CCライセンス付き年賀状

年賀状書きは私にとってはけっこう重荷だ。毎年間に合わない。今年もまだ書いていない。誰かCCライセンス付きの美しい年賀状のデザインを公開してくれないだろうか。

スモールワールド・ネットワーク

雪の中、無事に帰国。新聞をめくっていたら、ダンカン・ワッツの本が翻訳されたことを知った。読み直してみよう。

ダンカン・ワッツ(辻竜平、友知政樹訳)『スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法』阪急コミュニケーションズ、2004年。

ネットワーク ― 現代社会を語るうえで外すことの出来ないキーワード。その不思議に迫る本書を読めば、人間関係はもちろんのこと、狂牛病、鳥インフルエンザ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、そしてコンピュータウイルスの流行から、ハリー・ポッターのヒット、株価の暴落、バブル経済の崩壊まで、実に様々な出来事の背後にひそむ『スモールワールド現象』が見えてくる。

地震(2)

だいぶシンガポール紙の論調も変わってきた。被害の大きさが分かるにつれ、各国の状況や津波発生のメカニズムを詳報している。

第四のパワー

Gary Hart, The Fourth Power: A Grand Strategy for the United States in the Twenty-First Century, Oxford University Press, 2004.

アメリカの元上院議員ゲーリー・ハートが書いたグランド・ストラテジー本。元政治家の本とはいえ、彼は引退後の2001年にオックスフォードから政治学の博士をとっている学者肌で、これまで13冊の本を出しているそうだ。

B・H・リデルハートの戦略論を引用しながら、冷戦体制崩壊後のアメリカにはグランド・ストラテジーがないと嘆いている。前書きを読む限りはジョン・ギャディスやポール・ケネディ(リデルハートの弟子)の影響を受けているようだ。

第四のパワーとは、政治力、経済力、軍事力に次ぐ「理念の力(the power of principle)」だそうだ。アメリカが今進み始めている帝国主義のグランド・ストラテジーは、建国の理念である民主的な共和主義の理念(the democratic republican principles)にそぐわないというのが彼の批判だ。

話はそれるがシンガポールの紀伊國屋書店はすばらしい。東南アジア一の売り場面積だそうだが、日本語、英語、中国語の本がどっさりある。東京でもこれだけ英語と中国語が揃っているところはないだろう。日本語の本だってその辺の本屋よりずっとたくさんある。ここに住んでいても研究上苦労することはないだろう。

もう一つついでに言うとハートとネグリがいつの間にか『Multitude』という『Empire』の続編を出していた。知らなかった。私にはどうも難解でピンとこないのだが読んでみよう。

No Revolution, Only Evolution

シンガポール国立大学の教授といろいろ話ができた。彼自身は実はシンガポール国籍ではなかったので、いろいろ率直な意見が聞けておもしろかった。専門的技能を持っていればシンガポールで永住権を獲得するのは簡単らしく、彼も持っている。彼は生まれたところと、国籍を持っているところと、今住んでいるところがすべて異なる。

まず、個人情報保護の話。パスポートとは別のIDカードを持ち歩いているが、パスポートと番号は共通。これはあらゆるところで使われるが、パスワードが付いている。ウェブを含めていろいろなところでこの番号が使われるが、パスワードがないとさまざまなサービスは受けられない。基本的には納税者番号として使われている側面が強い。シンガポールでは所得のかなりの割合が強制的に積み立てにまわされるシステムになっているので、その際にもこの番号が使われる。

言論統制の話。確かにポルノなどは規制されているが、みんなCNNや海外のニュースには接しているし、日常生活においてはどうということはないらしい。この点について研究しているシンガポールの研究者がいないのも確か(理論的な研究者はいる)だが、それほど強い圧力があるわけではない。

エリート主義の話。確かに古い世代が新しい世代を選抜しており、似たような思想傾向を持つ人が指導的に地位についていることは否めない。しかし、シンガポールに革命はいらない。環境変化に応じた進歩さえあればいい。これが多くの人の考え方だそうだ。民主主義は革命の制度化だから、その民主主義に歯止めをかけておこうという考え方は、筋が通っているといえば通っている。

体制批判についてもっとも口が軽いのはタクシーの運転手だそうだ。さっそく試したのだが、日本で11年間働いたことのある運転手だったので、日本の話だけで終わってしまった。

ウォルマートのRFID

Barnaby, J. Feder, “Despite Wal-Mart’s Edict, Radio Tags Will Take Time,” New York Times, December 27, 2004.

