井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

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プレパタ作成物語(連載まとめ)

創造的プレゼンテーションのパターン・ランゲージである「プレゼンテーション・パターン」(Presentation Patterns、通称 プレパタ)は、2011年に、慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)の井庭崇研究室のプロジェクトとして作成された。

このブログでは、その作成プロセスを「プレパタ作成物語」として紹介する連載を始めた。ひとつのパターン・ランゲージが、いつ何をどのようにやった結果として生まれてきたのかを、時系列に追っていくことで示したい。


プレゼンテーション・パターン(Presentation Patterns)の紹介
プレゼンテーション・パターンのホームページ&twitter bot
プレゼンテーション・パターン プロジェクト

プレパタ作成物語、はじまりはじまり。

プレパタ作成物語 第1話(5月16日:ブレスト練習)
プレパタ作成物語 第2話(5月22日:KJ法 練習)

プレパタ作成物語 第3話(6月6日:ブレインストーミング)
プレパタ作成物語 第4話(6月13日:KJ法 1回目)
プレパタ作成物語 第5話(6月20日:KJ法 2回目)

プレパタ作成物語 第6話(6月27日:「パターンの種」づくり 1日目)
プレパタ作成物語 第7話(7月4日:「パターンの種」づくり 2日目)

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「プレゼンテーション・パターン」完成は11月中旬なので、まだまだ物語は続きます。お楽しみに!
プレゼンテーション・パターン作成物語 | - | -

プレパタ作成物語 第7話(7月4日:「パターンの種」づくり 2日目)

2011年7月4日(月)のゼミの時間は、引き続き、「パターンの種」をつくることに取り組んだ。今回も、僕が国際学会出張で不在にしていたため、学生メンバーのみで行った。

この日の目標は、すべての「パターンの種」のSolutionを書くということ。

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まずは、「わかりやすいビジュアル」から。

「わかりやすいビジュアル」= 頭に入りやすいビジュアルを作る

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そして、「こだわり抜く」、「詰め」、「アンテナを張る」、「対等!」、「生き方そのもの」と話し合いを続けていく。

「こだわり抜く」= 納得いくまでスライドの内容をブラッシュアップ!!
「詰め」= 体に叩きこめ!意識を本番へ!ラストスパートッ!
「アンテナを張る」= 常にアンテナを張ってプレゼンに活かせる素材は仕入れる。
「対等!」= 聞き手に聞いてもらっているという意識を持つ。
「生き方そのもの」= (先生と相談が必要)

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さらに、「人に優しく」。

「人に優しく」= 「自分」がではなく「聞き手」が分かる表現にする。

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「For You」は一筋縄ではいかなかった。「一度、全部グループを見直そう!!」ということで、KJ法の結果に戻り、話し直すことに。

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特に問題となったのは、「For You」というパターンが「人に優しく」と似ているということ。それらは同じなのか、違うのか? ちなみに、「For You」は最終的に「心に響くプレゼント」に、「人に優しく」は「ことば探し」になるパターンの種である(最終段階で意味も変わった)。

後に「心に響くプレゼント」というコアな位置づけのパターンになる「For You」も、この段階では、他のパターンと同じレベルの位置づけだったため、似ていることが問題だと考えられたのだ。

「For You」= 聞き手を事前に把握し、それに合わせて情報を整理する。

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「無駄をなくす」、「不快感を与えない」、「言い訳しない」、「魅せ方の美学」、「見せ方のキホン」と、順に話していく。

「無駄をなくす」= 聞き手が退屈だと思う話をなくし、聞き手の聞く気をそがないようにする。
「不快感を与えない」= 聞き手の聞く気をそがないように、内容以外で悪目立ちしないようにする。
「言い訳しない」= 弱気な発言をしない。
「魅せ方の美学」= 視覚的にも内容的にもどう魅了するかを考え追い求める。
「見せ方のキホン」= まずはここから!!!文字選びから図・写真の大きさまでしっかりと。

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このあたりで、疲労がピークに達した、とログに記録が残っている。それでも、考え続け、話し続ける。「適切な情報量」、「オリジナル感」、「きっかけを与える」、「持って帰る」、「じらし」。このあたりから、BGMをLady GAGAにしたようだ。

