GCSCが新たな規範を発表

 私も参加させてもらっているサイバースペースの安定性に関するグローバル委員会(GCSC)が新たな規範パッケージをリリースしました。シンガポールで議論を行った結果なので、シンガポール・パッケージと呼ばれています。

https://cyberstability.org/wp-content/uploads/2018/11/GCSC-Singapore-Norm-Package-3MB.pdf

 GCSCが何をやっているかはこちらに書きました

 シンガポール・パッケージでは以下の六つの規範が提案されています。

(1)改ざんを回避するための規範

国家および非国家アクターは、サイバースペースの安定性を著しく損なう形での、開発・生産段階における製品・サービスの改ざんをするべきではなく、それを許すべきでもない。

(2)ICTデバイスを乗っ取ってボットネットに入れることに反対する規範

国家および非国家アクターは、ボットネットや同様の目的のために他者のICT資源を乗っ取っとるべきではない。

(3)脆弱性情報開示プロセスを国家が創設するための規範

国家は、一般に知られていない脆弱性や欠陥が情報システムおよび技術あることに気づいている場合、それを開示するかどうか、いつするかについて判断するための手続き的に透明な枠組みを創設すべきである。デフォルトの推定は、開示に置くべきである。

(4)大きな影響を与える脆弱性を低減・軽減するための規範

サイバースペースの安定性が依拠する製品・サービスの開発者と生産者は、セキュリティと安定性を優先し、製品・サービスに大きな影響を与える脆弱性がないようにし、後に発見された脆弱性をいち早く軽減するのに合理的なステップをとり、そうしたプロセスについて透明であるようにすべきである。悪意のあるサイバー活動を防止し、軽減するのに役立てるために、脆弱性に関する情報を共有する義務をすべてのアクターが持っている。

(5)基礎的防衛としての基本的なサイバー公衆衛生に関する規範

国家は、基本的なサイバー公衆衛生を確保するべく、法や規制を含む、適切な手段を立法化すべきである。

(6)非国家アクターによる攻撃的サイバー作戦に反対する規範

非国家アクターは、攻撃的なサイバー作戦に関わるべきではなく、国家アクターは、そうした作戦が起きたならばそれらを防止し、対応すべきである。

Newsweek日本版連載3本

土屋大洋「外交の長い道のり──サイバースペースに国際規範は根付くか」『Newsweek日本版』2018年10月26日。

土屋大洋「ビル・クリントンが書いたサイバー攻撃をテーマとした小説『大統領失踪』」『Newsweek日本版』2018年11月7日。

土屋大洋「現代の模範村、中国・烏鎮(ウーチン)で開かれた世界インターネット大会」『Newsweek日本版』2018年11月14日。

 ある程度、定期的に書く約束をしながら、適当な間隔で続いている連載ですが、まとめて3本、リンクしておきます。

 そうそう、『大統領失踪』は翻訳版が12月5日に早川書房から出るそうです。

サイバー空間を支配する者

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持永大、村野正泰、土屋大洋『サイバー空間を支配する者—21世紀の国家、組織、個人の戦略—』日本経済新聞出版社、2018年。

 三菱総研の持永さんと村野さんとともにまとめました。サイバーセキュリティ以外にも広くサイバー問題を扱っています。

 350ページを超えますが、手に取ると意外に軽く感じます。

AIはだませる?──サイバーセキュリティにAIを使う期待と不安

土屋大洋「AIはだませる?──サイバーセキュリティにAIを使う期待と不安」『Newsweek日本版』2018年7月2日。

 9年ぶりにイスラエルに行きました。テルアビブの街中は工事ばかり。どんどん変わっていました。

 世の中の流れに乗るべく、AIを見始めたわけですが、どうもまだピンと来ないという感覚が反映されているコラムです。

サイバーセキュリティと国際政治

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 2015年4月に出していただいた『サイバーセキュリティと国際政治』を、千倉書房さんが5月28日付けで三刷にしてくださいました。今どきありがたいことです。

 刊行から3年経ち、その間に米国大統領選挙や米国サイバー軍昇格などいろいろあったので、ページが動かない範囲で加筆・修正をさせていただきました。

 千倉書房さんからまもなく共著本も出していただける見通しです。すでに再校ゲラの確認を終えました。サイバーセキュリティではありません。

監視大国アメリカ A・G・ファーガソン著 万能ではないビッグデータ

土屋大洋「監視大国アメリカ A・G・ファーガソン著 万能ではないビッグデータ」『日本経済新聞』2018年5月19日。

 日経新聞に書評を寄稿しました。本のタイトルからはややわかりにくいのですが、警察活動にビッグデータをどう活用するかという本です。全文閲覧にはログインが必要です。

サイバーセキュリティ戦略の国際比較

小宮山功一朗、土屋大洋「サイバーセキュリティ戦略の国際比較—目的と対象範囲に基づく四類型—」グローバル・ガバナンス学会編『グローバル・ガバナンス』第4号、2018年3月、94〜109頁。

