の映画。CIAとKGBが協力するという現実にはない設定なので、インテリジェンス活動の研究の参考にはならないが、ヒュー・グラントがおもしろい役をしていた。

 それに比べて、先日ちゃんと映画館で観た『007 SPECTRE』は、アクションのところはともかく、政治的な設定はけっこうおもしろい。Five EyesならぬNine Eyesが構想されており、日本も入っている。

 そして、007が辞任することが匂わされているが、エンドロールの最後には「James Bond will return.」と書いてあったのも意味深。さすがにシリーズがこれで終わりではないのだろう。

サイバーインテリジェンス活動のフロンティア

土屋大洋「サイバーインテリジェンス活動のフロンティア」『東亜』第583号、2016年1月、6〜7頁。

 アジアとはあまり関係ない内容なんですが、『東亜』に書かせていただきました。「COMPASS」という連載もので、4ヵ月に1度、執筆機会が回ってくるようです。次は5月号でしょうか。

 驚いたことに、ウェブにPDFでそのまま載るんですね。

サンフランシスコへ

 年賀状、全然出しておりません。申し訳ありません。昨年は海外生活だったので出しませんでした。今年は、全然告知していなかった私が悪いのですが、喪中でした。しかし、単なる怠惰です。すみません。

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 大晦日、いくつかの仕事を何とか片付け、終わらなかった仕事を抱えたまま、脱出するように飛行機に乗り、サンフランシスコへ。飛行機に乗っている間に日本は元旦になったものの、到着したサンフランシスコはまだ大晦日。フィッシャーマンズワーフの花火でも見ようかと思ったが、眠いので眠ってしまう。元旦はゴールデンゲートブリッジを間近に見るなどして過ごし、夜は旧友と食事。

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 翌日、ワインで有名なナパ・バレーを目指し、ナパ・バレー・ワイン・トレインに乗る。ナパ・バレーのワイン畑を見ながら行って帰ってくるだけ。往路は展望車でオードブルをつまみながらワインを飲む。復路は食堂車に移り、メインディッシュを堪能する。

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という楽しい旅のはずだったが、往路で飲んだワイン1.5杯とオードブルで満腹になり、電車の揺れもあって気持ち悪くなる。メインディッシュのステーキは持ち帰り用の箱の中へ。私はやはりワインよりビールが体に合うらしい。

 3日から仕事再開。学生の卒論や修論の添削をし、メールに対応し、原稿を書く。夜は日米の国際会議の参加者による夕食会。基調講演は元海軍提督。

 4日は終日、日米の経済学者たちと議論。1月3日から5日までアメリカ経済学会がサンフランシスコで開かれており、それに合わせて日米のスタッフも含めて30名程度の小さめの会議が開かれた。

 私は経済学者ではないのだが、なぜかサイバーセキュリティのパネルに招いてもらった。アメリカ側の研究者から、サイバー犯罪の被害よりも詐欺や脱税なんかのコストのほうが大きいからサイバー犯罪対策なんてやらなくて良い、サイバー戦争なんて世界の終わりのことは考えても意味がない、と指摘され、考えさせられた。

 経済学者はできるだけ費用と便益に換算して考えようとする。私は学部の1年生のときの経済学で単位をとれなかったので、経済学の発想はできないらしい。

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