CASIS一日目の夜は午前2時まで発表の準備をする。時差ぼけなのは間違いないが、眠いのか眠くないのか分からないまま、とにかく翌朝11時に発表しなくてはいけないのだから仕方がない。結局、直前まで準備している自分が情けない。これでは学生と同じだ。
眠りが浅いまま朝になり、6時に起きてパッキング。少しプレゼンの修正をしてからチェックアウト。8時20分に会場に入ってパンをほおばり、8時30分からの基調講演を聴く。講演は海軍のリア・アドミラル(少将?)。インテリジェンスと海軍の関係について。
9時からは一番注目していたサイバーセキュリティのセッション。なんと登壇予定だったロシア人がカナダ入国を拒否されてしまったらしい! そんなことがまだ起こるんだね。ゴーストネットの著者の一人であるラファル・ロージンスキーが司会。イギリスのチャタムハウスに行っているアメリカ人、ベル・カナダの人、カナダ国防省の人がパネル・ディスカッション。あまり頭に入らないが、中国とロシアの動向がやはり議論されている。
11時からは自分のパネル。なんだかよく分からないことが起きていて、最初のプログラムでは二つのパネルが別の部屋で同時並行で行われる予定で、私の部屋や小さいほうだったのだが、もう一つのパネルが取り消しになったようた。そのため、一番大きな部屋で一つだけやることになった。その上、私のパネルには私を含めて二人しか発表者がいなく、二人の発表の内容は全然関係ない。私は日本のサイバーセキュリティ政策で、もう一人はボスニアを事例にしたインテリジェンスのデータベース管理の話。パネルのタイトルは「民間とインテリジェンスの協力」という変なものになっている。
司会者は「パネルのタイトルは忘れてくれ」という言葉で始め、私が最初にプレゼン。90分で二人なので30分使って良いという寛大なもの。たぶんちょうど30分ぐらいで終える。準備不足だった割に笑いもとれたし、楽しんでもらえたらしい。ジュネーブで発表したときよりも大きな部屋で、今までで聴衆が一番多かった気がする。
もう一人は時間に余裕があると思ったのか、割り当ての30分を超えて延々と45分ぐらい話し続けた。それも小さな文字が並ぶプレゼンなので良く頭に入らない。ランチ直前ということもあり、質問もなくパネルは終わってしまった。難しい質問が出たらどうしようと心配していたけど、逆に残念だった。寝不足のせいか、ストレスのせいか、終わってから締め付けられるように腹が痛くなった。
終了後に何人か声をかけてくれて、前のパネルに出ていたチャタムハウスの人とは共通の友人がいることが分かってびっくり。村井純学部長とも知り合いとのことだった。やはり世界は狭い。彼と一緒にご飯を食べていたら隣に座っていたカナダ政府の分析官も声をかけてくれた。なんと彼は大学ではイタリア文学を勉強して、バチカンの図書館で資料を見たとか。インテリジェンスはやはり不思議な世界だ。
休憩時間に展示を見ながらぶらぶらしていたら、「おもしろかったよ」とさらに何人か声をかけてくれてうれしい。カナダのNSAにあたるCSEC(Canada’s National Cryptologic Agency)もブースを出している。昨年はエニグマを出していたが、今年は初めて展示という何かよく分からない暗号機を出していた。片付け中で詳しく話を聞けなかったのが残念。
その後、エネルギー政策とインテリジェンスのパネル、最後に「Puzzles, Problems, and Messes」と題したインテリジェンス分析のパネルを聞いて終わり。タクシーに乗ってそのまま空港に向かう。それなりに充実した楽しい二日間だった。
夜の飛行機に乗っても東京便はないのだが、トロントに飛んで5年ぶりに会う友人宅で一泊。久しぶりによく眠る。閑静な住宅街でプール付き。家族4人暮らしで車は2台。ゲスト用の部屋ももちろん完備。日本に長く住んでいた夫婦(子供2人は東京生まれ)は日本の食事が懐かしくて仕方ないそうだが、住環境はこっちのほうがよく見える(もっとも冬はどっかり雪が降るらしい)。日本から直行便もあるし、トロント大学にポジションはないかなあ。