長い2週間

 韓国から帰った後、博士課程の学生の審査(無事に学位がとれた)や高校への出張講義、学会理事会などで慌ただしくしていた中、某省の研究会で研究報告。時間オーバーで尻切れ。完全に準備不足。久しぶりの敗北だ。

 米軍周辺で通信やサイバーに関係する人々が集まるAFCEA(Armed Forces Communications and Electronics Association)という団体がある。東京にも支部(チャプター)があり、その年次会合が6月1日〜3日に開かれた。2日(木)のランチタイムに日本のサイバーセキュリティ政策について話をさせてもらった。プロの皆さんが集うところで英語での報告なので、まずまず。

 6月5日(日)、日経新聞社の富士山会合に呼んでいただき、サイバーセキュリティのパネル討論で司会をする。電子版の記事にもしてくださった。

 パネル討論が終わると、そのまま成田空港へ向かい、ワシントンDCへ飛ぶ。ワシントン時間で同日の夕方着。

 翌日の6月6日(月)、シンクタンクのCSISと司法省のCCIPS(Computer Crime and Intellectual Property Section)が開いたサイバー犯罪シンポジウムに参加。

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 午後の暗号のパネルで話をする。ここではパワーポイント使用禁止で、話だけで勝負しなくてはならない。日本をめぐる暗号、特にApple vs. FBIで見られたような法執行機関(警察)による暗号解除の問題について議論。同じパネルで話したブラジルの人が、「これはフェアじゃない。我々は携帯一つ開けるために1万ドル払うことなんてできない」と言っていたのが印象的だった。

 このシンポジウムの他のパネルでおもしろかったのは、米英間で令状の行使を相互にできる協定を検討しているという話。どうやらワシントンではかなり関心を集めているようだ。

 シンポジウムが終わった後、ホテルに戻って預けておいた荷物を受け取り、そのままダレス空港へ。夜8時半の国内線でLAへ。深夜に到着した後、日付が7日(火)に変わってから羽田行きの飛行機に乗る。7日(火)はあっという間に終わってしまった。

 羽田に着いたのは8日(水)の午前4時50分。ワシントン1泊4日の旅。いったん帰宅してシャワーを浴びた後、SFCへ。11時10分からの大学院の特別授業で講義(裏で担当している学部の授業は同僚たちに任せる)。午後、都内の会議に参加し、夜はサイバーセキュリティの関係者と焼き肉で宴会。

 翌9日(木)はさすがにくたびれたので休む。予約していた整体に行くと、左足が長くなっているとのこと。3月頃から左足の土踏まずが痛んでいたが、骨盤が歪み、左足が長くなってそちらに負担がかかっているのだろうとのこと。

 10日(金)は午前中に幕張メッセで開催中のInteropを見学。午後は都内でいくつか面談。夜は三田キャンパスでサザンメソジスト大学と共催の国際シンポジウムで基調講演を聴く。スピーカーは、5年前のトモダチ作戦で指揮に当たったパトリック・ウォルシュ提督・太平洋艦隊司令官(当時)。講演の前に挨拶に行くと、今は民間企業でサイバーセキュリティを担当しているとのことで驚く。やはり注目されているトピックなんだと思う。

 11日(土)、前日に続いてサザンメソジスト大学と国際シンポジウム。知り合いの先生たちが次々と登場する。

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 私の出番は午後の最後のパネルで、相変わらずサイバーセキュリティの話。同じパネルの池内恵さんのイスラム主義の話、サザンメソジスト大学の若手による日本の食の安全の話も大変勉強になった。終了後、中国飯店で20数名で宴会。旧知の皆さんや新しく知り合った皆さんと楽しく過ごす。

 とにかく長い2週間だった。さすがに疲れた。

日米関係とアジア太平洋の安全保障:課題と展望

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 6月10日(金)の夜と11日(土)の終日、G-SECで「日米関係とアジア太平洋の安全保障:課題と展望」と題するシンポジウムが開かれます。日米からいろいろな方が報告します。私もサイバーセキュリティの話をします。同時通訳が入ります。事前登録が必要ですので、リンク先から申し込んでください。ページの一番下に申し込みフォームがあります。

http://blog.smu.edu/towercenter/events/sun-and-star-symposium/

Motohiro Tsuchiya, ”Digital Divides in Pacific Island Countries: Possibility of Submarine Cable Installation for Palau”

Motohiro Tsuchiya, “Digital Divides in Pacific Island Countries: Possibility of Submarine Cable Installation for Palau,” G-SEC Working Paper, no. 32, September 5, 2012 <http://www1.gsec.keio.ac.jp/text/working_detail.php?n=34>.

