SOCA

今朝の日経にイギリスのSOCAについての小さな記事が出ていた。先月の学会でもイギリスの担当者が来て発表をしてくれたのだが、あまりその重要性に気づかなかった。イギリス人はその辺、控えめというか、あっさり話すのでよく分からなかった。

「英版FBI発足、4000人、組織犯罪に対応。」

2006/04/04, 日本経済新聞 朝刊, 8ページ,  , 188文字

SOCA(Serious Organized Crime Agency:「ソカ」と発音。英語のsoccer[スポーツのサッカー]の発音とよく似ている)は、Serious Organized Crime and Police Act of 2005に基づいて作られた。その役目はイギリス版のFBIということだが、MI5との住み分けはどうなるのだろう。MI5はIRAなどのテロ対策で、SOCAはその他の組織犯罪ということなのだろうか。

アジア発の理論

ローリング・ストーンズの東京ドーム公演を逃すという失態をしたが、収穫のある学会参加だった(昨日夕食を一緒したNK先生はサンディエゴで日本対キューバ戦を観戦したらしい。こっちも逃した私はアホだ)。

あるパネルで、シンガポールの研究者が、「なぜアジア発の国際関係の理論はないのか」と問題提起していた。日本国際政治学会がスポンサーになったパネルでも日本の国際関係論の現状について論じたようだ(私は出ていない)。

アジアや日本発の理論が皆無というわけではないが、量的には確かに少ない。一般論として言えば、それぞれの時代の覇権国で理論は栄えるものだ。それは自己正当化のためでもあるし、そうした研究に費やすリソースが豊富だということもあるだろう。

長風呂でおすすめだった『国家の品格』を休憩時間を利用して読んだ。著者の藤原正彦氏によると、数学の世界では美的な感覚が理論(定理)を生み出すために必要であり、日本は多くの数学の天才を生んでいるという。

この本は、「論理一辺倒だと破綻するよ」ということをいっているが、現在のアメリカの実証主義的な国際関係論のパラダイムでは論理がすべてといってもいい。今回の学会のパネルでも、分析の枠組みは何なのか、仮説は何なのか、適切な方法で仮説が検証されているか、といったことが厳しく議論されている。

薬師寺泰蔵先生が、イギリスの歴史主義・規範主義を第一の国際政治学とし、アメリカの実証主義を第二の国際政治学とすると、第三の国際政治学は、公共政策論の視点を入れた現実即応型になるだろうと指摘した。論理で演繹して社会で実験するというやり方は危険だ。社会実験が失敗したら取り返しが付かないからだ。だから、現実の問題をいかに解決するかという視点で理論を組み立てることが重要になるだろう。

日本や韓国は、アメリカ人の研究者から見たら「奇跡」といわれるやり方(つまり、なかなかそれまでの理論パラダイムでは理解できないやり方)で、経済復興を成し遂げた。ということは、うまくやれば新しい理論を組み立てられるということだろう。現実の後追い理論になる可能性はあるとしても、帰納的に出す理論があってもいい。

国際関係論とは離れるが、例えば、日本や韓国のブロードバンドがなぜこんなに普及したのか、欧米の人たちには理解できない。これをうまく概念化して説明できればいいのになと思う。

さて、飛行機に乗ろう。

極論争

まだサンディエゴで学会に出ている。昨日と今日はそれほどヒットする発表がなかった。インテリジェンス関連の発表は、3週間前にCIAを辞めたばかりですとか、国務省の担当者でしたとか、現職のDNIのスタッフですとか、そうそうたる人たちがいるので話の中身が濃く、得るところは多い。しかし、他の普通のパネルはno-showが多すぎる。まあ、6月にプロポーザルを出して翌年の3月に学会だから予定がフィックスできないのは分かるが、それにしてもねえ。特に有名人はキャンセルが多くて残念だ。

おもしろかったうちの一つは、John Mearsheimer教授(”Back to the Future”という論文で知られる)が出ていたラウンドーテーブル。誰か(日本人?)が「二極システムのほうが安定しているんじゃないか」と質問したら、Mearsheimer教授たちが「いや、一極システムのほうが安定している。覇権国は覇権を引き延ばすために公共財(サービス)を提供するからだ」というようなことを言っていた。当然、一極が安定しているという議論は現状の米国の覇権維持を肯定することになる。三極のほうが安定するという議論もあるし、極論争はまだ続くのだろうか。

