メール攻撃

ACLU(American Civil Liberties Union)がアメリカ大統領就任式の日にメール攻撃を企画しているようだ。ACLUは”Refuse to Surrender“と題する署名キャンペーンをしていて、その署名者で一斉に議会に電子メールを送るつもりらしい。各人2人をリクルートせよとメールで檄が飛んでいる。

More than 73,000 people have taken our “Refuse to Surrender” pledge to help the ACLU press the President to uphold his oath of office. On Inauguration Day we plan to activate signers of the “Refuse to Surrender” pledge to send a barrage of emails to Capitol Hill to let our elected representatives know that the hundreds of thousands of ACLU members and supporters want them to make sure the President keeps his oath. The more people who sign our pledge, the stronger that message will be.

You can help us reach our goal of 100,000 pledge signers by Inauguration Day, January 20, simply by asking 2 friends to join you in signing the pledge. Send them our “Refuse to Surrender” postcard and ask them to stand with you to defend freedom in 2005:

https://www.aclu.org/team/tell.cfm?orgid=EA011005A&action=108&MX=1839&H=0

スモールワールド・ネットワーク

雪の中、無事に帰国。新聞をめくっていたら、ダンカン・ワッツの本が翻訳されたことを知った。読み直してみよう。

ダンカン・ワッツ(辻竜平、友知政樹訳)『スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法』阪急コミュニケーションズ、2004年。

ネットワーク ― 現代社会を語るうえで外すことの出来ないキーワード。その不思議に迫る本書を読めば、人間関係はもちろんのこと、狂牛病、鳥インフルエンザ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、そしてコンピュータウイルスの流行から、ハリー・ポッターのヒット、株価の暴落、バブル経済の崩壊まで、実に様々な出来事の背後にひそむ『スモールワールド現象』が見えてくる。

ウォルマートのRFID

Barnaby, J. Feder, “Despite Wal-Mart’s Edict, Radio Tags Will Take Time,” New York Times, December 27, 2004.

アメリカ(世界?)最大手のスーパーマーケット・チェーンのウォルマートが来月(あと数日)までに納入業者の上位100社にRFID対応を求めていたが、やはり遅れるそうだ。1年間ひそかにRFIDのことを追ってきたが、最近失速気味なのはなぜなのだろう。「大統領選が終わったら動き出すよ」とアメリカの専門家が言っていたが、どうもそんな感じもない。

アメリカのハイテク業界全体はそんなに景気は戻ってきていないのだが、ワシントンDC周辺のハイテク業界(シリコン・ドミニオン)は景気がいいという。国防総省のRFID導入(やはり来月までに対応の予定)のせいかと思ったら、セキュリティ関連だという。

もちろんRFIDもセキュリティには多少関係があるが、それほどインパクトは大きくない。あるいは軍事関連技術の常として地下にもぐり始めているのか。

米通信法改正とオークション見直し

夜の研究会では、米国からのゲストを囲んだ。バックグランド(オフレコではないが、情報源を出してはいけない)だったので、詳しく書けないのが残念だが、おもしろかった。特に、来年にもあるかもしれない米国通信法改正の話と、電波オークションに対する肯定的評価だ。ヨーロッパの3Gオークションの失敗を徹底的に研究したようで、それを克服するやり方を見つけている印象を受けた。

公共放送と国営放送

昨日はいろいろなところでいろいろな人に会っていろいろ刺激を受けた。

午後の研究会では、またもや著作権の話が出た。「著作権の問題があってコンテンツが出てこない」という話だ。この際、テレビのスポンサーである大企業が「うちでスポンサーする番組は著作権フリーにせよ」といってくれればあっという間に増えてくるはずだ。こう言ったら、聞いていた人に激しくかみつかれた。「そんなことでは権利は守れない」というのだ。

しかし、テレビ局が向いているのは視聴者ではなくスポンサーであり、広告代理店である。視聴者がいくら番組を出して欲しいといってもダメだろう。

プロデューサーたちだって、自分の番組が簡単に見られるようになったほうがいいと思っているのではないだろうか。音楽のプロデューサーたちが楽しんでいるような名声をテレビのプロデューサーは得られていない。ネットで再配信される番組にはスポンサーの名前とロゴをしっかり入れて、プロデューサーのクレジットもしっかり入れておけば「気持ちの整理」は付くだろう。

