ハワイの海底ケーブル陸揚げ局(その2)

 まずは、ホノルルから一番近い「カヘ(Kahe)」の陸揚げ局へ。ここにはサザンクロス(Southern Cross)という海底ケーブルが来ている。

 場所はカヘ・ポイント・ビーチ・パークという公園になっているのだが、海水浴には適していない。道路から廃線になっている鉄道の線路を横切ると公園の駐車場になっている。駐車場にはそれなりに車が止まっていて、みんなダイビングの準備をしている。

 ビーチ・パークといいながら、ここには砂浜はない。駐車場の向こうは草地になっていて、その向こうは断崖絶壁である。どう見ても崩れかかっている。あちこちに危険だから近づくなという看板が立ててあり、おまけに亡くなった人の十字架まで立っている。

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 ダイビングに行く人たちはやや北側の防波堤のようなところまで行ってから水に入るらしく、プカプカ浮いている人たちが見える。波はけっこう荒く、初心者向きには見えない。

 さらに気になるのは駐車場に散らばるガラス片である。少なくとも二カ所ある。これはどうやら車上荒らしの後ではないか。ダイビングに行ってしまうと、長時間戻ってこないのは明らかだ。その隙にガチャンと車の窓を割られて貴重品を盗まれるのだろう。海の中にまで財布を持っていく人はいないだろう。

 先に訪問しているHide Fukuharaさんは海底ケーブルの痕跡が見つけられなかったという。

http://fhide.wordpress.com/2011/09/08/%E3%83%8F%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%81%AE%E6%B5%B7%E5%BA%95%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%AB%E9%99%B8%E6%8F%9A%E3%81%92%E5%B1%80/

 確かに、それらしきものは見当たらない。あたりを見渡して目に付くのは火力発電所だ。陸揚げ局らしきものは見当たらない。マンホールも見当たらない。無論、ケーブルそのものも見えない。うろうろ歩いてみるが、それらしきものはない。

 道路を挟んで陸側にある火力発電所の入り口まで行き、何か看板でもないかと見てみるが、何もない。すると守衛が出てきてしまった。正直に海底ケーブルの陸揚げ局を探しているんだけどというと、はあっという顔をしていて、知らないとのことだった。あっちにディズニーのリゾートホテルがあるからそっちじゃないかという。退散。

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 次の場所に行くかと車に乗り込み、バックさせていると、ふと駐車場の南側の仕切りを越えたところにマンホールらしきものが見えた。慌てて車を降りて確認しに行くと、確かにマンホールだった。

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 マンホールにはGTEと書いてある。GTEは吸収合併されてすでに消滅している通信会社だ。現在はベライゾンになっている。

http://en.m.wikipedia.org/wiki/GTE

 サザンクロスはベライゾンが現在の共同所有者の一つになっている。見つけた。これが海底ケーブル陸揚げのためのマンホールだ。

 周りをよく見ると、土とアスファルトが海から陸にかけてはがされた跡がある。マンホールから海に向かっていくと、そこだけ小さな入り江のようになっている。岩がゴロゴロしていて降りていく気にはならないが、上から海中に目をこらすと、何となくケーブルらしきものが見える。普通、海底ケーブルは沖合から地中に埋めるが、ここは海岸からすぐのところから地中に入れているのかもしれない。写真に撮っても写らなかったが、あれはケーブルそのものではないかと思う。これがはるかアジアまでつながっているかと思うと感慨ひとしおである。

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 ふとこの入り江の一番奥をのぞいてみると、洞窟のようになっており、なにやら椅子などが置いてある。どうもここに住み着いている人がいるようだ。もういないのかもしれないが、住んでいた形跡がある。邪魔をしないように早々に退散した。

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 陸揚げ局の建物は確認できなかったが、マンホールを見つけただけでも一応の成果だ。

(続く)

ハワイの海底ケーブル陸揚げ局(その1)

 最近、海底ケーブルのことについていろいろ調べている。サイバーセキュリティという点では、物理的なインフラストラクチャとしての海底ケーブルも、重要インフラストラクチャの一部をなしており、その保護をどうするかというのも関心の一つだ。この点はまだあまり議論されていない。

 そこで、海底ケーブルの陸揚げがどうなっているかということにも必然的に関心が及び始めている。そこで、先日訪問したハワイの海底ケーブル陸揚げがどうなっているかを少し調べた。ハワイは米国西海岸と日本との間の中継点になっており、歴史的にも重要である。20世紀初頭に最初の電信の海底ケーブルが日米間で結ばれたときもハワイが中継点になった。

