井庭研春プロ:パターン/スタイル・マイニングのための読書
井庭研:春の特別研究プロジェクト(3月5, 6, 7, 9, 12, 13日)に向けての宿題
パターン/スタイル・マイニングのための読書
井庭研では、パターン・ランゲージやスタイル・ランゲージなど、ことばをつくり、文章を書くということに日々取り組んでいます。また、成果を論文にまとめています。そこで、僕らの活動の中心にある「書く」ということについて、よりよい実践ができるよう、学んで力をつけたいと思います。今回、以下の本から、「書く」ということについてのパターンとスタイルをマイニング(掘り起こし)します。そのため、まず、以下の本を各自入手してください。書き込みをしながら読んでいくので、すべて自分の本になるように、「購入」してください。
伊丹 敬之, 『創造的論文の書き方』, 有斐閣, 2001
バーバラ・ミント, 『考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則』, 新版, ダイヤモンド社, 1999
※今回は、「第1部 書く技術」のみ
村上 春樹,『職業としての小説家』, 新潮社, 2016
※大きな単行本の方ではなく、みんなで小さい新潮文庫の方で揃えましょう。
川上 未映子 , 村上 春樹,『みみずくは黄昏に飛びたつ』, 新潮社, 2017
※村上さんの最新作『騎士団長殺し』(村上 春樹, 新潮社, 2017)などの話が出てきますが、具体的な話は読み飛ばして大丈夫です。気になる人はその小説の方もどうぞ。
これらの本を読みながら、「書くこと」のパターンになりそうなことが語られている箇所や、スタイルになりそうなことが語られている箇所を探し、線を引いたりして「自分なりの書き込み」をしていきます。
『創造的論文の書き方』と『考える技術・書く技術』からは、基本的にパターンがたくさん見つかるでしょう。村上さんの『職業としての小説家』『みみずくは黄昏に飛びたつ』については、パターンとスタイルの両方を見つけられると思います。注意が必要なのは、村上さんが「これはあくまで僕の場合ですが」と言っているものでも、スタイルではなく、パターンとして抽出できるものもあるのがあります。実際、パターンかスタイルかの境界はあいまいなので、自分なりに判断が求められます。また、同じ箇所からパターンとスタイルが両方見つかることもあります。
今回、抽出したものは、レポートのようなかたちでまとめる必要はありません。読んだときに、 本に直接線を引き、書き込んで、付箋を貼ったりして、その本を春プロの集まりに持って来てください。その本を見ながら、みんなでどこをパターンで、どこがスタイルかを、一緒に話し合っていきましょう。
パターンとスタイルの違いについて、もう少し理解を深めるために例示してみると・・・
村上さんがよく語っていることに、書くときに、自分の奥深いところに降りていき戻ってくるというためには「体力が必要だ」と言います。それは、毎日コンスタントに書き続けるためにも重要です。そのため、彼は、毎日走り続けていて、マラソンもよく走っています。その「走る」ということと「書く」ということの関係について書いた本もあるくらいです(『走ることについて語るときに僕の語ること』 (村上 春樹, 文春文庫, 2010)これも興味深い本です)。
そういうことを語っている箇所があったとき、「深い創作活動を行うために、体力をつけ、維持する」ということはパターン的です。それでは、「走る」ということは、どうでしょうか?書く人はみんな走るべきでしょうか?僕は、そうは思いません。泳ぐのでもいいでしょうし、サイクリングでもいいかもしれません。そこで、「書くための体力をつけるために、走る」というのは、村上さんのスタイルということになると考えられます。
書くという実践において、「体力をつける」ということは、別様でもいいようなスタイルではなく、世の中にそれに当てはまらない人がいるとしても(病弱な著者)、基本的には、多くの人におすすめすることだと思うからです。それに対し、体力をつけるために「走る」ということは、体力をつけるためのいくつかの方法の一つの方法であり、実際に何をやるかは、人それぞれの好みや条件によるでしょうから、これはスタイルだと言えます。このように考えていくわけです。
もう一つ例をあげましょう。村上さんは、毎日、朝起きてから午前中の間に長編小説を書いているようです。1日10枚(原稿用紙)と決めて、毎日欠かさず、同じペースで書き続けているそうです。ここから僕らが学ぶことができるのは、「毎日決めた時間に書く」ということです。これは書くことについてのコツであり、パターンになりそうです。これをしないので、僕(井庭)なんかは、なかなか本の原稿が仕上がらないという問題がよく起きます。このパターンを実践すれば、きっと本をもっと出せているでしょう。とても重要なパターンです。
それでは、「午前中に書く」ということは、パターンでしょうかスタイルでしょうか?これは難しいところです。夜に書く作家もいることを考えると、スタイルといえます。しかし、午前中は、日常の雑多なことに触れておらず、頭もクリアであることから、午前中であることは、理に適ったコツ・経験則であるとも言えます。そうなれば、これはパターンとも言えます。このように、判断が難しいものもあります。
