井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

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英語での言い回しを学ぶ(CD付き表現集)

この夏、英語の口頭での言い回しをしっかり身につけたいと思い、いろいろ本を探してみたところ、いくつか良さそうな本を見つけた。

どれも付属のCDに言い回しがたくさん収録されているので、ずっと流して聴きまくるとよいと思う。実際に使えそうな表現ばかりで、自分が使う場面がすぐに思い浮かぶ。

  • 『プレゼンの英語:実践で役立つ表現1500』(有元 美津世, ジャパンタイムズ, 2011)
    ビジネスの例が多いけれども、国際学会で発表したり司会をしたりする研究者・技術者にとっても、かなり使える表現集だと思う。こういうことを言いたいのだ、まさに。

  • 『リアル英会話表現集』(川口 エレン, 旺文社, 2010)
    友人・知人との会話やパーティーなどで使えそうな表現がたくさん。こういうことをさらっと言いたいと、心から思う。日本語訳が日常的な言い方になっていて、かなりナチュラルなのも素敵。

  • 『ビジネス Quick English <ミーティング>』(ジャパンタイムズ 編, デイヴィッド・セイン 著, ジャパンタイムズ, 2008)
    ミーティングでの表現は、日本語だと自然と言えるものも、英語だとなかなか出てこない。帯のコピーに「大事な場面で発言する。」とあるが、まさにここぞというときに自分の意見を言ったり、議論の流れをつくったりするために学ぶべき表現だと感じる。

       


    僕もこれらの本を聴き(読み)始めた。いまのところの感想は、とっさに言いたいけれどもなかなか言えない表現というのがたくさんあって、とても勉強になる、ということ。

    口頭の言い回しの表現は、自分の興味・関心や専門の本を読んでいても身に付かないので、この手の本も併せて読んでいくと、学会発表などに必要な英語力がつきそうだと感じた。

    これをくり返し聞きながら、シャドーイングすれば、自然と口にでるようになるだろうか。試してみようと思う。
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    モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(連載まとめ)

    連載「モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築」のまとめ。


    モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(1)
    Introduction

    モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(2)
    1. 米国での研究生活で感じた自分の英語力の低さ
    1.1 スピーキング
    1.2 リスニング
    1.3 ライティング

    モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(3)
    2. 日本にいながら英語力を高める方法
    2.1 「言語のシャワー」を浴びる環境をつくる
    (オーディオブック / 講演映像 / 授業映像 / テレビ映像 / ラジオ音声)

    モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(4)
    2.2 表現のストックをため込む/使う
    (表現を学ぶための読書 / 適切な言葉の選び方を学ぶ / より適した表現を模索しながら書く)

    モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(5)
    2.3 「音」と「リズム」の習得

    モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(6)
    2.4 英文構成の瞬発力をつける
    2.5 即興的にバリエーションを生み出すための文法を身につける

    モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(7)
    3. 多面的なアプローチによるスパイラルアップ


    ※『人工知能学会誌』に書いたエッセイ「モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築」(井庭 崇, , Vol. 25, No. 5, 2010年9月)をベースに大幅に加筆・修正。
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    モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(7)

    3. 多面的なアプローチによるスパイラルアップ

    日本で書店に行って、英語学習書のコーナーに行くと、実に多くの本が出版されている。それぞれ独自性を出すために、「これだけ覚えればOK」、「この基本文法さえわかれば問題ない」、「発音が悪くてもこれで通じる」など、一部の範囲/能力だけを強調するようなものが多い。しかし、それらは、学び始めるときの心理的な壁を低くしてくれるものの、信じ過ぎない方がいいように思う。

    英語力を伸ばそうとするならば、すべてをやり、多面的に向上させていく必要があるからである。単語も、熟語も、文法も、構文も、スタイルも、発音/イントネーションも、英語特有のリズムも、ライティングも、リーディングも、リスニングも、スピーキングも、ボディ・ランゲージも、その背後にある文化も、すべて大切なのだ。それらは、相乗効果を伴いながら、スパイラルアップしていくものだと思う。私自身、このような多面的なアプローチによるスパイラルアップをイメージしながら、英語に絶えず触れることができる環境構築を日々心がけている。


    「英語ができることがアドバンテージになる時代は終って、英語ができないことがディスアドバンテージになる時代が来た」———これは、私の知り合いの若手研究者の言葉である。彼は南米出身で、現在はMITで教えていてる。母語ではない英語で人々に語りまくり、グローバルなアカデミックの世界に切り込み、フロンティアを突っ走っている。その姿に、私も大きな刺激を受けている。

    日本では、いまだに「まずは日本語をきちんとやるべき」という声を聞く。「英語か日本語か」ではなく、「英語も日本語も」という発想が必要だと私は思う。母語としての日本語はきちんとやるべきだし、それと同時に世界と渡り合うための英語。その両方が必要だ。

    私たちは今、「英語を使う」=「海外で暮らす」ではない時代に生きている。日本にいながらも英語で学び、英語で仕事をする。それがグローバルな時代ということだろう。日本にいながらの環境構築。今回書いた私の経験と方法が、何らかの参考や刺激になれば幸いである。

    (Fin.)