 ハワイには現在五つの主要な海底ケーブル陸揚げ局があるそうだ。

http://www.submarinenetworks.com/stations/north-america/usa-hawaii

 そのうち、二つはハワイ島にあり、残りの三つがオアフ島にある。ホノルルからハワイ島には飛行機か船に乗らなくてはいけないので、オアフ島の三つが比較的アクセスしやすい。三つはいずれもオアフ島の西岸に位置する。

 しかし、ホノルルから一番遠く、オアフ島の北西端に位置するケアワウラ(Keawaula)陸揚げ局は、カエナ・ポイント州立公園(Kaena Point State Park)の中にあり、ここはあまり治安が良くないようだ。サーファーたちが好んで集うそうだが、車上荒らしなどもあるらしい。ここに行くのは断念した。

http://www.submarinenetworks.com/stations/north-america/usa-hawaii/keawaula

http://www.hawaiistateparks.org/parks/oahu/index.cfm?park_id=19

http://community.travel.yahoo.co.jp/mymemo/Nana/blog/15846.html

 残りの二つは、カエナ・ポイント州立公園に行く途中の海浜公園にある。しかし、いずれの二つも、すでにHide Fukuharaさんが訪問している。その後追いになってしまうが、やはり現地は見ておきたい。

http://fhide.wordpress.com/2011/09/08/%E3%83%8F%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%81%AE%E6%B5%B7%E5%BA%95%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%AB%E9%99%B8%E6%8F%9A%E3%81%92%E5%B1%80/

(続く)

サイバーセキュリティに関する日米協力

 サイバーセキュリティに関する日米協力についての未公刊論文を読ませてもらった(英語)。インタビューを受けたので先に読ませてもらった。

 ところで、この年齢になるとだんだん情報が自分に向かって集まってくるんだなと最近気がついた。

 学生の頃は、どこに情報があるのかも分からず、手に入れた情報の価値も分からなかったけど、今はパズルのようにその情報の位置づけが分かるようになりつつある。

 無論、まだ瞬時に判断できないものもあるし、間違えるものもある。後から、あれはそういう意味だったのかと気づく。

 社会科学ってこういう経験値の高さが重要だって気がする。専門家と見なされている人に情報は集まってくるし、情報を処理すればするほど経験値が高まる。

 無論、自然科学にもあるんだろうけど、自然科学者のピークが30歳から40歳の間に来るのに対し、社会科学者は年の功が大きい。大御所の先生はやはりその分だけすごい。社会の変化に対する差分を理解しやすいというのもあるんだろうな。

 首都圏にいると、政府関連の情報も入りやすい。逆にそれに頼りすぎる傾向も出てくる。関西の人たち、特に京都の研究者たちは、そうした現場の情報が入りにくい分、理論的に考え、おもしろい発想が出てくる。

太平洋国家アメリカ-国境を越える統治機構と文明-

 3月27日(火)14時から、三田でシンポジウムを開催。

 たぶん、ほとんどの人がシンポジウムのテーマにピンと来ないと思うのだけど、言うまでもなくパラオのような太平洋島嶼国やアジア諸国はアメリカ合衆国の影響を強く受けている。しかし、その内容については漠たるイメージで語られていて、ちゃんと議論されていないのではないだろうか。

 憲法のような統治機構と、各種の技術のような文明という視点からそれを捉え直してみようという企画。

 基調講演をしてくださる加藤良三・元駐米大使は、沖縄の統治システムについてアメリカが与えた影響を論じてくださる予定。パネリストの3人は打ち合わせ段階から異常に盛り上がっているので、私はちゃんと司会ができるかどうか不安。

■アメリカ研究プロジェクト年次シンポジウム

  「太平洋国家アメリカ -国境を越える統治機構と文明-」

  今年度開始となりましたG-SECアメリカ研究プロジェクトの

  年次シンポジウムを開催いたします。ぜひご参加ください。

  

日 時 2012年3月27日(火) 14:00〜17:00(13:30 開場)

  会 場 慶應義塾大学三田キャンパス 東館6階G-SEC Lab. 

