国際関係・安全保障用語辞典 第2版

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小笠原高雪、栗栖薫子、広瀬佳一、宮坂直史、森川幸一編『国際関係・安全保障用語辞典 第2版』ミネルヴァ書房、2017年。

 今どき、第2版が出るなんていうのはめずらしいことですが、2013年初版の『国際関係・安全保障用語辞典』の第2版が出ました。

 私は「インテリジェンス」「インテリジェンス・コミュニティ」「サイバー攻撃」「サイバーセキュリティ」を担当しました。

 総勢33人で執筆しており、同僚の中山俊宏さんと神保謙さんも参加しています。

提言 日米同盟を組み直す 東アジアリスクと安全保障改革

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田中 明彦、日本経済研究センター編『提言 日米同盟を組み直す 東アジアリスクと安全保障改革』日本経済新聞出版社、2017年。

 月末に発売です。私は「第7章 サイバー安全保障と日米インテリジェンス連携」(139〜151頁)を担当しています。あまり部数を刷らない上に、某会合でたくさん配布してしまうらしいので、あまり市中には出回らないかもしれません。

目次

  • 提言 より強固な同盟を目指して
  • 1. 21世紀における同盟の課題と使命(国際情勢と世界秩序):田中明彦・政策研究大学院学長
  • 2. アジア旋回と同盟の役割(ASEAN、インド):白石隆・アジア経済研究所長
  • 3. 「切れ目のない同盟」の連携体制(日米NSCの統合運用):細谷雄一・慶應義塾大学教授
  • 4. 世界秩序の再構成と日米同盟の役割(ロシア、中東、欧州):中西寛・京都大学教授
  • 5. 習近平体制の中国と同盟の対中政策(中国、朝鮮):高原明生・東京大学教授
  • 6. 同盟の軍事オペレーションと懸案(SOFA、基地運用):森本敏・拓殖大学総長
  • 7. サイバー安全保障と日米インテリジェンス連携:土屋大洋・慶應義塾大学教授
  • 8. 新しい日米経済関係の構築:竹中平蔵・東洋大学教授
  • 9. 世界経済と日米経済・貿易ビジョン:岩田一政・日本経済研究センター理事長

特別研究プロジェクト@台湾

 わがSFCには特別研究プロジェクトという制度があり、夏休みや春休みに国内外で集中授業を行うと単位が付く。私は今までやってことがなかったが、たまたま日程がうまく空いたので、初めて8月上旬に実施した。10人の学部学生とともに台湾を訪問し、安全保障と文化における日台協力について学んだ。

 田中靖人・産経新聞台北支局長(SFC出身)にレクチャーをお願いしたり、台湾師範大学でもレクチャーをお願いしたりした。

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 有名な誠品書店を訪問すると確かに日本の本や雑誌が置いてある。写真は子供用のセット。台湾の子供もこういうのを買うのだろうか。それとも現地在住の日本人向け?

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 私の個人的な調査対象としては淡水という街にある海底ケーブル陸揚局。

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 中国語(繁体字)で海底ケーブルは「海底電纜」、陸揚局は「海纜站」というらしい。

 最終日の午後に国立政治大学で成果報告会を開き、コメントをいただいた。日台協力というのは簡単だけど、具体的に何ができるかと考えるととても難しい。お互いの文化が気に入って旅行しているだけではほとんど何も改善しない。それをひとまずは学生たちが認識してくれたようなので、ひとまず良かったことにしよう。

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 もちろん、合間にはおいしい料理もいただいた。写真は学部の時の同級生に連れて行ってもらった居酒屋での宴会料理。シジミの醤油漬け老酔蜆子がどこでもおいしい。

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サイバーセキュリティの地政学

土屋大洋「サイバーセキュリティの地政学」『ITUジャーナル』2017年9月号、21〜23頁。

 期間限定で全文読めるそうです。

 大学院生の頃は、どうやったらこの雑誌に書かせてもらえるのだろうと思っていたのに、突然あっさりと執筆依頼が来て、その割に書くのに苦労してしまいました。3ページ目に大きな空白が空いているのは、たぶん私が図を入れなかったからです。

EWCで小さなシンポジウム

 2014年から15年にかけてハワイのイーストウエストセンター(EWC)に客員研究員として置いてもらい、それはそれで充実した研究の時間をもらえて良かったのだけど、新しい研究テーマとして太平洋軍(PACOM)を見つけて来た。

 それから年に一、二度、ハワイに通い、太平洋軍の研究プロジェクトを行ってきた。その一環として、8月22日に小さなシンポジウムをEWCで実施させてもらった。

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 キーノートは元太平洋艦隊司令官のAdm. R.J. ”Zap” Zlatoperで、率直にPACOMについて教えてくださった。日本からは元海上自衛隊の中村進さん、日本国際問題研究所の小谷哲男さん、慶應法学部の西野純也さんに来てもらった。

 アメリカ側からは他におなじみのBrad Glossermanさん(もうすぐ日本で仕事を始めるそうだ)、朝鮮半島の専門家のKevin Shepardさん、プロジェクトのメンバーのEWCのDenny Royさんが参加してくれた。