この例の場合には、おそらく、書くことのランゲージをつくるとなると、僕は、別様でもあり得る選択肢を否定しないために(仕事や生活スタイルにもよるので)、「午前中に書く」はスタイルであるとした上で、「毎日決めた時間に書く」というパターンの記述のなかで、その例を強調するというふうにすると思います。
このように、パターンであるか、スタイルであるかは、唯一の正解というものがあるわけではないので、あまり、その区別に思い悩みすぎないように注意しましょう。
■補助的な資料として読んでおいてほしい論文・冊子
井庭 崇, 「パターン・ランゲージによる無我の創造のメカニズム:オートポイエーシスのシステム理論による理解」, AsianPLoP2018初稿
この論文は日本語ですが、元の論文は英語で、Takashi Iba, Ayaka Yoshikawa, "Illuminating Egoless Creation with Theories of Autopoietic Systems," PURPLSOC2017 です。日本語か英語かどちらかを春プロまでに読んでおいてください。紙で配布し、PDFでも共有します。
『オープンダイアローグ・パターン』冊子
現段階の井庭の書く力を総動員して仕上げたという意味で僕のなかでの現段階でのベストの作品です。
■井庭研のつくる「○○ランゲージ」の総称=クリエイティブ・ランゲージ
パターン/スタイル・マイニングのための読書のためのポイント
読書のクリエイティブ・ランゲージ『Life with Reading』より
今回読むときには、パターンやスタイルに関係しそうなところに「線」を引きながら読みます。僕の書き込みスタイルは、鉛筆での線引きです。1回目に読むときには、線引きまで。2回目に読むときには、そこで言われていることが、パターンなら「パターン」もしくは「P」、スタイルなら「スタイル」もしくは「S」というように書き込んでいきます。
『みみずくは黄昏に飛びたつ』は、具体的な村上さんの作品(小説)の話などが出てくるので、その部分は、今回の目的(パターン/スタイルのマイニング)には関係ないので、適宜読み飛ばしながら、どんどん進んでいきます。
また、どの本も、2回目に読むときには、線を引いた箇所だけ読みます。
特に村上さんの本を読むときには、彼の「書く」ということや、創造の活動を、自分のパターン・ランゲージ(スタイル・ランゲージ)の作成や、論文執筆に置き換えて、「つくる人生」についての深く豊かなイメージを味わってください。
パターン/スタイル・マイニングのための読書
井庭研では、パターン・ランゲージやスタイル・ランゲージなど、ことばをつくり、文章を書くということに日々取り組んでいます。また、成果を論文にまとめています。そこで、僕らの活動の中心にある「書く」ということについて、よりよい実践ができるよう、学んで力をつけたいと思います。今回、以下の本から、「書く」ということについてのパターンとスタイルをマイニング(掘り起こし)します。そのため、まず、以下の本を各自入手してください。書き込みをしながら読んでいくので、すべて自分の本になるように、「購入」してください。
※今回は、「第1部 書く技術」のみ
※大きな単行本の方ではなく、みんなで小さい新潮文庫の方で揃えましょう。
※村上さんの最新作『騎士団長殺し』(村上 春樹, 新潮社, 2017)などの話が出てきますが、具体的な話は読み飛ばして大丈夫です。気になる人はその小説の方もどうぞ。
これらの本を読みながら、「書くこと」のパターンになりそうなことが語られている箇所や、スタイルになりそうなことが語られている箇所を探し、線を引いたりして「自分なりの書き込み」をしていきます。
パターン・・・書くという実践の質を向上させるために、奥の人におすすめすべきコツ・経験則(やり方・考え方)。それをしないと実践の質が損なわれる「問題」がおきやすくなります。
スタイル・・・書くということへの考え方や実践方法において、そういう人もいるというもの(一例として紹介するとよいが、多くの人が実践すべきだとおすすめするというものではないもの)。人によっては、別様でもあり得るもの。
『創造的論文の書き方』と『考える技術・書く技術』からは、基本的にパターンがたくさん見つかるでしょう。村上さんの『職業としての小説家』『みみずくは黄昏に飛びたつ』については、パターンとスタイルの両方を見つけられると思います。注意が必要なのは、村上さんが「これはあくまで僕の場合ですが」と言っているものでも、スタイルではなく、パターンとして抽出できるものもあるのがあります。実際、パターンかスタイルかの境界はあいまいなので、自分なりに判断が求められます。また、同じ箇所からパターンとスタイルが両方見つかることもあります。
今回、抽出したものは、レポートのようなかたちでまとめる必要はありません。読んだときに、 本に直接線を引き、書き込んで、付箋を貼ったりして、その本を春プロの集まりに持って来てください。その本を見ながら、みんなでどこをパターンで、どこがスタイルかを、一緒に話し合っていきましょう。