「適切な情報量」= スライドと口頭の情報量のバランスを適切に。
「オリジナル感」= 型を参考にしつつ、自分らしさを出す!
「きっかけを与える」= 聞き手の視野を広げ、次の行動に結びつくようなきっかけを与えよう!!
「持って帰る」= プレゼンが終わってからも聞き手がプレゼンを思い出せるような工夫をする。
「じらし」= 相手に考えさせる要素をほんのちょっとだけ入れる。

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この日の夕食はピザ! 疲れすぎて、みんなちょっとテンションがおかしい。

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そして、ピザを食べたあとも、再び議論。「ストーリー&メッセージ」、「ワクわくさせる」、「想い」について話し合った。

「ストーリー&メッセージ」= 伝えたいメッセージをひとつ決め、流れのあるストーリーを作る。
「ワクわくさせる」= 聞き手の知的好奇心を刺激するような情報を入れる。
「想い」= 大事なのは伝えたいという想いなのである。

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今日は全て終らせるつもりだったが、目標達成ならず。8個残ってしまった。短い時間で適当に終わらせるのが嫌だったので、次週に持ち越すという判断をしたらしい。

最後に少しだけ研究室の掃除をして、研究室を出たのは、22時15分。おつかれさまでした!
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プレパタ作成物語 第6話(6月27日:「パターンの種」づくり 1日目)

2011年6月27日(月)のゼミの時間から、前の週までのKJ法で得られた結果をもとに、「パターンの種」をつくるという作業が始まった。ただし、この回と次の回は、僕が国際学会出張で不在にしていたため、学生メンバーのみで行った。

今回は、どうやるかも含めてかなり悩んだようである。ログの冒頭には、次のような状況が描かれている。引用しよう。

各パターンのソリューションを考える
…とはいいつつどうすればいいか、いきづまる。
この際、やり方を自分達で決めてしまおうか!
学習パターンの冊子を参照してみる。
時差を感じる。先生ボストンだー!
とりあえずやってみよう。
机にポストイットの内容を貼って案出し。

その上で、「わくわくさせる」について話し合ったようだ。しかし、その後、次のようなことが記されている。

なんだかうまくいかないのでやり方変える!!
→まとめの言葉(ポストイットの集合体)をホワイトボードに書いて、やりやすそうなものからやってみる。全部で43個(+細かいもの5つ)結構多い!!
具体的な行動があるものほうがやりやすい。

そして、さらに、「やり方を変えよう!それぞれがいくつかのsolutionを考える!それからみなで出そう!」ということに。

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こうして、一人ひとつずつ担当し、「終わりが始まり」、「環境チェック」、「メリハリ」、「自信感」、「話し方の基本」、「イメージしやすく」が話し合われた。

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それぞれのパターンのSolution案は、次のようになった。

「終わりが始まり」= 意識して聞き手の反応や質問から新しい視点を得て、次に活かす
「環境チェック」= プレゼン流れを止めないために会場の設備を事前にチェックする
「メリハリ」= 抑揚のある話し方をして重要な点をわかりやすくする
「自信感」= 自信のある態度でプレゼンの見栄えがぐんと変わる
「話し方の基本」= まずはここから!!話し方の基本を忘れずに
「イメージしやすく」= 聞き手にとってイメージしやすい工夫をする


この日の夕食は、レストラン「アローム」の出前弁当。BGMは、Lady GAGAとパラレルワールドだったそうだ。

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こうしてこの日が終わり、次の週に全パターンのSolutionをつくるということを目指して、「全パターンのSolutionを考えてくる」のと、「付箋の位置が適切かどうかをチェックしてくる」ということが、次週までの宿題となった。


出張先の米国ボストンでログを読んだ僕は、次のようなメールを送った。

井庭です。

ログ、ありがとう。

twtitterとあわせて、状況が目に浮かびました。
おつかれさま!

このフェーズは、どうすればいいのか不透明なのと、
生みの苦しみとが両方あって、とても苦しいフェーズだよね。
まだ明確な方法論がない領域なのだ。

なので、そんな日に僕が参加できず、ごめんね。m(_ _)m
プロジェクトの一参加者として。


でも。逆に、今日、僕がそこにいなくてよかったな、
とも思いました。

みんなとても苦しかっただろうけれども、僕がいたら、
なんとなく僕が流れをつくったりして、その結果、
自分たちのやっていることに自覚的でないまま、
前に進んでしまったかもしれない。

僕なしで、自分たちで「切り拓く」感じ、少しつかんで
もらえたんじゃないかな。

フロンティアを切り拓くってのは、いつも、そういう
地べたを這い回るような、ベタな努力です。
さらっとクールにかっこよく、なんて感じではない。
どうやればいいのかということも不透明だし、それを
模索するのが、まさに生みの苦しみです。
(その結果は、スカッとするよ。そこは希望をもって!^^)


