福島康仁「宇宙空間で軍事的な挑戦を受ける米国」

福島康仁「宇宙空間で軍事的な挑戦を受ける米国—『暗黙の了解』の限界とオバマ政権の対応—」防衛研究所ニュース、159号、2011年11月号。

 米ソ(露)の間にあった「暗黙の了解」が崩れてきているとの指摘。「暗黙の了解」を共有しないアクターが台頭してきているのと、対宇宙システムおよびその関連技術の拡散が進行しているからだという。

 宇宙も面倒くさくなってきている。

ロバート・S・ロス「中国の海軍ナショナリズム」

ロバート・S・ロス(八木直人訳)「中国の海軍ナショナリズム:その起源と展望、米国の対応」『海幹校戦略研究』第1巻1号増刊、2011年8月、47〜85ページ。

 ちょっと長いが、海軍力を増大させている中国が何を考えているか分かる。地政学的な考察をしている。著者はボストン・カレッジ教授。

Yan Xuetong, ”How China Can Defeat America”

Yan Xuetong, “How China Can Defeat America,” New York Times, November 20, 2011.

 著者は精華大学の教授。「どうやって中国はアメリカを打ち負かすか」という鷹派的なタイトルだが、中味は、中国は思想やモラルを重視しないとアメリカに勝てないというもの。アメリカは50カ国以上の同盟国を持ち、アフガニスタン、イラク、リビアと三つの戦争を同時に戦う能力があるが、中国は正式な同盟国は一つもなく(半同盟国として北朝鮮とパキスタンがあるのみ)、人民解放軍は近年戦争を経験していない。中国がグローバルなリーダーとなるには世界の人々のハーツ&マインズを勝ち取らなければならないという。

 中国がこうした政策に最も成功したのは唐の時代だったという指摘もおもしろい。遣唐使があったように、日本もたくさんの留学生を唐に送っていた。経済や軍事にフォーカスした政策を改めよというのが著者の提言。

日本国際政治学会「ソーシャルメディアと政治変動の国際比較」

 今日は日本国際政治学会の以下の部会で討論者をしてくる。お三方の論文を読んで、それぞれおもしろかった。

 この部会、けっこう若い。前嶋先生が65年生まれ、中山先生が67年生まれ、私が70年生まれ、阿古先生が71年生まれ、山本先生が75年生まれ。でも10年の幅がある。本当のネット世代は74年生まれ以降というから、実はほとんどの人がネット・イミグラント。きっと聞きに来る人も若い人ばっかりなんだろうけど、どんな議論になるかな。

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部会 9 ソーシャルメディアと政治変動の国際比較

司会 中山俊宏(青山学院大学)

報告 前嶋和弘(文教大学)「アメリカの政治過程におけるソーシャルメディア―ティーパーティ運動と『インターネット・フリーダム』をめぐって」

山本達也(名古屋商科大学)「アラブ諸国における政治変動とソーシャルメディア」

阿古智子(早稲田大学)「ネット世論の高まりに見る中国の『民主』」

討論 土屋大洋(慶應義塾大学)

増田米二『原典 情報社会』第I部

増田米二『原典 情報社会—機会開発者の時代へ—』TBSブリタニカ、1985年。

第I部 情報社会総論(25〜57ページ)

 未来を予測することはとても難しいが、増田は本当によく見通していたなと思う。

 第I部では「機会産業(opportunity industry)」の概念も示される。増田が予測したほどわれわれは自由時間を享受できていない感じがするが、それも主観的な判断に過ぎず、労働による拘束時間は減っているのかもしれない。もう一つは、政治体制が増田が予測したほど変化していない。

増田米二『原典 情報社会』序論

増田米二『原典 情報社会—機会開発者の時代へ—』TBSブリタニカ、1985年。

序論——情報社会論へのアプローチ(15〜24ページ)

 これも大学院の課題文献。

 序論では基本認識が示されている。ここで出てくる「情報ユーティリティ(情報市民公社)」というのは結局インターネットだったんだな。この本よりさらに古く、1967年に出た『コンピュートピア―コンピュータがつくる新時代』の中で「情報ユーティリティ」の発想は出てきているらしい。探してみるか。

エズラ・F・ヴォーゲル『Japan as No.1』第10章「教訓」

エズラ・F・ヴォーゲル(広中和歌子、木本彰子訳)『Japan as No.1—アメリカへの教訓—』ティービーエス・ブリタニカ、1979年。

第10章 教訓——西洋は東洋から何を学ぶべきか(261〜296ページ)

 これで『Japan as No.1—アメリカへの教訓—』は終わり。

 外国人は日本の大学で教授になれないと書いてあるけど、今はたくさんいる。企業の社長やCEOにも外国人がなっている。この時代からずいぶん日本も変わった。

 訳者あとがきによると、グレン・フクシマさんの奥さんの咲江さんも翻訳に参加していたそうだ。咲江さんはヴォーゲルの助手をしていたようだ。この頃留学して人たちの奥さんたちもその後活躍している。訳者で、広中平祐夫人の和歌子さんは、その後、国会議員にもなっている。

エズラ・F・ヴォーゲル『Japan as No.1』第9章「防犯」

エズラ・F・ヴォーゲル(広中和歌子、木本彰子訳)『Japan as No.1—アメリカへの教訓—』ティービーエス・ブリタニカ、1979年。

第9章 防犯——取り締まりと市民の協力(237〜258ページ)

 インテリジェンスに対するアレルギーが強いのとは対照的に、警察への協力度が高かったのはなぜなんだろう。案外、インテリジェンスに反対しているのはマスコミだけなのかもしれない。