研究ノートとして採録されました。各国で出ているサイバーセキュリティ戦略を並べてみると何が言えるかを考えたものです。

グローバル・ガバナンス学会編『グローバル・ガバナンス学 Ⅰ・Ⅱ』(法律文化社)刊行記念  シンポジウム&ワークショップ

今週末、京都の同志社大学で開かれます。

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グローバル・ガバナンス学会主催 

グローバル・ガバナンス学会編『グローバル・ガバナンス学 Ⅰ・Ⅱ』(法律文化社)刊行記念シンポジウム&ワークショップ

日時:2018年3月17日(土)13時〜15時30分

場所:同志社大学(烏丸キャンパス)志高館SK119

テーマ:「グローバル・ガバナンス学の可能性」

目的:グローバル・ガバナンス学会設立5周年を記念した本叢書の刊行を受け、以下の各報告者が、執筆章の観点を交えつつ、それぞれの「グローバル・ガバナンス学」の可能性を議論し、展望します。

司会:松井康浩(九州大学)

第1部:

  • 大矢根聡(同志社大学)「グローバル・ガバナンス―国際秩序の「舵取り」の主体と方法」 
  • 菅英輝(京都外国語大学)「覇権システムとしての冷戦とグローバル・ガバナンスの変容」
  • 三牧聖子(高崎経済大学)「戦争とグローバル・ガバナンス」

〔以上、第1巻より〕

第2部:

  • 福田耕治(早稲田大学)「グローバル・ガバナンスにおけるUNとEUの役割」
  • 和田洋典(青山学院大学)「BRICSと国際金融ガバナンス」
  • 土屋大洋(慶応義塾大学)「サイバーセキュリティ」       

総括報告:

  • 渡邊啓貴(東京外国語大学)「地域集団防衛から安全保障グローバル・ガバナンスへ」

〔以上、第2巻より〕

その後、総括討議 司会:松井康浩(九州大学)・福田耕治(早稲田大学)

Bulk Collection

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Motohiro Tsuchiya, “Systematic Government Access to Private-Sector Data in Japan,” Fred H. Cate and James X. Dempsey, eds., Bulk Collection: Systematic Government Access to Private-Sector Data, Oxford University Press, 2017, Chapter 13.

 ふと思い出して調べてみたら、書いた原稿が本になっていました。見本を送ってくれるというから待っていたのですが、そのうちに忘れていました。なんで送ってくれないのでしょう。

 ただし、これは前に書いたジャーナルの論文にいくつか修正をしたものが採録されているので、完全に新しいものではありません。

 それに高い!

インターネット白書2018

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土屋大洋「国際政治とサイバー攻撃」インターネット白書編集委員会編『インターネット白書2018』インプレスR&D、2018年、265〜268頁。

 年末にInternet Week 2017に呼んでいただいたご縁で、『インターネット白書2018』に4ページ書かせていただきました。たぶん、普段とは違う読者の皆さんなので、どう受け止められるか、楽しみでもあり、心配でもあります。

グローバル・ガバナンス学II

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土屋大洋「サイバーセキュリティ」グローバル・ガバナンス学会編、渡邊啓貴・ 福田耕治・ 首藤もと子責任編集『グローバル・ガバナンス学II』法律文化社、2018年、203〜220頁。

 気がついたら年が明けて1カ月以上経っていて、このブログは何も更新しないままでした。年末年始は外に出ない報告書原稿や出張で忙しく、何も外向けの原稿を書いていなかったいうことですね。

 そんなとき、昨年書いていたグローバル・ガバナンス学会の叢書が届きました。2冊セットで、私はIIのほうに1章書かせてもらいました。

 内容としては、以下の本で書いてきたことの延長にあり、インターネットをめぐるガバナンスがどう変わってきたか、特に近年のサイバーセキュリティでどう変わってきたかということです。

  • 林紘一郎、池田信夫編『ブロードバンド時代の制度設計』東洋経済新報社、2002年。
  • 菅谷実、金山智子編『ネット時代の社会関係資本形成と市民意識』慶應義塾大学出版会、2007年。
  • 大矢根聡編『東アジアの国際関係―多国間主義の地平―』有信堂、2009年。