井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

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2011年度春学期の対談・鼎談を振り返る

2011年度春学期も、多くの対談・鼎談を行いました。

対談・鼎談をしてくださったゲストの方々、また会場に来てくれた方々、準備スタッフのみなさん、どうもありがとうございました!

ここで、今学期の対談・鼎談について、少しまとめを書いておきたいと思います。

まず最初に、なぜ対談や鼎談という形式で行うのかという理由について触れておきたいと思います。ゲストの方に講演をしていただくというのではなく、僕との対談・鼎談という企画にしているのには、僕なりのこだわりがあるからです。

それは第一に、オーディエンスに、「その場でしか見られないようなやり取りを見ていただきたい」ということです。ゲストで来ていただく方々は、いろいろなところで講演をしていることが多いと思います。なので、同じような機会を僕がわざわざ提供する必要はないと思っています。そこで、僕が提供する意味を考え、僕が対談・鼎談として絡むことで、ここでしか見ることができないようなものを提供したいと思っています。

そして第二に、ゲストの方にも、僕が考えていることややっていることを紹介することで、「双方向のコミュニケーションの場にしたい」ということです。たいてい、ゲストスピーカーの方に講演をお願いする場合には、ゲストの方は会場の反応や質問くらいしか持ち帰るものがありません。そうではなく、僕の話もすることによって、ゲストの方を刺激し、さらなるコミュニケーションを誘発したいと思っています。その結果、ゲストの方には、そこで得た新しい認識や考えを持ち帰っていただくことができるかもしれません。

このような理由から、僕は「対話」→「即興的コラボレーション」を基本とした 対談・鼎談を行うことにしているのです。どの対談・鼎談も、大まかなテーマを決めるだけで、「流れ」や「落としどころ」のようなものを、事前に打ち合わせで決めたりはしません。ぶっつけ本番です。そのことが、ゲストの方を不安にさせるようなので少々申し訳ないのですが、そういうやり方だからこそ「その場で生まれるコミュニケーションの連鎖」の臨場感が実現できると思うのです。

求めているのは、予定調和ではなく、その場で生まれるという生成感なのです。

そのような思いで企画し、実施した対談・鼎談(2011年度春学期)は、以下のとおりです。

■ 熊坂 賢次 × 諏訪 正樹 × 井庭 崇 鼎談「概念構築の方法論」

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社会学者の熊坂 賢次さん(慶應義塾大学環境情報学部教授)と、認知科学者の諏訪 正樹さん(慶應義塾大学環境情報学部教授)と、自分たちの研究における概念構築の方法論とこだわりについて語り合いました。2011年5月10日(火)、SFC「概念構築 (CB)」にて。


■ 加藤 寛 × 井庭 崇 対談「総合政策学の「総合」と「政策」について語る」

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加藤寛先生(慶應義塾大学総合政策学部 初代学部長、現在、慶應義塾大学名誉教授、嘉悦大学学長)と、総合政策学にまつわるコンセプトや考え方について語り合いました。2011年5月13日(金)、嘉悦大学にて。


■ 市川 力 × 今村 久美 × 井庭 崇 鼎談 「“自分”から始まる学びの場のデザイン」

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市川 力さん(東京コミュニティスクール校長)と、今村 久美さん(NPOカタリバ代表理事)と、コミュニケーションの連鎖を誘発する「新しい学びの場づくり」について、自分たちの実践事例を交えて語り合いました。2011年5月21日(土)、SFC「社会システム理論」にて。
鼎談映像 → SFC-GC (Global Campus) 「社会システム理論2011」


■ 江渡 浩一郎 × 中西 泰人 × 井庭 崇 鼎談「パターン・ランゲージの思想と展開」

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江渡 浩一郎さん(産業技術総合研究所研究員/メディア・アーティスト)と、飛び込みで参加することになった中西 泰人さん(慶應義塾大学環境情報学部 准教授)と、パターンランゲージの背後にある思想やパターンランゲージのあり方などについて語り合いました。2011年5月23日(月)、SFC「井庭研究会B1」にて。


