伊藤孝治「国威の代償—世紀転換期のハワイをめぐる日米対立の一解釈—」『アメリカ研究』第46号、2012年3月、33〜50ページ。
『アメリカ研究』第46号に掲載されたいた論文。ちょうどハワイのこと、セオドア・ルーズベルトのことには興味があったので読む。日本はハワイを併合するつもりはなかったけれども、国威を傷つけられたのに憤慨してハワイに戦艦を送ってしまい、それが米国の疑念を呼び起こして、米国がハワイを併合してしまうという話。ストーリー自体は各所で書かれていると思うが、この論文は日米双方の資料に当たって裏をとっている。
国威を傷つけられるのを嫌がるというのは今の中国と重なるなと思う。若い国家とはそのようなものなのだろうか。
論文の本筋ではないのだけど、ハワイの人口に関する記述が気になる。
- 34ページ 「1896年時点のハワイの全人口は約11万人だったが、そのうちのおよそ2万4000人が日本人であり、ハワイの全人口の約22パーセントを占めていた。」
- 35ページ (1893年3月頃?)「ハワイの約9万5000人の全人口のうち約2万人を占める日本人」
- 36〜37ページ (1897年3月から4月?)「ハワイの人口の約4分の1を占める2万6000人の日本人」
時間順に並べれば増えているので、それほどおかしくないのだけど、1893年3月に約2万人だった日本人が3年後の1896年に2万4000人になるのは、移民が数千人規模で入っていたということなのだろうか。翌年にはさらに2000人増えて2万6000人になる。ハワイの総人口も3年で2万5000人増えている。これらの数字が正しいとすると、急激な社会変革がハワイで起きていたことになるだろう。それだけの移民が各国からやってきたらネイティブが受けるプレッシャーは大きかったに違いない。