全米社会学会はいろいろ用事があってフルに参加できなかったけど、視点の違いが見られておもしろかった。政治社会学者(political sociologist)と政治学者(political scientist)は協力できるのかというパネル・ディスカッションでは、「やってられない」という人と「できるよ」という人がフロアを交えて議論していて、聞いていると苦笑してしまう。
社会学者から見ると政治学者は価値や制度にコミットしすぎているそうだ。例えば、民主主義は良いものだということを前提として議論している。社会学者は良いかどうかの判断はさておいて、人々がどうやってインタラクションしているかに関心があるので、民主主義がどうなっても構わない!
まあ、そうかもしれない。社会学の議論を聞いていると、とっかかりがないという気がする。「それで?」と聞いてみると、「それだけ。それがおもしろい」という答え。
政治学は社会のデザインとか批判ということを重視しているから、自分が依拠する立場に自覚的でありながらも、特定の価値を持つことを躊躇しない。リアリストでもリベラリストでも構わない。立場の違いに過ぎない。
社会学は何でも相対化してみて、自分たちに埋め込まれた価値からできるだけ中立的であろうとするみたいだから、何でもぶった切ろうとするマクロな一般論と、一般化を拒否するミクロな個別論に分かれていて、両者をつなぐ議論がなかなか出てこない。
政治学はアリストテレスまでさかのぼる伝統があるくせに節操が無くて、いろいろな分野から知見や手法を借りてきてしまって恥じるところが全然無い。社会学者は新興勢力だからか、社会学らしさにこだわりつつ、まだそれが誰にもよく分からない。
いずれにせよ、事前登録参加者だけで4900人を超えるという大きな全米社会学会である。優勢な学問分野であることには変わりない。