井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

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詩、小説、そしてパターン・ランゲージ

パターン・ランゲージは、内から創造を支える言語。パターン・ランゲージを書くということは、そのような生成力(generative power)をもつことばを生み出すということである。

パターン・ランゲージを書くということは、読者の想像力を引き出しイメージをつくり出す生成力をもつという点で、小説や詩を書くことに通じる(この関係性については、僕だけでなく、リチャード・ガブリエルも語っている。彼は、ソフトウェア分野のパターン・ランゲージの大御所の一人だが、ソフトウェア・エンジニアであるとともに、詩人であり、写真家でもある。彼こそが、パターン・ランゲージの世界に、詩や小説の分野の「ライターズ・ワークショップ」を取り入れた張本人である)。

文学とパターン・ランゲージとの違いは、読者がある分野においてデザインを支援することにある。パターンは、自らの問題を発見・解決するための記述形式になっているのだ。

つまり、小説や詩が、ひとつの世界を表現したひとまとまりのパッケージだとすると、パターン・ランゲージは、読者がデザインするための操作可能性をもったブロックのようなものだ。

また、小説や詩は、読者を違う世界へと連れて行く、いわばヴァーチャル・リアリティ(事実上の現実)の表現である。パターン・ランゲージは、読者は自分の世界にとどまり続け、それと重ねながら現在や未来を違う風に見せるという、オーギュメンテッド・リアリティ(AR:拡張現実)の表現だと言える。

小説や詩では、読者は読者にとどまるが、パターン・ランゲージでは、読者はそれを用いたデザイナーになる。パターン・ランゲージをつくるということは、すなわち、デザインをデザインするということである。ここに面白みと難しさがある。
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パターン・ランゲージの全体像をつくるときの(密かな)こだわり

パターン・ランゲージ制作の後半では、どのように全体像をつくるのか、これまであまり語ることがなかったので、ここで書いておきたいと思う。

全体像をつくるというのは、実は単なるボトムアップではなく、部分→全体、全体→部分を行ったり来たりしながら構造化していく。

そのときに、僕のなかにいくつかの方針(制約)があって、チューニングしながらつくるのである。

その方針(制約)の第一は、「3つ」でまとめるということ。全体を3つに分ける。個々のパターンも3パターンでひとまとまりとする、など。ラーニング・パターンも、プレゼンテーション・パターンも、コラボレーション・パターンもすべて「3」でまとめている。

方針の第二は、中心(No.0)をつくる、ということ。パターン・ランゲージにNo.0をつくっているのは、実は僕らぐらいのもので、これにはこだわりがある。このパターン・ランゲージの中心に位置するもの(センター)は、このランゲージのなかにあるべきだと考えている。外ではなく内に持ちたい。

方針の第三は、パターンの順序。僕らはパターンにあえてシーケンシャルな番号をつけている。その順に冊子に収録されることになる。なので、前から読んで違和感がなく、理解しやすいような順番性を考える。しかも、各まとまりのなかで重要なものが先に来るようにし、オプショナルなものは後にしている。

こういう観点から、パターン・ランゲージの体系をつくり込んでいく。もちろん、単純な線形的なプロセスでは進まず、全体での位置が変わるとパターンの内容やニュアンスが変わってくる。そうやって、部分と全体を行ったり来たりしながら、パターンの関係性を構造化していくのである。

あるとき納得した順番も、よくよく考えると、やっぱりしっくりこない、ということがよくある。その繰り返しなのだ。だから、パターンの順番の並び替えは、実は冊子完成の数日前まで行なっている。完成すると、まるで当たり前のような顔をして存在している全体像も、最後の最後まで、より最適な配置となるように編集されているのである。

これが、パターン・ランゲージの全体像をつくるという際の、これまで語られることがなかった密かなこだわりなのである。


lp_overview.jpg
ラーニング・パターンの全体像


pp_ovewview.jpg
プレゼンテーション・パターンの全体像


cp_overview.jpg
コラボレーション・パターンの全体像
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