現代アメリカ基礎講座『国際犯罪とテロとの戦い: FBI東京の役割』

アメリカン・センターからのお知らせ。現場の情報が聞けそうだ。

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現代アメリカ基礎講座

第15回 『国際犯罪とテロとの戦い: FBI東京の役割』

日時: 11月29日(火) 17:00 – 19:00 

場所:東京アメリカン・センター・ホール(芝公園2-6-3 abc会館10階 )

地図: http://japan.usembassy.gov/j/amc/tamcj-map.html 

講師: ブルース・ストラウス Bruce Strauss (FBI特別捜査官)

国際テロ組織の撲滅には、一国だけでなく多国間で対策に取り組むことが求められています。今回の講座では、米国大使館の連邦捜査局(FBI)のブルース・ストラウス副法務官が、海外のFBI特別捜査官の任務や、日米の治安当局の協力体制強化のために果たす役割についてお話しいたします。講演後、皆さんからも質問をお受けいたします。(同時通訳つき) プログラム終了後、ご希望の方にはアメリカンセンター資料室をご案内いたします。

参加ご希望の方は、Email (tacrs@state.gov)またはFAX (03-3436-0273) で以下の必要事項をお送りください。

またメールや資料室のウェブサイト http://japan.usembassy.gov/j/amc/tamcj-basicusa-invite15.html からも、申し込みを受け付けております。 

□ 氏 名:

□ 大学・学部名:

□ Tel:  

□ Fax: 

□ Email:

北岡元教授

20051019kitaoka.jpg

先日、授業のゲストで北岡元・国立情報学研究所教授に来ていただき、エキサイティングな話をしていただいた。理論編もさることながら、初めてうかがう歴史編も大変興味深かった。インテリジェンスに対する世間の認知もだいぶ進んできた気がする。

非伝統的安全保障

日米防衛協力の変容と非伝統的安全保障」というシンポジウムに出た。お世話になった安倍フェローシップに恩返し。最近はインターネット系の会議ばかりだったから新鮮だった。隣に座ったステイプルスさんは米軍のコマンダーだし、ヒルさんは六カ国協議の当事者だ。おまけに番匠さんの話まで聞くことができた。

しかし、私は相変わらずの馬鹿話で、ギークが安全保障にも影響を与えていますよと話してきた。Google Earthのデモを見せたらぎょっとしている人が多かった。ナショセキュ(安全保障)の人たちはネットの世界のイノベーションがあまり見えてないのかもしれない。

今回初めて知ったのだが、モーリーン&マイク・マンスフィールド財団のフェローシップというのがあって、米国の政府官僚が2年間日本の役所や政治家の事務所で研修できるとのこと。このフェローシップでは来日前に1年間日本語のレッスンがあるそうで、ステイプルさんもヒルさんも日本語が達者だ。いい制度だと感心した。

国際交流基金日米センターの皆さんの段取りも良くて、いいシンポジウムだった。でも疲れるので、今度は聴衆として行きたい。

パトリオット法

ロンドンで嫌な事件が起きた。クリエイティブ・コモンズの関係者は無事だという連絡が入っている。

サミットのタイミングをねらったものだとしても、これは大西洋の反対側にも影響を与えそうだ。米国議会はパトリオット法のサンセット条項(今年中に期限が切れる)を恒久化するかどうか議論している。もちろん、ブッシュ政権が恒久化しようとしている。

それに対し、ACLU(米国自由人権協会は)反対の署名を7月20日までに10万人分集めるキャンぺーンを開始した。

http://action.aclu.org/Petition1

パトリオット法の条項は、何の疑いもないのに医療記録、納税記録、図書館で借りたり書店で買ったりする本の記録まで、政府が調べることができることを認めている。テロリストとの関係が明白でなくても家宅捜索を無断で受けることがあるし、それが秘密裏に行われることもある。本当にこんな条項は必要なのかなあ。

Google Earth

浜村さんのブログで紹介されていたり、友人からメールで教えてもらったりしたGoogle Earthをようやく試す(私はマック・ユーザーなのだ!)。

IMINTをデスクトップにっという感じ。ワシントンDCで住んでいたアパートもばっちり見つかった。

まだ先は長い

某社のセミナーでインテリジェンス・コミュニティの話を少ししてきた。ドン引きされてしまった。アメリカから帰国してもうすぐ丸3年。いろいろなところで書いたり話したりしてきたが、まだまだ理解されていない。先は長いなあ。

テネット前長官

昨日、テネット前CIA長官の講演を聞くことができた。キーワードは中国とデータ・フローだった。台頭する大国中国とどうやって伍していくか、そして中東の次はアジアが世界の震源地になるというのが前半の話。そんな簡単にアジアを一くくりにしないで欲しいなあと思う。後半は、インテリジェンスの共有には、データ・フローが重要だとの指摘。9/11で情報が集まらなかったのがやはり問題ということなのだろうか。