アメリカ(世界?)最大手のスーパーマーケット・チェーンのウォルマートが来月(あと数日)までに納入業者の上位100社にRFID対応を求めていたが、やはり遅れるそうだ。1年間ひそかにRFIDのことを追ってきたが、最近失速気味なのはなぜなのだろう。「大統領選が終わったら動き出すよ」とアメリカの専門家が言っていたが、どうもそんな感じもない。

アメリカのハイテク業界全体はそんなに景気は戻ってきていないのだが、ワシントンDC周辺のハイテク業界(シリコン・ドミニオン)は景気がいいという。国防総省のRFID導入(やはり来月までに対応の予定)のせいかと思ったら、セキュリティ関連だという。

もちろんRFIDもセキュリティには多少関係があるが、それほどインパクトは大きくない。あるいは軍事関連技術の常として地下にもぐり始めているのか。

地震

地震から丸一日経過した。確かに昨日の朝、ぐらりと揺れるのを感じたのだが、まさかここで地震だろうとは思わないので気のせいだと思っていた。その後、夕方になってCNNを見るまで気がつかず、夕食を食べて帰ってきてから事態の深刻さに気がついた。

シンガポールは何も被害がなかったので、今朝の新聞の扱いも小さい。英字紙のStraits TimesBusiness Timesは一面に写真を載せているものの、記事は小さい。シンガポールのリー・シェンロン首相が支援を決めたという囲み記事が付いているぐらい。一方、華字紙の聨合早報はかなりの紙面を使って報じている。

それにしても、英字紙のドメインが両方とも「asia1.com.sg」に乗っかっているというのがシンガポールらしい。

頭脳国家

シンガポールは二回目なのだが、今回はシンガポール国立大学の先生と話をしなくてはいけないので、飛行機の中で予習。たまたま見つけた二冊が同じ先生によるものだと気づいた。たぶん第一人者なのだろう。

田村慶子『「頭脳国家」シンガポール』講談社現代新書、1993年。

田村慶子編著『シンガポールを知るための60章』明石書店、2001年。

どうしても言論統制やら治安維持法が気になってしまうのだが、それ以外でおもしろかったのは、リー・クアンユーら指導層があまり民族的ではないらしいという点。第一世代の指導者たちはイギリスで教育を受けた中国系なのだが、人種意識が強くなく、エリート意識のほうが圧倒的に強い。最終的には中国系しか首相にはなれないようなことが示唆されているが、それでも優秀かどうかを徹底的にふるいにかけて第二世代、第三世代を選んでいる。コネは通じない。リー・クアンユーの息子も誰もが認める優秀さがあるから昇進しているようだ。

問題は、第一世代と思想傾向を同じくするクローンしか次世代の指導者として選ばれないこと。反論するものはあっさり追い落とされるので、確かに「優秀」なんだが、異論は許されない雰囲気があるようだ。大学を卒業できる人は確実にエリートであり、エリートは指導層による盗聴もかいくぐりながらエリート再生産のスパイラルを上っていく。

それもこれも、資源がない都市国家としてのサバイバルという国家目標が定まっているからに他ならない。第一世代としては、今の繁栄が脆弱なものに過ぎないという危機感が強いのだろう。シンガポール国立大学の教授に今晩聞いてみよう。

ラッフルズの国へ

仕事と休暇を兼ねてシンガポールに向かう。シンガポールでもクリスマスの後に仕事をする人はあまりいないのだが、その分こちらもゆっくりしよう。空港は予想以上にすいている。年末のラッシュにはまだ早いらしい。

シンガポールを作ったラッフルズの伝記を途切れ途切れに読んでいたのだが、なかなかの苦労人だ。学者肌でもあったらしい。しかし、集めた資料を全部失う悲劇にも遭っている。つらいだろうなあ。

米通信法改正とオークション見直し

夜の研究会では、米国からのゲストを囲んだ。バックグランド(オフレコではないが、情報源を出してはいけない)だったので、詳しく書けないのが残念だが、おもしろかった。特に、来年にもあるかもしれない米国通信法改正の話と、電波オークションに対する肯定的評価だ。ヨーロッパの3Gオークションの失敗を徹底的に研究したようで、それを克服するやり方を見つけている印象を受けた。

公共放送と国営放送

昨日はいろいろなところでいろいろな人に会っていろいろ刺激を受けた。

午後の研究会では、またもや著作権の話が出た。「著作権の問題があってコンテンツが出てこない」という話だ。この際、テレビのスポンサーである大企業が「うちでスポンサーする番組は著作権フリーにせよ」といってくれればあっという間に増えてくるはずだ。こう言ったら、聞いていた人に激しくかみつかれた。「そんなことでは権利は守れない」というのだ。

しかし、テレビ局が向いているのは視聴者ではなくスポンサーであり、広告代理店である。視聴者がいくら番組を出して欲しいといってもダメだろう。

プロデューサーたちだって、自分の番組が簡単に見られるようになったほうがいいと思っているのではないだろうか。音楽のプロデューサーたちが楽しんでいるような名声をテレビのプロデューサーは得られていない。ネットで再配信される番組にはスポンサーの名前とロゴをしっかり入れて、プロデューサーのクレジットもしっかり入れておけば「気持ちの整理」は付くだろう。

