帰国してからもうずいぶん経つが、3月中はほぼ全く仕事をしなかった。帰国前に決まっていた数件の予定以外は、申し訳ないが断って、4月以降に回してもらった。原稿を書いていたわけでもなく、気晴らしに本を数冊読んだり、どうしても必要なメールの返事を書いたりするぐらいで終わった。こんなに仕事をしなかったのはいつ以来だろう。
仕事をしないと決めると、かえってたまっていた疲れがどっと出てきて、12時間ぐらい寝室にいるような日が続いた。研究は頭だけじゃなくて体力がないとできない。集中力の維持の元になるのは体力だし、図書館やアーカイブで文献資料を探すのもかなり体力がいる。ましてフィールドに出て行く際は言うまでもない。
回復した気はしないが、4月になったので、昨日からギアを入れ直して仕事を再開しつつある。アメリカ滞在中は今までの研究の棚卸し・在庫一掃をねらっていた。しかし、予想外の展開がいろいろあって、体力と気力を使い果たして帰ってきた。夏までになんとか挽回したいなあ。
数少ないアメリカ滞在中のアウトプットの一つが届いた。
土屋大洋「ネットワーク分析による政治的つながりの可視化—米国議会上院における日本関連法案を事例に—」日本国際政治学会編『国際政治』第155号「現代国際政治理論の相克と対話」2009年3月、109-125頁。
めずらしく学会誌に投稿した。特集に関連した論文なので、査読が付かないのかと思っていたら付いたそうだ。
私の研究テーマが比較的新しいせいか、あるいは私の筆力が単に足りないだけか、大学院生のころは学会誌に投稿しても全然相手にされず、別の学会へ出せとか、テーマが合ってないとかいわれることが続いた。10年前はインターネットや情報なんてのは際物扱いだった。だから、私は学会誌には書くのをやめて、主に書籍の形で成果発表を行ってきた。そういう意味で、今回載せてもらえたことで、テーマが少し受け入れられるようになってきたのかなと思う。
この論文の元になるネタは、富士通総研経済研究所(FRI)の客員研究員をしていたとき、FRIの皆さんと行っていた勉強会にさかのぼる。その時の成果は2006年2月23日のFRI社内発表会で出したのだが、あまり評判が良くなかった。たった3年前なのにとても昔のことのように感じる(懐かしいのでその時のファイルをアップロード)。
評判が良くないのでそのままペーパーにしないでやめてしまったのだが、昨年の6月、ハーバードで開かれたワークショップとカンファレンスに行き、もう一度やっても大丈夫だと確信したので、今回の投稿につながった。論文は早い者勝ちというところがあるが、早すぎても受け入れてもらえないことがある。査読システムは、品質を保つためには必要だろうけど、知のスピードに追いついて行けるかというと難しい。
確か、『国際政治』には謝辞を入れてはいけなかったような記憶があって入れなかったのだが、他の人はなんだかんだ入れている。関係者の皆さん、ここに書いておきますので、お許し下さい。富士通総研の吉田倫子さん、浜屋敏さん、湯川抗さん、サイバー大学の前川徹さん、SFCのインターリアリティ・プロジェクトの皆さん、特に西田亮介くん、京都大学の待鳥聡史さん、ありがとうございました。