パターンとスタイルの違いについて、もう少し理解を深めるために例示してみると・・・
村上さんがよく語っていることに、書くときに、自分の奥深いところに降りていき戻ってくるというためには「体力が必要だ」と言います。それは、毎日コンスタントに書き続けるためにも重要です。そのため、彼は、毎日走り続けていて、マラソンもよく走っています。その「走る」ということと「書く」ということの関係について書いた本もあるくらいです(『走ることについて語るときに僕の語ること』 (村上 春樹, 文春文庫, 2010)これも興味深い本です)。
そういうことを語っている箇所があったとき、「深い創作活動を行うために、体力をつけ、維持する」ということはパターン的です。それでは、「走る」ということは、どうでしょうか?書く人はみんな走るべきでしょうか?僕は、そうは思いません。泳ぐのでもいいでしょうし、サイクリングでもいいかもしれません。そこで、「書くための体力をつけるために、走る」というのは、村上さんのスタイルということになると考えられます。
書くという実践において、「体力をつける」ということは、別様でもいいようなスタイルではなく、世の中にそれに当てはまらない人がいるとしても(病弱な著者)、基本的には、多くの人におすすめすることだと思うからです。それに対し、体力をつけるために「走る」ということは、体力をつけるためのいくつかの方法の一つの方法であり、実際に何をやるかは、人それぞれの好みや条件によるでしょうから、これはスタイルだと言えます。このように考えていくわけです。
もう一つ例をあげましょう。村上さんは、毎日、朝起きてから午前中の間に長編小説を書いているようです。1日10枚(原稿用紙)と決めて、毎日欠かさず、同じペースで書き続けているそうです。ここから僕らが学ぶことができるのは、「毎日決めた時間に書く」ということです。これは書くことについてのコツであり、パターンになりそうです。これをしないので、僕(井庭)なんかは、なかなか本の原稿が仕上がらないという問題がよく起きます。このパターンを実践すれば、きっと本をもっと出せているでしょう。とても重要なパターンです。
それでは、「午前中に書く」ということは、パターンでしょうかスタイルでしょうか?これは難しいところです。夜に書く作家もいることを考えると、スタイルといえます。しかし、午前中は、日常の雑多なことに触れておらず、頭もクリアであることから、午前中であることは、理に適ったコツ・経験則であるとも言えます。そうなれば、これはパターンとも言えます。このように、判断が難しいものもあります。
この例の場合には、おそらく、書くことのランゲージをつくるとなると、僕は、別様でもあり得る選択肢を否定しないために(仕事や生活スタイルにもよるので)、「午前中に書く」はスタイルであるとした上で、「毎日決めた時間に書く」というパターンの記述のなかで、その例を強調するというふうにすると思います。
このように、パターンであるか、スタイルであるかは、唯一の正解というものがあるわけではないので、あまり、その区別に思い悩みすぎないように注意しましょう。
■補助的な資料として読んでおいてほしい論文・冊子
この論文は日本語ですが、元の論文は英語で、Takashi Iba, Ayaka Yoshikawa, "Illuminating Egoless Creation with Theories of Autopoietic Systems," PURPLSOC2017 です。日本語か英語かどちらかを春プロまでに読んでおいてください。紙で配布し、PDFでも共有します。
現段階の井庭の書く力を総動員して仕上げたという意味で僕のなかでの現段階でのベストの作品です。
■井庭研のつくる「○○ランゲージ」の総称=クリエイティブ・ランゲージ
パターン/スタイル・マイニングのための読書のためのポイント
読書のクリエイティブ・ランゲージ『Life with Reading』より
今回読むときには、パターンやスタイルに関係しそうなところに「線」を引きながら読みます。僕の書き込みスタイルは、鉛筆での線引きです。1回目に読むときには、線引きまで。2回目に読むときには、そこで言われていることが、パターンなら「パターン」もしくは「P」、スタイルなら「スタイル」もしくは「S」というように書き込んでいきます。
『みみずくは黄昏に飛びたつ』は、具体的な村上さんの作品(小説)の話などが出てくるので、その部分は、今回の目的(パターン/スタイルのマイニング)には関係ないので、適宜読み飛ばしながら、どんどん進んでいきます。
また、どの本も、2回目に読むときには、線を引いた箇所だけ読みます。
特に村上さんの本を読むときには、彼の「書く」ということや、創造の活動を、自分のパターン・ランゲージ(スタイル・ランゲージ)の作成や、論文執筆に置き換えて、「つくる人生」についての深く豊かなイメージを味わってください。
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