■ 武田 隆 × 井庭 崇 対談「ネットコミュニティによる新しいマーケティング」

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武田 隆さん(エイベック研究所 代表取締役)と、インターネットの精神とその変遷、そして、コミュニティの育成と可能性について語り合いました。2011年5月24日(火)、SFC「井庭研究会B2」にて。


■ 相磯秀夫×井庭崇 対談 「テクノロジー・人間・社会の関係性とそのデザイン」

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相磯秀夫先生(慶應義塾大学環境情報学部 初代学部長、現在、慶應義塾大学名誉教授)と、SFC創設時のイノベーションや、これからの大学に必要なことなどについて語り合いました。2011年6月18日(土)、SFC「シミュレーションデザイン」にて。


■ 中原 淳 × 井庭 崇 対談「学びと創造の場づくり」

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中原淳さん(東京大学 大学総合教育研究センター 准教授)と、対話と学びを誘発する「場」のデザインについて、自分たちの実践例を交えながら、語り合いました。2011年7月9日(土)、SFC「社会システム理論」にて。
対談映像 → SFC-GC (Global Campus) 「社会システム理論2011」
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7月19日(火)6限に追加の井庭研説明会を開催します!

2011年7月19日(火)6限に、追加の井庭研説明会を開催します!

先週の説明会は5限に開催したため参加できなかったという声を何人からか聞きました。そこで、今週は6限に、追加の説明会を行います。井庭研会B1とB2の両方を説明します(内容的には先週の説明会の短縮版です)。

先週参加した人でも、何か質問等があれば、その場に来てもらえれば、話が早いと思います。


■ 井庭崇研究会B1&B2説明会
7月19日(火)6限(18:10〜) @ κ11教室


■井庭研B1
パターン・ランゲージによる実践知の言語化プロジェクト
(創造的なコラボレーション + 魅せるプレゼンテーションの探究)

■井庭研B2
新しいシステム理論にもとづく社会研究
(コミュニケーションの連鎖の分析とメディア構築)


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井庭研 説明会ポスターをつくりました

井庭研説明会のポスターをつくりました。

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■ 井庭崇研究会B1説明会 7月11日(月)5限 @ ε12教室
パターン・ランゲージによる実践知の言語化プロジェクト
(創造的なコラボレーション + 魅せるプレゼンテーションの探究)

■ 井庭崇研究会B2説明会 7月12日(火)5限 @ κ11教室
新しいシステム理論にもとづく社会研究
(コミュニケーションの連鎖の分析とメディア構築)
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無限と有限の組合せで何が生まれるか? ー 「ChaoticWalker」公開

多様で複雑なカタチを生成できるソフトウェア「ChaoticWalker」を公開し始めました。ぜひ、ダウンロードして、遊んでみてください!

http://www.chaoticwalk.org/
このページから、簡単な登録後、実行ファイル(jarファイル)をダウンロードできます。Javaで書かれているので、基本的にはどのOSでもいけるはずです。

このソフトウェアで体験できることは、次のことです。

「無限」を生み出すカオスは、そのままでは不規則でかたちは生成できないのですが、それに数値の桁数を区切るという「有限性」の枠をはめることで、カタチが立ち現れる!

こういう非常に興味深い現象を考察するためのツールなのです。

とはいえ、まずは、難しいことは考えずに、実行してみて、いろんなかたちを生成してみてください。


ChaoticWalker 0.80
ChaoticWalker080_Screen420.jpg


ChaoticWalker Lite 0.80
ChaoticWalkerLite080_Screen420.jpg



このソフトウェアは、2009年に僕がボストンにいるときにゼロから開発したものです。久しぶりに本格的にプログラミングをしました。そして、僕自身実際にこのツールを使って、研究をしました。

パターン生成の可視化メカニズムは、2007年に井庭研の学生だった下西風澄くんが、廣瀬隼也くんとの議論のなかで考え出したものです。そしてそれを「カオスの足あと」と名づけ、探索的な分析が始まりました。その後、ふとしたことから、有効桁数がカタチに影響を与えていることに気づき、僕が「無限の可能性を生むカオスで有限性をコントロールする」ことに意義を見出し、それについての研究も始まりました。