夕方、気分転換に電車に乗ってハーバーに出かける。ちょうど巨大フェリーが出航したところだった。

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日本の暗号解読

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日本チームと入れ替わりで昨日からサンディエゴに来ている。しかし、ダウンタウンから離れたホテルで開かれている学会(International Studies Association)に缶詰なので野球の余韻はまったく味わえない。ただし、日本の面影は写真のような店で見ることができる。店内はミニ秋葉原みたいな感じだ。私が泊まっている別のホテルにも本格的な寿司バーがある。寿司は本格的に流行っているなあ。

この学会は、40ほどのセッションが同時並行で進み、それが午前2回、午後2回、4日間繰り広げられる巨大なものなので、きっとおもしろい話を聞き逃しているに違いない。テーマと発表者で選んで聞くしかないが、当たり外れが当然ある。外れだと非常にがっかりする。

今日聞いた中でおもしろかったのを紹介すると、まず、ジョージタウンのJennifer Simsの「インテリジェンス理論の開発」と題する話。「インテリジェンスの目的は真実を見つけることではない。競争上の優位を獲得することだ」とのこと。そうだとすると、イラク戦争は必ずしも失敗ではない。

次に、インディアナ大学のJeffrey Hartの「情報通信技術の国際レジーム」。私と問題意識が近い。同じセッションのアメリカン大学のSimon J. Nicholsonの「遺伝子組み換え食品のアンビバレントな政治」。ザンビアへの援助として遺伝子組み換え食品が送られているのに対し、ザンビアの大統領は「毒付きだ」といっているそうだ。

一番おもしろかったのは「インテリジェンスにおける歴史的な教訓を活用する」という題のセッション。イスラエルのハイファ大学のUri Bar-Josephは、イスラエルの情報機関のパフォーマンスを1953年から2003年まで検証すると、成功したのはたった5%だという。これは低すぎる数字のような気がするが、どうなのだろう。

同じセッションで神戸大学の簑原俊洋助教授が「日本のブラック・チェインバー」と題して発表した。アメリカの暗号解読機関について暴露したハーバート・ヤードリーの『American Black Chamber』をもじったタイトルだ。日本の戦時中のインテリジェンス活動については、1945年8月13日にほとんどの文書が燃やされてしまったが、簑原先生が見つけた文書では、米国、英国、中国などの暗号を解読していたらしい。パネルの聴衆はインテリジェンスの専門家ばかりだが、みんなよく知らなかったらしい。これは大きな発見かもしれない。ペーパーが公刊されるのが楽しみだ。

CC裁判

どうやらオランダで(おそらく世界最初の)クリエイティブ・コモンズに関連する裁判の判決が出たようだ(オランダ語の判決文はこちら。理解できないけどね)。

ある有名人がflickr.comで、クリエイティブ・コモンズのAttribution-Noncommercial-Sharealikeライセンス付きで家族の写真を公開したところ、ゴシップ誌が事前に許可を得ずに掲載してしまった。問題の写真には、「this photo is public」と書かれていたため、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスが付いているのに、雑誌社はパブリック・ドメインと勘違いしたようだ。

この裁判の意義は大きい。クリエイティブ・コモンズ・ライセンスが有効であることを裁判所が認めた(おそらく初めての)判例となるからだ。クリエイティブ・コモンズ・ライセンスが安心して使えるものであることを示したといえるだろう。

【追記】

CCからプレスリリースが出た。

嘘も混ざる(?)ブログ

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ようやくアメリカから帰る。写真は1ドル硬貨。地下鉄の切符を自動販売機で買うとき、5ドル札などを入れるとごろごろとお釣りで出てくる。2002年に初めて見たときはびっくりしたが、まだあまり普及していない感じがする。タクシーの支払いで使ったらすぐに分かってもらえなかった。

ちなみに他に滅多に出回っていないものとして、ケネディ大統領の50セント硬貨とか、ジェファーソン大統領の2ドル紙幣がある。

ところで、アメリカにいた間に一番びっくりしたのはAT&TがBell Southを買うというニュースだった。Ma Bellの復活(?)があるなんて、アメリカ資本主義は何でもありだ。

