福田充『テロとインテリジェンス―覇権国家アメリカのジレンマ―』

福田充『テロとインテリジェンス―覇権国家アメリカのジレンマ―』(慶應義塾大学出版会、2010年)。

昨年、ニューヨークでお会いした福田先生が、こんな本を出された。そのものずばりのタイトルで、ちょっと悔しいなあ。まだ内容は読めていないけど、目次を見る限りはさまざまな組織やプログラムを丁寧に追いかけているようだ。さすがだ。

インテリジェンスの研究、日本でも一気に進んで来ている。私も頑張らなくては。

戦略研究学会をのぞく

 初めて世田谷線に乗った。江ノ電や荒川線のような雰囲気で楽しかった。

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 行った先は世田谷線世田谷駅が最寄りの国士舘大学。これがけっこう良い校舎で、負けたと思った。しかし、国際シンポジウムもできるという講堂に電源プラグが見当たらないので、ちょっと勝ったと思った。SFCならどこでも電源と無線LANにアクセスできる。

 国士舘大学で何をやっていたかというと戦略研究学会。会員じゃないのだけど、加藤朗先生の基調講演と、博士課程(&防研)の福島君の発表があるので午前中だけ参加した。

 加藤先生には2002年に日本国際問題研究所の研究会でお世話になった。久しぶりにお会いするが元気そう。最近は紛争地の現場を見ることにしているそうで、『紛争地の歩き方』という本を書きたいという。すげえなあ。実際、アフガニスタンのカブールに滞在中、数百メートルのところで爆破テロがあったそうで、リアリティのあるお話を聞く。福島君は、司会の先生が紹介を始めたときに部屋の中にいなくて大丈夫かと思ったが、そつなくこなして一安心。

 会場の外で販売していた本も、普段目にしないものが多くて新鮮だった。原書房では、リデル・ハートの『戦略論』を新訳で出していた。まだ上巻だけだが、来月には下巻も揃うという。すばらしい。

崩壊は突然に

 Foreign Affairsの最新号に出ているNiall Fergusonのエッセイがおもしろい。

 帝国はダラダラと衰退してサイクルを描いたりするものではない。帝国は複雑システムであり、崩壊は突然やってきてあっという間に進むといっている。米国は衰退フェーズのどこにあるかなんて考えるのは時間の無駄だそうだ。

 歴史学者はやたらと長期間で物事を考えすぎで、歴史学者の視点で政治家たちは考えられないという指摘もおもしろい。歴史はスポーツカーみたいなもので、一気にクラッシュしてしまうかもしれないのだそうだ。

通信と放送、融合への早道は

これも2年前に産経新聞に載せてもらったもの。著作権云々はまちがっていた気がするけど、本論は今でもそう思うし、実際に進んできていると思う。

土屋大洋「通信と放送、融合への早道は」『産経新聞』(2008年2月27日)。

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ネットワーク中立性

二人の友人がそれぞれネットワーク中立性について本を書いた。

一人目はChris Marsden。この本にはクリエイティブ・コモンズのライセンス(Attribution Non-Commercial)が付いていて、PDFで配布されている。長すぎて私はまだ読めていない。

Chris Marsden, Net Neutrality: Towards a Co-regulatory Solution, London: Bloomsbury Academic, 2010. (PDFファイルがダウンロードされます。)

彼のブログでアップデートも行われているそうだ。

もう一人は九州大学の実積寿也先生。一昨年のITSでの報告がベースになっており、本の中の1章として収録されるそうだ(5月刊行予定)。

Toshiya Jitsuzumi, “Efficiency and Sustainability of Network Neutrality Proposals,” Anastassios Gentzoglanis and Anders Henten, eds., Regulation And The Evolution Of The Global Telecommunications Industry, Cheltenham Glos: Edward Elgar, 2010.

