パターン・ランゲージのつくり方:部分展開と全体構築の2つのアプローチ
僕の経験からすると、パターン・ランゲージのつくり方には、大きく分けて二つのアプローチがある。ひとつは、いくつかのパターンから書き始めるというもの(部分展開アプローチ)。もうひとつは、全体像を明らかにしてから個々のパターンを書くというもの(全体構築アプローチ)である。
いくつかのパターンから書き始める部分展開アプローチのメリットは、1つのパターンを書くことからでも始められること。つまり、それほど時間がかからずに、少数のパターンができあがるので、それを利用することもできるようになる。
部分展開アプローチのデメリットは、各パターンが「全体」のなかでどの位置を占めるのかがわからないまま、パターンを書かなければならなくなる点。全体像が見えていないので、どのような粒度や抽象度で書けばよいのかが定かではなく、最終的に一貫性や整合性がとれなくなる可能性もでてくる。
全体像を明らかにしてから個々のパターンを書く全体構築アプローチのメリットは、全体像がつかめるので、個々のパターンの役割や関係性を意識して書くことができるようになる。また、他のパターンと粒度や抽象度を合わせることができるので、全体として一貫性や整合性のとれたランゲージになる。
全体構築アプローチのデメリットは、かなり大掛かりなプロジェクトになるということ。パターンを書く前に、ブレインストーミングやKJ法など、全体像をつくるためにかなりの時間を費やすことになる。また、パターンの候補も一気に数十個(僕らの経験則だと50個前後)が得られるので、書くのも大変になる。
このように、部分展開アプローチにも全体構築アプローチにも、メリットとデメリットがある。そのため、パターン・ランゲージをつくるときには、自分の目的やスケジュール、リソースなどを考えて、アプローチを選ぶとよい。
例えば、そのコミュニティ内で、すぐに使えるように、実践知(視点/発想/こだわり)を「共有」したいということであれば、部分展開アプローチがよいだろう。なぜなら、体系立っていることよりも、共有できることの方が大切だからである。
これに対して、ある分野での実践において、多くの人がうまくいかず悩んでいる状況から抜け出すことを支援したいということであれば、苦労をしてでも全体構築アプローチで、しっかりとつくり込むことには意味があるだろう。なぜかというと、そのような状況を抜け出すためには、数個のtipsを知るだけではどうにもならず、ランゲージ全体によって考えることを支援しなければ効果がでないからである。
このような考えから、井庭研ではこれまで、全体構築アプローチによって「ラーニング・パターン」と「プレゼンテーション・パターン」をつくってきた。「コラボレーション・パターン」もこのアプローチでつくっている(パターン・マイニングの活動映像:Brain Storming 編 / Visual Mapping 編)。
他方、クリエイティブ・ラーニングのための教授法パターンや、第二言語によるライティング・パターン、パターン・ランゲージ制作にまつわるパターンなどは、部分展開アプローチでつくっている。少しでも早くその実践知を共有したいと考えているからである。
しかも、実際問題として、同じチーム内で全体構築アプローチのプロジェクトを、複数同時並行で進めることは難しい。ひとつひとつが、かなりの時間と労力と気合いを必要とするからだ。
いま井庭研では、二つの全体構築アプローチのプロジェクトが並行して進んでいる(Collaboration Patterns Project と Generative Beauty Project)。それぞれ10〜15人のメンバーで構成され、メンバーの8割が重なっている。工夫している点としては、時期をずらして始めていること。片方のプロジェクトの後半と、もう一方のプロジェクトの前半が重なるように。
Collaboration Patterns Project
Generative Beauty Project
こうすれば、KJ法ばかりやっているとか、パターン・ライティングばかりやっているということを避けることができる。二つのプロジェクトを進めていても、KJ法とパターン・ライティングはまったく違うアクティビティであり、違う頭の使い方をするので、なんとかなっている。
そうすると、もうこれ以上は、全体構築アプローチのプロジェクトをまわすことはできない。なので、そういう現実的な制約からも、残りのパターン・ランゲージ制作プロジェクトは、部分展開アプローチで進めることになる。