マイナーなニュースでおもしろかったのが、スーパー最大手の●ォルマートがブログを使ってイメージアップを図ろうとしているというだ。ブログはオルターナティブ・ジャーナリズムだとアメリカではいわれていたはずだけど、こうなるとどうなのだろう。NYの友人は、●ォルマートはあまりにgreedyだから買わないと怒っていた。従業員を安い給料でこき使い、挙げ句のはてに政府のフード・チケットをもらってこいと奨励していると糾弾するテレビ・ルポが放送されたそうだ。RFIDを導入する先端企業というイメージがちょっと変わってきた。

プリンストン大学

プリンストン大学を訪問。アインシュタインジョン・ナッシュがいたところ。村上春樹江藤淳も滞在したことがある。

国際関係論でいえば、ウッドロー・ウイルソン大統領がかつて学長を務めていた。写真はWoodrow Wilson School of Public and International Affairsの外観。

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下は、ウイルソンが学長時代に使っていた部屋(二階)だそうだ。

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今、一番の有名教授といえば、経済学のポール・クルーグマンだろうか。国際政治学だとG・ジョン・アイケンベリーがいる。それから、ファカルティの写真を見ていて気がついたのだけど、ロバート・コヘインがデューク大学から移籍してきている。おもしろそうなところだ。

残念なのは、プリンストンにはロー・スクールがないこと。学部教育が重視されており、大学院は、エンジニアリング、アーツ(建築)、公共・国際問題(ウイルソン・スクール)の三つしかないそうだ。ロー・スクールがないとネットのことを論じる人が少なくなる(アメリカではネット問題を論じる人の中で法律家の割合が非常に高い)。

いろいろ話を聞きながら、SFCと比較してみておもしろかった。プリンストンでは(まだ?)一般教養の必修授業があり、二年生が終わるまで自分の専門を決める必要がない。SFCはいきなり一年生から専門科目が学べるので早熟教育になっている(学部の四年生になると学会発表までやってしまう)。プリンストンでは97%がキャンパス内の寮に住んでいるが、SFCには寮がない。大学といってもいろいろなスタイルがあるものだ。

こちらの新聞を読んでいると、ローレンス・サマーズ学長を追い出したハーバード大学関係の記事が目に付く。3月4日付けのOP-ED欄には、John Tierney氏が「Free Harvard! (Or Not)」(有料)というコラムを書いている。大学教授はテニュア(終身在職権)こちらも参照)で守られているため、人事権を持たない学長(や学部長)が改革を実行できず、大学はいつまでたっても旧態依然としているというわけだ。テニュアを正当化する理由の一つは、テニュアが無くなると、自分のポジションを危うくするような優秀な若い研究者を既存の教授たちが採用しなくなり、大学自体のレベルが下がるというものだ。それは一理あるだろう。コラムでは、結局のところ教授たちに変革を促すのは冷笑しかないという。教授たちのプライドを傷つけるというわけだ。

ついでにいうと、大学というところは、採用するにあたっては研究が重視され、採用されると教育が義務になるというおかしなシステムになっている。素晴らしい教育者であっても研究業績がないと採用されない。素晴らしい研究をする人は素晴らしい教育もできるに違いないという前提で成り立っている。しかし、現実には必ずしもそうではない。まして、テニュアを取ってしまうと、頑張るインセンティブが極端に減る。特に日本の場合は頑張っても給料が増えることはまずない。アメリカの場合は、高額の移籍金と好待遇によって引き抜きがあることはある。しかし、現状に満足している人は、何もしないで過ごすこともできる。

ハーバードはどうなるのか、日本の大学はどうなるのか。

【追記】

明日、アカデミー賞ということで、テレビで『ビューティフル・マインド』が放映されていた。調べてみると、まだジョン・ナッシュはプリンストンで研究している。

http://www.math.princeton.edu/directory/

http://www.math.princeton.edu/jfnj/

懐の広い大学だ。下記にはナッシュの短い自伝が出ている。

http://nobelprize.org/economics/laureates/1994/nash-autobio.html

吹雪で立ち往生

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午前10時、レンタカーでNYを出る頃には雪がちらつき始める。イェール大学に着く頃には吹雪。さらさらの雪なので、はたけば落ちるが、傘を差していても体中が真っ白になる。アメリカ人はやっぱり傘を差さない人たちだね。

