ボストンへ

3月13日にトルコのアンカラ帰ってきてからあっという間に10日間が過ぎた。17日から20日までの4日間はいろいろな人たちと会い、ご飯を食べまくった。大学の研究会(ゼミ)も解散になるので、OB&OGも含めた解散パーティーを企画してくれて、これは愉快だった。なんといっても学生たちの才能の豊かさ、発想のおもしろさにはいつも驚かされる。最初に会ったときは無個性に見えた彼らが、だんだんと本性を現し、おもしろいことを話し出すのを見ているのは実に楽しい。

21日から23日までは家族や親戚と会ったり、お墓参りをしたり、最後の荷造りをしたりして過ごした。その間も外食が多かったので、確実に太ったと思う。

そして、24日、雨の中、大きな荷物と共に成田空港にたどり着き、飛行機に乗った。実に疲れた。天候が悪くて離陸してからしばらくは揺れがひどかった。本を読み始めたのだが、揺れが帰って気持ち良くなり、すぐに眠ってしまった。目が覚めてからまた本を読み続けた。

読んだのは、Nさんに紹介してもらった勝間和代さんの『効率が10倍アップする新・知的生産術—自分をグーグル化する方法—』(ダイヤモンド社、2007年)である。Nさんのお知り合いだとかで、おもしろい人だとうかがっていた。本の内容も強烈だった。私が最もショックを受けたのは、カカオ(チョコレート)も一種の依存症を引き起こすものであり、それに依存しているということは頭の働きがかなり落ちている可能性があるという指摘である。私は麦チョコが好きだったと言ったら、学生が山ほど麦チョコをくれたことがあったが、チョコなんか食っているのは知的生産者としては失格ということになる。まずいなあ。

機内での食事が終わって、ようやく一息付けるようになったので、ノートパソコンを開いて、このエントリーを書き始めた(ブログに乗るのはまたしばらく先になるだろう)。3月に入ってからはメールを書く余裕もなくなり、読む時間すらなくなったので、返事待ちがたくさんたまっている。出発前に終わらせなくてはいけない仕事も結局持ち越してしまった。悪いことに、最近は神経が麻痺してきて、メールを読まなくてもいっこうに平気になってしまった。

もう一冊読んだのが、梅田望夫『シリコンバレー精神』(ちくま文庫、2006年)だ。とてもおもしろく読んだのだが、えっと思ったのが岡本行夫さんとの出会いの話。梅田さんと岡本さんが出会った直後の頃だと思うが、岡本さんとほんの一瞬だけ仕事をご一緒したことがあって、この本に出てくる話を聞いていたことを思い出した。あの話は梅田さんの話だったのかと驚いた。

乗り換えのシカゴに近づき、飛行機の窓のシェードを開けると、白い雲が一面に見える。ところが地面も真っ白だ。3月の末だというのにシカゴでは雪が降ったらしい。幸い、ボストンでは雪はなかった。しかし、東京よりはまだ寒い。

ところで、なぜ飛行機に乗ったかというと、普段お付き合いのある方々にはすでにお知らせの通り、これから来年の春まで約一年間、米国ボストンのMIT(マサチューセッツ工科大学)で在外研究を行うことになっている(正確には、MITやハーバードはボストン市の隣のケンブリッジ市にある)。なぜ米国か、なぜMITかという説明はとても長くなるのだが、ヨーロッパに行こうと思っていたけど、扉が重くてなかなか開かず、知り合いが誘ってくれたのでMITにしたというのが簡単な説明だ。7年前にも米国に行き、1年間過ごしたことを考えると、ヨーロッパのほうがおもしろそうだと思っていたのだが、今年は米国の大統領選挙があるということも米国に方針転換する要因になった。ここまでもつれるとは思っていなかったけれど、おもしろい展開である。

しかし、大統領選挙を研究しに行くわけではない。おそらく、マスメディアや在米日本人ブロガーがたくさん大統領選挙はウォッチするだろうから、私が出る幕ではないと思う。純粋にエンターテインメントとして楽しもうと思う(エンターテインメントといったら叱られるかもしれないけど)。

さっきの勝間さんの本では、五つのテーマを普段から持っていると良いと書いてあるので、この一年間見ていきたいテーマを五つ挙げておこうと思う。たった1年で五つを追いかけるのは難しいかもしれないけど、テーマを一つに絞れない私としては片手で数えられる五つを積極的に追いかけていこうと思う。

・インテリジェンス・コミュニティ:特にブッシュ政権の通信傍受。たぶん、これについては複数進んでいる裁判の判決が出るとともに、議会もそれなりの対応策(通信会社の免責法案など)を決めるのではないかと思う。

・情報通信政策:これは私にとってはサブテーマなのだけど、なぜかこちらのほうが需要が大きいのでやめられなくなっている。通信と放送の融合や、電波政策などの他、新しい動きがあればウォッチしたい。ただし、大統領選挙中なので、あまり大きな動きは出なくなっているのではないかと思う。FCCの高官たちも身の振り方を考えなくてはいけない時期だ。しかし、逆にどさくさ紛れに変な動きが出るかもしれない。

・国際政治理論:大学でのメインの授業は国際関係論ないし国際政治理論なので、この動向もウォッチするとともに、日本やアジアの思想・理論をどうやって統合するかも考えたい。

・文明論・帝国論:米国が衰退しているといわれたり、イラク戦争とアフガン戦争が終わらなかったりしている中、大統領選挙が行われる。米国がこの先どうなるのか、長期的な視点で考えたい。

・科学技術政策:最近興味があるのが遺伝子だ。この分野での発展は著しい。ヴァネバー・ブッシュ以来、MITは米国の科学技術政策に大きな影響を与えてきたので、この辺も追いかけていきたい。

全部で成果を出すのは難しいかもしれないが、とにかくどん欲にやってみよう。

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