前長官は政治家ではない(選挙に出たことはないはず)のだが、話っぷりは政治家そのもので、メモは見ていたが、よどみなく熱弁を振るっていた。今はジョージタウン大学に籍を置いている。まだまだ次に野心がある感じがする。

インテリジェンス関係のカンファレンスは初めてだが、やはりネット関係のものとは違う。だいたい、質問する人がほとんどいない。ネット関係や学会だとマイクに長蛇の列ができるが、司会者が何度も促しても質問する人がほとんどいない。インテリジェンス関係の人は行儀がいい。

日本人はどうやら私だけ。アジアから来ているのは、パネリストで呼ばれたシンガポール人とその一行だけのようだ。パネリストの多くは国土安全保障省から来ている。制服の人もけっこういる。日本人が呼ばれてもいないのに来るのはめずらしいらしく、朝食を食べていたら主催者側の人がやってきて、どうやってこの会議を知ったのか、なぜ興味があるのかと聞かれた。やはり研究者が少ないのだろうか。司会者のあいさつでも「日本からも参加者がいる」とわざわざ言っていた。

明日は移動で、あさってはギークの集団に仲間入りする。

GOVCON05

3月にアメリカ出張に行かなくてはいけないようなので、ついでに行けるカンファレンスはないかと探していたら行き当たったGOVCON05。興味津々なのだが、何とアメリカ市民権がないと参加できない! やっぱりインテリジェンスは秘密主義なのだ。

たぶんオライリーのEmerging Technology Conferenceに行く気がする。レッシグ教授も出るし、W. Daniel HillisやCory Doctorow、Clay Shirkyも出る。参加費高いなあ……。

9.11事件と情報機関の再編

春名幹男「9.11事件と情報機関の再編」日本国際問題研究所編『国際問題』第539号(2005年2月)44〜55頁。

共同通信の春名さんが9.11レポートと最近の報道に基づいて米国のインテリジェンス・コミュニティ改革論議をまとめている。

Fighting for Intelligence

Douglas Jehl and Eric Sschmitt, “Pentagon Seeks to Expand Role in Intelligence-Collecting,” New York Times, December 19, 2004.

米国の国防総省がインテリジェンス活動にもっと力を入れる計画だそうだ。これは、(1)CIAと国防総省(のDIA)との間で権限争いが起きている、(2)秘密工作活動が増える可能性がある、ということを示しているという。CIAがよたよたになっているところで国防総省が勢力拡大をねらっているのだろうか。

インターネットはアキレス腱

ワシントン・タイムズの記事によると前CIA長官のジョージ・テネットがワシントンDCのカンファレンスで、金融の安定性や物理的な安全にとってインターネットはアキレス腱だ、と言ったらしい。

“I know that these actions will be controversial in this age when we still think the Internet is a free and open society with no control or accountability,” he told an information-technology security conference in Washington, “but ultimately the Wild West must give way to governance and control.”

インターネットはアキレス腱

ワシントン・タイムズの記事によると前CIA長官のジョージ・テネットがワシントンDCのカンファレンスで、金融の安定性や物理的な安全にとってインターネットはアキレス腱だ、と言ったらしい。

“I know that these actions will be controversial in this age when we still think the Internet is a free and open society with no control or accountability,” he told an information-technology security conference in Washington, “but ultimately the Wild West must give way to governance and control.”

IMINT

イメージ・インテリジェンスのことを略してIMINTということがあるが、同僚の吉田浩之先生はその専門家だ。今日、いろいろ見せてもらってとても驚いた。画像の威力というのはすさまじい。頭で考えているよりもずっと迫力がある。キューバ危機や湾岸戦争の画像、最近の北朝鮮のミサイル基地の画像まであった。

ついでに、今日は三人の同僚の研究室を見せてもらったが、それぞれ個性が出ていてとても刺激的だ。私の部屋が一番つまらない。どうにかしなければ。

CIA混乱中

Dana Priest and Walter Pincus, “Deputy Chief Resigns From CIA: Agency Is Said to Be in Turmoil Under New Director Goss,” Washington Post, November 13, 2004; Page A01.

The deputy director of the CIA resigned yesterday after a series of confrontations over the past week between senior operations officials and CIA Director Porter J. Goss’s new chief of staff that have left the agency in turmoil, according to several current and former CIA officials.

CIA新長官の改革はうまくいってないらしい。

インテリジェンスという新しい政治

Richard K. Betts, “The New Politics of Intelligence: Will Reforms Work This Time?,” Foreign Affairs, May/June 2004.