    ※「モバイル時代の英語力強化法 ―日本にいながらの環境構築―」(井庭 崇, 『人工知能学会誌』, Vol. 25, No. 5, 2010年9月)をベースに大幅に加筆・修正。
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    モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(6)

    2.4 英文構成の瞬発力をつける

    会話において必要となるのは、その場その場でリアルタイムに英文を構成できるということ。それができなければ、自分が言いたいことを言うこともできないし、相手の言ったことに反応することもできない。実際、英語で会話をしているとき、簡単な内容なのに言葉にできなかったり、会話の後で「あぁ、あのときこう言えばよかった」と思うことはよくあることだ。

    瞬発的に英文構成ができる力をつけるには、どうしたらよいだろうか? 僕がよいと思う方法が、『どんどん話すための瞬間英作文トレーニング』(森沢洋介)で展開されている訓練だ。取り上げられているのは難しい文章ではなく、ごく簡単なものばかり。最初の文は、なんと、"This is a good book." だ。

    それでも、CDに収録されている音声で日本語を聞き、すぐにそれに対応する英文を思いつくかというと、これがなかなか難しい。読み上げの間隔が絶妙で、瞬発的に思いつかないと間に合わないようにできている。しかも、実際にやってみると、自分がいかに適当な文で話していたか、ということも痛感する。this と that、単数と複数などが、めちゃくちゃだったと気づく。つまり、正確に瞬間英作文ができていないということだ。このことに気づくだけでも、大きな一歩が踏み出せたといえるだろう。

    このような訓練を積むことで、英文の基本パターンを自分のなかに刻み込んでいく。くり返し覚えて、「身体で覚える」。この基本パターンを実際の会話のなかで使うことができれば、英語での会話も、これまでとはかなり違ってくるはずだ。


    2.5 即興的にバリエーションを生み出すための文法を身につける

    もちろん、基本パターンだけですべてを言い表せるわけではない。それらを組み合わせで、様々なバリエーションを生み出すことが必要だ。その「バリエーションを生み出す」ために必要なのが、やはり、文法だと思う。

    僕らは中学校から英語を学び始め、文法を学び続けてきた。だから、「いまさら文法?」と思うかもしれないし、英文法の本を開いてみても「知っている」と思うものばかりだろう。しかし、それらを使いこなせているかと問われると、自信をもって Yes とは言えない人がほとんどだ。

    そこで、少し視点を変えて、文法を学び直すことをおすすめしたい。それは、「バリエーションを生み出すための文法」という視点だ。「知識としての文法」は僕らはもう十分知っている。そうではなく、今度は即興的な英文構成の力をつけるという観点から、文法を捉え直し、身につけるのだ。

    結局、どんなに込み入った話も、定型のパターンとそれらの組合せで成り立っている。だから、どのパターンをどのように組合せることができるのかを知れば、自分でもそういう文章をつくることができる。その組合せ方のルールが、文法である。定型からのズラし方の可能性を教えてくれるものだと言ってもいい。そういう視点で、文法を実践的な力に変えていこう。


    以上のように、定型のパターンと文法を身につけることができれば、瞬発的に、かつ即興的に英文を構成することができるようになる。日本にいてもできることは、実に多い。


    [15] 森沢洋介, 『どんどん話すための瞬間英作文トレーニング』, ベレ出版, 2006

    ※本エントリの内容は、「モバイル時代の英語力強化法 ―日本にいながらの環境構築―」(井庭 崇, 『人工知能学会誌』, Vol. 25, No. 5, 2010年9月)には含まれていない、書き下ろし部分。
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    モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(5)

    2 . 3 「音」と「リズム」の習得

    英語力を高める第三の方法は、コトバのもつ「音」と「リズム」を習得することである。

    言葉は、単なる記号ではなく、音声として発せられ、音声として聴き取られる。だから、その言語がもつ「音」としての特徴を理解し、その音を身体的に生成できるようにならなければならない。

    そして、いくつかのコトバをつなげたフレーズやセンテンスの場合は、さらに音をつなげる「リズム」が重要になる。リズムは、口先だけで生まれるのではなく、身体全体で生み出すものであるから、より身体性を意識する必要がある。

    このように、「音」や「リズム」が重要なのはわかっているのだが、それをどうやって鍛えればいいのかについては、正直なところ、現在私自身も模索中である。すでに書いた「言語のシャワーを浴びる環境をつくる」や「表現のストックをため込む/使う」に比べて、まだまだ経験が浅いし、これは効果があると実感できるレベルに達していないのだ。

    それでも、「音」と「リズム」の習得は、避けて通ることができない。そこで、ここでは、現在私がよさそうだと考えている方法を紹介することにしたい(つまり、上達するという保証はないが、私自身がやっているので、興味がある方はご参考にどうぞ、という話)。


    「音」を知る

    まず、日本語と英語では、コトバを構成する「音」の要素の種類が異なることを認識することが重要だ。子音の種類も、母音の種類も、その組合せのやり方も、英語は、日本語の場合とは異なっている。

    私たちが日本語で慣れ親しんできたコトバの音の数は、英語の音の数より少ないのだ。だから、私たちは、英語のコトバを、日本語の音の要素に強引に引きつけて理解したり、発音したりすることになりがちである。本来はいくつもの異なる音であるにもかかわらず、それを日本語の「ア」にまとめてしまったり、「オ」にまとめてしまったりしている。そんなことをしていては、いつまでたっても、英語の音を聴いたり、発したりすることはできないだろう。

