『アメリカ太平洋軍の研究』英訳

Motohiro Tsuchiya and Denny Roy, eds., U.S. Indo-Pacific Command: Implications for East Asia, Singapore: Springer 2022.

2018年に千倉書房から出版された『アメリカ太平洋軍の研究』の英訳が出ました。その後の変化に合わせて少しだけ修正しています。編者にEast-West CenterのDenny Royさんに加わってもらいました。

Evidence-Based Approaches to Peace and Conflict Studiesをとりまとめしてくださっている猪口孝先生に感謝です。また、Springer編集部の河上自由乃さん他、皆さんにも迅速に対応してくださいました。ありがとうございます。また、英訳出版を認めてくださった千倉書房にも感謝です。

ORF 2013

 11月22日と23日に六本木の東京ミッドタウンで開かれるオープン・リサーチ・フォーラム(ORF)2013で二つのパネルの司会をします。全然違う二つのテーマですが、途中30分の休憩を挟んで3時間ぶっ続けです。

 いずれも日本研究プラットフォーム(JSP)の活動の一環です。

S-16 【日本研究プラットフォーム・ラボ】東アジアのサイバーセキュリティ

11月23日(土)10:30 ~ 12:00 / room7

東アジアはサイバー攻撃の多発地帯となっており、非伝統的な安全保障の一環として、サイバー攻撃は注目を集めています。米軍はサイバースペースを第五の作戦領域と位置づけ、サイバー軍を組織しています。日本政府もまた、2013年6月に新たなサイバーセキュリティ戦略を発表しました。本セッションでは、サイバーセキュリティにおける脅威とは何か、そして、偶発的なサイバー戦争防止のための信頼醸成措置について検討します。

◆同時通訳あり

アダム・シーガル 外交問題評議会 シニアフェロー

沈逸 復旦大学 国際関係公共事務学院 アシスタントプロフェッサー(キャンセルになりました。)

土屋大洋 政策・メディア研究科 教授

PS-09 【日本研究プラットフォーム・ラボ】アニメ産業のエミュレーション

11月23日(土)12:30 ~ 14:00 / room7

アニメは、世界の人々が日本に関心を引き寄せる際の魅力の一つとして重要です。世界各国でさまざまな形で日本のアニメは放映され、日本を理解するためのツールとなっています。しかしながら、日本のアニメ産業の経済的な規模はいまだそれほど大きくなく、それに携わる人々は必ずしも裕福ではありません。このパネルでは、日本でアニメ産業が台頭したのはなぜなのか、そして、その影響は世界にどのように広がっているのかを検討します。

イアン・コンドリー マサチューセッツ工科大学 教授

青崎智行 株式会社電通 ソーシャル・ソリューション局

土屋大洋 政策・メディア研究科 教授

ウィリアム・N・アームストロング『カラカウア王のニッポン仰天旅行記』

ウィリアム・N・アームストロング(荒俣宏、樋口あやこ訳)『カラカウア王のニッポン仰天旅行記』小学館、1995年。

 ハワイの海底ケーブルのことを調べていて、ハワイ王国の最後から二人目の王様であるカラカウア王が明治天皇に会いに来たとき、海底ケーブル敷設の提案や、皇室とハワイ王室の姻戚の提案をしたことは前にもちょっと書いた。

 その時のことが詳しく書いてないかと思ってこの本を読んでみた(絶版なので図書館で借りた)。アームストロングという人はアメリカ人なんだけど、ハワイ王国の大臣としてカラカウア王とともに世界一周の旅に出て、その旅行記をカラカウア王が亡くなった後に出版した。まあ、ひどく辛口で、カラカウア王の悪口もいっぱい書いてある。王と従者というより、もともとは学友だった二人だから、そういう視点で書いている。

 肝心の海底ケーブル敷設の話は注釈で書いてあるだけで、詳しい話はなかったけど、日本の明治政府が莫大な金額をかけてカラカウア王を歓待して、王様と従者3人が仰天している様子がおもしろい。明治天皇の人となりもちょっと分かってイメージが変わった。荒俣宏が博学を駆使していろいろ注釈を付けてくれているのも楽しい。

