土屋大洋「データ駆動社会の構築へ向けて」『月刊経団連』2019年4月号、22〜23頁。
まだ現物を見ていないのですが。
同僚の神保謙教授、廣瀬陽子教授とのトリオ掲載ですね。めずらしい。
土屋大洋のブログ
土屋大洋「『パナマ文書』を最初に受け取ったドイツ人記者の手記にみる、「暴露の世紀」の到来」『Newsweek日本版』2016年8月26日。
連載休みと言いながら、『パナマ文書』がおもしろかったので書きました。
6月15日、志摩で新しい海底ケーブルFASTERの陸揚げがあり、KDDI総研のご厚意で見学させていただいた。詳しい内容はすでにGigazineで報告されているので、簡単に。
FASTERは関東または関西で大きな災害が発生した時にも対応できるように、千葉県の千倉と三重県の志摩の両方で陸揚げされた。千倉のほうは陸から海底にドリリングをしてパイプを通し、そこにケーブルを通してしまうので、あまり見所がないそうだ。志摩のほうは19世紀と基本的に変わらない陸揚げをするとのことで、見学会が設けられた。
見学会は早朝5時集合である。見学者は前泊しないと間に合わない。最寄り駅は名古屋から近鉄で2時間半かかる。5時にホテルを出て海岸に到着すると、すでに関係者の皆さんが準備をしている。
沖合にはすでに前日からケーブルを積んだケーブル敷設船がスタンバイ。ここから、ブイを付けたケーブルが引っ張り出されてきて陸に揚げる。
浜側では、各種機械が設置されている。海中の防波ブロックを避けて引き上げられたケーブルは、海岸ですぐに直角に曲げられ、陸揚局近くまで引っ張られる。
作業前に関係者代表が集まって安全祈願祭。日本酒を捧げる。この後、ケーブル船から徐々にケーブルが引っ張られてくるが、かなり時間がかかるとのことで、他の皆さんはいったん引き上げる。私は作業完了前に大学に戻らなくてはならなかったので、そのまま海岸に居残る。関係者の皆さんと話したり、陸揚局の中を見せてもらって過ごす。他の皆さんは朝食をとってから8時にホテルに再集合して海岸に戻ってくるはずだった。ところが、ケーブルは7時半には陸揚げされてしまった。次の写真は、先端が陸に上がったところ。
居残っていたので、この瞬間が見られたのは良かった。すいすいとケーブルは揚がってくるが、時間が早まったのは関係者の作業が非常にスムーズだったからだ。前述のGigazineの報告でもこの瞬間は捉えられていない。
ケーブルが無事に上がってきたところで、シャンペンでお祝い。さっきは日本酒だったのに節操ないなと思うが、シャンペンを割るのは万国共通の習慣だそうだ。
私はこの時点で帰らなくてはいけないので、先に失礼した。
ケーブルの陸揚げはなかなか見るチャンスがない。日程的にきつかったが、授業にも間に合ったので、とても良い機会だった。どうやって陸揚げするかは知識としては知っていたが、自分の目で見られたのは大きい。KDDI総研およびKDDI、NECの皆さんに感謝したい。
11月22日と23日に六本木の東京ミッドタウンで開かれるオープン・リサーチ・フォーラム(ORF)2013で二つのパネルの司会をします。全然違う二つのテーマですが、途中30分の休憩を挟んで3時間ぶっ続けです。
いずれも日本研究プラットフォーム(JSP)の活動の一環です。
S-16 【日本研究プラットフォーム・ラボ】東アジアのサイバーセキュリティ
11月23日(土)10:30 ~ 12:00 / room7
東アジアはサイバー攻撃の多発地帯となっており、非伝統的な安全保障の一環として、サイバー攻撃は注目を集めています。米軍はサイバースペースを第五の作戦領域と位置づけ、サイバー軍を組織しています。日本政府もまた、2013年6月に新たなサイバーセキュリティ戦略を発表しました。本セッションでは、サイバーセキュリティにおける脅威とは何か、そして、偶発的なサイバー戦争防止のための信頼醸成措置について検討します。
◆同時通訳あり
アダム・シーガル 外交問題評議会 シニアフェロー
