ベルリン

 2008年〜09年にMITでお世話になったリチャード・サミュエルズ教授がドイツのベルリンで日本のグランド・ストラテジーに関するワークショップを開催するというので参加した。サミュエルズ教授にお目にかかるのは6〜7年ぶりだろうか。

 私は相変わらずサイバーセキュリティの話をする。日本からの参加者は私の他に8人。すべて知り合いの方々だったので旧交を温めることができた。諸外国からの参加者は11人。それに地元のオブザーバーが出たり入ったりする。

 しかし、部屋も暖かかった。というか、暑かった。ベルリンは今年一番の暑さで30度超え。ベルリン自由大学の狭い部屋にはエアコンがなく、30人がぎゅうぎゅう詰め。風もほとんど入らない。サウナ状態での2日間だった。会議中にこんなに汗をかいたのは久しぶりだ。震災後の日本でもないと思う。その分思い出に残るワークショップになった。

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 3年かけて本にするとのことだが、脱落しないようにしないと。

 そうそう、ワークショップの1日目がイギリスの国民投票の日だった。2日目の朝、みんな結果に苦笑い。そして、何が起きるのだろうかとため息。いろいろな影響がアジアにもあるだろう。次の英国首相になると見込まれているボリス・ジョンソンと現在の首相のデイビッド・キャメロンを幼い頃から比較する番組がBBCで流れている。EUからイギリスが抜けることによるインパクトも数字で具体的に何度も流していて、BBCが結果に失望していることをなんとなく感じさせる。

 2日目のワークショップ終了後、日本の大使の差し入れで、会議場でレセプション。私は頭が痛くなるので滅多にワインを飲まないが、このときは冷たい白ワインがとてもおいしかった。それともドイツ・ワインが口に合うのか。その後、防衛駐在官のNさんにドイツ料理の店に連れて行ってもらう。シーズン最後という巨大なホワイトアスパラガス、アイスヴァイン他の肉盛り合わせ、それにビールを堪能した。

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 今年前半はとにかくたくさん国際シンポジウム、国際ワークショップに出た。これでいったん打ち止め。7月と8月はお断りして、7月は授業をしっかりやって採点をする。8月は充電と原稿書き。9月からまた海外回りを再開する予定。

長い2週間

 韓国から帰った後、博士課程の学生の審査(無事に学位がとれた)や高校への出張講義、学会理事会などで慌ただしくしていた中、某省の研究会で研究報告。時間オーバーで尻切れ。完全に準備不足。久しぶりの敗北だ。

 米軍周辺で通信やサイバーに関係する人々が集まるAFCEA(Armed Forces Communications and Electronics Association)という団体がある。東京にも支部(チャプター)があり、その年次会合が6月1日〜3日に開かれた。2日(木)のランチタイムに日本のサイバーセキュリティ政策について話をさせてもらった。プロの皆さんが集うところで英語での報告なので、まずまず。

 6月5日(日)、日経新聞社の富士山会合に呼んでいただき、サイバーセキュリティのパネル討論で司会をする。電子版の記事にもしてくださった。

 パネル討論が終わると、そのまま成田空港へ向かい、ワシントンDCへ飛ぶ。ワシントン時間で同日の夕方着。

 翌日の6月6日(月)、シンクタンクのCSISと司法省のCCIPS(Computer Crime and Intellectual Property Section)が開いたサイバー犯罪シンポジウムに参加。

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 午後の暗号のパネルで話をする。ここではパワーポイント使用禁止で、話だけで勝負しなくてはならない。日本をめぐる暗号、特にApple vs. FBIで見られたような法執行機関(警察)による暗号解除の問題について議論。同じパネルで話したブラジルの人が、「これはフェアじゃない。我々は携帯一つ開けるために1万ドル払うことなんてできない」と言っていたのが印象的だった。

 このシンポジウムの他のパネルでおもしろかったのは、米英間で令状の行使を相互にできる協定を検討しているという話。どうやらワシントンではかなり関心を集めているようだ。

 シンポジウムが終わった後、ホテルに戻って預けておいた荷物を受け取り、そのままダレス空港へ。夜8時半の国内線でLAへ。深夜に到着した後、日付が7日(火)に変わってから羽田行きの飛行機に乗る。7日(火)はあっという間に終わってしまった。

 羽田に着いたのは8日(水)の午前4時50分。ワシントン1泊4日の旅。いったん帰宅してシャワーを浴びた後、SFCへ。11時10分からの大学院の特別授業で講義(裏で担当している学部の授業は同僚たちに任せる)。午後、都内の会議に参加し、夜はサイバーセキュリティの関係者と焼き肉で宴会。

 翌9日(木)はさすがにくたびれたので休む。予約していた整体に行くと、左足が長くなっているとのこと。3月頃から左足の土踏まずが痛んでいたが、骨盤が歪み、左足が長くなってそちらに負担がかかっているのだろうとのこと。

 10日(金)は午前中に幕張メッセで開催中のInteropを見学。午後は都内でいくつか面談。夜は三田キャンパスでサザンメソジスト大学と共催の国際シンポジウムで基調講演を聴く。スピーカーは、5年前のトモダチ作戦で指揮に当たったパトリック・ウォルシュ提督・太平洋艦隊司令官(当時)。講演の前に挨拶に行くと、今は民間企業でサイバーセキュリティを担当しているとのことで驚く。やはり注目されているトピックなんだと思う。

 11日(土)、前日に続いてサザンメソジスト大学と国際シンポジウム。知り合いの先生たちが次々と登場する。

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 私の出番は午後の最後のパネルで、相変わらずサイバーセキュリティの話。同じパネルの池内恵さんのイスラム主義の話、サザンメソジスト大学の若手による日本の食の安全の話も大変勉強になった。終了後、中国飯店で20数名で宴会。旧知の皆さんや新しく知り合った皆さんと楽しく過ごす。

 とにかく長い2週間だった。さすがに疲れた。

スノーデン以後のインテリジェンス活動

土屋大洋「スノーデン以後のインテリジェンス活動」『治安フォーラム』2016年7月号、39〜46頁。

 ある研究会で報告させていただいた話をベースにして、久しぶりに『治安フォーラム』に書かせていただきました。