私も頑張ろう。刺激になる。

グリーン

今日、総務省の会議に出たら、みんな「グリーン」「グリーン」と言っていた。2年前に産経新聞のコラムに書いたときは、そんなのおもしろくないと言われたのになあ。ちょっと悔しいからここに載せておこう。

土屋大洋「グリーン・ブロードバンド」『産経新聞』(2008年1月9日)。

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ギークとインテリジェンス

グーグルとNSA(国家安全保障局)が協力するという記事をワシントン・ポストが載せた。

情報による安全保障』などでギーク(技術オタク)とインテリジェンス機関が手を結ぶと言ってきた私としては、やっぱりなという感じがするが、違っていたのはグーグルのほうからNSAに助けを求めたということ。私はNSAの力を見くびっていたのか。

ただ、米国のメーリングリストの議論などでは、数年前から両者は協力関係にあったという話も出ており、グーグルの大規模なインフラストラクチャはNSAにも魅力だろうという。そりゃそうだ。

自炊してみる

食事のことではなく、本のこと。

本の背表紙を裁断し、スキャナーにかけて自分で電子化してしまうことを「自炊系」というらしい。

SFCだと玉村さんが有名。『整理HACKS!』でも紹介されていた。

そんな馬鹿なことをするもんかと思っていたが、スペース問題が深刻。片付かない研究室をどうにかするためには何らかの方法でため込んだものを捨てるしかない。

いきなり捨てろといわれるとプレッシャーが高いが、スキャンしてとっておけるならまあなんとかという気がする。そういう気持ちで候補の本や雑誌をテーブルの上に並べるとけっこうな数になる。

まずは、いらないというより、いつもパソコンに入れておきたいと思う本を選び、裁断機で背表紙をざっくり落とす。すばらしい切れ味で爽快感すらある。それを、少し前から使っているScanSnapで一気に読み込む。

ばんばん裁断はできるのだが、ScanSnapにつないでいるパソコンの性能がいまいちで、本一冊や雑誌一冊を読み込もうとするとメモリが不安定になるようだ。馬力のあるものに変えたほうが良さそう。

思ったほど一気には進まないことがわかったが、やり方は簡単だ。年度末までにはテーブルの上を一掃したい。研究室が片付いたら自宅を片付ける。とにかくすべてをシンプルに。

論文書き

マクドナルドで本を読んでいた。相変わらず付箋を本にベタベタ貼っていた。一息ついたのでラップトップを広げたところ、近くに座っていた女性が「3分いいですか」と声をかけてきた。

げげ、いきなり宗教の勧誘かと身構える。女性は、「この本に付いている付箋の色に意味はあるんですか」と聞いてきた。色に全然意味はないのだが、よく聞かれる質問だ。本から目をそらさずに付箋を付けるので、いちいち色など気にしてはいない。たまたま手に付いたものを貼り付けているだけだ。

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どうやら女性は修士論文を書いているらしく、どうやって論文を書いたらいいのか分からないらしい。正月からマックで付箋のベタベタ付いた本を読み、ラップトップを広げるのは大学院生だと思って声をかけてきたという(まだ若く見えるのか)。

いろいろ質問を受けた後、「指導教官から指導を受けるコツを教えてください」といわれた。指導教官からまず文献を読めといわれたが、何をどう読んでいいのかも分からず、困っているようだ。

「指導教官は男性ですか」と聞いてみると、やはりそうだった。レナード・サックス『男の子の脳、女の子の脳―こんなにちがう見え方、聞こえ方、学び方―』という本を読んで分かったのだが、先生と学生(生徒)の男女の組み合わせはけっこう難しいらしい。男性の先生は基本的に丁寧なアドバイスを与えたがらず、学生の自主的な取り組みに任せようとする。男子学生ならそれで良いが、女子学生は先生から突き放されたように感じるらしい。

結局3分以上話し込んだが、最後に、「ばんばん投稿論文を書いているんですか」と聞かれた。そうしたいけどできないなあと内心思いつつ、「教える側に回ってしまったので、もうあまりしてませんね」というと、「私の指導もしてもらえませんか」とのこと。それはさすがにね。

彼女にアドバイスをしたのは、たくさん論文を読むということ。論文を読んだことが無い人は論文を書けない。bookishな学生が今は多いから、本のような論文を書こうとする。しかし、論文と本は別のもの。論文が書けても本が書けない人、本が書けても論文が書けない人もいる。

公文俊平先生によれば、村上泰亮先生は、社会科学者は論文よりも本を書けというポリシーだったそうだけど、それは論文を書く能力があった上での話だと思う。日本の学会誌には見るべき論文が多くないということがあるかもしれないけど、海外の学者はちゃんと論文を書いている。売れっ子の学者が本を出す場合、たいていは最初に論争を呼ぶような論文を書いていて、それをふくらませて本にしている。フランシス・フクヤマとかサミュエル・ハンチントンもそう。