【基調講演】

加藤 良三(元駐米大使)

【パネルディスカッション】

待鳥 聡史(京都大学大学院法学研究科教授)

阿川 尚之(慶應義塾常任理事)

駒村 圭吾(慶應義塾大学法学部教授)

<司会>

土屋 大洋(慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授、

       グローバルセキュリティ研究所副所長)

【概要】

「太平洋大統領」を自認するオバマ大統領のもとで、米国はアジア太平洋地域へ転換あるいは回帰しつつある。しかし、歴史を見れば、これまで何度も米国はアジア太平洋地域に、憲法、法制度、行政機構、金融・経済体制、教育、科学技術、さらには広く文明や文化のさまざまな側面において、大きな影響を与えてきている。アジア太平洋地域重視を進める米国の動きを、特に第二次世界大戦終了後から振り返り、米国の統治機構と文明が日本をふくむこの地域にどのような影響を残してきたかをさまざまな角度から検討する。

【お申込方法】

お申込情報登録フォームより、必要情報を入力の上、お申込ください。

http://www1.gsec.keio.ac.jp/text/workshop/index

パラオ共和国の各州憲法

矢崎幸生「パラオ共和国の各州憲法—比較法的考察—」矢崎幸生編『現代先端法学の展開 田島裕教授記念』信山社、2001年、3〜29ページ。

 これも機内で読んだ。こういう研究をしている人がいるのかあとびっくり。

 パラオの人口は2万人程度なのに、16も州があり、それぞれが憲法を持っているので、共和国憲法と合わせて17も憲法があることになる!

 この中でアンガウル州の憲法で日本語が公用語となっていると書いてあったので、アンガウル州の憲法を人づてで確認してもらうと、確かに書いてあった。

 その方がこの憲法を80年代に書いた人にも確認してくださったのだが、書いた本人も忘れていて、実質的に日本語で公文書が書かれている事実はもはやなく、話せる人もアンガウル州にはほとんどいないらしい(ただし、少なくとも観光客の多いコロール州には日本語を話せる人がたくさんいる)。

パラオ共和国憲法

紺谷浩司、藤本凡子(解説・訳)「パラオ共和国」荻野芳夫、畑博行、畑中和夫編『アジア憲法集【第2版】』明石書店、2007年、665〜687ページ。

 これも機内で読んだ。論文ではなく、憲法の翻訳に解説を付けたもの。しかし、こういうのがあると便利だ。

 パラオはアメリカとの関係を前提として国作りをしているのが分かる。例えば第15条(経過規定)の第11節は、アメリカとの自由連合協定(コンパクト)についてわざわざ書き込んでいる。

太平洋島嶼国におけるデジタル・デバイド

土屋大洋「太平洋島嶼国におけるデジタル・デバイド―パラオにおける海底ケーブル敷説の可能性―」慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所編『メディア・コミュニケーション』第62号、2012年3月、161〜171ページ。

 慶應のメディア・コミュニケーション研究所の菅谷先生のプロジェクトの成果(正確には慶應の東アジア研究所が支出しているプロジェクト)。

 一時期、やたらと太平洋島嶼国に関する論文を読んでいたのは、これを書くため。なかなか海底ケーブル関連の話はなかったが、それでもこの論文を書くのは楽しかった。

パラオ再訪

 1年半ぶりにパラオを訪問してきた。1日目の夜に到着し、2日目の夜(正確には3日目の未明)に帰る便だったので、実質1日しかなかったが、おもしろかった。

 主たる目的は、Caroline Cable Projectというパラオとヤップをつなぐ海底ケーブルプロジェクトの進捗を聞きに行くため。

 2010年8月に初めてパラオを訪れたとき、インターネットのあまりの遅さにびっくりして調べ始め、光ファイバの海底ケーブル敷設の有無が太平洋島嶼国を勝ち組と負け組に分けていることに気がついた。

 パラオももちろん分かっていて、海底ケーブルをつなげたいと思っていたが、さまざまな要因でできなかった。

 ところが、2011年春になって、フィリピンとグアムを結ぶケーブルが用済みになったという話が伝わり、パラオとミクロネシア連邦が提携してそれをパラオとヤップ島に引き込もうというプロジェクトが動き出した。パラオでは大統領が率先してこのプロジェクトを動かしている。

 ここまでの話は実は、慶應のメディア・コミュニケーション研究所の紀要に書いた。

 それがその後どうなったのかと聞きに行ったわけだ。やはりインターネットの時代でも、現場に行って話を聞くことには意味がある。パラオではマスコミもそれほど発達していないし、そもそもネットが遅いから、ネットにもたくさんの情報は載ってこない。現場で情報は埋もれている。

 聞いてきた話はまたどこかに書くとして、感激したのは、パラオ・コミュニティ・カレッジの看板。写真のように日本の震災のことを大きく掲げてくれている。パラオはやはり日本の味方なんだなと再認識した。パラオの皆さん、ありがとう。今日はあの日からちょうど1年だ。

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Cybersecurity

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Motohiro Tsuchiya, “Cybersecurity in East Asia: Japan and the 2009 Attacks on South Korea and the United States,” Kim Andreasson, ed., Cybersecurity: Public Sector Threats and Responses, Boca Raton, FL: CRC Press, 2012, pp. 55-76.