以上が、パターン・ランゲージ制作について、制作するパターンとそれがつくる全体の関係に注目したアプローチについてのまとめである。
いくつかのパターンから書き始める部分展開アプローチのメリットは、1つのパターンを書くことからでも始められること。つまり、それほど時間がかからずに、少数のパターンができあがるので、それを利用することもできるようになる。
部分展開アプローチのデメリットは、各パターンが「全体」のなかでどの位置を占めるのかがわからないまま、パターンを書かなければならなくなる点。全体像が見えていないので、どのような粒度や抽象度で書けばよいのかが定かではなく、最終的に一貫性や整合性がとれなくなる可能性もでてくる。
全体像を明らかにしてから個々のパターンを書く全体構築アプローチのメリットは、全体像がつかめるので、個々のパターンの役割や関係性を意識して書くことができるようになる。また、他のパターンと粒度や抽象度を合わせることができるので、全体として一貫性や整合性のとれたランゲージになる。
全体構築アプローチのデメリットは、かなり大掛かりなプロジェクトになるということ。パターンを書く前に、ブレインストーミングやKJ法など、全体像をつくるためにかなりの時間を費やすことになる。また、パターンの候補も一気に数十個(僕らの経験則だと50個前後)が得られるので、書くのも大変になる。
このように、部分展開アプローチにも全体構築アプローチにも、メリットとデメリットがある。そのため、パターン・ランゲージをつくるときには、自分の目的やスケジュール、リソースなどを考えて、アプローチを選ぶとよい。
例えば、そのコミュニティ内で、すぐに使えるように、実践知(視点/発想/こだわり)を「共有」したいということであれば、部分展開アプローチがよいだろう。なぜなら、体系立っていることよりも、共有できることの方が大切だからである。
これに対して、ある分野での実践において、多くの人がうまくいかず悩んでいる状況から抜け出すことを支援したいということであれば、苦労をしてでも全体構築アプローチで、しっかりとつくり込むことには意味があるだろう。なぜかというと、そのような状況を抜け出すためには、数個のtipsを知るだけではどうにもならず、ランゲージ全体によって考えることを支援しなければ効果がでないからである。
このような考えから、井庭研ではこれまで、全体構築アプローチによって「ラーニング・パターン」と「プレゼンテーション・パターン」をつくってきた。「コラボレーション・パターン」もこのアプローチでつくっている(パターン・マイニングの活動映像:Brain Storming 編 / Visual Mapping 編)。
他方、クリエイティブ・ラーニングのための教授法パターンや、第二言語によるライティング・パターン、パターン・ランゲージ制作にまつわるパターンなどは、部分展開アプローチでつくっている。少しでも早くその実践知を共有したいと考えているからである。
しかも、実際問題として、同じチーム内で全体構築アプローチのプロジェクトを、複数同時並行で進めることは難しい。ひとつひとつが、かなりの時間と労力と気合いを必要とするからだ。
いま井庭研では、二つの全体構築アプローチのプロジェクトが並行して進んでいる(Collaboration Patterns Project と Generative Beauty Project)。それぞれ10〜15人のメンバーで構成され、メンバーの8割が重なっている。工夫している点としては、時期をずらして始めていること。片方のプロジェクトの後半と、もう一方のプロジェクトの前半が重なるように。
Collaboration Patterns Project
Generative Beauty Project
こうすれば、KJ法ばかりやっているとか、パターン・ライティングばかりやっているということを避けることができる。二つのプロジェクトを進めていても、KJ法とパターン・ライティングはまったく違うアクティビティであり、違う頭の使い方をするので、なんとかなっている。
そうすると、もうこれ以上は、全体構築アプローチのプロジェクトをまわすことはできない。なので、そういう現実的な制約からも、残りのパターン・ランゲージ制作プロジェクトは、部分展開アプローチで進めることになる。
以上が、パターン・ランゲージ制作について、制作するパターンとそれがつくる全体の関係に注目したアプローチについてのまとめである。
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