2nd International Conference on Internet Science

 サイバーセキュリティをやっている人たちの多くがエストニアのタリンでCyConに出ているとき、私はベルギーのブリュッセルで開かれた2nd International Conference on Internet Scienceに出ていた。

 羽田からドイツのミュンヘンに到着し、ブリュッセル行きの飛行機の乗り換えに50分しかないのでちょっと嫌だなあと思いながら長い廊下を進み、ようやく乗り継ぎ便の掲示板にたどり着くと、乗り継ぎ便にキャンセルの表示が出ている。おいおいと思ってルフトハンザのサービスカウンターを探し、「乗り継ぎ便がキャンセルみたいなんだけど」というと、係員はじーっと端末の画面を見つめた後、別便の搭乗券を出してくれた。「なぜキャンセルになったか知っていますか」と聞かれたが、全然分からない。「とにかく急いでゲートに行ってください。すぐに出ます」とのこと。

 小走りでゲートに向かうと、係員が「ブリュッセル行き!」と叫んでいる。サービスカウンターの係員がゲートに電話してくれたそうだ。「あなたが最後なので急いで。下でバスが待ってますから」と英語で言われた後、「どうぞ良い旅を」と日本語でいわれた。ありがたいことだ。

 何とか飛行機の一番後ろの窓際の席に滑り込む。機内放送を聞くと、どうやらこの便は午前9時半に予定されていた便だそうだ。すでに午後6時過ぎである。ずーっとこの人たちは空港で待っていたのだろう。私はラッキーだ。どうやらブリュッセル空港の管制システムに故障が起きているらしく、1時間に5本しか着陸させていなかったが、10本にまで増便されたのでようやく飛べるとのこと。サイバー攻撃かと思いながらも、たどり着けそうで良かったとほっとする。

 ブリュッセル空港に着くと、飛行機に乗れない人たちがあふれかえっている。気の毒だ。私は幸い、当初予定より20分遅れぐらいで到着できたから良かった。出て来ないんじゃないかと思った荷物も無事に出てきた。

 翌日から会議に参加。この会議は、

The 2nd international conference on Internet Science “Societies, governance and innovation” will be organised in Brussels from May 27 to 29, 2015, under the aegis of the European Commission, by the EINS project, the FP7 European Network of Excellence in Internet Science.

となっていて、EINSの一環になっている。中心人物の一人で旧友のChris Marsdenに誘ってもらって参加した。クリスは会う度にどんどん立派な先生になっていくので驚いてしまう。

 キーノートスピーカーとして呼んでもらったが、この会議にはキーノートスピーカーがたくさんいて、合間に学生たちの発表が続く。私は朝一番のキーノートで、時間を守って話した。ところが、私の次のキーノートスピーカーは、24時間ロンドンの空港に閉じ込められたせいなのか、延々と話し続け、その結果、その後のスケジュールがグダグタになってしまう。学生たちはやたらとせかされて十分に話せなかったのに、欧州議会のメンバーのキーノートやその他のキーノートは誰も止めずにしゃべり続けるので、ずいぶん予定時間を超えて終了。スケジュールに厳しいアメリカのカンファレンスとはずいぶん違うなと感じる。

 翌日も似たような感じでキーノートスピーチと学生の発表が行われた。意外だったのは、そもそも「Internet Scienceとは何なのか」という点でまだ合意がないということ。そのためのパネルディスカッションもあって、討論者の一人が、「それはfunなんだよ」といっていたのが印象的。定義にも何にもなっていないけど。

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 学生論文の優勝はセレブたちの写真漏洩に関する研究論文が選ばれ、500ユーロの巨大チェックが送られた。

 次回は来年5月にイタリアのフィレンツェで開催とのこと。日程が合えば参加してみたい。

 帰国便に乗る朝、ホテルの窓から空を見ると飛行機雲がたくさん出ていたので、飛行機が飛んでいることが分かった。良かった。

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グローバル・コモンズとしてのサイバースペースの課題

土屋大洋「グローバル・コモンズとしてのサイバースペースの課題」日本国際問題研究所編『平成26年度外務省外交・安全保障調査研究事業(調査研究事業)「グローバル・コモンズ(サイバー空間、宇宙、北極海)における日米同盟の新しい課題」』2015年、27〜37頁。

 昨年度の報告書が公開されました。私の担当箇所は、サイバーセキュリティというよりは、サイバースペース全体にかかわる課題でしたので、少しぼんやりとした話になっているかもしれません。私の担当箇所では具体的な提言が入っていないので申し訳ないです。

サイバーインテリジェンス

土屋大洋「サイバーインテリジェンス」『治安フォーラム』2015年6月号、63〜66頁。

 連載19回目。昨年中に書いた原稿ですが、編集部の都合で掲載がとびとびになっているため、ようやく掲載になりました。次回の20回目が最終回の予定です。