 ずいぶん久しぶりに英語の本が出た。もっと英語で書かないとね。しかし、英語での出版というのはやたらと時間がかかる。これに声がかかったのは2010年9月初旬。書いている内容は2009年の話。時間を超えても残る内容を書かないといけない。「緊急出版!」みたいな本の出し方はあまりないのかもしれない。

インドのサイバーセキュリティ

Subimal Bhattacharjee, “The Strategic Dimensions of Cyber Security in the Indian Context,” Strategic Analysis, vol. 33, no. 2, March 2009, pp. 196-201.

 2008年にジュネーブで一緒にパネルに出たことのあるSubimalのコメンタリー(しかし、未だに彼の名前の発音がよく分からない)。

 インテリジェンスに注目しているなど、私と問題意識が似ていることを確認。

 この論文はインターネットには転がっていない模様。私も有料で入手した。

党国体制の現在

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土屋大洋「党国体制と情報社会——インターネット規制を事例に」加茂具樹、小嶋華津子、星野昌裕、武内宏樹編著『党国体制の現在——変容する社会と中国共産党の適応』慶應義塾大学出版会、2012年、235〜261ページ。

 同僚の加茂さんたちと行ってきた共同研究の成果が出版された。「党国体制」をキーワードに現代の中国を考える本。

現代の戦争とサイバースペース:攻撃優位の現実と防衛の諸課題

土屋大洋「現代の戦争とサイバースペース:攻撃優位の現実と防衛の諸課題」時事通信社Janet週刊e-World、2月8日号。

 残念ながら、会員制有料サイトらしく、どうやったらアクセスできるのか分かりません……。ごめんなさい。

【追記】こちらで読めるようになったそうです。でも有料です。

http://astand.asahi.com/webshinsho/jiji/eworld/product/2012020900010.html

第28回情報セキュリティ政策会議

 1月24日、第28回の情報セキュリティ政策会議が開かれた。前回ほどの注目は集めなかったが、それなりに意味のある会議だったと思う。前回の会議で方針を示した官民連携についてはワーキンググループから速やかに回答が出てきた。防衛産業をめぐる問題についての一応の手当はできたことになる。

 それに加えて、外務大臣が初めて参加したことも大きい。今後もずっと参加するのかどうかは不明とのことだが、サイバーセキュリティは国際問題になっているのだから、是非参加してもらいたい。防衛省も交えて法制度的な詰めをしていく必要もある。

 また、情報セキュリティ政策会議の上位会議はIT戦略本部だが、これは実質的に休眠状態になっている。その再開の検討が始まっていると科学技術担当大臣がおっしゃっていた。サイバーセキュリティに限らず、情報の自由な流通やプライバシーなどが国際会議のアジェンダになっている。IT戦略本部で大きな戦略を再び練る時期に来ていると思う。震災でこれだけインターネットが重要といわれるようになっているのだから、しっかり検討してもらいたい。

日米金沢会議

 ハワイから戻り、翌日は博士課程の学生の発表が行われる日。私は副査を数人と主査が一人。いろいろあったけど、それぞれ無事に通過。

 翌朝は5時半に起きて羽田へ。日米金沢会議に向かう。金沢は30年前に2年間住んでいたことがある。昭和55年頃で、ゴーゴー(55)豪雪というのがあり、街中が雪に埋もれて子供としてはとても楽しかった。

 会議自体は前日の夜から始まっていて、夕食会はとてもおいしい料理で良かったらしい。一番良いところを逃した。朝のセッションに遅れて参加し、日米の若手の研究者・実務家の話を聞く。なかなかアンユージュアルな人たちで、日本側の参加者もどんどん発言する。

 参加者の一人が、とっくに解決できていると思っていた日米間のさまざまな問題を解決してこなかった上の世代を強く批判しているのを聞き、この人はこんなことを考えていたのかと認識を新たにした。彼が学者としての研究活動よりも、政策的な貢献に力を入れているのはそういう背景があるからなのだろう。