沈逸 復旦大学 国際関係公共事務学院 アシスタントプロフェッサー(キャンセルになりました。)
土屋大洋 政策・メディア研究科 教授
PS-09 【日本研究プラットフォーム・ラボ】アニメ産業のエミュレーション
11月23日(土)12:30 ~ 14:00 / room7
アニメは、世界の人々が日本に関心を引き寄せる際の魅力の一つとして重要です。世界各国でさまざまな形で日本のアニメは放映され、日本を理解するためのツールとなっています。しかしながら、日本のアニメ産業の経済的な規模はいまだそれほど大きくなく、それに携わる人々は必ずしも裕福ではありません。このパネルでは、日本でアニメ産業が台頭したのはなぜなのか、そして、その影響は世界にどのように広がっているのかを検討します。
イアン・コンドリー マサチューセッツ工科大学 教授
青崎智行 株式会社電通 ソーシャル・ソリューション局
土屋大洋 政策・メディア研究科 教授
土屋大洋「太平洋における海底ケーブルの発達―情報社会を支える大動脈―」慶應義塾大学JSPワーキングペーパー、第2号、2012年10月。
日本研究プラットフォームのワーキングペーパーがアップロードされた。これはアメリカ学会の学会誌『アメリカ研究』に書いたものをアップデートしたもの。特にハワイにおける海底ケーブル接続について加筆している。
これと少し似ているが、違うバージョンが、今年中に出版される本に収録されるはず。はず。はず。だが先行き不透明。その出版社の近刊案内はからっぽである! またすごーく時間のかかるプロジェクトなんだろうか。
と思ったら……、その本の初校ゲラを返していなかったことに気づいて呆然としている。他の著者がまだだからゆっくりで良いとは言われたものの、すっかり意識から遠ざかっていた。まずい。
ロンドンに行く前に中国の上海と杭州にも行ってきた。
今学期卒業する学生のひとりが、中国のアニメ(動漫)産業について卒論を書いてくれた。それによると、上海から新幹線で1時間のところにある杭州が一大拠点になっているとのこと。ちょうど上海に行かなくてはならない用事もあったので、同僚と院生と行ってきた。
杭州は毎年4月末から5月にアニメフェスティバルを開催しており、日本のコミケ並みの賑わいになるらしい。
今回の強力な助っ人は北京在住のAさん。この分野の専門家なので、Aさんが一時帰国されたときに手伝ってくださいよとお願いしたら、大変なことになった。杭州政府の担当者や地元企業の社長さん、若い幹部などがぞろぞろと出てきてくれた。
日本のマンガやアニメはよくサブカル(サブカルチャー)と呼ばれる。それは、ハイカルチャーに対抗するカウンターカルチャーでもない別の文化的様式だろう。しかし、中国政府の宣伝・プロパガンダのツールとしてもともと位置づけられてきた中国の映画や動漫は、日本の影響を強く受けつつも、どこか少し違う。社会的問題を背景としてメッセージ性の高い動漫はまだ作れず、そのため、大人向けの動漫もほとんどない。いわば、「従順な」という意味の「コンフォーマブル(conformable)」を付けた「コンカル」という感じだ。
議論をしながらもう一つ分かったのは、分業化がまだそれほど進んでいないので、利益を分け合う構造になっており、それなりにみんなが潤うようになっている。日本のマンガやアニメに携わる若者たちが貧窮しているのとは様相が違い、それなりに良い仕事として認知されていることだ。
これからどうなるのかはまだ私には分からないが、見ているとおもしろいテーマだろうと思う。
Motohiro Tsuchiya, “Systematic Government Access to Private-Sector Data in Japan,” International Data Privacy Law (2012) doi: 10.1093/idpl/ips019, first published online: August 21, 2012.