たいていのコンセプトや発見は、論文の長さがあれば示すことができる。これから研究者になろうとする人は、まずは論文を書くべきだと思う。そのためにはたくさん読まないと。

ついでに言うと、ネイティブでない私が多大な時間をかけて英語の本を読むよりも、エッセンスの詰まった学術論文をしっかり読むほうが、その著者の言いたいことが短時間で分かるかもしれない。話題の本はほとんどが翻訳されるから、少し待てば日本語でも読める。だから、英語のジャーナルに継続的に目を通すほうが大事なんだろうな。すでに誰かが読んで評判になっている翻訳書を読むよりも、自分で原著論文の目利きができるほうが研究者としては有能だろう。

ちなみに読んでいたのは、マーク・ブキャナン(阪本芳久訳)『人は原子、世界は物理法則で動く―社会物理学で読み解く人間行動―』(白揚社、2009年)。『歴史の方程式』とか『複雑な世界、単純な法則』なんかを書いた人。この本も英語で読むと時間がかかりそう。

リデザイン

もう一度、昨年を振り返ると、「やめる、ことわる、さぼる」のに躊躇がなくなってしまうというネガティブな年だった。

頼まれた仕事は基本的に断らない方針でやってきたけれども、それがついに破綻して、長々とお断りのメールを書くことができるようになった。

しかし、そういうのの連続は後ろめたさを堆積させてしまい、仕事全般、生活全般に愚痴ばっかり。ノリがどんどん悪くなる。未処理のメールがどんどんたまり、「ごめんなさい」と「お願いします」というメールを毎朝書き続ける。

今年はとにかくこの状況を立て直す。無理な仕事は受けないようにするとしても、今までのやり方を一新する。帰国してから11ヶ月もたつのに研究室の中の片付けができていない。これはいくらなんでもどうかしている。

周りを見れば、もっと忙しくても楽々と仕事している人もいる。

小山龍介『整理HACKS!—1分でスッキリする整理のコツと習慣 』によれば、「整理」とは英語で「デザイン」というそうだ。いいねえ。

今年はデザインし直すという意味で「リデザイン」。研究も生活もリデザイン。新しいことを試すのに躊躇するまい。

電子ブックリーダー

日付が変わってしまった。元旦には何か書いておこうと思い、「昨年の総括と今年の抱負」というのを書いて、数分だけ公開したのだけど、さすがに怒られそうな内容だと思って削除した(でもRSSリーダではちょっと流れてしまったみたい)。

それはそれとして全然別の話。amazonのkindleをここしばらく使っている。周囲では評判が良いのだけど、私はどうもなじめない。そもそも私は本に付箋を付けたり、書き込んだりしておくタイプなので、kindleではそれがやりにくい。もちろん、下線を引いたり、注釈を付ける機能はあるのだけど、あのキーボードで入力するのは面倒。

3Gのネットワークを使って瞬時にダウンロードできたり、価格が安かったり、スペースを節約できたり、検索機能があったりといろいろ良いところがあるのは十分理解できたけど、後々に論文に引用しようと思って読んでいる本には使いにくい。小説なんかを読み流すには良いのかなあ。

まだ試していないのだけど、自分の手元にあるPDFデータも読み込み可能なようなので、自分の英語スピーチ原稿があれば、それを機械が読み上げてくれるはず。うまくいけば練習に役立つかもしれない。スタンダードな発音は教えてくれるはず。これは便利(まあ、でも他のソフトでもできないわけではない)。

気になるのは、まず、私にとっては画面がやや暗く感じるのに明るさの調整ができないこと。確かに明るい屋外でもはっきり見えるのは優れているが、屋内ではちょっと見えにくい。それと、古い本が手に入らないこともつらい。研究として使うときには古い本を参照できることがどうしても必要。今のところ図書館の代わりには使えない。これから過去の本にも守備範囲が広がるのかなあ。

しかし、もうちょっとつきあってみよう。本のデジタル化は必然の流れだ。誰が一番読みやすいシステムやデバイスを作るかだ。

もう一つ、噂されているアップルのタブレット(iSlate?)も気になる。kindleは開発途上のにおいがぷんぷんする割に、ユーザーが機能拡張する余地が全然ない。コンテンツを入れ替えるだけ。たぶんアップルのタブレットは、iPhoneのアプリをそのまま使えるようにするだろうから、かなり拡張性があるだろうし、WiFiその他にも対応するだろう。期待してるぞ、アップル。

