大統領失踪

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 ビル・クリントン元米大統領と小説家のジェイムズ・パタースンが共著で書いた小説『大統領失踪』の見本を送っていただきました。

 なんと、Newsweek日本版のオンラインに書いた原稿が少し修正されて解説として下巻の最後に入っています。

 悪い奴らは誰なのか、是非楽しみながらお読みください。年末年始の読書として良いと思います。

フランスがサイバースペースにおける信頼とセキュリティを求める

 似たような話題ですが、先週、パリで開かれたIGF(Internet Governance Forum)の席で、フランスのマクロン大統領が「Paris Call of 12 November 2018 for Trust and Security in Cyberspace」を出しました。

 フランスのシンクタンクが作ったパリ平和フォーラム(Paris Peace Forum)がまとめたもので、GCSCも支持しています。GCSCも合わせてミーティングがあったので来いという話でしたが、行けませんでした。現場の雰囲気がつかめなかったのは残念です。

GCSCが新たな規範を発表

 私も参加させてもらっているサイバースペースの安定性に関するグローバル委員会(GCSC)が新たな規範パッケージをリリースしました。シンガポールで議論を行った結果なので、シンガポール・パッケージと呼ばれています。

https://cyberstability.org/wp-content/uploads/2018/11/GCSC-Singapore-Norm-Package-3MB.pdf

 GCSCが何をやっているかはこちらに書きました

 シンガポール・パッケージでは以下の六つの規範が提案されています。

(1)改ざんを回避するための規範

国家および非国家アクターは、サイバースペースの安定性を著しく損なう形での、開発・生産段階における製品・サービスの改ざんをするべきではなく、それを許すべきでもない。

(2)ICTデバイスを乗っ取ってボットネットに入れることに反対する規範

国家および非国家アクターは、ボットネットや同様の目的のために他者のICT資源を乗っ取っとるべきではない。

(3)脆弱性情報開示プロセスを国家が創設するための規範

国家は、一般に知られていない脆弱性や欠陥が情報システムおよび技術あることに気づいている場合、それを開示するかどうか、いつするかについて判断するための手続き的に透明な枠組みを創設すべきである。デフォルトの推定は、開示に置くべきである。

(4)大きな影響を与える脆弱性を低減・軽減するための規範

サイバースペースの安定性が依拠する製品・サービスの開発者と生産者は、セキュリティと安定性を優先し、製品・サービスに大きな影響を与える脆弱性がないようにし、後に発見された脆弱性をいち早く軽減するのに合理的なステップをとり、そうしたプロセスについて透明であるようにすべきである。悪意のあるサイバー活動を防止し、軽減するのに役立てるために、脆弱性に関する情報を共有する義務をすべてのアクターが持っている。

(5)基礎的防衛としての基本的なサイバー公衆衛生に関する規範

国家は、基本的なサイバー公衆衛生を確保するべく、法や規制を含む、適切な手段を立法化すべきである。

(6)非国家アクターによる攻撃的サイバー作戦に反対する規範

非国家アクターは、攻撃的なサイバー作戦に関わるべきではなく、国家アクターは、そうした作戦が起きたならばそれらを防止し、対応すべきである。

Newsweek日本版連載3本

土屋大洋「外交の長い道のり──サイバースペースに国際規範は根付くか」『Newsweek日本版』2018年10月26日。

土屋大洋「ビル・クリントンが書いたサイバー攻撃をテーマとした小説『大統領失踪』」『Newsweek日本版』2018年11月7日。

土屋大洋「現代の模範村、中国・烏鎮(ウーチン)で開かれた世界インターネット大会」『Newsweek日本版』2018年11月14日。

 ある程度、定期的に書く約束をしながら、適当な間隔で続いている連載ですが、まとめて3本、リンクしておきます。

 そうそう、『大統領失踪』は翻訳版が12月5日に早川書房から出るそうです。