そもそも番組が最初に放送されるときまでにスポンサーから十分な報酬が制作側には支払われているはずだ。それにプラスアルファでネット再配信料が仮に小額でも入ってくればうれしいだろう。死蔵されてゼロになるよりはプラスになるのだ。

それに、オンライン販売の単価が十分に安くなれば、いちいち不正コピーをする人はほとんどいなくなるだろう。

こういう話をすると、「国営放送のNHKがまずコンテンツを出すべきだ」という人がいるが、NHKは公共放送だ。国民が税金を払ってNHKを支えているわけではない。テレビを持っている人だけが払っている受信料でNHKは成り立っている。NHKは国営放送ではなく公共放送で、政府機関ではなく特殊法人だ。NHKのコンテンツが国民のものだとはどこにも書いてない。「BBCがクリエイティブ・アーカイブを作るのだから、NHKも」といっても一筋縄ではいかない。BBCも公共放送だが、受信料は税金的に徴収されていて、払わないと罰金がかかるが、NHKの受信料支払いは11万人も拒否している。

まずは民放がやってほしい。特に一社がスポンサーとなっている番組からだ。NHKスペシャルの話ばかりがされるが、たまには民放だって高品質の番組が出てくる。不正コピーが怖いというが、「プラス・アルファ」の分け前を求めるよりも、番組作りのプロとしての名声を確立したほうが、次の仕事へとつながるのではないか。プロデューサーや制作会社の間で良い番組作りへの競争も始まるのではないかと思うのだが、甘いだろうか。

Fighting for Intelligence

Douglas Jehl and Eric Sschmitt, “Pentagon Seeks to Expand Role in Intelligence-Collecting,” New York Times, December 19, 2004.

米国の国防総省がインテリジェンス活動にもっと力を入れる計画だそうだ。これは、(1)CIAと国防総省(のDIA)との間で権限争いが起きている、(2)秘密工作活動が増える可能性がある、ということを示しているという。CIAがよたよたになっているところで国防総省が勢力拡大をねらっているのだろうか。

ブルガリアのCC

ブルガリアもクリエイティブ・コモンズ採用の準備ができたそうだ。

Hi.

Just a brief note that Internet Society – Bulgaria has finished the work on the Bulgarian version of the CC license. The public comments period ended Dec. 10th, and we expect translation of the Bulgarian version before Christmas. It will be sent to Christiane immediately after that for a review.

We expect official launch to take place in the second half of January. As soon as we have details, I will let you know.

Best,

Veni Markovski

www.isoc.bg

Live from Tokyo

今週はCNNが東京から中継している。やっぱり東京はエキゾチックらしい。GPS付きケータイ、テレビ付きケータイ、カメラ付きケータイ、おまけに自動で手洗い水が出てくるトイレの洗面台をわざわざ紹介している。そんなもんめずらしいのか。六本木ヒルズからの中継はズームイン朝みたいになっている。確かアメリカ大使館は、六本木は危険だから行くな(パスポート取られるアメリカ人が多いらしい)というお触れを出していたはずなんだけど。

今日はシンポジウム

20041212gsec.JPG

今日は三田のG-SECで遠隔教育に関するシンポジウム。安西塾長+黒田理事+SFCの先生たち+アジアからのゲスト。SFCの院生が一所懸命サポート。W先生は鉄の女の称号を贈られた。

疲れがたまっていて午前中はなかなか集中できず。午後最後の出番ではしどろもどろの英語で司会をする。正直、タイから来たインド系の方の英語がさっぱり分からなくて冷や汗が出た。インド系の人はどこで文章が区切れるのか分からない……。

考えてみるとアメリカ出張以来、休んだのは一日だけ。そろそろゆっくりしないといかん。あっという間に年末が来てしまう。

インターネットはアキレス腱

ワシントン・タイムズの記事によると前CIA長官のジョージ・テネットがワシントンDCのカンファレンスで、金融の安定性や物理的な安全にとってインターネットはアキレス腱だ、と言ったらしい。

“I know that these actions will be controversial in this age when we still think the Internet is a free and open society with no control or accountability,” he told an information-technology security conference in Washington, “but ultimately the Wild West must give way to governance and control.”

インターネットはアキレス腱

ワシントン・タイムズの記事によると前CIA長官のジョージ・テネットがワシントンDCのカンファレンスで、金融の安定性や物理的な安全にとってインターネットはアキレス腱だ、と言ったらしい。

“I know that these actions will be controversial in this age when we still think the Internet is a free and open society with no control or accountability,” he told an information-technology security conference in Washington, “but ultimately the Wild West must give way to governance and control.”