研究会の宿題というのも、ここで慣れてください。

パターン・ランゲージを書くというのは、いつも、
こういう宿題が伴います。

この各自の宿題 + 研究会でのライターズワークショップ
という感じで進めるので、ようやく、宿題ができる
段階になったということは、喜ばしいことです。

ようやく、ここまで来た。
やっと、来れた。


各自がフルに思考を回転させ、会ったときには、コミュニケーション
の連鎖をフルに回転させ、そのなかで、創造を、クリエイティブな
プロセスをみんなで回していくんです。

苦しみましょう!
楽しみましょう!


ちょっと遠いところからのメールでした。

おつかれさま! & ありがとう!

井庭 崇
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プレパタ作成物語 第5話(6月20日:KJ法 2回目)

2011年6月20日(月)のゼミは、前の週に引き続き、プレゼンテーション・パターンのKJ法。

「プレゼンテーションで大切なこと・こだわり」について書かれたたくさんの付箋を、似ているもの同士を近づけ、ボトムアップにまとまりをつくり、全体の体系化をしていくのだ。

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前回から1週間経っているので、個々の付箋に書いてある内容の意味を忘れていたり、なぜそれらが近くに配置してあるのかという理由がわからなくなっていたりした。そこで、まずはそれらの確認から始まった。

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少しずつ思い出しながら、付箋を移動し、まとまりをつくっていく。

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KJ法の前半では、二枚の付箋同士の関係だけで移動をするが、後半では、できてきた「まとまり」を徐々に意識していくことになる。

しかし、このまとまりを意識するというのを、早い段階でやってはならない。それをしてしまうと、すでに自分のなかにあったカテゴリーに個々の要素を集めて分類するだけになってしまうからだ。それでは、トップダウンになってしまう。

なので、できる限り、付箋に書いてあることに誠実に向き合うことが大切だ。「そこに書かれていること」の奥にある意味に耳を傾ける、と言ってもいいかもしれない。

このミクロの視点からマクロの視点への移行のタイミングがなかなか難しい。

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先に進みたい気持ちをぐっと押さえながら、丹念に個々の付箋間の関係を見ていく。「個々にみていく」といっても、なにしろ200枚以上の付箋があるのだから、実際の作業には膨大な時間がかかる。

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そして、ようやくすべての付箋が意味の近いもの同士が近くにまとまっているという状態に到達した。ひとまず一段落。すでに外は暗く、時計は8時を指している。

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少しのあいだ喜びを噛みしめ、すぐに次の段階に入る。次は、「まとまり」同士の関係性を考えて、「まとまり」の配置換えを行うという段階である。

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この「まとまり」の移動は、複数枚の付箋を同時に動かすことになるので、みんなで協力しながら行う。ときには、民族大移動のように、たくさんの付箋が一気に移動することもある。移動先のスペースを確保するため、その周辺のまとまりを動かしたりと、結構ダイナミックな配置換えが必要となる。

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ようやく全体に秩序ができ始めてきた。さすがに体力的にも思考的にも疲れてきた。

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ここまでくれば、あとは「まとまり」がわかりやすいように囲って、その「まとまり」にラベルをつけていく。

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このときに使うのは、太いマジック。今後の方向性を決めるまとまりなので、しっかりした線で書くのがよい。ちなみに、付箋に字を書くのは水性サインペン。ペンにもこだわりをもって使い分けている。

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どんどん囲って、それぞれのまとまりに名前をつけていく。この名前の付け方も、厳密にやるとなかなか難しい。その「まとまり」の中身を端的に表すことばを新たに考えたり、その「まとまり」を代表するような付箋のことばを使ったりして、まとまりに名前をつけていく。

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最後の仕上げとして、すべての付箋をセロテープでとめる。何度もつけたりはがしたりしているので、粘着部分が弱くなっているからだ。ずっと流動的だったものをここで固定するという、心理的な意味もある。

そして、模造紙の余白に全体のタイトルをつけたりして、完成となる。

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こうして、自分たちなりの「プレゼンテーションで大切なこと・こだわり」をまとめた全体像=地図ができあがる。時計は10時過ぎを指している。今日始めてから5時間半、前回から合わせると11時間かかったKJ法がようやく終った。