この研究は、非線形科学の学会で発表しただけでなく、コンピュータグラフィックスの世界最大のカンファレンス SIGGRAPHでも発表しました。下西くんの興味が、アートとサイエンスをつなぐということだったのも大きく影響しているでしょう。このようなコラボレーションによって、このソフトゥエアの背後にある可視化手法がつくられ、探究されてきました。

実際に探索してみるとわかりますが、そこにはとても魅力的な世界が広がっています。ぜひ、いろいろ値を変えて、カタチを生成してみてください。有効な桁数 digitを5〜9くらいに、コントロール・パラメータ a を約3.7 〜 4.0にすると(カオスの領域)、面白いカタチが生成されやすいでしょう。


このツールをつかって生成した画像は、下記の論文でも多数取り上げています。興味があれば、こちらもみてみてください。とてもワクワクしますよ!

Iba, T. & Shimonishi, K. (2011), "The Origin of Diversity: Thinking with Chaotic Walk," in Unifying Themes in Complex Systems Volume VIII: Proceedings of the Eighth International Conference on Complex Systems, New England Complex Systems Institute Series on Complexity (Sayama, H., Minai, A. A., Braha, D. and Bar-Yam, Y. eds., NECSI Knowledge Press, 2011), pp.447-461.
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井庭研 夏の特別研究プロジェクト2011 シラバス

下記の通り、夏の「特別研究プロジェクト」(井庭)を開催します。これは、夏休み中の正規の授業として開講されます(2単位)。参加希望の人は、メールにて連絡をください。

「 新しいシステム理論にもとづく社会研究【特別編】」(井庭 崇)

 本特別研究プロジェクトでは、社会学者ニクラス・ルーマンの「社会システム理論」(Social Systems Theory)の理解を深めるため、『社会の芸術』を読み込みます。ルーマンの社会システム理論では、社会を「コミュニケーション」という出来事の生成・連鎖の視点で捉えます。そして、本来は生起しにくい社会的秩序が、いかにして生じ得るのかを考察します。この理論は、政治、経済、法、科学、教育、芸術、宗教、マスメディア、社会運動、組織、愛など、様々な社会現象の理解に用いられています。
 本プロジェクトでは、『社会の芸術』の日本語訳と英語訳の両方を読み、理論の内容理解だけでなく、社会システム理論にもとづく社会研究を英語で書くための力も身につけます。

『社会の芸術』(ニクラス ルーマン, 法政大学出版局, 2004)
第1章 知覚とコミュニケーション―形式の再生産について
第2章 ファースト・オーダーの観察とセカンド・オーダーの観察
第3章 メディアと形式
第4章 芸術の機能と芸術システムの分出
第5章 自己組織化―コード化とプログラム化
第6章 進化
第7章 自己記述

『Art as a Social System』(N. Luhmann, Stanford University Press, 2000)
Chapter 1. Perception and communication: the reproduction of forms
Chapter 2. Observation of the first and of the second order
Chapter 3. Medium and form
Chapter 4. The function of art and the differentiation of the art system
Chapter 5. Self-organization: coding and programming
Chapter 6. Evolution
Chapter 7. Self-description


【実施期間】
2011年 9月1日~3日、5日、13日、14日

【実施場所】
SFC

【参加条件】
「社会システム理論」の授業を履修済み、もしくは、プロジェクト開始前までに、SFC-GCで「社会システム理論」の映像を見て自習していること。

【評価方法】
文献読解・議論における積極性・貢献度、文献読解のまとめのレポート、および研究関連の諸活動から総合的に評価します。

【問い合わせ・連絡先】
ilab-entry2011 [at] sfc.keio.ac.jp

【参考文献】
・『社会システム理論』〈上〉 〈下〉(ニクラス・ルーマン, 恒星社厚生閣, 1995)
・『Social Systems』(N. Luhmann, Stanford University Press, 1996)
・『社会の社会』〈1〉 〈2〉(ニクラス ルーマン, 法政大学出版局, 2009)
・『システム理論入門:ニクラス・ルーマン講義録〈1〉』(ニクラス ルーマン, 新泉社, 2007)
・『社会理論入門:ニクラス・ルーマン講義録〈2〉』(ニクラス ルーマン, 新泉社, 2009)

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