    そこで、英語の音の要素にはどのようなものがあるのかを、徹底的に身体に染み込ませることに取り組みたい。私たちの身体と脳には、日本語の音の回路が相当深いところまで組み込まれてしまっているため、それを打ち破り、拡張するには、「徹底的に」やらなければならないだろう。徹底的に取り組んで、一度英語の音の回路ができあがれば、リスニングもスピーキングも次のステージにあがるはずだ。

    音の要素を知ることで、聴こえる世界が違ってくるというのは、外国語に限らず、音楽においても当てはまると思われる。楽曲をただ漠然と聴くだけでは、どの楽器がどの音を出しているのかを認識することはできない。ところが、一度、個々の楽器の音を知ったり、ソロの演奏場面を見たりすると、個々の音を識別できるようになる。私の経験では、自分たちでバンドを組んで初めてベースの音をちゃんと認識できるようになった、ということがあった。英語の場合も、これと似ているかもしれない。


    音の要素を知るために、私が現在使っているのが、松澤喜好氏の『英語耳』『英語耳ドリル』『単語耳』のシリーズだ。他の著者からもいろいろな本が出ているが、私は最終的にこれを選んだ。私のやり方は、次のような感じである。

    まず、『単語耳』の理論編を読む。この理論編はかなりおすすめで、なぜ英語が聴き取れないのか、あるいはなぜ話した英語が通じないのか、という疑問が解消する。その理由がよくわかるのだ。なので、まずはこれから読むとよい。

    その後、『英語耳』と『英語耳ドリル』を並行してやる。著者自身も書いているように、この2冊はどちから始めてもよいようになっている。『英語耳』の方は、音の要素をマスターするのに必要だが、これだけをやると単調で飽きてしまう。『英語耳ドリル』の方は音楽を聴き、歌詞を覚えていくので楽しいが、音をどのように発するのかという発声の説明はこちらにはない。なので、これらを両方並行してやっていくことで、近い将来、これらが交わる点がでてくるはずだ。私はそう考えて、並行して取り組んでいる。


    (つづく)

    [12] 松澤喜好, 『英語耳 [改訂・新CD版] 発音ができるとリスニングができる』, アスキー・メディアワークス, 2010
    [13] 松澤喜好, 『英語耳ドリル 改訂版 発音&リスニングは歌でマスター』, アスキー・メディアワークス, 2009
    [14] 松澤喜好, 『単語耳 英単語八千を一生忘れない「完全な英語耳」 理論編+実践編Lv.1』, アスキー, 2007


    ※本エントリの内容は、「モバイル時代の英語力強化法 ―日本にいながらの環境構築―」(井庭 崇, 『人工知能学会誌』, Vol. 25, No. 5, 2010年9月)には含まれていない、書き下ろし部分。
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    モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(4)

    2 . 2 表現のストックをため込む/使う

    日本にいながら英語力を高める第二の方法は、表現のストックをため込んでいくことである。(1)表現を学ぶための読書を行うこと、(2)適切な言葉の選び方を学ぶこと、(3)より適した表現を模索しながら書くこと、によって表現のストックを充実させていくのである。


    (1)表現を学ぶための読書

    英語での表現を学ぶための読書では、自分の専門に近い分野の一般書/専門書などを、片っ端から読んでいく。この目的のためには、普通の読書とは異なり、なるべく知っていることが多く書かれている本を選ぶとよい。

    このとき、最初から最後まですべてを読むのではなく、自分が学びたい言い回しがありそうな章/部分だけを「つまみ食い」して読む。私自身の経験でいうと、昨年から今年にかけて、A.-L. Barabasi の『Linked』 [7] を何度も何度も読んだ。この本からは、専門的な言葉づかいを学ぶだけでなく、ワクワクするような表現も多く学ぶことができた。どの分野でも、一般啓蒙書では難しい考え方が、わかりやすくかつ魅力的に記述されていることが多いので、表現を学ぶための読書に適している。

    日頃から私は本を読む時に、重要箇所に線を引きながら読んでいるが、「表現を学ぶ」ための読書においても、使いたい言い回しや真似したい表現に線を引きながら読んでいる。線を引くのは、消しゴム付き鉛筆がおすすめ。濃さに強弱がつけられるし、うまく書けなかったときには引き直すことができる。

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    ある程度読み進めたら、それまでに引いた線の部分だけを読み返し、そのなかで「やはり重要だ」と思う表現を、ノートに書き写す。自分なりの「表現のストック」をためていくのである。

    私は、ノートには MOLESKINE(モレスキン)の横経線のハードカバーのものを使っている。「表現がストックとしてしっかり残っている」と感じることができることが大切だと考えたからだ。このノートなら、なるべくきれいな字で書こうと思えるし、書き込みが増えて行くと、なかなか気分がいい。ノートに書き込むのには、持ちやすいグリップで長時間書いても疲れにくいボールペンを使っている。

    真似をしたい表現を、紙のノートに書き写すというのは、いたって身体的な経験だ。ノートに言葉を刻み込んで行くという感覚。ノートとペンにちょっとこだわるだけで、その行為が少し特別な存在になる。そうなればしめたもので、本来は修行のような作業かもしれないが、やる気を維持しながら取り組み続けることができる(表現のストックがたまったことを本当に実感できるのは、その表現を実際に使うことができた時なのだが、そのような幸せな瞬間は、すぐに訪れるわけではない)。