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この「プレゼンテーションで大切なこと・こだわり」の地図は、研究室の壁一面を使って貼っておいた。これを、今後パターン・ランゲージを書く際に何度も参照することになる。

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これが、僕らのブレインストーミングからKJ法までを経て、得られた成果。これを各自、デジカメや携帯カメラで撮影し、いつでも参照できるようにして、パターン・ランゲージを書いていくことになる。

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片付けをした後は、湘南台デニーズで遅い夕飯。夜11時くらいに入れるお店で、飲み屋でないところといえば、ファミレスくらいしかない。

それでも、最後はおいしいものを食べてほっこりして、おしゃべりをしてリラックスして帰る。これが大切。おつかれさまでした〜。

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プレパタ作成物語 第4話(6月13日:KJ法 1回目)

2011年6月13日のゼミでは、まず最初に僕が、井庭研がつくっているような新しいタイプのパターン・ランゲージの特徴と位置づけについての解説をした。

これが後に、解説論文「パターンランゲージ 3.0:新しい対象 × 新しい使い方 × 新しい作り方」(井庭 崇, 情報処理, Vol.52 No.9, 2011)としてまとめられる「パターン・ランゲージ3.0」のアイデアの初期バージョンである。

僕は日頃、新しく考えたことを、まず井庭研メンバーに話し、フィードバックをもらいながら、それを洗練させていく。今回もまさにそういうプロセスを経て、考えを煮詰めていった。

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そんな話を30分くらいした後、プレゼンテーション・パターン制作に入った。

この日にやったのは、前の週にブレインストーミングで出した「プレゼンテーションにおける大切なこと・こだわり」を体系化してまとめる「KJ法」である。

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机を2つを並べ、そこに4枚の模造紙をひろげる。その上に、すべての付箋をでたらめに置いていく。この状態からスタートする。

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いつもに比べ、付箋の数がかなり多い。この無秩序な状態を眺めていると、本当に絶望的な気持ちになる。(下の写真は、2つ上の写真から2時間が経過したときの風景。全体的には、ほとんど変化がないことがわかるだろう。これをやっている本人たちは、本当に苦しい時間を過ごしている。)

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それでも、付箋ひとつひとつの意味を再確認しながら、少しずつ配置を変えていくしか、前に進む道はない。

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「これはどういう意味だっけ?」とか「これとこれは近いと思うんだけど、どうだろう?」というような会話をしながら、意味が近い付箋同士を近づけていく。

しかし、どうも空間が狭すぎるということがわかってきた。こんなに混み合っていては、どれとどれがまとまりなのかがわかりにくい。そこで、机をもう1つ足して、模造紙を2枚追加した。これで広くなって、余裕ができた。

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狭い空間に詰め込まれていた付箋が広く散ったことで、だいぶ作業がやりやすくなった。

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どんどん付箋は動くが、依然として秩序は感じられず、まだまだ先は長い。しかし、辛抱強く続けていく。

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みんな、だんだん身を乗り出してくる。それだけノってきたということだ。BGMは、Lady GaGa。

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少しずつではあるが、まとまりができ始める。ようやくこの段階。

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僕も参加者のひとりとして、KJ法に参加している。

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こうして、最初の無秩序な状態とは明らかに異なる、あちこちにまとまりがあるような全体になっていく。

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しかし、結局この日は、最後までまとまらなかった。まとまりはでき始めていたが、それらはまだあやふやで、無秩序な部分も残っていたし、まとまり同士の関係性もまだ考えられていなかったからだ。

終了したのは、夜10時半。つまり、この日、5時間半もKJ法に取り組んでいたことになる。終った後は、さすがにみんなげっそり。。。


ログ係のメールに、この日の雰囲気が書かれているので、一部紹介。

先週の「魅力的なプレゼン」でブレストしたものをKJ法でまとめていく。
先週こんなに出したのか?と思うくらい多くの要素がでていた。

実際に机の上に並べると膨大な量で、はじめはかなりとまどった。

でも、最初から完璧にくっつけようとするのではなく、それとなく近いものでもいいから、行動を起こさないと、場がかなり硬直状態に陥ることがわかった。

また、ブレストをしたのが1週間前なので、ポストイットに書いてある内容だけではわからない部分も多く、その解明にかなり時間を割いた気がする。

永遠とKJ法。

今日は終わることができず、来週に持ち越し。

「本気のKJ法はかなり疲れる」と井庭先生のメールにあったが本当だった。

来週もがんばりましょう。


この日は、食べやすい夕食(サンドイッチなど)を各自持って来て、作業の合間に食べるというスタイルでやったのだが、あまりよくないことがわかった。げっそりしたまま帰ることになるからだ。やはり、ゼミの後の食事は欠かせないということを痛感した。この日以降は、遅くなっても必ずみんなで食べに行くことに。