東アジアの国際関係

20091216east_asia.jpg大矢根聡編『東アジアの国際関係—多国間主義の地平—』有信堂、2009年12月16日、本体3900円+税、ISBN978-4-8420-5564-0

「第3章 世界情報社会サミットと中国外交——インターネット・ガバナンスをめぐる単独主義?」(72〜96頁)担当。

2006年10月に日本国際政治学会で発表したペーパーが本に収録されました。脱稿後に大きな動きがあり、追記という形になってしまったのが残念。

インターネットの話が国際政治学の枠組みですんなり取り入れてもらえるようになったのは時代の変化ですね。ありがたいことです。

他の執筆陣は以下のようになっています。

序章 東アジア地域協力の展開——多国間主義の視点による分析へ:大矢根聡

第1章 中国の多国間主義:現実的リベラリズム?——「中国の台頭」下における新たな役割の模索:浅野亮

第2章 貿易分野における中国の多国間主義——「協力と自主」の現れとしてのWTO対応:川島富士雄

第3章 世界情報社会サミットと中国外交——インターネット・ガバナンスをめぐる単独主義?:土屋大洋

第4章 多国間主義とインド外交——核保有と経済成長:竹中千春

第5章 大国化するインドにおける多国間主義の動揺——現代「実利」外交の展開:伊藤融

第6章 韓国におけるFTA戦略の変遷——多国間主義の推進と挫折:磯崎典世

第7章 タイの多国間主義外交——経済外交の変化と持続:永井史男

第8章 オーストラリア対外経済政策の転換——多国間主義から二国間主義へ:岡本次郎

第9章 ASEAN外交の改革と東アジア共同体の功罪——政府志向の多国間主義から市民志向の多国間主義へ:勝間田弘

第10章 アメリカの多国間主義をめぐるサイクル——消極的関与と急進的追求の振幅とその背景:大矢根聡

クラウドのジレンマ

Wikinomiksの中でDon TapscottとAnthony Williamsは、「つながったものだけが生き残るだろう(only the connected will survive)」と言っている。Anne-Marie Slaughterはフォーリン・アフェアーズに掲載された”America’s Edge: Power in the Networked Century”の中で政府も例外ではないとしている。

日本でも今年6月に発表された総務省の「ICTビジョン懇談会報告書」でも「霞が関クラウド」が提唱されている。

国においては、各府省の情報システムの最適化をさらに進めていく必要がある。情報システムの効率化・費用低廉化に向け、クラウドコンピューティング技術等の最新の技術を活用し、可能なものから順次システムの統合化・集約化などを図る「霞が関クラウド」の構築を進めるべきである

しかし、政府が本格的にクラウド・コンピューティングに乗り出すとなると、セキュリティの問題がどうしても浮かび上がってくる。情報は共有されればされるほどブリーチのリスクにさらされる。

21世紀を生き残るためには政府もまたネットワークの中で生き残らなくては行けない一方で、そのネットワークが政府の業務をリスクにさらす。これは「クラウドのジレンマ」と言ってもいいだろう。

無論、このジレンマは政府だけではなく、プライバシー情報などを扱う企業にもある。しかし、国家機密が流出する危機ほど大きなインパクトはないだろう。単純に国家機密はネットワークに載せないというのが正解だろうが、情報の仕分けは新たな業務を作り出すことになり、業務改善に逆行する。

政府はすべてを縦割りにし、階層構造にすることで成立してきた。ネットワークの導入は政府の組織に変更を迫ることになる。霞が関クラウドはそうした長期的インパクトを作り出すことになるのだろうか。そこまで深遠な意図を持って構築されるのだろうか。

地下世界

ニューヨークの通りを歩いていて地下に続く扉が開いているたびに、ニューヨークの地下世界をのぞいてみたいなあと思っていた。たぶん、『ルパン三世 バビロンの黄金伝説』の影響じゃないかと思う。

そんな好奇心を満たしてくれる番組を飛行機の中でやっていた。おもしろかった。禁酒法時代に酒蔵を隠していたバーとか、チャイナタウンのギャングの脱走路とか、最初の地下鉄プロジェクトの遺構とか、マンハッタンを防衛するための砦の地下通路とか。