    以前は、ストックした表現を検索できるのがいいだろうと考え、コンピュータに打ち込んでいた。しかし、この5年ほどの経験では、結局検索なんてほとんどしなかったし、ストックをためているという実感が伴わないので楽しくない。また、1日中仕事でパソコンに向かっている私の生活においては、ノートに手書きで書くという方が、身体的に異なる行為であるため、モードの切り替えがうまくできる。そんなわけで、最近はノートに手書きで表現のストックをためるようにしている。

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    (2)適切な言葉の選び方を学ぶ

    表現を学ぶための読書に加えて、単語の選び方や言い回しに関する解説本も読んでいくとよいだろう。研究者や学生の場合には、例えば、実際の学術論文からコーパスを作成し、どのような言い回しがどのくらいの頻度で使われるのかを示してくれている『ライフサイエンス英語 類語使い分け辞典』 [8] や 『ライフサイエンス論文作成のための英文法』 [9] というような本が出ている。学術論文での言い回しや、技術英語に関する本もいろいろ出ており、それらも目的に合わせてうまく活用できるだろう。また、日本人研究者がよく間違える単語を取り上げ、正しい使い方を教えてくれる『科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現』 [10] のような本もある。

    この手の本を読むといいのは、言葉の選び方の理由が書かれていることや、微妙なニュアンスの違いについて説明してくれているからだ。その手の知識は、表現を学ぶための読書からは身に付かない。だから、表現を学ぶための読書とは別に、適切な言葉の選び方を学ぶための本を読むとよいのである。

    しかも、表現を学ぶための読書と、適切な言葉の選び方を学ぶ読書は、並行して行うとよい。それらの学びには相乗効果があるからだ。表現を学ぶための読書の経験があるからこそ、適切な言葉の選び方を学ぶための本で、なぜそのような表現が取り上げられているのかが理解できるようになる。「たしかに、そういう表現ってよく出てくるもんなぁ」と。逆に、適切な言葉の選び方の知識が身につければ、表現を学ぶための読書での気づきが多くなる。「ああ、本当に、そういう言葉が使われている」と気づくわけだ。だからこそ、順番にではなく、並行して読むとよいのである。


    (3)より適した表現を模索しながら書く

    以上は、日々行う基礎体力づくりであるが、より実践に即した磨き方もある。英語で文章を書く際には、自分が言いたいことを適切に表現する言葉や言い回しを調べ、それを使うようにするのである。

    文章は、そこで使われる単語が正しいだけでなく、組み合わせる他の言葉(例えば、動詞や前置詞)も正しく選択される必要がある。そういう言い回しを調べるためには、辞書を引く、ということが必要になる。

    辞書を引く時には、定義や説明だけでなく、いくつもの例文にアクセスできるのが理想的である。PC で文章を書いているときには、辞書もPC 上で引けると効率的だろう。執筆中にいつもネットにアクセスできるとは限らないし、Web のレスポンスタイムも気になるので、個人的にはPC にインストールできるタイプの電子英語辞典をおすすめしている。

    私が使っている「LogoVista 電子辞典」( http://www.logovista.co.jp/ )は、複数の辞書をシームレスに検索できるのでかなり重宝しており、英文を書くときの不可欠なツールになっている。私が入れているのは、次の5つの辞書データである。どれも英文のサンプルが取り上げられているので、検索結果をみれば、だいたい適した言い回しの文章をみつけることができる。

    ●『リーダーズ英和辞典第2 版』(翻訳家も使う定番の辞典。)
    ●『新編英和活用大辞典』(品詞や関係性ごとに例文が載っている。)
    ●『日外ビジネス/技術実用英語大辞典 第4 版』(ビジネス・技術の例文が豊富。)
    ●『ジーニアス英和大辞典』(単語の語源が載っている。)
    ●『メリアム・ウェブスター英英辞典』(英英辞典なので、日本語訳ではわからないニュアンスの違いなどがわかる。また、多くの単語に発音の「音声」がついているのも魅力。)

    LogovistaDic.jpg


    これで見つからないものに関しては、Google で検索して調べている。検索のちょっとしたコツを知っていると、目的の英文に辿り着きやすい。コツというのは、ダブルクォーテーション(" ")でくくるとか、ワイルドカード(*)を使う、マイナス(-)を使うなどである。

    ダブルクォーテーションを使えば、複数の単語の並び順を指定して検索することができる。たとえば、This study demonstrate と入力して検索すると、この単語の並び順以外のものも含めて検索されてしまうが、"This study demonstrate"とダブルクォーテーション付きであれば、この並び順のものだけがひっかかる。

    ワイルドカードというのは、そこにどんな言葉が入ってもいい、ということを示すものだ。"This * demonstrate"として検索すれば、"This chapter demonstrate"とか、"This book demonstrate"などもひっかかる。

    また、マイナスを使えば、その後に指定した言葉を抜きにするという指定ができる。たとえば、"This * demonstrate" -sectionとすれば、"section"が使われているページは排除される。特定分野のページを除くなど、同一ページにあるべきではない言葉を指定しての絞り込みができるのだ。

    このようなGoogle検索を活用方法については、『Google 英文ライティング: 英語がどんどん書けるようになる本』という本も出ているので、興味がある人は読んでみるとよいかもしれない(この本では、シンプルなやり方が、いろいろな例を交えて紹介されている)。