そして、僕といえば、次の日の井庭研B2でも、「パターン・ランゲージ3.0」のアイディアを(より洗練されたバージョンで)紹介した。こうやって、少しずつ詰めていくのだ。まさに、ラーニング・パターンでいう「『はなす』ことでわかる」である。

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プレパタ作成物語 第3話(6月6日:ブレインストーミング)

ブレインストーミングとKJ法の練習も終わり、2011年6月6日のゼミでは、「プレゼンテーションで大切なこと」をテーマにしたブレインストーミング(以下、ブレスト)を行った。

この日は、ブレストを屋外でやることにした。教室にいるよりも外にいる方が気持ちよい季節だったからだ。そこで、SFC(湘南藤沢キャンパス)にある「鴨池」に集まり、芝生の上でブレストを始めた。

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発散思考は開放的な空間でやるのがよいと、SFCの同僚の中西さんの本『アイデアキャンプ:創造する時代の働き方』(中西 泰人, 岩嵜 博論, 佐藤 益大, NTT出版, 2011)にも書いてあった。同感だ。

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メンバーは全員、春休みの課題で、TED talk等から好きなプレゼンテーションを選び、それがどのように優れているのかを分析している。そんな経験も踏まえて、「よいプレゼンテーションを実現するには、何が不可欠か」ということを考えていった。

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僕らは「プレゼンテーション」というものを広く捉えることにした。パワーポイントを用いたプレゼンテーションだけでなく、ダンスや演劇、音楽の演奏なども含めて、広義のプレゼンテーション/パフォーマンスをイメージして、「大切」だと思うことや「こだわり」のポイントを挙げていった。

このような広義の定義にすることで、パワーポイント・プレゼンテーションの経験が少ないメンバー(彼らは学部生なので)にもいろいろな経験が蓄積されているし、最終的につくるパターン・ランゲージも広い領域をカバーできるようになるだろう。そう考えた。

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夕方になり、少し肌寒くなってきたので、場所を変えて続けることにした。今度は、大学院棟の2階のオープンスペース。ここは屋内ではあるが、開放的な空間なのだ。

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さらに、プレゼンテーションにおける「大切」な点や「こだわり」の点をあげていく。「新しく加わった後輩に伝えるとしたら、何を伝えるか」というイメージで、なるべく本質的に重要な要素を挙げていこうとした。

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今回のこのブレストの結果をもとにパターン・ランゲージがつくられるので、とにかくいろいろな側面から考え、たくさんの「大切」・「こだわり」を出していく。後半戦は、なかなか出にくくなり、苦しくなってくる。

そこで、屋上でしばしの休憩。夕日がきれいだった。新鮮な空気も吸って、頭をリフレッシュさせる。

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最後のもう一押し。「これで、すべて出し切った」というところまで、粘り強く出していく。陽が落ち、あたりも暗くなっきた。

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こうして、プレゼンテーション・パターンの素が大量に生み出された。

ゼミの後はやはり、おいしいものを食べに行って、おしゃべりをして、たくさん笑って、疲れた頭と身体を癒す。この日は、長後の中華料理「万里城」。

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プレパタ作成物語 第2話(5月22日:KJ法 練習)

5月22日(日)の井庭研B1のゼミの時間は、KJ法の練習。

この日は日曜日なのだけど、SFCでは月曜扱いだった日。(震災の影響で5月始まりになったことのしわ寄せで、日曜日に平日の授業が割り当てられた。)


今回は、前の週にブレインストーミングで出した「面白いもの・こと」を、KJ法でまとめていく。

KJ法というのは、アイデアの距離を、平面上の距離で表して、アイデアの関係性を紡いでいくという空間的収束方法。川喜田 二郎(Kawakita Jiro)さんが提唱した手法なので、KJ法といわれている。

詳しくは、古典的名著である『発想法:創造性開発のために』(川喜田 二郎, 中公新書136, 中央公論社, 1967)を読んでみてほしい。

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ペタペタと付箋の張り替えをしながら、ボトムアップに考えていく。