 三澤康ホノルル総領事とRichard Vuylsteke EWC所長もご挨拶をしてくださった。

 PACOMの現役の軍人も参加してくれて、小さいながらも良いシンポジウムだった。アジェンダはこちら

 ところで、この翌日、PACOMを訪問して意見交換をする機会をいただいたのだが、帰り道、高速道路でタイヤがパンクするというアクシデント。運転中に何か変な音がするなと思ったら急にガタガタガターと音がして慌てて路肩に止める。右前輪のゴムの部分が完全に外れて、高速道路の後ろのほうに転がっている。後続の車がよけながら走っていて危ない。初めての経験でオロオロしてしまったが、ハイウェイパトロールのおじさんがやってきて、あっという間に直してくれた。誰もけがをしなかったので良かった。

 2014年の滞在中、パリ・ハイウェイを走っていたら2台前の車が、対向車と正面衝突し、炎上するという事故も見たことがある。ハワイの運転はよくよく気をつけないと。

護衛艦いずも

 海上自衛隊の護衛艦いずもに体験乗艦する機会をいただいた。研究者5人、プレス10人、それにASEAN諸国の若手士官10人がシンガポールから乗り込み、南シナ海で訓練を行いながら4泊5日を過ごし、再びシンガポールに戻った。シンガポールまでの渡航費は自己負担、艦内での食事代も自己負担だが、こうした機会はめったにいただけることではない。

 ASEAN諸国の若手士官は防衛省のビエンチャン・ビジョンに基づいて、艦内でセミナーを受講したり、訓練に参加したりしていた。

 プレスの皆さんはASEANの若手士官たちの様子や艦内の様子を取材していた。すでにいくつか動画がYouTubeに載っている。


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 私たち研究者は自衛隊の皆さんにレクチャーしたり、訓練を見学させてもらったり、ASEANの若手軍人たちと懇談したりして過ごした。ゲスト用の個室をそれぞれ提供され、快適に過ごすことができた。

 朝5時55分に「総員起こし5分前」という号令が放送でかかるとみんな身支度(会場自衛隊では「身辺整理」と呼ぶ)を始め、6時に「総員起こし」の号令がかかる。6時15分から朝食、11時15分から昼食、17時15分から夕食と規則正しく動く。海上では携帯電話もインターネットもつながらない。時々、艦橋で海図を見せていただきながら、位置を確認していく。

 朝晩は天気が崩れることが多いが、一晩だけ、南シナ海の満天の星空を見ることができた。赤道近くの星座はよく分からなかったが、あれだけの星を見たのはハワイのマウイ島ハレアカラ山頂で見て以来だった。しかし、デジカメで星空は写せない。

 今回の私のベストショットは、夕暮れの海に飛び立つヘリコプターSH-60Kである。

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 艦内をいろいろ見学させてもらって改めて感じたのは、こうした大きな艦艇はチームワークで動かすしかないということ。艦橋で「おもーかーじ(右旋回)」と号令がかかると、その後ろにいる操舵手が実際に舵を切る。しかし、エンジンのスピードはずっと下の機械室で操作している。機械室では艦橋からの指示がジリンジリンと鳴るベルで伝えられ、操作盤のボタンを押してエンジンのスピードを調整する。機械室にいる人たちは窓もなく、外の様子が全く分からない。艦橋からの指示がおかしいと思ってもそれに絶対に服従する。そこに信頼関係がなければ操艦はできない。

 さまざまな人たちが役割分担をしながら護衛艦いずもは動いている。乗員だけで400人以上。いずもはすでに熊本の被災地支援に出動しているが、東日本大震災時のような大規模な災害も想定して数百人を収容できるようになっている。三食を確実に用意することに専念をする人、見張りに徹する人、ヘリコプターの整備に専心する人、たくさんの職種と階級に別れてチームワークは成り立っている。甲板より上にいて、常に外の様子が分かる人は半分もいないのではないか。船の下のほうに何層も降りていったところにあるエンジンルームは、常に轟音と熱がある。そこで何時間も過ごす乗員の皆さんのご苦労は計り知れない。

 ちょうど伊豆半島沖で米イージス艦フィッツジェラルドの事故があった直後で、艦艇を安全に動かすことの難しさが再認識されていたときだっただけに、非常に良い体験だった。海上自衛隊の皆さんの努力に敬意を表したい。そして、第1護衛隊群の伍賀群司令、いずもの甲斐艦長、大勢の乗組員の皆さんに感謝したい。

 一緒に乗艦した研究者たちの多くは、シンガポール港に帰港した際、「もっと乗っていたい」と言っていた。facebook中毒の同僚Hさんまでそう言っていたので驚いた。私は正直、「もう十分」という感じだった。私の名前は海上自衛隊向きだとよくからかわれるのだが、私に船乗りは務まらない。シンガポールから飛行機で帰国した後も体がユラユラしている感覚がなかなか抜けなかった。