太平洋島嶼国におけるデジタル・デバイド」という論文を英語にしたものをグローバル・セキュリティ研究所(G-SEC)のワーキングペーパーとして載せた。

海底ケーブルの話は調べるほどおもしろい。

今は100年前の太平洋ケーブル、特にハワイをめぐる争いについて調べている。イギリスがハワイ王国につながせてくれと頼むと、互恵条約を根拠にアメリカが拒否、アメリカは補助金を使ってアメリカの海底ケーブルを引こうとするが、議会を巻き込んでの大論争。そこに無料で引いてやると現れた実業家。米西戦争のあおりでハワイも併合……といった感じでドラマが続く。

これは是非とも次の本としてまとめたい。もうすぐ出る『サイバー・テロ 日米vs.中国』で本を書くのは終わりにしようと思っていたんだけど、また書きたくなってきた。インターネットの研究をしている私が100年前の文献を読むなんて考えにくかったのだが、とてもおもしろい。

今日は『明治天皇紀』や『日本外交文書』でハワイのカラカウア王が来日した時の記述を読んだ。「国王」ではなく「皇帝」として書いてあるのもおもしろい。カラカウア王は明治の日本が初めて迎えた外国の皇帝だから礼を尽くせと明治天皇が指示し、「微服間行」で「アリー・カルカウア」という偽名でやってきたカラカウア王は、あまりの歓迎ぶりにびっくりして滞在を延長することになる。

そして、カラカウア王は、(1)アジアの諸国が欧米に対抗するために連合し、その盟主に明治天皇がなるべきだ、(2)海底ケーブルをハワイとの間に引こう、(3)カラカウア王の姪を日本の皇室に嫁がせたい、という三つの驚くべき提案をする。どれも実現しないのだが、(1)なんかは明治天皇の国際情勢認識に影響を与えたんじゃないかと思う。想像が膨らんでおもしろい限りだ。

授業が始まるまでにある程度読み込んでおきたい。

太平洋国家アメリカ-国境を越える統治機構と文明-

 3月27日(火)14時から、三田でシンポジウムを開催。

 たぶん、ほとんどの人がシンポジウムのテーマにピンと来ないと思うのだけど、言うまでもなくパラオのような太平洋島嶼国やアジア諸国はアメリカ合衆国の影響を強く受けている。しかし、その内容については漠たるイメージで語られていて、ちゃんと議論されていないのではないだろうか。

 憲法のような統治機構と、各種の技術のような文明という視点からそれを捉え直してみようという企画。

 基調講演をしてくださる加藤良三・元駐米大使は、沖縄の統治システムについてアメリカが与えた影響を論じてくださる予定。パネリストの3人は打ち合わせ段階から異常に盛り上がっているので、私はちゃんと司会ができるかどうか不安。

■アメリカ研究プロジェクト年次シンポジウム

  「太平洋国家アメリカ -国境を越える統治機構と文明-」

  今年度開始となりましたG-SECアメリカ研究プロジェクトの

  年次シンポジウムを開催いたします。ぜひご参加ください。

  

日 時 2012年3月27日(火) 14:00〜17:00(13:30 開場)

  会 場 慶應義塾大学三田キャンパス 東館6階G-SEC Lab. 

【基調講演】

加藤 良三(元駐米大使)

【パネルディスカッション】

待鳥 聡史(京都大学大学院法学研究科教授)

阿川 尚之(慶應義塾常任理事)

駒村 圭吾(慶應義塾大学法学部教授)

<司会>

土屋 大洋(慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授、

       グローバルセキュリティ研究所副所長)

【概要】

「太平洋大統領」を自認するオバマ大統領のもとで、米国はアジア太平洋地域へ転換あるいは回帰しつつある。しかし、歴史を見れば、これまで何度も米国はアジア太平洋地域に、憲法、法制度、行政機構、金融・経済体制、教育、科学技術、さらには広く文明や文化のさまざまな側面において、大きな影響を与えてきている。アジア太平洋地域重視を進める米国の動きを、特に第二次世界大戦終了後から振り返り、米国の統治機構と文明が日本をふくむこの地域にどのような影響を残してきたかをさまざまな角度から検討する。

【お申込方法】

お申込情報登録フォームより、必要情報を入力の上、お申込ください。

http://www1.gsec.keio.ac.jp/text/workshop/index