Cities of the Underworld hosted by Don Wildman – History.com

しかし、日本からだとオンラインの動画が見られないのかなあ。今のところうまく再生できない。インターネットの世界でこういう制限は早くなくしてもらいたい。

地下世界

ニューヨークの通りを歩いていて地下に続く扉が開いているたびに、ニューヨークの地下世界をのぞいてみたいなあと思っていた。たぶん、『ルパン三世 バビロンの黄金伝説』の影響じゃないかと思う。

そんな好奇心を満たしてくれる番組を飛行機の中でやっていた。おもしろかった。禁酒法時代に酒蔵を隠していたバーとか、チャイナタウンのギャングの脱走路とか、最初の地下鉄プロジェクトの遺構とか、マンハッタンを防衛するための砦の地下通路とか。

Cities of the Underworld hosted by Don Wildman – History.com

しかし、日本からだとオンラインの動画が見られないのかなあ。今のところうまく再生できない。インターネットの世界でこういう制限は早くなくしてもらいたい。

イスラエルで学会発表

10月17日から21日まで、またイスラエルに行った。といっても、到着は17日(土)の深夜、出発は20日(火)の早朝で、実質的には2日しかいなかった。授業はあまり休めないので仕方ない。観光はできなかった。

今回はIIHA(International Intelligence History Association)という学会での発表。1993年にドイツで設立された学会で、初回はオーストリア、その後はずっとドイツ国内で年次会合が開かれてきたが、今回初めて国外で開かれるということだった。

まだ9月のイスラエル行きが決まってなかった頃に発表募集の締切があり、一度イスラエルに行ってみたいという気持ちだけで応募した。その後、9月のイスラエル行きが決まり、この10月の学会のときは用事ができてしまったので、辞退のメールを送った。ところが、日本からの参加というのがめずらしかったらしく、是非来てくれと催促が来た。学会の途中で帰ることになるけど良いかと聞くと、それで構わないということなので出かけることにした。

ところが、確定したプログラムを後で見てみると、学会の最終日に発表はなく、「戦略的エルサレム・ツアー」なるものが設定され、おまけにモサド関連の施設も見学するという。いちばんおもしろいところに参加できないことがわかって残念だった。

深夜にテルアビブに到着。一眠りしてから午前中は発表の準備。午後から学会。外国からの参加者はほとんど同じホテルに泊まっているので、学会がバスを手配してくれる。近くの席の人が「こんにちは」と日本語で話しかけてきた。ニューヨークの大学で教えているイタリア人で、ファーストネームが「イタイ」なので、日本人によくからかわれるそうだ。

学会の場所は、バリラン(Bar-Ilan)大学という、宗教色が強いという意味で保守的な大学の教室を借りて行われた。私から見ると違いがよく分からないが、地元の人から見ると、テルアビブ大学とはずいぶん雰囲気が違うらしい。参加者は100人ぐらい。大きな階段教室に収まる。

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プログラムにヘブライ語で名前が書いてあった。ヘブライ語は右から書く。

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受付を済ませると、9月のカンファレンスで会った人たちが何人かいたり、「お前、日本人だろ。発表楽しみにしているぞ」と言われたり、なんだか歓迎されている。

最初のパネルでは、古代ギリシャのインテリジェンスや、ヘロデ王のインテリジェンスなんて発表があり、なかなかおもしろい。CIAやDIA、FBIの現役の人(ヒストリアンも含めて)も発表している。夜は発表者全員でレストランに出かけてイスラエル料理。韓国の研究者といろいろ話す。

私の発表は二日目の午後、最後のラウンドテーブルの直前のパネルである。日本のインテリジェンス機関の再構築について。今回は準備の時間が足りなくて、自分としては70点未満のできだったが、日本の話はめずらしいらしく、たくさん質問をもらえて良かった。司会者が「今日は日本が人気だねえ」というと、フロアから「いつもだよ!」と叫んでいる人もいた。後でその人と話したら黒沢映画の大ファンだった。

その晩は、テルアビブ市街のロスチャイルド通りにある店に連れて行ってもらい、地ビールを飲んだ。たぶんキリスト教徒の店で、豚肉料理もあった。疲れとビールでふらふらになり、ホテルに帰るとそのまま眠ってしまう。フロントに頼んであったウェイクアップコールで午前1時に起床。2時にホテルを出て空港に向かい、長いセキュリティを抜けて午前5時半の帰国便に乗った。

イスラエルで学会発表

10月17日から21日まで、またイスラエルに行った。といっても、到着は17日(土)の深夜、出発は20日(火)の早朝で、実質的には2日しかいなかった。授業はあまり休めないので仕方ない。観光はできなかった。