    以上のように、表現を学ぶための読書を行うこと、適切な言葉の選び方を学ぶこと、より適した表現を模索しながら書くことによって表現のストックを充実させていく。そして、機会があればどんどん使ってみる。これらは、焦らず、ひたすらやり続けることが大切だ。どれだけ英語がうまく使える人でも、日々、生きていくなかで表現のストックをため続けている。これは、英語でも日本語でも同じことなのだ。

    (つづく)

    [7] Albert-Laszlo Barabasi, 『Linked』, Plume, 2002
    [8] 河本健 編, 『ライフサイエンス英語 類語使い分け辞典』, 羊土社, 2006
    [9] 河本健 編, 『『ライフサイエンス論文作成のための英文法』, 羊土社, 2007
    [10] グレン・パケット,『科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現』, 京都大学学術出版会, 2004
    [11] 遠田和子, 『Google 英文ライティング: 英語がどんどん書けるようになる本』, 講談社インターナショナル, 2009


    ※「モバイル時代の英語力強化法 ―日本にいながらの環境構築―」(井庭 崇, 『人工知能学会誌』, Vol. 25, No. 5, 2010年9月)をベースに大幅に加筆・修正。
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    モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(3)

    2. 日本にいながら英語力を高める方法

    さて、ここまでの話を踏まえて、「だから外国にいくことが大切です」という結論に達するのでは、あまりにも面白くないだろう。たしかにひと昔前までは、実際に現地に何年か住まないと身につかない、というのはひとつの真実だったのかもしれない。しかし、ここでは、それとは違う方向性を探求したい。「日本にいながらどうやって英語力を伸ばすのか」を考えたいのである。

    この「日本にいながら」ということが現実味を帯びてきたのは、情報技術の発展のおかげである。インターネット経由で海外の情報・コンテンツが容易に、かつ安価に入手できるようになった。また、モバイル機器の登場によって、自分の身の回りに「パーソナルな環境」をつくり、持ち運ぶことができるようになった。これらを最大限に活用することで、日本で生活しながら海外にいるような環境をヴァーチャルに(実質的に、事実上そうであるように)つくり上げることはできないだろうか。その具体的な方法について考えてみたいのである。以下では、私の試行錯誤の経験から、具体的な方法を紹介することにしたい(これらは私自身が今も行っているものである)。


    2 . 1 「言語のシャワー」を浴びる環境をつくる

    日本にいながら英語力を高める第一方法は、「音としての英語」に絶えず触れることができる環境を構築することである。これは、現地で授業や講演を聴いたり、カフェで周りの人たちのおしゃべりを聴いたりするということと同じ状況を、ヴァーチャルに構築するということである。自分が興味ある分野・内容の音声/映像コンテンツを、iPodやiPad 等のモバイル機器に入れておけば、どこでも英語に触れることができるパーソナルな環境が出来上がる。この「言語のシャワー」をじゃぶじゃぶに浴びるための環境が、現地で英語を聴く機会が多いということの代わりをしてくれる。そのような環境を構築する要素として、ここでは、オーディオブック、講演映像、授業映像、テレビ映像、ラジオ音声を取り上げたい。

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    オーディオブック

    英語環境構築の一つ目の要素は、オーディオブックである。私が利用している「audible.com」( http://www.audible.com/ )では、本として出版されているものを音声で読み上げて収録したオーディオブック(音声ファイル)を販売している。1冊あたり8時間とか10時間くらいの長さになる。このオーディオブックがよいのは、対応する本が存在するということである。オーディオブックを聴いていて、聴き取りにくい部分の英文を本で確認することができる。逆に、本で読んだあと、音声で聴くということもできる。こうすることで、多重的に自分のなかに入ってくるはずだ。いくつか試したなかで、私のおすすめのコンテンツは、『Wikinomics』(Don Tapscott & Anthony D. Williams)である。もともとわかりやすく魅力的な表現/時事的な言葉が多い本なのだが、このオーディオブック版は、非常にゆっくりとしたペースの語りで、初心者にとって聴き取りやすい。このほか、私のお気に入りは、『The Stuff of Thought』(Steven Pinker)と 『The Trouble With Physics』(Lee Smolin)。ネットワーク科学の『Linked』(Albert-Laszlo Barabasi)もオーディオブックで出ている。『Grammar Girl's Quick and Dirty Tips to Clean Up Your Writing』(Mignon Fogarty)は、内容が英文ライティングの内容であるうえに、女の子のペラペラしゃべる感じが異色な感じで、他のオーディオブックに飽きたときには、よくこれを聴いている。

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    講演映像

    英語環境構築の二つ目の要素は、ウェブで公開されている講演映像である。私が活用しているものに「TED: Ideas worth spreading」( http://www.ted.com/ )があるが、このサイトでは世界的に有名な専門家たちが一般聴衆向けに行った魅力的な講演映像が多数公開されている。高詳細な映像をダウンロードしてPC で見ることもできるが、PodCast でダウンロードし、iPod 等で見る(聴く)こともできるので、時と場所を選ばない。また、10~20 分程度の講演なので、短時間で楽しめる点もよい。研究者も数多く講演しているほか、実務家や芸術家の講演/パフォーマンスもある。これまで見たなかで個人的に好きなのは、Steven WolframJohn MaedaFreeman DysonLee SmolinSteven StrogatzDaniel Dennett などである。オーディオブックのように「書かれた文章」を読み上げているのではなく、聴衆に語りかけているので、抑揚があり、自らのオーラリティーを高めるための参考になるだろう。

