クラウドのジレンマ

Wikinomiksの中でDon TapscottとAnthony Williamsは、「つながったものだけが生き残るだろう(only the connected will survive)」と言っている。Anne-Marie Slaughterはフォーリン・アフェアーズに掲載された”America’s Edge: Power in the Networked Century”の中で政府も例外ではないとしている。

日本でも今年6月に発表された総務省の「ICTビジョン懇談会報告書」でも「霞が関クラウド」が提唱されている。

国においては、各府省の情報システムの最適化をさらに進めていく必要がある。情報システムの効率化・費用低廉化に向け、クラウドコンピューティング技術等の最新の技術を活用し、可能なものから順次システムの統合化・集約化などを図る「霞が関クラウド」の構築を進めるべきである

しかし、政府が本格的にクラウド・コンピューティングに乗り出すとなると、セキュリティの問題がどうしても浮かび上がってくる。情報は共有されればされるほどブリーチのリスクにさらされる。

21世紀を生き残るためには政府もまたネットワークの中で生き残らなくては行けない一方で、そのネットワークが政府の業務をリスクにさらす。これは「クラウドのジレンマ」と言ってもいいだろう。

無論、このジレンマは政府だけではなく、プライバシー情報などを扱う企業にもある。しかし、国家機密が流出する危機ほど大きなインパクトはないだろう。単純に国家機密はネットワークに載せないというのが正解だろうが、情報の仕分けは新たな業務を作り出すことになり、業務改善に逆行する。

政府はすべてを縦割りにし、階層構造にすることで成立してきた。ネットワークの導入は政府の組織に変更を迫ることになる。霞が関クラウドはそうした長期的インパクトを作り出すことになるのだろうか。そこまで深遠な意図を持って構築されるのだろうか。

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