各国の政府が民間のデータにどうアクセスしているかについて比較研究する国際プロジェクトに参加し、レポートを送ったら、それぞれのレポートを雑誌に掲載しようということになった。紙版の前にオンライン版が出た。
プロジェクトのリーダーのアメリカの研究者たちは、アメリカ政府がパトリオット法などで民間のデータにアクセスしていることを問題にしているが、日本だとあまりそういう事例はない。私の日本版だけ読むと日本の読者にはおもしろくないと思うが、各国のレポートがこれから出て来るので、並べて読むとおもしろくなると思う。
情報通信政策や情報社会論を論じる英誌Infoが7日間限定で無料ダウンロードを実施中。6月24日まで。
http://www.emeraldinsight.com/journals.htm?issn=1463-6697
私は同誌のeditorial boardのメンバーを務めています。
この分野に興味のある人にはおもしろそうな論文が揃っています。
今日は日本国際政治学会の以下の部会で討論者をしてくる。お三方の論文を読んで、それぞれおもしろかった。
この部会、けっこう若い。前嶋先生が65年生まれ、中山先生が67年生まれ、私が70年生まれ、阿古先生が71年生まれ、山本先生が75年生まれ。でも10年の幅がある。本当のネット世代は74年生まれ以降というから、実はほとんどの人がネット・イミグラント。きっと聞きに来る人も若い人ばっかりなんだろうけど、どんな議論になるかな。
=====
部会 9 ソーシャルメディアと政治変動の国際比較
司会 中山俊宏(青山学院大学)
報告 前嶋和弘(文教大学)「アメリカの政治過程におけるソーシャルメディア―ティーパーティ運動と『インターネット・フリーダム』をめぐって」
山本達也(名古屋商科大学)「アラブ諸国における政治変動とソーシャルメディア」
阿古智子(早稲田大学)「ネット世論の高まりに見る中国の『民主』」
討論 土屋大洋(慶應義塾大学)
増田米二『原典 情報社会—機会開発者の時代へ—』TBSブリタニカ、1985年。
第I部 情報社会総論(25〜57ページ)
未来を予測することはとても難しいが、増田は本当によく見通していたなと思う。
第I部では「機会産業(opportunity industry)」の概念も示される。増田が予測したほどわれわれは自由時間を享受できていない感じがするが、それも主観的な判断に過ぎず、労働による拘束時間は減っているのかもしれない。もう一つは、政治体制が増田が予測したほど変化していない。
増田米二『原典 情報社会—機会開発者の時代へ—』TBSブリタニカ、1985年。
序論——情報社会論へのアプローチ(15〜24ページ)
これも大学院の課題文献。
序論では基本認識が示されている。ここで出てくる「情報ユーティリティ(情報市民公社)」というのは結局インターネットだったんだな。この本よりさらに古く、1967年に出た『コンピュートピア―コンピュータがつくる新時代』の中で「情報ユーティリティ」の発想は出てきているらしい。探してみるか。
チュニジアから始まった動乱が中東諸国に広がっています。ソーシャル・メディアが政治体制に影響を与えることは、すでにいろいろなところで議論されています。クレイ・シャーキーがフォーリン・アフェアーズに「ソーシャル・メディアの政治的パワー」という文章を書いていますし、ヒラリー・クリントン長官が昨年に続き、今年もインターネットの自由に関する演説を行いました。私の『ネットワーク・ヘゲモニー』にも中国の反日デモを題材に書いてあります。
『ネットワーク・ヘゲモニー』にはウィキリークスやフェイスブックのことはほとんど書けなかったのですが、脱稿後にいろいろ読んでみて、一連の動きは「透明性革命」といえるだろうと思い始めました。「透明な革命」ではありません。「社会の透明性を求める革命」という意味です。
デビッド・カークパトリック『フェイスブック 若き天才の野望』(日経BP、2011年)には以下のような言葉があります(290ページ)。
自分が誰であるかを隠すことなく、どの友だちに対しても一貫性をもって行動すれば、健全な社会づくりに貢献できる。もっとオープンで透明な世界では、人々が社会的規範を尊重し、責任ある行動をするようになる。