歴史学部を訪問して、その威厳に打たれる。教授会の部屋は古めかしくてうなってしまう。

雪の勢いが増すばかりなので急いで退散するも、目的地までたどり着かない。ハンドルは取られ、前が見えず、道路標示もよく分からない。日没間近で断念し、ハイウェイ沿いのホテルに飛び込む。幸い、部屋が空いていて助かった。おまけに無料でブロードバンドもある。ビジネス・センターで無料で印刷もできる。今日はここで締め切りを過ぎた原稿を仕上げる。すみません、E編集長。

無事仕事終了

Japan Societyでのパネル・ディスカッションを無事終える。直前に話す内容を変えたのが功を奏して好評だった(ジョークも受けて良かった)。

MITのIan Condryは秋にHip Hop Japanという本を出すそうだ。彼のお気に入りは、サムライ・チャンプルーというアニメ番組。アメリカの若い人たちが勝手に字幕をつけているらしい。これを「fan subbing:ファンがサブタイトル(字幕)を付ける」というそうだ(ちなみにKappa Mikeyのことは知らなかった)。

Gross National Coolで有名になったDouglas McGrayは、なんと今は刑務所の取材をしているらしい。日本研究をしたのも偶然だったとか。

ハーバードのKostas Terzidisが、クリエイティブな人々は言語以外の方法でコミュニケーションできるといっていたのも印象的だった。

日本のクリエイティビティがテーマだったけど、日本のとらえ方が確実に変わってきているというのを実感できた。いろいろな出会いがあっていい一日だった。

Kappa Mikey

NYのローカル・ニュースで取り上げていたKappa Mikey(カッパ・マイキー)。どうやら日本アニメのパロディらしい。ポケモンもどきみたいなのも出ている。キャスターが苦笑していた。おもしろいのだろうか。

電力線だ!

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ニューヨークにやってきた。ホテルでチェックインしたとき、ブロードバンドがあるよと言っていたのに部屋には何もない。おかしいなと思ってフロントで聞くと、「10分ぐらい待ってて。部屋に持っていくから」という。DSLのモデムでも持ってくるのかと思ったら、持ってきたのは電力線(パワーライン)ブロードバンドのモデムだった。確か2002年にワシントンDC近郊でテストが始まっていて、あまり普及していないと聞いていたけどこんなところで出会うとは。

モデムを電気のコンセントとつなぎ、モデムとパソコンをイーサーケーブルでつなぐだけ。DHCPであっさりネットにつながった。スピードも悪くない。モデムを持ってきてくれた人によると部屋の中のどのコンセントでもいいらしい。もちろん、裏でいろいろ設定が必要なんだろうけど、これは手軽でいい。

【追記】

この会社のデバイス。

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他の電波と干渉するというのが日本で問題になっているが、アメリカではFCCのパート15ルールが適用されているらしい。

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確定申告何とかならんかなあ

ブログで悪口や愚痴を書くのはどうかと思うのだけど、「私は頭が悪いなあ」と毎年屈辱感を与えてくれるのが確定申告。意味不明の言葉と理解不能な計算式に腹が立つ。書類を整えたり、計算したりでえらく時間がかかる。以前kk氏はフォームにしたがって計算するだけだよと言っていたけど、どうも私はそうできない。税金払いたくないわけではないので、もっと簡単にならんのかなと思う。税理士雇うほど稼いでもいない(粉飾できる人っていうのは頭がいいのだろうか。やっぱり面倒なんだろうか)。

たいていこういう時は、「アメリカでは……」なんて話をするのが筋なのだろうけど、アメリカで確定申告やったときはもっとひどかった。アメリカではSSN(社会保険番号)持っている人は全員確定申告をしなくてはいけないらしい。会社が天引きして代行してくれるわけではないから自分で全部やる。だから税金に対する意識が高いという説もある。しかし、確定申告のフォームの内容がまったく理解できなかった。仕方がないので、ウェブで誰かが「こう書けばいい」と解説しているのを信じて写して書いた。「日米租税条約の何条で免除されているので何とかかんとか」とか書くのだけど、あれで正しかったのか今もって自信がない。

日本でも電子申告ができるようになりつつあるけど、源泉徴収票などの紙書類を電子的にやりとりできないと意味がない。無税国家にせよとは言わないし、きちんと払うので、もっとフレンドリーにして欲しいなあ。私の場合は原稿料なんかがあるので確定申告しているのだが、株取引やる人が増えると確定申告する人が増えるはず。フレンドリーにしたほうが政府にも国民にもプラスだと思うのだけどなあ。

Japanese Telecommunications

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Ruth Taplin and Masako Wakui, ed., Japanese Telecommunications: Market and Policy in Transition, London: Routledge, 2006.

