自衛隊沖縄基地見学

 3年ほど続けてきたアメリカの海洋戦略に関する共同研究が終了に近づき、まとめの議論をするために沖縄で合宿をした。無論、リゾート気分を味わいたいからではなく、アメリカの海洋戦略の要衝となっている沖縄を見学するためだ。

 3日間の合宿のうち、初日と2日目は4人の研究報告。私は11月に済ませているので司会だけでよく、割と気軽だった。

 3日目は自衛隊基地と米海兵隊基地の見学。海兵隊のほうは、旧知のロバート・エルドリッヂさん(大阪大学の教官から海兵隊に転身)に案内してもらい、彼が中心になって進めた気仙沼の大島小学校との交流の話を中心に聞く。

http://www.kanji.okinawa.usmc.mil/Releases/110803-Release.html

 自衛隊基地は、研究メンバーに自衛隊関係者が二人いたので実現した。基地内に残る旧海軍の砲台を見たり、P-3C哨戒機、F-15を間近に見せてもらったりした。

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 両方ともよく整備されているが、いささか装備が古いという印象も受ける。哨戒機としてはゆっくり飛ぶことができるプロペラ機のP-3Cは優秀とのことだったが、それでも導入から30年経っている。F-15も次世代の戦闘機には対抗できない。日本の防衛はなかなか難しい。

 共同研究の成果は来年出版される見通し。私はしつこく海底ケーブルの話を書く予定。先のパラオやハワイの話もここにつながる。

ハワイの海底ケーブル陸揚げ局(その4:終わり)

 週末に陸揚げ局を見に行ったのだが、平日はハワイ大学の図書館で資料を漁っていた。ハワイ大学は州立大学なので誰でも入れる。本の貸し出しはできないが、ほぼ全ての資料にアクセスできる(日本の国立大学もそうすべきだと思うのだが、なぜかそうなっていない)。州立大学は政府関連資料も充実しているのが良い。

 だいたい100年ぐらい前の資料を目当てに探していて、いくつかはすでに電子化されてデータベースに載っていた。インターネット万歳。他の古い資料はマイクロフィッシュになっている。たぶん、これも東京のアメリカン・センターにあるのかもしれない。

 ただ、ここでしかアクセスできない資料もいくつかあって、その中でも他ではアクセスできないなと思ったのは1956年にハワイ大学に提出された修士論文。まだパラパラと目を通しただけだが、かなり使えそうだ。参考文献リストからたどって、1911年にハワイ歴史学会の会報に載った文章にもたどりついた。芋ずる式に資料が見つかるとおもしろい。

 いろいろ見つかった資料をざっと眺めてみると、ハワイがまだ王国だった1890年代から太平洋ケーブルをつなげようという動きはあったようだ。ハワイにはフィリピンから移民が来ているが、在マニラ米商工会議所から早くケーブルをつなげという催促が来ていて、おもしろい。

 王国だったハワイは、1898年の米西戦争によってハワイの戦略的重要性を認識した米国によって併合されてしまう。そして、海底ケーブルがサンフランシスコ〜ホノルル間で開通するのは1903年である。その年の7月4日の米独立記念日にはミッドウェー、グアム、マニラまでが開通してしまう。すごい早業だ。

 そして、この太平洋ケーブルをつないだのは英米の合弁会社である。はからずもこの太平洋ケーブルの敷設が、大英帝国による海底ケーブル支配を終わらせ、通信事業においても米国の時代が来るきっかけになる。

 大英帝国は太平洋ケーブルをニュージーランドからハワイへ、そして米西海岸へとつないでいたが、米国はハワイから真西へ向かい、グアムにつないだ。そして、そこからフィリピンと日本へとつないだ。東海岸13州から始まった米国は、西部を開拓し、ハワイを併合し、アジアへと辿り着いたのだ。

 戦略という言葉は安易に使うべきではないが、何を考えて米国は海底ケーブルを太平洋に敷設したのか。1900年前後に米国議会は何度も公聴会を開いている。その内容をじっくりこれから読んでみる。

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ハワイの海底ケーブル陸揚げ局(その3)

 次の訪問地は、マカハ(Makaha)である。ここでは、Hide Fukuharaさんがマンホールと陸揚げ局の建物を容易に確認できたとしている。

http://fhide.wordpress.com/2011/09/08/%E3%83%8F%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%81%AE%E6%B5%B7%E5%BA%95%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%AB%E9%99%B8%E6%8F%9A%E3%81%92%E5%B1%80/