    TED.jpg



    授業映像

    環境構築の三つ目の要素は、授業映像である。授業映像で有名なものに「iTunes U」( http://www.apple.com/education/itunes-u/ )があるが、実に様々な大学・学部の講義が映像としてアップされている。先ほどの講演映像とは異なり、授業なので、回を重ねてじっくりと説明がなされたり、議論が深められていく。いくつかの講義を選んで、自分なりの時間割を組めば、擬似的な留学体験ができるだろう。このほか、授業映像としては、「The Teaching Company」( http://www.teach12.com/ )という会社が販売しているレクチャーDVD もおすすめである。これは、大学で行った講義を収録したものではなく、このために録画された講義である。私がこれまで楽しんだのは、『Chaos』(Steven Strogatz)、『Understanding Complexity』(Scott E. Page)などである(このDVD、定価は高いが、毎日のように商品指定のSaleをしているので、それにタイミングを合わせて買うとよい)。

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    テレビ映像

    英語環境構築の四つ目の要素は、テレビ映像である。私が見ているのは米国でのテレビドラマシリーズのDVD で、英語字幕を表示して見る。ドラマでは、講演やレクチャーのようなモノローグではなく、ダイアローグ、つまり会話が展開する。また、口頭での省略やスラングも登場する。ドラマなので、あくまでも脚本に基づく演技ではあるが、それであるがゆえに、音声と同期して文字ベースの確認ができるので、他にはないメリットがある。また、時事的なコンテンツがよければ、海外の英語ニュースのストリーミングなどを見るのもよいだろう。最近では、YouTube に「CC」(Closed Caption)の機能もついているので、CC データが含まれていれば、様々なコンテンツを英語字幕も表示させながら見ることができる。


    ラジオ音声

    英語環境構築の五つ目の要素は、ラジオ音声である。今日、ラジオの音声がWeb 経由でストリーミングされていることが多い。例えば、私がボストンで聴いていたFM 局「Magic 106.7」( http://www.magic1067.com/ )も、Web 経由で日本で聴くことができる。ラジオ局によって内容やバランスはいろいろであるが、音楽とトークが混ざっているラジオ音声は、BGM として流しやすいだろう。

    106.7.jpg


    以上の五つの要素のどれか一つに絞るのではなく、すべて取り入れるとよい。それぞれに特徴が違うので、ある方式に飽きたら、別の方式のものを流す、というようにすることで、絶えず英語が流れている状況を継続させることができる。「英語を聴く/聴かない」という選択ではなく、「どれで英語を聴くのか」という選択に変えることが大切なのである。

    また、このヴァーチャル環境構築を支える機器も、いろいろ組み合わせて使うとよい。私の場合は、音声ものはiPod と自家用車の車載HD、音声と映像はiPad に入れている。当初、映像はPC で再生していたが、研究上の重い処理をさせているときにPC に負荷がかかりすぎるため、現在は映像はiPad に入れ、それをPC の横に置いて絶えず再生するようにしている。このように、いくつものコンテンツを、いくつもの機器に入れておき、状況に応じて何かしらの英語コンテンツが絶えず流れているようにする。これが、日本にいながら、ヴァーチャルに英語に触れることができる「言語のシャワー」環境を自ら構築するということである。

    (つづく)

    ※「モバイル時代の英語力強化法 ―日本にいながらの環境構築―」(井庭 崇, 『人工知能学会誌』, Vol. 25, No. 5, 2010年9月)をベースに加筆・修正
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    モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(2)

    1. 米国での研究生活で感じた自分の英語力の低さ

    1 . 1 スピーキング

    米国滞在中、何が最も難しかったかというと、それは何といってもスピーキングだろう。これは、相当厳しい。まず、言いたいことが文としての体をなしていない。構造が明らかに変、単語がきちんと選べていない、時勢はめちゃくちゃ、論理的でない。内容が知的であるとか、説得的であるとか、魅力的であるということ以前の問題である。言いたいことを言葉にしようとした途端、まるで幼稚園児のようなレベルになってしまう(いや、幼稚園児の方がよっぽど口が達者かもしれない)。旅行で使う英語や、「自分は何をしたい」とか「○○はどこ?」という会話にはあまり問題を感じなかったが、概念的な説明や論理的に主張をしようとすると、途端に破綻する。これまで国際学会で口頭発表をしたときの「出来た」感は、一体何だったのか?

    結局のところ、その場で話をつくり出せるほど、自分のなかに英語の言い回しのストックがないということなのだ。英語表現におけるパターンといってもいい。話しをするときには、自分のなかにある表現のパターンを即興的に組み合わせながら、言いたいことを構成する必要がある。かつてWalter J. Ong [5] が論じたように、口承伝承の語り部は、物語のパターンをたくさん覚えていて、それらを即興的に組み合わせながら語っていた。英語で何かを話すときにも、まさにこの語りのパターンが必要なのだ。母語である日本語では自然に身に付いているパターンも、第二言語である英語ではそうはいかない。滞在中は、自分には英語でのオーラリティーが圧倒的に足りないと、日々痛感していた。