 私の出番は最終日の午前中のコメンテーター。またサイバーセキュリティの話。パネリストとの意見の違いは違いとして認識できておもしろかった。宇宙政策の話やトモダチ作戦の話もあった。

 最終日は雪がチラチラとして一気に寒くなった。会議が解散になるとダッシュで家族から頼まれていた買い物へ。そのまま、東京から単身赴任しているHさんにお会いする。座ってお話しする時間もなかったが、近江町市場での土産物購入に大いに力を発揮してくださった。

 小松空港でまた会議参加者数人と合流。Aさんと海鮮どんぶりをいただく。

 機内では論文を一本読んだだけで着いた。国内線は短い。羽田に着いたら機内にコートを忘れてしまう。ちょっと手間取ったが京急に飛び乗り三田キャンパスへ。翌日の情報セキュリティ政策会議の打ち合わせを行う。

初めてのハワイ

 実はハワイには行ったことがなかった。そんな軟派なところに行けるかという思いもあったし、用事もなかった。

 ところが、共同研究の一環として、毎年ホノルルで開かれているPTC(Pacific Telecommunications Council)に行かせてもらえることになった。授業を休講にしてしまって学生には申し訳なかったけれども、太平洋島嶼国のデジタル・デバイドが最近のテーマの一つで、その関係者がたくさん集まる会議だ。それと関連して、海底ケーブルのこともいろいろ調べていて、そっちの話もたくさんある。

 PTCは何十年も前から毎年ハワイで1月に開かれている。もともとは国際料金精算の交渉をする場だったらしいが、最近はパケット通信全盛になってしまい、そんな交渉はほとんど行われず、今は業界の最新情報を交換する場になっているようだ。学者よりもビジネスマンが多いところを見ると、毎年経費で行ける休暇先ということで続いているのかもしれない。

 学者中心の学会とは違って、基調講演なんかもリラックスした雰囲気。悪くいえばグダグダ。パワポもハンドアウトもなく、壇上でソファに座って座談するみたいなセッションが多い。しかし、学者が仕切っているパネルは、学会風になっている。

 期待していたほど、太平洋島嶼国の話は出てこなかったが、海底ケーブルのほうはいろいろおもしろい話が出てきて来た甲斐があった。北極海に海底ケーブルを通そうというプロジェクトもおもしろい。1980年代からいくつも同じようなプロジェクトが浮かんでは消えていったらしいが、また新たにやろうとしているところがある。そういえば、同僚の村井さんもその話をしていた

 人工衛星のほうも気になってセッションにいくつか出てみたが、こっちはそんなにイノベーションの徴候をつかめなかった。

 日本の総務省から審議官も来ていて、規制のパネルと震災のパネルに出ていた。研究者も何人か発表している。しかし、日本企業はスポンサーになっていなくて、ちょっとプレゼンスが足りない感じ。

 最終日の表彰式を兼ねたランチが終わると、同僚とともに、ハワイ大学へ。TIPG(Telecommunications Information Policy Group)というプロジェクトを主催するノーマン・オカムラ教授にインタビューする。太平洋島嶼国の光海底ケーブル敷設問題はあまりにも政治的で、国際政治学者としてはおもしろすぎる。これはしばらく追いかけたいテーマだ。恥ずかしながら、TIPGのウェブに写真が載っている(パーマリンクがないのでそのうち消えると思う)。写真を撮ったとき、同僚はすでに空港に向かうタクシーに乗ってしまっていたので私しか写っていない。

 私はもう一泊あったので、インタビューの後はハワイ大学の図書館で資料を漁る。1900年頃にどうやってハワイが海底ケーブルを敷設したか分かる資料が残っている。しかし、17時で書庫が閉まってしまい、すべてをコピーできず。またハワイに来る理由ができてしまった。

 大学からバスに乗ってホテルへ戻ろうとするが、どこで降りたら良いのか分からず、ワイキキの繁華街まで連れて行かれてしまった。夕暮れの中をブラブラ歩く。みんな楽しそうに騒いでいる。

 ホテルに戻り、日本から持ってきたプリンタをたくさん回して論文と資料を印刷し、翌日の機内では9時間半のフライトの中、7時間ひたすら読みまくった。エコノミーの3席を占領できたのでとても集中できた。来年も行けるといいなあ。予算があるかなあ。休講にするとひんしゅくかなあ。