サイバーセキュリティのための信頼醸成措置(CBM)

 原稿を書くためにサイバーセキュリティのための信頼醸成措置(CBM:Confidence Building Measures)について改めて調べ始めた。国連GGEやサイバースペース会議でもこの問題は議論されいるが、いったい何ができるのかというのが疑問だった。「サイバー兵器」なるものがあるとして、ミサイルのように弾頭を数えることもできない。

ソウル会議の際にもらったまま読むことなく持ち歩いていたICT4Peaceのブリーフ文書を読み始めた。スイスのジュネーブに本拠を置くICT4Peaceを引っ張っているダニエルには、1年前(2012年12月)のボストンの会議で会い、今年(2013年)10月のソウルのサイバースペース会議で再会した。互いに、「会ったことあるよね。どこで会ったっけ?」という感じだったが、そのときにこの文書の印刷版をもらった。

これはなかなかすばらしい。

Daniel Stauffacher, ed., Confidence Building Measures and International Cyber Security, Geneva: ICT4Peace Foundation, 2013.

雑然とした印象がある(重複のように見えるものもある)ものの、ありとあらゆることが並べられており、確かにそういうこともあり得るかなあという感じがしてくる。無論、実現性がかなり低いものもあるが、food for thoughtとしてはおもしろい。もっと早く読めば良かった(そういうものが多い)。今書いている原稿で紹介しよう。

千倉海底線中継所

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KDDI総研の皆さんのご厚意で、たくさんの研究者の皆さんと一緒に千葉県千倉の千倉海底線中継所を見学させていただいた。

言うまでもなく、日本最大の海底ケーブル陸揚げ局である。最近のケーブルで言えば、グーグルも参加し、2011年の東北地方太平洋沖地震でも切れなかったUNITYや、日本とアジアを結ぶ大動脈となりつつあるSJCがここにつながっている。この二つが千倉で北米とアジア諸国を結びつけていることになる。

なぜ千倉なのか。地球儀を引っ張り出してきて、アメリカ西海岸とアジアとの間に線を引くと最短距離になるからである。メルカトル図法の地図では分かりにくいのだ。

学術的関心を超えて単なる海底ケーブルのオタクになりつつある自分を感じつつ、大変勉強になる見学会だった。(帰りのサービスエリアで買った海産物のお土産を、帰宅してからよく見たら瀬戸内海産だったのにはちょっとがっかりした。)

KDDI総研の皆さん、昨年の長崎に続いて、どうもありがとうございました!

(ちなみに、先日、海底ケーブルのことを書かせてもらった『海洋国家としてのアメリカ』の出版社は千倉書房だが、千葉県の千倉とは関係ない。社名の由来は創業者が千倉豊氏だからである。しかし、縁起は良い。できれば千倉書房にもう一冊、海底ケーブルの本を書かせてもらいたい。)

北極のガバナンス

 北極のガバナンスについて、初めてまじめに話を聞いたのは5月の日加安保シンポジウム@オタワの席だった。日本側のスピーカーは石原敬浩海上自衛隊幹部学校教官だった。ほとんど何も知らなかったので、へええと勉強になった。

 私が北極に興味を持っているのは、北極海海底ケーブルが通るかもしれないからだ。いくつかのプロジェクトが動いている。太平洋に光ファイバーの海底ケーブルを敷設したことで有名な新納康彦さんもArctic Fibreに参加されている。

 先週、日本国際問題研究所の「グローバル・コモンズ(サイバー空間、宇宙、北極海)における日米同盟の新しい課題」というプロジェクトでもう一度、石原教官の話を聞く機会があった。コメンテーターは早稲田の池島大策先生。

 お二人の話をうかがって、この半年の間にもかなり動きがあったことを知る。なかなか興味深い。11月には米国防総省が北極圏戦略を発表したそうだ。北極の沿岸国、特にカナダやロシアが権益がために入る一方で、日本や中国がArctic Councilのオブザーバーになったり、はたまた貿易航路の変更で大きく打撃を受けそうなシンガポールまで入ってきたりしているそうだ。特に中国は、カナダ沿岸でもロシア沿岸でもなく、北極海の真ん中を通ろうとしているとか。ロシアは北極の極点の海底に旗を立てたり、オホーツク海は俺の海だと出張ってきたり。いやあ、すごいつばぜり合いだ。

 いろいろ文献も出ている。いずれ、授業でも取り上げないと。

秘密の終焉

土屋大洋「秘密の終焉」『治安フォーラム』2014年1月号、45〜48ページ。

 『治安フォーラム』側の都合で2013年12月号は休載になりました(私はちゃんと原稿を出していましたよ)。1ヶ月遅れで載った原稿です。

 NSAの問題が議論されていますが、英国のGCHQ(政府通信本部)の動きについて書いています。