 ここはマカハ・ビーチ・パークの中にある。カヘとは違って、ビーチ・パークという名前にふさわしく、白い砂浜の広がるきれいな海岸である。ワイキキからは遠いので、地元の人向けなのかもしれない。

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http://www.submarinenetworks.com/stations/north-america/usa-hawaii/makaha

 ここは詳しい図が上のリンクでも確認できるように、確かにマンホールとAT&Tの陸揚げ局の建物があった。ケーブルそのものは砂浜に埋まっている。

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 ここの様子については、ハワイ大学の図書館で関連文書を見つけた。1970年代に海底ケーブルを追加する際にハワイ・テレコムが州政府に提出した環境評価報告書である。新しくケーブルを敷設する際に工事が行われるが、珊瑚礁はなく、砂浜をほじくり返してケーブルを通すだけだから環境に悪い影響はないと論じていて、詳しい図も載せてある。

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 マカハにつながっているのは、Japan-US CNという海底ケーブルで、太平洋の大動脈と言って良い重要なケーブルである。

http://www.submarinenetworks.com/systems/trans-pacific/japan-us-cn

 しかし、その重要なケーブルがのんびりとした海岸に埋められて陸揚げされているというのも何となく不思議な感じである。

 ハワイは日米間(あるいはアジアと米国の間)の太平洋上にあって、中継点となっているからこそ、高速のインターネット・サービスを享受することができる。しかし、そうした中継点になれなかった太平洋の島々は、人工衛星にサービスを頼るしかない。人工衛星はかつて地球上を覆い尽くす画期的な技術的解決法とされたが、インターネットの大容量通信の時代には対応できなくなっている。今は光ファイバの海底ケーブルが命綱なのだ。

 やや心配になるのは、私のような素人でも簡単に陸揚げ地を見つけられるということだ。何らかの工具を持って夜中にこのマンホールをこじ開け、回線を切断することもできなくはないのではないだろうか。少なくとも2、3日は通信を途絶させることができるだろう。重要インフラストラクチャの防護という点では、心配になってくる。

(続く)

ハワイの海底ケーブル陸揚げ局(その2)

 まずは、ホノルルから一番近い「カヘ(Kahe)」の陸揚げ局へ。ここにはサザンクロス(Southern Cross)という海底ケーブルが来ている。

 場所はカヘ・ポイント・ビーチ・パークという公園になっているのだが、海水浴には適していない。道路から廃線になっている鉄道の線路を横切ると公園の駐車場になっている。駐車場にはそれなりに車が止まっていて、みんなダイビングの準備をしている。

 ビーチ・パークといいながら、ここには砂浜はない。駐車場の向こうは草地になっていて、その向こうは断崖絶壁である。どう見ても崩れかかっている。あちこちに危険だから近づくなという看板が立ててあり、おまけに亡くなった人の十字架まで立っている。

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 ダイビングに行く人たちはやや北側の防波堤のようなところまで行ってから水に入るらしく、プカプカ浮いている人たちが見える。波はけっこう荒く、初心者向きには見えない。

 さらに気になるのは駐車場に散らばるガラス片である。少なくとも二カ所ある。これはどうやら車上荒らしの後ではないか。ダイビングに行ってしまうと、長時間戻ってこないのは明らかだ。その隙にガチャンと車の窓を割られて貴重品を盗まれるのだろう。海の中にまで財布を持っていく人はいないだろう。

 先に訪問しているHide Fukuharaさんは海底ケーブルの痕跡が見つけられなかったという。

http://fhide.wordpress.com/2011/09/08/%E3%83%8F%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%81%AE%E6%B5%B7%E5%BA%95%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%AB%E9%99%B8%E6%8F%9A%E3%81%92%E5%B1%80/

 確かに、それらしきものは見当たらない。あたりを見渡して目に付くのは火力発電所だ。陸揚げ局らしきものは見当たらない。マンホールも見当たらない。無論、ケーブルそのものも見えない。うろうろ歩いてみるが、それらしきものはない。

 道路を挟んで陸側にある火力発電所の入り口まで行き、何か看板でもないかと見てみるが、何もない。すると守衛が出てきてしまった。正直に海底ケーブルの陸揚げ局を探しているんだけどというと、はあっという顔をしていて、知らないとのことだった。あっちにディズニーのリゾートホテルがあるからそっちじゃないかという。退散。