Motohiro Tsuchiya, ”Digital Divides in Pacific Island Countries: Possibility of Submarine Cable Installation for Palau”

Motohiro Tsuchiya, “Digital Divides in Pacific Island Countries: Possibility of Submarine Cable Installation for Palau,” G-SEC Working Paper, no. 32, September 5, 2012 <http://www1.gsec.keio.ac.jp/text/working_detail.php?n=34>.

太平洋島嶼国におけるデジタル・デバイド」という論文を英語にしたものをグローバル・セキュリティ研究所(G-SEC)のワーキングペーパーとして載せた。

海底ケーブルの話は調べるほどおもしろい。

今は100年前の太平洋ケーブル、特にハワイをめぐる争いについて調べている。イギリスがハワイ王国につながせてくれと頼むと、互恵条約を根拠にアメリカが拒否、アメリカは補助金を使ってアメリカの海底ケーブルを引こうとするが、議会を巻き込んでの大論争。そこに無料で引いてやると現れた実業家。米西戦争のあおりでハワイも併合……といった感じでドラマが続く。

これは是非とも次の本としてまとめたい。もうすぐ出る『サイバー・テロ 日米vs.中国』で本を書くのは終わりにしようと思っていたんだけど、また書きたくなってきた。インターネットの研究をしている私が100年前の文献を読むなんて考えにくかったのだが、とてもおもしろい。

今日は『明治天皇紀』や『日本外交文書』でハワイのカラカウア王が来日した時の記述を読んだ。「国王」ではなく「皇帝」として書いてあるのもおもしろい。カラカウア王は明治の日本が初めて迎えた外国の皇帝だから礼を尽くせと明治天皇が指示し、「微服間行」で「アリー・カルカウア」という偽名でやってきたカラカウア王は、あまりの歓迎ぶりにびっくりして滞在を延長することになる。

そして、カラカウア王は、(1)アジアの諸国が欧米に対抗するために連合し、その盟主に明治天皇がなるべきだ、(2)海底ケーブルをハワイとの間に引こう、(3)カラカウア王の姪を日本の皇室に嫁がせたい、という三つの驚くべき提案をする。どれも実現しないのだが、(1)なんかは明治天皇の国際情勢認識に影響を与えたんじゃないかと思う。想像が膨らんでおもしろい限りだ。

授業が始まるまでにある程度読み込んでおきたい。

ウッドワードもの

ボブ・ウッドワード(伏見威蕃訳)『ブッシュのホワイトハウス(上・下)』日本経済新聞社、2007年。

ボブ・ウッドワード(伏見威蕃訳)『オバマの戦争』日本経済新聞社、2011年。

 できれば毎日一本は専門の論文を読みたいと思っていて、なるべくこのブログで記録しようと思っている。それなりに読んでいるけど、記録する手間を惜しんでしまう。

 論文ではないけれども、最近は気分を変えたくて、仕事帰りのバスと電車の中で上記の3冊を読んでいた。『ブッシュのホワイトハウス』はかなり評判が良くて、原著発売直後に買っていたけれども、どこかに行ってしまい、そのうち翻訳が出るからいいやと思っていたら読み損ねていた。

 評判通り、『ブッシュのホワイトハウス』はおもしろい。さんざんインタビューに応じたと思われるラムズフェルド国防長官がぼろくそに書かれていて気の毒でもある。同じ著者による『ブッシュの戦争』や『攻撃計画』と重なる部分もあり、つながっている本でもある。

 ただ、『ブッシュの戦争』と『攻撃計画』でブッシュ政権がぼろくそに書かれたこともあり、『ブッシュのホワイトハウス』についてはブッシュ大統領はインタビューに応じなかったようだ。

 その後、『オバマの戦争』を読み始めたら、ラムズフェルド国防長官が解任されたシーンが出てこない。翻訳されていないけれども、『ブッシュのホワイトハウス』と『オバマの戦争』の間には、

Bob Woodward, The War Within: A Secret White House History 2006-2008, New York: Simon & Schuster, 2008.