今回はIIHA(International Intelligence History Association)という学会での発表。1993年にドイツで設立された学会で、初回はオーストリア、その後はずっとドイツ国内で年次会合が開かれてきたが、今回初めて国外で開かれるということだった。

まだ9月のイスラエル行きが決まってなかった頃に発表募集の締切があり、一度イスラエルに行ってみたいという気持ちだけで応募した。その後、9月のイスラエル行きが決まり、この10月の学会のときは用事ができてしまったので、辞退のメールを送った。ところが、日本からの参加というのがめずらしかったらしく、是非来てくれと催促が来た。学会の途中で帰ることになるけど良いかと聞くと、それで構わないということなので出かけることにした。

ところが、確定したプログラムを後で見てみると、学会の最終日に発表はなく、「戦略的エルサレム・ツアー」なるものが設定され、おまけにモサド関連の施設も見学するという。いちばんおもしろいところに参加できないことがわかって残念だった。

深夜にテルアビブに到着。一眠りしてから午前中は発表の準備。午後から学会。外国からの参加者はほとんど同じホテルに泊まっているので、学会がバスを手配してくれる。近くの席の人が「こんにちは」と日本語で話しかけてきた。ニューヨークの大学で教えているイタリア人で、ファーストネームが「イタイ」なので、日本人によくからかわれるそうだ。

学会の場所は、バリラン(Bar-Ilan)大学という、宗教色が強いという意味で保守的な大学の教室を借りて行われた。私から見ると違いがよく分からないが、地元の人から見ると、テルアビブ大学とはずいぶん雰囲気が違うらしい。参加者は100人ぐらい。大きな階段教室に収まる。

20091020israel02.JPG

プログラムにヘブライ語で名前が書いてあった。ヘブライ語は右から書く。

20091020israel01.JPG

受付を済ませると、9月のカンファレンスで会った人たちが何人かいたり、「お前、日本人だろ。発表楽しみにしているぞ」と言われたり、なんだか歓迎されている。

最初のパネルでは、古代ギリシャのインテリジェンスや、ヘロデ王のインテリジェンスなんて発表があり、なかなかおもしろい。CIAやDIA、FBIの現役の人(ヒストリアンも含めて)も発表している。夜は発表者全員でレストランに出かけてイスラエル料理。韓国の研究者といろいろ話す。

私の発表は二日目の午後、最後のラウンドテーブルの直前のパネルである。日本のインテリジェンス機関の再構築について。今回は準備の時間が足りなくて、自分としては70点未満のできだったが、日本の話はめずらしいらしく、たくさん質問をもらえて良かった。司会者が「今日は日本が人気だねえ」というと、フロアから「いつもだよ!」と叫んでいる人もいた。後でその人と話したら黒沢映画の大ファンだった。

その晩は、テルアビブ市街のロスチャイルド通りにある店に連れて行ってもらい、地ビールを飲んだ。たぶんキリスト教徒の店で、豚肉料理もあった。疲れとビールでふらふらになり、ホテルに帰るとそのまま眠ってしまう。フロントに頼んであったウェイクアップコールで午前1時に起床。2時にホテルを出て空港に向かい、長いセキュリティを抜けて午前5時半の帰国便に乗った。

League of Cyberspace Nations

ドメイン・ネームとIPアドレスを管理するICANNが、米国政府(だけ)の手を離れて、各国政府との関係を結ぶという決定を下した。これはインターネットの歴史の中では大きな出来事で、きっと年表に中には書かれることになるだろう。

インドの友人がわかりやすいコラムを書いたので紹介。

Subimal Bhattacharjee, “League of Cyberspace Nations,” livemint.com (October 7, 2009).

民主主義の同盟なんて言葉がはやっているけど、サイバースペース国家の同盟だそうだ。

【追記】前村さんのエントリーも参考になりますね。

GLOCOMフォーラム

前の職場でもあり、客員研究員をさせてもらってもいるGLOCOMのフォーラムが久しぶりに開かれる。

もう残席わずからしいので、お申し込みはお早めに。

http://sites.google.com/site/glocomforum09/

私はこの日、どうしても参加できない。とても残念。

私がGLOCOMに入った年は確か軽井沢でGLOCOMフォーラムがあり、刺激的な議論があったのを覚えている。今年は都内なのでアクセスが良い。行きたいなあ。