ここ数年のインテリジェンスの数々の失敗にも関わらず、制度改革はうまくいかないだろうと悲観的。

CIA長官はインテリジェンス・コミュニティ全体を統括するDCI(Director of Central Intelligence)でもあったのだが、新設のDNI(Director of National Intelligence)はCIA長官を兼務しなくなるがゆえに立場は弱くなるのではとも指摘。ますますインテリジェンス・コミュニティのパフォーマンスは悪化するのではないかという気もするが大丈夫なのだろうか。

何が彼らを怒らせているのか

残念ながら日本人の人質が遺体で見つかったようだ。

私は9.11以来、何が彼らをそこまで怒らせているのかについて考えてきた。以前、このブログで下記の本を紹介したが、この本の著者(匿名になっている)の見方に私はだんだん与するようになってきている。

Anonymous, Imperial Hubris: Why the West is Losing the War on Terror, Washington, DC: Brassey’s, 2004.

米国の自由や民主主義という価値観を彼らは嫌っているのではない。ただ単に「彼らの土地に異教徒がいる」ことが問題なのだ。もともとイスラムは異教徒に必ずしもひどい仕打ちをする宗教ではない。特に同じルーツを持つユダヤ教とキリスト教には比較的寛容だった。しかし、それは彼らが主導権を握っていた時代の話だ。今は(理由は必ずしも石油だけではないだろうが)異教徒が入り込み、大きな顔をしている。それがアメリカ人だろうが、日本人だろうが、本質的には関係ない。

われわれの価値観で見ようとするから本質を誤っている気がする。29日にアルジャジーラが流したビン・ラディンのテープでは、「米国の不実」が批判されている。そして、「ブッシュ政権は堕落したアラブの政府と変わらない」とも言っている。彼が批判しているのは、イスラムの教えに忠実ではないアラブの政府と人々であり、異教徒だ。だから、彼がサダム・フセインと手を組むはずもない。サウジ・アラビアから追放されたのも、サウジ・アラビア政府の姿勢を批判したからだ。イスラム諸国が民主化されるということにはビン・ラディンは関心を持っていない。イスラムの教えに忠実な政府と国を確立することがねらいなのだろう。そうだとすると、こちら側の目的が何であれ、招かれざる客人としてイラクを訪問することはとても危険だ。自分の家に他人が入り込んで騒いでいたら誰だって不愉快なはずだ。

無論、私はまちがっているかもしれない。だが、以前よりは問題がクリアになりつつある気がする。

上記の本で筆者が指摘しているポイントは下記の六つだ。

  1. 米国の指導者たちは明白な事実を受け入れなかった:われわれが戦っているのは犯罪でもテロでもなくイスラムの反乱(insurgency)であり、これに対処できていない
  2. 軍事力だけが米国のツールになっている:パブリック・ディプロマシーやさまざまな外交対話が成り立っていない。13億のイスラムが米国を嫌うのはその価値ではなく行動
  3. ビン・ラディンは正確に理由を語っている:フリーダム、リバティ、デモクラシーは無関係。イスラム世界での米国の行動が問題
  4. ビン・ラディンが遂行している戦争はすべてイスラム教の教義に関係がある:イスラム教徒たちがイスラム教を信仰していなかったら彼の成功はない。イスラム教徒たちは自分たちの土地が米国と西側に蹂躙されていると思っている
  5. ペルシャ湾の石油と代替エネルギー開発の欠如が問題の核心である:石油がなかったらサウジアラビアのような専制国家を米国が支持する理由はない。ビン・ラディンはこうした専制国家を破壊しようともしている
  6. この戦争は子供の代までの戦いになり、米国本土が戦場になる可能性がある

翻弄

人質情報に翻弄される日本政府の様子を見るに、情報を収集し、分析するプロセスとサイクルがまだないのだろうなと思う。無論、日本にヒューミント(Human Intelligence)は事実上ないわけだから、現場で直接情報をとってくることができる人はほとんどいないだろう。その結果、シギント(Signal Intelligence)やイミント(Image Intelligence)が及ばないこうした人質事件では、目と耳がない状態になる。いきおい米国に情報を頼らざるをえない。政府が未確認の段階で情報をメディアに流したのは、世論と家族にいきなりショックを与えないようにするためだったのかもしれないが、いい加減さを露呈するマイナスも大きい。「日本にインテリジェンス・コミュニティはいらない。米国から情報はもらえばいいのだから」と主張する人がいるが、それでいいのか、どうしても疑問に思う。無論、現場を知らない私がごちゃごちゃいえることではない。ただ、現地の対策本部ではできることが実はほとんどなくて、座って電話を待っているだけになっている、ということがないように願いたい。