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 次の場所に行くかと車に乗り込み、バックさせていると、ふと駐車場の南側の仕切りを越えたところにマンホールらしきものが見えた。慌てて車を降りて確認しに行くと、確かにマンホールだった。

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 マンホールにはGTEと書いてある。GTEは吸収合併されてすでに消滅している通信会社だ。現在はベライゾンになっている。

http://en.m.wikipedia.org/wiki/GTE

 サザンクロスはベライゾンが現在の共同所有者の一つになっている。見つけた。これが海底ケーブル陸揚げのためのマンホールだ。

 周りをよく見ると、土とアスファルトが海から陸にかけてはがされた跡がある。マンホールから海に向かっていくと、そこだけ小さな入り江のようになっている。岩がゴロゴロしていて降りていく気にはならないが、上から海中に目をこらすと、何となくケーブルらしきものが見える。普通、海底ケーブルは沖合から地中に埋めるが、ここは海岸からすぐのところから地中に入れているのかもしれない。写真に撮っても写らなかったが、あれはケーブルそのものではないかと思う。これがはるかアジアまでつながっているかと思うと感慨ひとしおである。

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 ふとこの入り江の一番奥をのぞいてみると、洞窟のようになっており、なにやら椅子などが置いてある。どうもここに住み着いている人がいるようだ。もういないのかもしれないが、住んでいた形跡がある。邪魔をしないように早々に退散した。

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 陸揚げ局の建物は確認できなかったが、マンホールを見つけただけでも一応の成果だ。

(続く)

ハワイの海底ケーブル陸揚げ局(その1)

 最近、海底ケーブルのことについていろいろ調べている。サイバーセキュリティという点では、物理的なインフラストラクチャとしての海底ケーブルも、重要インフラストラクチャの一部をなしており、その保護をどうするかというのも関心の一つだ。この点はまだあまり議論されていない。

 そこで、海底ケーブルの陸揚げがどうなっているかということにも必然的に関心が及び始めている。そこで、先日訪問したハワイの海底ケーブル陸揚げがどうなっているかを少し調べた。ハワイは米国西海岸と日本との間の中継点になっており、歴史的にも重要である。20世紀初頭に最初の電信の海底ケーブルが日米間で結ばれたときもハワイが中継点になった。

 ハワイには現在五つの主要な海底ケーブル陸揚げ局があるそうだ。

http://www.submarinenetworks.com/stations/north-america/usa-hawaii

 そのうち、二つはハワイ島にあり、残りの三つがオアフ島にある。ホノルルからハワイ島には飛行機か船に乗らなくてはいけないので、オアフ島の三つが比較的アクセスしやすい。三つはいずれもオアフ島の西岸に位置する。

 しかし、ホノルルから一番遠く、オアフ島の北西端に位置するケアワウラ(Keawaula)陸揚げ局は、カエナ・ポイント州立公園(Kaena Point State Park)の中にあり、ここはあまり治安が良くないようだ。サーファーたちが好んで集うそうだが、車上荒らしなどもあるらしい。ここに行くのは断念した。

http://www.submarinenetworks.com/stations/north-america/usa-hawaii/keawaula

http://www.hawaiistateparks.org/parks/oahu/index.cfm?park_id=19

http://community.travel.yahoo.co.jp/mymemo/Nana/blog/15846.html

 残りの二つは、カエナ・ポイント州立公園に行く途中の海浜公園にある。しかし、いずれの二つも、すでにHide Fukuharaさんが訪問している。その後追いになってしまうが、やはり現地は見ておきたい。

http://fhide.wordpress.com/2011/09/08/%E3%83%8F%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%81%AE%E6%B5%B7%E5%BA%95%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%AB%E9%99%B8%E6%8F%9A%E3%81%92%E5%B1%80/

(続く)

サイバーセキュリティに関する日米協力

 サイバーセキュリティに関する日米協力についての未公刊論文を読ませてもらった(英語)。インタビューを受けたので先に読ませてもらった。

 ところで、この年齢になるとだんだん情報が自分に向かって集まってくるんだなと最近気がついた。

 学生の頃は、どこに情報があるのかも分からず、手に入れた情報の価値も分からなかったけど、今はパズルのようにその情報の位置づけが分かるようになりつつある。

 無論、まだ瞬時に判断できないものもあるし、間違えるものもある。後から、あれはそういう意味だったのかと気づく。

 社会科学ってこういう経験値の高さが重要だって気がする。専門家と見なされている人に情報は集まってくるし、情報を処理すればするほど経験値が高まる。

 無論、自然科学にもあるんだろうけど、自然科学者のピークが30歳から40歳の間に来るのに対し、社会科学者は年の功が大きい。大御所の先生はやはりその分だけすごい。社会の変化に対する差分を理解しやすいというのもあるんだろうな。