    それに加え、発音やイントネーションの問題で通じないことも多い。自分の専門に直結する基本単語でさえ通じない。例えば、私の場合、"pattern" や "theory" という単語が通じなくて苦労した。"Pattern Language" や "Systems Theory" を専門にしているにもかかわらず、である。特に通じにくかったのは、自分の研究を交えて自己紹介するときである。相手は私がどの分野でどのような研究しているのかをまったく知らず、どのような言葉が出てくるのかを事前に想定し得ない場合である。そのような状況では、より正しい発音/イントネーションで話さないと、通じないのだ。これまで学会などで話が通じていたのは、学会のコンテクストや、発表スライドに書かれた文字のおかげだったのだろう。最終的には、これらの基本単語は、地域のボランタリーなESL クラスで、正しい発音を直接教えてもらうことで少しは矯正できたかもしれないが、不安な単語はまだまだたくさんあり、道のりは長い。

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    1 . 2 リスニング

    次に、リスニングについて。途中からだいぶ改善されたが、特に最初の半年は苦労した。なぜリスニングが難しいのかというと、いくつかの理由が考えられるが、そのなかでも、事前にはあまり想像していなかった難しさがあったので、その点について触れておくことにしたい。それは、米国で英語を話している人は、必ずしも英語が母語の人ではない、ということだ。ボストンは米国のなかでも特に国際的な街であり、研究者も学生も実に多様な国から来ている。そのため、訛りも多種多様であり、ときには「これは本当に英語?」と耳を疑ってしまうほどのこともあった。このような経験をすると、これまで私が日本で触れてきた英語は、英語ネイティブの「発音のきれいな」英語だったと気づいた。しかも、たいていの場合、日本人の癖や傾向を知った上でわかりやすく発音してくれている、日本人に聞き取りやすい英語だったのである。この「発音のきれいな」英語でなんとか聴き取れるかどうか、というレベルだった私には、この多様な訛りの英語を理解するのは、きわめて困難なことであった。しかし、これこそがグローバルな時代の英語なのだろう。

    私の経験では、このリスニングの問題は、「慣れ」によって解消できる。スペイン語ネイティブの人はこの音がこう聞こえる、ドイツ語ネイティブの人はこの音がこう濁る、中国語ネイティブの人はここがこうなる、というように徐々にわかってくる。こういう感覚的なものは、おそらく経験の中で把握していくしかない。滞在中に大学の授業をまともに受けたわけではないので、リスニングの機会も限られていたが、それでも、1年間で最も伸びたのはリスニングの力だと思う。日頃、リスニング力が一番伸びにくいと思っていたので、これは意外なことであった。まさに「習うより慣れよ」である。毎日、カフェで周囲の人のおしゃべりが自然と耳に入ってくる。そういった「言語のシャワー」[6]を浴びることで、英語を音として聴くための回路が、自分のなかでつくられていくのだ。

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    1 . 3 ライティング

    そして、ライティング。向こうでも英語で論文を書くことになるわけだが、これはこれで苦労した。もちろん、いままでも英語で論文を書いた経験はあるが、以前にも増してきちんとした英語で書きたい、説得的で魅力的な文章を書きたい、という思いが強くなったため、苦戦することになった。特に昨年は、自分にとって新しい分野の論文を書くことにしたため、その分野の本や論文を徹底的に読み、言い回しを勉強しながら書く必要があった。分野/テーマが変われば、そこでの特有の言葉遣いや言い回しを身につけなければ、説得性や魅力を出すことはできないだろう。振り返ると、この遠回りはかなり重要であり、それがその後の研究自体をもドライブしたと思われる。書くことは考えることであり、書くスタイルは、考えるスタイルにもつながるのだ。これは重要な気づきであった。

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    1 . 4 リーディング

    米国滞在中は、本や論文は英語で読んでいた。内容を学ぶために読むこともあれば、表現を学ぶために読むことも多かった。すでに書いてきたように、スピーキングにしてもライティングにしても、言い回しが身についていないのは、これまで英語で読む量が圧倒的に少なかったからである。結局のところ、書籍については、日本では多くのものが翻訳されているので、それらを読むことで事足りてしまう。論文も、内容がわかればいいという感じで、アブストラクトや重要部分を中心につまみ食いしながら読みがちである。また、そのとき、何に注目して読んでいるかというと、ほとんどの場合内容の方であり、表現の方にはあまり意識がいってなかったように思う。文章の表現を意識的にみるということをしないと、表現のストックはたまらないのである。

    聞くところによると、韓国のエリート養成では、高校生が年間に何十冊も洋書を読むという。どのような本なのかは定かではないが、数週間に1冊のペースである。これだけの量を、今の日本の大学生・大学院生や教員が読んでいるかというと、まったくもってあやしい。実際、私自身は、渡米前はそれだけの量を読んでいなかった。昨年からは、英語で書かれた本を読む量を圧倒的に増やし、英語での読書も楽しくなってきた。すでに邦訳でもっている本も、原著を買って読み直した。内容はすでにわかっているので、英語の表現に注目しながら読むことができるので、これは効果的だったように思う。「内容を知るための読書」ではなく、「英語での表現を学ぶための読書」である。

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    (つづく)

    [5] Walter J. Ong, Orality and Literacy, 2nd Edition, Routledge, 2002
    [6] 学習パターンプロジェクト, Learning Patterns: A Pattern Language for Active Learners at SFC 2009, 慶應義塾大学SFC, 2009 ( http://learningpatterns.sfc.keio.ac.jp/ )

    ※「モバイル時代の英語力強化法 ―日本にいながらの環境構築―」(井庭 崇, 『人工知能学会誌』, Vol. 25, No. 5, 2010年9月)をベースに加筆・修正
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    モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(1)

