団塊の世代

堺屋太一『団塊の世代』文春文庫、1980年(初版単行本は講談社から1976年)。

最近、本屋に行くと中高年をねらった趣味の雑誌が目に付く。いわゆる団塊の世代(狭義には1947年から1949年生まれ)が55歳から57歳くらいになり、子育てが一段落して趣味にお金を投じ始めているのをねらっているらしい。しかし、団塊の世代とは何なのかよく分からないので、読んでみようと思い立った。

社会評論の本だと思っていたのだが、実は短編4本からなる小説だった。読んでいて何だか記述が変だ。高度成長の60年代、混乱の70年代、そして陰鬱な80年代という舞台設定になっている。しかし、80年代後半は円高バブルがあったはずだ。それもそのはずで、1976年時点で未来を予測しながら書いた近未来小説なのだ。高度経済成長期に就職した団塊の世代がその後、80年代や90年代にいかに苦境に直面するかを描いている。

1985年のプラザ合意に伴う円高など予測はできなかっただろうから、細かい点は言っても仕方がないが、団塊の世代が社会にどういう影響を与えるかを予測しているところは正しかったのだろうか(身近に団塊の世代の人がいないので実感がつかめない)。冒頭に書いてある言葉は興味深い。

この「団塊の世代」は、

過去においてそうであったように、

将来においても数数の流行と需要を作り、

過当競争と過剰施設とを残しつつ、

年老いて行くことであろう。

現代社会のブームと変化を世代という視点から見ることは重要だろう(もちろんそれがすべてではないとしても)。アメリカのベビー・ブーマーについて書いたおもしろい本を読んだことがあるが、そのタイトルが思い出せずはがゆい。

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