 首都圏にいると、政府関連の情報も入りやすい。逆にそれに頼りすぎる傾向も出てくる。関西の人たち、特に京都の研究者たちは、そうした現場の情報が入りにくい分、理論的に考え、おもしろい発想が出てくる。

太平洋国家アメリカ-国境を越える統治機構と文明-

 3月27日(火)14時から、三田でシンポジウムを開催。

 たぶん、ほとんどの人がシンポジウムのテーマにピンと来ないと思うのだけど、言うまでもなくパラオのような太平洋島嶼国やアジア諸国はアメリカ合衆国の影響を強く受けている。しかし、その内容については漠たるイメージで語られていて、ちゃんと議論されていないのではないだろうか。

 憲法のような統治機構と、各種の技術のような文明という視点からそれを捉え直してみようという企画。

 基調講演をしてくださる加藤良三・元駐米大使は、沖縄の統治システムについてアメリカが与えた影響を論じてくださる予定。パネリストの3人は打ち合わせ段階から異常に盛り上がっているので、私はちゃんと司会ができるかどうか不安。

■アメリカ研究プロジェクト年次シンポジウム

  「太平洋国家アメリカ -国境を越える統治機構と文明-」

  今年度開始となりましたG-SECアメリカ研究プロジェクトの

  年次シンポジウムを開催いたします。ぜひご参加ください。

  

日 時 2012年3月27日(火) 14:00〜17:00(13:30 開場)

  会 場 慶應義塾大学三田キャンパス 東館6階G-SEC Lab. 

【基調講演】

加藤 良三(元駐米大使)

【パネルディスカッション】

待鳥 聡史(京都大学大学院法学研究科教授)

阿川 尚之(慶應義塾常任理事)

駒村 圭吾(慶應義塾大学法学部教授)

<司会>

土屋 大洋(慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授、

       グローバルセキュリティ研究所副所長)

【概要】

「太平洋大統領」を自認するオバマ大統領のもとで、米国はアジア太平洋地域へ転換あるいは回帰しつつある。しかし、歴史を見れば、これまで何度も米国はアジア太平洋地域に、憲法、法制度、行政機構、金融・経済体制、教育、科学技術、さらには広く文明や文化のさまざまな側面において、大きな影響を与えてきている。アジア太平洋地域重視を進める米国の動きを、特に第二次世界大戦終了後から振り返り、米国の統治機構と文明が日本をふくむこの地域にどのような影響を残してきたかをさまざまな角度から検討する。

【お申込方法】

お申込情報登録フォームより、必要情報を入力の上、お申込ください。

http://www1.gsec.keio.ac.jp/text/workshop/index

パラオ共和国の各州憲法

矢崎幸生「パラオ共和国の各州憲法—比較法的考察—」矢崎幸生編『現代先端法学の展開 田島裕教授記念』信山社、2001年、3〜29ページ。

 これも機内で読んだ。こういう研究をしている人がいるのかあとびっくり。

 パラオの人口は2万人程度なのに、16も州があり、それぞれが憲法を持っているので、共和国憲法と合わせて17も憲法があることになる!

 この中でアンガウル州の憲法で日本語が公用語となっていると書いてあったので、アンガウル州の憲法を人づてで確認してもらうと、確かに書いてあった。

 その方がこの憲法を80年代に書いた人にも確認してくださったのだが、書いた本人も忘れていて、実質的に日本語で公文書が書かれている事実はもはやなく、話せる人もアンガウル州にはほとんどいないらしい(ただし、少なくとも観光客の多いコロール州には日本語を話せる人がたくさんいる)。

パラオ共和国憲法

紺谷浩司、藤本凡子(解説・訳)「パラオ共和国」荻野芳夫、畑博行、畑中和夫編『アジア憲法集【第2版】』明石書店、2007年、665〜687ページ。

 これも機内で読んだ。論文ではなく、憲法の翻訳に解説を付けたもの。しかし、こういうのがあると便利だ。

 パラオはアメリカとの関係を前提として国作りをしているのが分かる。例えば第15条(経過規定)の第11節は、アメリカとの自由連合協定(コンパクト)についてわざわざ書き込んでいる。