そもそも番組が最初に放送されるときまでにスポンサーから十分な報酬が制作側には支払われているはずだ。それにプラスアルファでネット再配信料が仮に小額でも入ってくればうれしいだろう。死蔵されてゼロになるよりはプラスになるのだ。

それに、オンライン販売の単価が十分に安くなれば、いちいち不正コピーをする人はほとんどいなくなるだろう。

こういう話をすると、「国営放送のNHKがまずコンテンツを出すべきだ」という人がいるが、NHKは公共放送だ。国民が税金を払ってNHKを支えているわけではない。テレビを持っている人だけが払っている受信料でNHKは成り立っている。NHKは国営放送ではなく公共放送で、政府機関ではなく特殊法人だ。NHKのコンテンツが国民のものだとはどこにも書いてない。「BBCがクリエイティブ・アーカイブを作るのだから、NHKも」といっても一筋縄ではいかない。BBCも公共放送だが、受信料は税金的に徴収されていて、払わないと罰金がかかるが、NHKの受信料支払いは11万人も拒否している。

まずは民放がやってほしい。特に一社がスポンサーとなっている番組からだ。NHKスペシャルの話ばかりがされるが、たまには民放だって高品質の番組が出てくる。不正コピーが怖いというが、「プラス・アルファ」の分け前を求めるよりも、番組作りのプロとしての名声を確立したほうが、次の仕事へとつながるのではないか。プロデューサーや制作会社の間で良い番組作りへの競争も始まるのではないかと思うのだが、甘いだろうか。

ロボット

マイクロソフトの楠正憲さんにマイクロソフトの新製品を見せてもらった。分厚い手帳のような塊にハードディスクとUSB2.0が付いていて、パソコンで録画した動画を転送して貯めこめる。自動的に圧縮してくれて100時間(?)ぐらいは見られるという。OSをマイクロソフトが担当している。

それよりもおもしろかったのが、そのデバイスで見せてもらった動画。「二足歩行ロボット競技大会 第6回ROBO-ONE」の様子で、二足歩行するロボットがプロレス並みの技を掛け合って戦っている。大手メーカーが作った動きの鈍い二足歩行ロボットのイメージとはかけ離れてダイナミックだ。

外部環境とのコミュニケーションという点では進んだAIを搭載したロボットのほうが優秀なのだろうが、横で解説してくださった白田秀彰先生によると、アマチュアが数十万円で作っているロボットのほうが圧倒的におもしろいらしい。ああ、驚いた。

FCC人事

エクスポズのワシントンDC移転が気になる。ボルチモア・オリオールズが観客を失うのは明らかだ。

もう一つワシントンDCで聞いたうわさ話はFCC(連邦通信委員会)の人事。父親のコリン・パウエル国務長官は辞任したが、息子のマイケル・パウエルFCC委員長は留任しそうだ。ダシェル院内総務の落選で再任が危ぶまれていたジョナサン・アデルシュタイン委員は生き残りそう。すでに任期が切れているキャサリン・アバナーシー委員が辞任するかどうか。こちらの記事だとどうやら辞任しそうで、後任探しが始まっている。

違法コンテンツつき

浜村さんのブログで中国のiPodの話が出ている。違法コンテンツを入れた上で売ってくれるらしい。

同じようなことをアメリカで体験したことがある。iTunesが出たてのころ、アップル専門店(アップル・ストアではない)で開封済みだが新品で安売りされていたHDを買おうかどうか迷っていたところ、店員が「いいもの入れておくから買ってよ」といっておもむろにiMacに接続し、中に入っていた2千曲ぐらいのMP3ファイルをコピーし始めた。唖然として見ていたが、あまりにも時間がかかるので中止してもらった。