というのが出ていた。しまった。慌てて手に入れたが読めていない。

 翻訳されなかったのはおもしろくなかったからだろうか。

 そのまま『オバマの戦争』を読み終えたが、こちらはアフガニスタンへの米軍増派のプロセスが延々と書かれていて、いまいちおもしろくない。ラムズフェルドやコリン・パウエル国務長官、コンドリーザ・ライス安全保障担当補佐官、ジョージ・テネットといった役者が揃っていないからか。それに比べてオバマ政権の閣僚たちはいまいち小物だ。この本の出版時点ではオサマ・ビン・ラディン殺害も起きていない。

 オバマ大統領への直接のインタビューは1時間ほどだったようだ。ネタもとはジョーンズ補佐官や軍関係者なのだろうか。しかし、軍の将軍たちがどうしようもない存在として描かれている。

 ただ、この本の冒頭で描かれているブッシュ政権からオバマ政権への移行プロセスと、インテリジェンスの役割については非常におもしろいので、授業でも使おうと思う。

 The War Withinに戻らないで、今はブッシュ大統領の回顧録『決断のとき(上・下)』を読んでいる。当然ながらウッドワードの視点とは全然異なる。読み比べるとおもしろい。特に、ブッシュが信仰によって強く支えられているという点が印象的だ。

太平洋国家アメリカ-国境を越える統治機構と文明-

 3月27日(火)14時から、三田でシンポジウムを開催。

 たぶん、ほとんどの人がシンポジウムのテーマにピンと来ないと思うのだけど、言うまでもなくパラオのような太平洋島嶼国やアジア諸国はアメリカ合衆国の影響を強く受けている。しかし、その内容については漠たるイメージで語られていて、ちゃんと議論されていないのではないだろうか。

 憲法のような統治機構と、各種の技術のような文明という視点からそれを捉え直してみようという企画。

 基調講演をしてくださる加藤良三・元駐米大使は、沖縄の統治システムについてアメリカが与えた影響を論じてくださる予定。パネリストの3人は打ち合わせ段階から異常に盛り上がっているので、私はちゃんと司会ができるかどうか不安。

■アメリカ研究プロジェクト年次シンポジウム

  「太平洋国家アメリカ -国境を越える統治機構と文明-」

  今年度開始となりましたG-SECアメリカ研究プロジェクトの

  年次シンポジウムを開催いたします。ぜひご参加ください。

  

日 時 2012年3月27日(火) 14:00〜17:00(13:30 開場)

  会 場 慶應義塾大学三田キャンパス 東館6階G-SEC Lab. 

【基調講演】

加藤 良三(元駐米大使)

【パネルディスカッション】

待鳥 聡史(京都大学大学院法学研究科教授)

阿川 尚之(慶應義塾常任理事)

駒村 圭吾(慶應義塾大学法学部教授)

<司会>

土屋 大洋(慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授、

       グローバルセキュリティ研究所副所長)

【概要】

「太平洋大統領」を自認するオバマ大統領のもとで、米国はアジア太平洋地域へ転換あるいは回帰しつつある。しかし、歴史を見れば、これまで何度も米国はアジア太平洋地域に、憲法、法制度、行政機構、金融・経済体制、教育、科学技術、さらには広く文明や文化のさまざまな側面において、大きな影響を与えてきている。アジア太平洋地域重視を進める米国の動きを、特に第二次世界大戦終了後から振り返り、米国の統治機構と文明が日本をふくむこの地域にどのような影響を残してきたかをさまざまな角度から検討する。

【お申込方法】

お申込情報登録フォームより、必要情報を入力の上、お申込ください。

http://www1.gsec.keio.ac.jp/text/workshop/index