太平洋島嶼国におけるデジタル・デバイド

土屋大洋「太平洋島嶼国におけるデジタル・デバイド―パラオにおける海底ケーブル敷説の可能性―」慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所編『メディア・コミュニケーション』第62号、2012年3月、161〜171ページ。

 慶應のメディア・コミュニケーション研究所の菅谷先生のプロジェクトの成果(正確には慶應の東アジア研究所が支出しているプロジェクト)。

 一時期、やたらと太平洋島嶼国に関する論文を読んでいたのは、これを書くため。なかなか海底ケーブル関連の話はなかったが、それでもこの論文を書くのは楽しかった。

パラオ再訪

 1年半ぶりにパラオを訪問してきた。1日目の夜に到着し、2日目の夜(正確には3日目の未明)に帰る便だったので、実質1日しかなかったが、おもしろかった。

 主たる目的は、Caroline Cable Projectというパラオとヤップをつなぐ海底ケーブルプロジェクトの進捗を聞きに行くため。

 2010年8月に初めてパラオを訪れたとき、インターネットのあまりの遅さにびっくりして調べ始め、光ファイバの海底ケーブル敷設の有無が太平洋島嶼国を勝ち組と負け組に分けていることに気がついた。

 パラオももちろん分かっていて、海底ケーブルをつなげたいと思っていたが、さまざまな要因でできなかった。

 ところが、2011年春になって、フィリピンとグアムを結ぶケーブルが用済みになったという話が伝わり、パラオとミクロネシア連邦が提携してそれをパラオとヤップ島に引き込もうというプロジェクトが動き出した。パラオでは大統領が率先してこのプロジェクトを動かしている。

 ここまでの話は実は、慶應のメディア・コミュニケーション研究所の紀要に書いた。

 それがその後どうなったのかと聞きに行ったわけだ。やはりインターネットの時代でも、現場に行って話を聞くことには意味がある。パラオではマスコミもそれほど発達していないし、そもそもネットが遅いから、ネットにもたくさんの情報は載ってこない。現場で情報は埋もれている。

 聞いてきた話はまたどこかに書くとして、感激したのは、パラオ・コミュニティ・カレッジの看板。写真のように日本の震災のことを大きく掲げてくれている。パラオはやはり日本の味方なんだなと再認識した。パラオの皆さん、ありがとう。今日はあの日からちょうど1年だ。

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Cybersecurity

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Motohiro Tsuchiya, “Cybersecurity in East Asia: Japan and the 2009 Attacks on South Korea and the United States,” Kim Andreasson, ed., Cybersecurity: Public Sector Threats and Responses, Boca Raton, FL: CRC Press, 2012, pp. 55-76.

 ずいぶん久しぶりに英語の本が出た。もっと英語で書かないとね。しかし、英語での出版というのはやたらと時間がかかる。これに声がかかったのは2010年9月初旬。書いている内容は2009年の話。時間を超えても残る内容を書かないといけない。「緊急出版!」みたいな本の出し方はあまりないのかもしれない。

インドのサイバーセキュリティ

Subimal Bhattacharjee, “The Strategic Dimensions of Cyber Security in the Indian Context,” Strategic Analysis, vol. 33, no. 2, March 2009, pp. 196-201.

 2008年にジュネーブで一緒にパネルに出たことのあるSubimalのコメンタリー(しかし、未だに彼の名前の発音がよく分からない)。

 インテリジェンスに注目しているなど、私と問題意識が似ていることを確認。

 この論文はインターネットには転がっていない模様。私も有料で入手した。

党国体制の現在

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土屋大洋「党国体制と情報社会——インターネット規制を事例に」加茂具樹、小嶋華津子、星野昌裕、武内宏樹編著『党国体制の現在——変容する社会と中国共産党の適応』慶應義塾大学出版会、2012年、235〜261ページ。

 同僚の加茂さんたちと行ってきた共同研究の成果が出版された。「党国体制」をキーワードに現代の中国を考える本。

現代の戦争とサイバースペース:攻撃優位の現実と防衛の諸課題

土屋大洋「現代の戦争とサイバースペース:攻撃優位の現実と防衛の諸課題」時事通信社Janet週刊e-World、2月8日号。

 残念ながら、会員制有料サイトらしく、どうやったらアクセスできるのか分かりません……。ごめんなさい。

【追記】こちらで読めるようになったそうです。でも有料です。

http://astand.asahi.com/webshinsho/jiji/eworld/product/2012020900010.html