    昨年度(2009 年度)、私は1年間大学業務をお休みし、海外で研究する貴重な機会をいただいた。私が所属したのは、MIT Center for Collective Intelligence という、マサチューセッツ工科大学 スローン経営学大学院の研究所である。研究所のディレクターは、『The Future of Work』[1]の著者であり、情報技術が経営・組織をどう変えるのかを長年論じてきた Thomas W. Malone 教授である。オープンソース開発やオープンコラボレーション、予測市場などの「集合知による新しい組織化」が社会・組織の在り方をいかに変えるのかを考え、実践する研究所である。

    私は、この研究所の Research Scientist である Peter Gloor 氏と、彼のもとに集まる学生・研究員との共同研究プロジェクトに参加した。Gloor 氏は、ダイナミックなネットワーク分析によってトレンドの予測をするという、この分野では珍しいタイプの研究をしている研究者である(その成果は、彼の『Swarm Creativity』[2]や『Coolhunting』[3]、『Coolfarming』[4]という本で紹介されている)。私は、この研究所を軸足として、MIT Media Lab、Harvard University Graduate School of Design、Harvard Kennedy School、Northeastern University などにも、ことあるごとに足を運んだ。ボストンならではの多様な知的コミュニティとそこでの交流を垣間みることができた。

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    このエッセイでは、私自身が1年間の滞在を通じて最も強く感じ考えたことについて書こうと思う。それは、簡単にいうならば、「英語力は、いったいどうやったら伸ばすことができるのか」ということである。私は滞在中、これまで日本で長い期間英語教育を受けてきたにもかかわらず、どうして自分はこれほどまでに英語ができないのか、と何度も情けなるとともに、自分や日本の英語教育に対してある種の怒りさえ覚えた。日米の研究スタイルの違いなどよりも、何よりもこの英語の問題が最も痛感した問題なので、このエッセイのテーマを「英語」にすべきだと判断した。変に格好をつけたりせず、まずは、私の経験を赤裸々に語ることにしよう。その上で、どうしたら英語力を高めることができるのか、特に日本にいながらそれを行うにはどうしたらよいのかについて、私の考えを書くことにしたい。

    (つづく)

    [1] Thomas W. Malone, The Future of Work, Harvard Business Press, 2004
    [2] Peter Gloor, Swarm Creativity, Oxford University Press, 2006
    [3] Peter Gloor, Scott Cooper, Coolhunting, AMACOM, 2007
    [4] Peter Gloor, Coolfarming, AMACOM, 2010

    ※「モバイル時代の英語力強化法 ―日本にいながらの環境構築―」(井庭 崇, 『人工知能学会誌』, Vol. 25, No. 5, 2010年9月)をベースに加筆・修正
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    英語の原著で読む意味:コトバの多義性を味わう

    僕の授業や研究会では、教科書や輪読文献を原著版(英語)で読むようにしている。日本語訳が出ている本も、あえて英語で読む。これにはいくつかの理由がある。

    まず、日頃から英語に触れるという「外国語の普段使い」を実践するためである。そして、それらの活動を重ねれば(複数に参加すれば)、自然と「言語のシャワー」を浴びる環境が少し実現できるようになる(リーディングに関しては)。これは、英語で読むことのプラクティカルな理由。

    原著で読むことには、もうひとつ別の本質的な理由がある。それは、翻訳では失われてしまうコトバの「多義性」を味わいながら読むということだ。

    例えば、「パターンランゲージ」の授業の教科書に指定している『The Timeless Way of Building』でいえば、英語の "way" というコトバは、「道」という意味があるが、同時に「方法」という意味ももつ。英語で "way"というときには、この両方のニュアンスを多義的にもたせることが可能であるが、これを日本語に翻訳するときには、「道」か「方法」のどちらかを選択せざるを得ない。このことは、あてるコトバの問題だけでなく、意味の特定にもなるので、内容の理解に大きな影響を及ぼすだろう。

    こうして、"timeless way"というタイトルも、「時を超えた道」か「時を超えた方法」のどちらかを選ばなければならなくなる。本来は両方の意味をもっているにもかかわらず。(この本の場合は、老子の「道経」(タオイズム)の「道」(タオ)にもかかっているので、その意味では「道」は適切だといえる。)

    他の例をあげると、英語の”life”は、日本語の「生命」「生活」「人生」という意味を併せ持っている。日本語の「生」がこの共通性を同じく表しているが、だからといって、"life"の訳語として「生」だけで済ますわけにはいかない。文脈に合わせて、訳者が「生命」か「生活」か「人生」という意味を選択しなければならなくなる。同様に、"living"も、「生きている」「生き生きしている」であり、「生活」「居住」でもある。

    英語でよく使われる "nature" も、「自然」という意味と「本質」という意味の両方の意味を持つ。"The Nature of Order"は、秩序の「本質」であり「自然」でもある。

    言語によって、コトバの多義性の中身と幅が異なる。これが、翻訳の最大の難しさといえるだろう。もちろん、多義的なコトバも、文脈から明らかに意味が特定される場合も多い。そういう場合には、翻訳の問題は生じないが、多義性の幅をむしろ積極的に活用して表現している著者・著作に関しては、原著でなければ味わえない「うまみ」があることになる。

    このような理由で、英語で読む、原著で読む、ということを推奨/実践している。実際には、英語で読むだけでいっぱいいっぱいかもしれないが、ぜひ、そういうコトバがもつ「広がり」も感じながら読みたいものである。
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