昨日、アメリカ議会はテレビのアナログ放送停波の延期を決めた。計画では今月17日にアナログ波は止まり、テレビはデジタル化されるはずだった。
ノース・カロライナ州のウェルミントンというところでは昨年のうちに実験が行われ、マーチン前FCC委員長がイベントにも参加している。マーチン委員長はデジタル・テレビへの移行を成果の一つとして退任した。
しかし、今年に入ってから急に、停波は難しいのではないかという話が持ち上がり、大統領就任前のオバマ次期大統領も延期を支持したため、先週、上院が延期を決め、昨日、下院も続き、オバマ大統領が法案にサインすれば延期が確定する。
アメリカはケーブルテレビや衛星放送が主流なのでアナログ停波は大きな問題にならないといわれてきたが、実際には1400万世帯がラビット・アンテナと呼ばれるアナログ用のアンテナをテレビの上に置いて使っている。貧困層、高齢層、過疎地ではアナログ放送に頼っている世帯が多い。
こうした世帯を支援するため、連邦政府はクーポンを配り、60ドルほどのコンバーターが20ドル程度で買えるようにしていた。ところが、予想以上にこのクーポンを求めた人が多く、クーポンが全て無くなった上に、希望者の長いウェイティング・リストができている。クーポン自体は印刷すればよいのだが、補助金の予算が無くなってしまったのだ。議会はオバマ政権の景気刺激策の中にこの補助金の予算を組み込むことを認めることにした。
何ともお粗末といえばお粗末な話だ。
おととい、見たい番組があって夜の8時からテレビの前に陣取っていた。ところが、画面がギザギザになり、音声は途切れ途切れになって、全く意味をなさなくなった。ケーブルテレビだから問題ないはずなのだが、実際にはケーブルテレビの映りはかなりの頻度で悪くなる。おそらくこの日は雪のせいだったのだろう(やはりアメリカのインフラストラクチャは問題が多いのだ)。
アナログ放送では、天気が悪いと画面の中にザーッと雨が降ることがあるが、しかし、それでもある程度判別できる。しかし、デジタル放送になると十分な信号が届かない場合にはほとんど意味不明になる。デジタル放送の受信には高性能のアンテナを正確な方向に向けないと入らないくなる場合があるらしく、単にコンバーターを付けるだけではうまくいかないことが多いとウェルミントンでは報告されている。
デジタル放送は予想以上に問題が大きいかもしれない。テレビと政治の結びつきは強い。6月まで4ヵ月の延期の間に紆余曲折がある可能性が高い。