ex parte

ナッシュビルの会議でおもしろかったのは、FCC(連邦通信委員会)とその他の機関に適用されているという「ex parte requirement」の話。

「ex parte」とは英辞郎によれば、

一方だけの、一方的、当事者の一方に偏して

となっているが、いまいちよく分からない。

FCCの弁護士の説明によると、何か審議中の事項に関してFCCにロビーイングをする場合は書面でそのロビーイングの内容を提出しなくてはいけないというもの。逆に言うと、立ち話とか電話とかそういった類のロビーイングについてFCCの委員はじめスタッフは一切影響を受けてはならないということだそうだ。透明性を確保しようという試みであるのはいうまでもないが、こうした規制がないと大変なことになってしまうのかとも勘ぐってしまう。

p2p-politicsは失敗?

とても面白いとおもってp2p-politics.orgを見ていたのだが、とうのレッシグ教授は失敗だと思っているそうだ。そんなこともないと思うのだが。

そのために、われわれはp2p-politicsを制作した。だがすばらしい技術的実装にも関わらず、このアイデアは失敗だった。無数の人々がサイトを訪れてビデオクリップを観た。たくさんの素晴らしいクリップが寄せられた。だがそのなかで、誰かに議論を、理由を、せめてビデオクリップを送信する機能を利用したのはごく僅かだった。

GRID.org

グリッド・コンピューティングが使われるようになってだいぶ時間がたつ。私もSETI@homeの夢に乗っかってずっと使ってきた。

最近、友人の奥さんが白血病と戦い始めた。その友人が教えてくれたのが、grid.orgのCancer Research Projectだ。地球外生命体の夢もいいが、こちらのほうが切実だから切り替えることにした。「白血病解析プロジェクト」のページも参照。マックでも使えるようにしてほしい。

地域情報化の最前線

丸田一『地域情報化の最前線—自前主義のすすめ—』(岩波書店、2004年)。

をいただいた。地域情報化の事例とアイデアがたくさんつまっていておもしろい。私の母の故郷の町のことも書いてあるのでいっそう興味深い(「辺境の地」と書かれてしまっているけれど)。

中東の情報化

中東の情報化について調べている後輩の達也君がヨルダンICTフォーラム2004に参加してきたらしい。彼はシリアのアレッポに2年半ほど滞在しながら、中東各国を見て回っている。

数年前にこのフォーラムの案内が突然電子メールで来た時はいたずらかと思っていた。ウェブ・サイトはきれいに作ってあるものの、「ヨルダンでICTフォーラムといわれてもねえ」と思って無視していた。今年も数ヶ月前に電子メールが来て、その後わざわざ前の職場に電話もかかってきた(どこか別の会議から情報を入手したのか?)。

残念ながら日本の存在感はほとんどゼロだ。ヨルダンのICTについてよくよく知っている人は、何人かのパネリストが所属している機関や企業に日本のODAが絡んでいることを承知しているかもしれないが、少なくとも表向きは日本の姿は見えないものだった。

というのはいささか残念だ。いずれにしろ今回は日程的に無理だったが、次回は考えてみたい。

中東は法に対する考え方がまったく違うようだから、インターネット・ガバナンスというときも違う考え方になりそうだ。中東でユーザーが増えれば、また違う勢力がインターネットに入ってくることになるように思う。

ブロードバンド・マルクス主義

Peter Lurie and Chris Springman, “Broadband Marxism,” Foreign Policy, March/April 2004, pp. 82-83.

発展途上国ではブロードバンドよりもまず電話を普及させるべきだと主張する(これはエリ・ノームもどこかで言っていた)。そして、電話を普及させるためには、民営化のプロセスを逆転させて、バックボーンを国有化し、ローカル・アクセスのところで競争させるべきだという。

先進国ではすでにローカル・アクセスがほとんど普及しているから、ローカル・アクセス構築の二度手間を省くために、そこを開放せよということになっている。しかし、途上国ではローカル・アクセスがほとんど構築されていない。だからバックボーンをできるだけ安くして、そこから先は競争で構築させようという作戦だ。ローカル・アクセスを作ろうという会社が複数あるならうまくいくかもしれない。