戦前の日本アニメとアニマル化

もうすぐ今年度が終わるが、今年度の後半は通信と放送の融合のプロジェクトに追われてしまった感がある。もともと融合なんて簡単じゃないから頑張ってやらなくてもいいじゃないというのが私の立場だった。たまたまプロジェクトに関わるようになり、いろいろ調べていくとやはりおもしろいのだが、何でだろうなあと思うことも多い。その一応の区切りとして26日にシンポジウムをやるのは先にお知らせの通り。

そのための下調べとして欧米を回ってきた。欧州ではおしろい話が聞けたのだが、一人でボストンに移動してからがしんどかった。頭で分かってはいたのだが、ボストンの寒さは本当に頭に来てしまって、帽子がないとすごい勢いで熱が頭から逃げていってしまう。一日の内でも吹雪いていたかと思ったら青空が見えたりして変な天気が続き、風邪を引いてしまう。おまけに雪でこけて足をねんざし、なんだかさんざんだった。まだ本調子ではないが、そうも言ってられない。

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しかし、おもしろかったのは、旧知のイアン・コンドリーが主催するCool Japan Research Groupの会合だった。イアンはMITの所属だが、会合はハーバードのライシャワー日本研究所で開かれた。ジャパン・パッシングとかジャパン・ナッシングとかいわれ、中国への関心が集まっているのだから、たいして人は集まらないのではないかと思ったら、予想よりも多い人が集まっていた。おまけに日本人はほとんどいなくて、アメリカ人やアジアの人たちが集まっていたのには驚いた。まだ関心はそれなりに続いている。

テーマもすごかった。戦前の日本アニメというのだ。戦前にアニメなんかあったのかいなと思っていったのだが、メイン・スピーカーのTom Lamarre教授(カナダのマギル大学)は、『桃太郎:海の一兵卒(そんなアニメ本当にあったのか?)桃太郎・海の神兵』とか『のらくろ』とか、古いアニメをデジタル化してマックにため込んでおり、それについて延々と解説してくれるのだ。なんでそこまで話せるのってぐらいまじめに話している。

何を話しているのかというと、「アニマル化された人、人化されたアニマル」がテーマなのだ。なんだか東浩紀さんの『動物化するポストモダン』を思い出すのだが、ポストモダンなんて話が出てくるよりずっと昔の戦前の話なのだ。なぜ日本人はのらくろという犬を使って自己表現をしたのか、日本の伝統宗教とspeciesism(種偏見?)なんて話が展開して、まじかよとなかばあきれてしまう。たぶん深い議論なんだろう(けど、ちょっとついていけなかった)。

イアンは、「ポケモンも一種の動物だけど、通じるところがあるのかな」なんてコメントをしていた。でもポケモンはモンスターでしょ。戦後は怪獣とか、宇宙人とか、昆虫(仮面ライダー)とか、ロボットとか、多彩になるよなあなんてことも思うが、そこに何か日本人らしさなんかあるのだろうか。よく分からん。通信と放送の融合にはあまりつながらない話だけど、頭の中をかき回してもらっておもしろかった。ボストンはおもしろいところだ。

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