ケンブリッジの日本食材店

5日目の朝、メールを読もうとMITまで出かけると、Kenneth Oye教授に会った。Oye教授とは1月に東京で会っている。Cooperation under Anarchyの研究で知られており、私がMITで所属する研究所の前所長でもある。今は技術と国際関係に関するプロジェクトを展開しており、それに私も少し参加させてもらうことになっている。Oyeという名前はおそらく「大家」で、日系の先生なのだが、日本語はほとんどお話しにならない。

Kendallの駅を見晴らす眺めの良いOye教授の部屋で少し話をして、生活の立ち上げがまだ十分できていないと言ったら、今から買い物に行こうと言ってくださる。しかし、平日の昼間から買い物に行ったら仕事に支障が出るのではないかと言ったら、どうやら今はイースターホリデー期間らしく、大学はお休みモードなのだそうだ。各所の事務部門は開いているので気づかなかったが、授業は行われていないらしい。メールを読み終わる前にせかされるように買い物に行くことになった。

教授のスバル・レガシーに乗り、私の自宅で妻を乗せてから、日本食を売っている郊外の店へ向かう。途中、Porter Squareというところで日本食を売っているお店と小さなレストランが集まっていると教えてくださったが、そこはちょっと高いらしい。そこから少し離れたところにあって、車がないと行けないReliable Marketというお店が目的地だ。韓国系のお店だが、日本の食材はほぼ完璧に揃っている。ワシントンDCの日本食材店よりも豊富だし、賞味期限が切れていない。たぶん入手できないだろうなと思っていたしゃぶしゃぶ用の薄い肉まで売っている。ケンブリッジはあなどれない。外国に住むとにわかナショナリストになってしまうことが多いが、そんなときは日本食を食べて元気を回復しよう。

もう一軒行こうと連れて行ってくださったのがポルトガル・パンの店Central Bakery(732 Cambridge Street, Cambridge, MA 02141)である。実に地味な構えで、紹介がなければ入る気のしないお店だ。ポルトガル特製のコーン・ブレッドという大きなパンがおすすめらしい。私たちの次の客は大量に買い込んでいる。レストランで出しているらしい。帰宅してから食べてみると、外側はカチカチに固いのだが、内側はもちもちしていて確かにおいしい。

このパン屋の周辺はいろいろなエスニック系の店が並んでいるようだ。高層ビルが建つボストンからチャールズ川を隔てたケンブリッジ側は、あまり高い建物もなく、田舎町の風情が少し残っているが、なかなか捨てたものではない。大きすぎるニューヨークや、ぎすぎすしたワシントンと比べても、住み心地の良いところに思えてきた。J・K・ガルブレイスの本の中でケンブリッジが良いところだと書いてあるのも分かってきた。世界中から研究者が集まってコスモポリタン的だし、学生・大学院生が多いから活気もある。

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