第8章で「Ill-deined National Interest: The Difficult Role of the Japanese Negotiator in the Access Charge Negotiations with the United States」を担当。

もうダメになったとかと思ったらついに出版された。英語の本は初めてだ。和久井先生はじめ皆さんに感謝。校正も何もなかったので(英語の本はそんなものなのだろうか?)、はたしてまともな英語になっているのかが不安だ。読み返すのが怖い。

他の著者は、浅井澄子依田高典Jeffrey L. Funk、Ruth Taplin、鬼木甫和久井理子鈴木賢志の各氏。しかし、高いなあ……、15000円を超えるのではないだろうか。

【追記】

和久井先生からメールをいただきました。値段の件も、校正の件も、大変な努力をしてくださっていたのでした。大変申し訳ないです。校正については私の知らないところで編者と出版社の間で激しいやりとりがあったそうです(ということは私の拙い英語は大幅改善しているはずだとほっとしました)。別の先生が英語の単著を出したときにも相当なやりとりがあったと聞きました。簡単なことではないのですね。うかつなことを書いてしまいました。すみません(念のため言うと、和久井先生はとてもやさしい先生です)。

Delicious Library

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同僚の内藤さんから教えてもらった「Delicious Library」を使うためにiSightを買った。今までiSightに興味はなかったけど、このソフトウェアはおもしろい。

このソフトウェアからiSightのカメラを起動すると、横に線が走っている。ここに本やCDのバーコードをかざすと、それを認識し、アマゾンから詳しいデータを自動でダウンロード、それをライブラリにしてくれるというわけだ。ソフトウェアは英語だけど、日本語の本にも対応している。

スキャンにはコツがいるけど、慣れれば速くできるようになりそうだ。これで蔵書整理がはかどるかもしれない。貸し出しにも対応しているところがにくい。

さらには、ライブラリを共有することもできる。テキストファイルで吐き出して、それを自分のDelicious Libraryで読み込めばいい。画像はソフトウェアが自動でダウンロードしてくる。ちなみに今日私がためたライブラリはこのテキストファイルに入っている。他人と蔵書情報の共有ができるというのはiPodのプレイリストの共有みたいだ。

今のところはマックだけみたいだが、SFCのCNSも来年あたりからインテルマックが入るらしいから、広く使われるようになるかもしれない。

シンガポールの奇跡

田中恭子『シンガポールの奇跡—お雇い教師の見た国づくり—』中公新書、1984年。

たまたま古本屋で見つけた本を出張中に読む。著者は、1973年にシンガポール大学文学部助教授になった(現在は南山大学総合政策学部のようだ)。現在のシンガポール「国立」大学は、当時のシンガポール大学と南洋(ナンヤン)大学が統合されてできた。南洋大学あったところには現在は南洋工科大学がある。70年代のシンガポール大学はイギリス統治を受け継いだ英語で教える大学、それに対し後発の南洋大学は華語で教える大学として作られたそうだ。しかし、英語が話せないと良い職に就けないという問題が顕著になり、リー・クアン・ユーが介入して両大学は統合されたという。

今回、シンガポール国立大学に行ったり、南洋工科大学の先生に会ったりしたが、そんな歴史があるとは知らなかった。この本の中でイギリス流の教育が大学に残っていると書いてあるが、それがまだ残っているらしく、授業は1時間半の講義と30分の演習がセットになって、2時間もやるそうだ。

この本には中国語(華語)を話せない中国系シンガポール人の話が随所に出てくる。先祖が同じでもずいぶんとライフ・スタイルは変わってしまうものだということを考えさせられる。国の政策が大きな役割を果たした例としてシンガポールは位置づけられる。