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とにかく、付箋を何度も何度も張り替えていく。

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この段階ですでに窓の外が暗い。ゼミは16時半から始まるが、いつも夜まで続く。

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まとまりがわかりやすくなるように、線で囲って概念の「地図」を描いていく。

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何時間もずっと立ちながら作業していたので、少し座って考えてみたり。

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こんな感じで、みんなで収束思考をする。

このKJ法、実は、きちんと正しくボトムアップに考えるというのが、なかなか難しい。

でも、そこをきちんとやらなければ、KJ法をやる意味はない。

今回のKJ法の結果はパターン・ランゲージの作成とは直接ないが、今後必要となるKJ法の正しいやり方と感覚をつかむためには不可欠な練習なのだ。

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しかも、きちんと正しくボトムアップにまとめていくと、相当時間がかかる。

最初は、「どうすんの……こんなのまとまるわけないよ……」という絶望的な気持ちになるものだが、経験を積めば「辛抱強く続けていけば必ずまとまる」という確信を持てるようになる。

今回の練習は、その「小さな成功体験」を得るためでもある。

結果は、無事、まとめることができた。めでたしめでたし。

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この瞬間だけが、ほんと楽しい。(残り、99.9%はつらいのです。)

結局、KJ法にかかった時間は、4時間半。


この日の成果は、せっかくなので、研究室の壁にしばらく貼っておいた。

わずか2週間前に出会ったばかりのメンバーで生み出した最初の成果。

それを「壁に貼る」というのがとても重要。次週以降、この紙が目に入ることで、すぐに「自信」を取り戻すことができるから。

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そしてゼミ後は、みんなでご飯。この日は、ラーメン。長後の「能登山」。

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最後はいつも、ご飯を食べておしゃべりをして幸せな気持ちで解散するのがいい。井庭研スタイル。
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プレパタ作成物語 第1話(5月16日:ブレスト練習)

2011年度春学期最初の井庭研は、自己紹介をしたり、進め方を説明したりして、あとは井庭研B1・B2合同の懇親会をやった。

井庭研では、この最初の段階で、井庭研ならではのニックネームを全員につける。しかも、これまで言われてきたような普通の呼び名ではなく、ちょっと変な(面白い)名前をつける。その方が、名字で呼んだりするよりも、打ち解けやすくなるからだ。


そして迎えた第2回目(5月16日)。

この日は、発散思考の方法である「プレインストーミング」の練習。

僕がファシリテートするときの定番である「面白いもの・こと」を挙げていくブレインストーミングをした。「面白さ」は多義的なんで、いろんなものが出てくるし、なんてったて話が盛り上がる。

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とはいえ、まだ出会って1週間しかたっていないので、みんなまだまだよそよそしい。

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そこで、予定通りプロジェクトの作業を早々に切り上げて、みんなで一緒においしいものを食べにいく。このときは、湘南台の焼き肉屋「ざんまい」。

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そして、恒例のカラオケ。歌って、踊って、大笑いして。歌いたくない人は歌わなくてぜんぜん構わない。歌わない学生曰く、「井庭研のカラオケだけは歌わなくても楽しい」らしい。

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とにかくこの段階では、一気に仲良くなることが第一優先。議論やつらい作業をともにやるには、まずはお互いの心の障壁を取り払わないとね。
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プレパタ作成物語、はじまりはじまり。

井庭研ではこれまで、いろいろなパターン・ランゲージを作成してきた。

その紹介をするといつも、その作成プロセスを知りたいという方が結構いる。

そこで、最新の「プレゼンテーション・パターン」(Presentation Patterns、
通称 プレパタ)がどのようにつくられたのかを、徒然なるままに書いてみようと思う。

具体的には、いつどんなふうに何をやったのか、というのを時系列で追っていくことにしたい。


プレゼンテーション・パターンの作成は、今年の2011年5月から11月までの7ヶ月間、井庭研究会(B1)で行われた(プレゼンテーション・パターン プロジェクト)。

その意味で、プレゼンテーション・パターンの作成の歴史は、今年度の井庭研(B1)の歴史でもある。なので、あるひとつのパターン・ランゲージがどのようにつくれらたのかということだけでなく、SFCにおけるあるひとつの研究会の風景を垣間みることにもなるだろう。


以下が、2011度春学期の井庭研のB1とB2のシラバス。


このB1のシラバスを見てエントリーし、面接・選抜の末に履修許可となった7人の学部生が、プレゼンテーション・パターン プロジェクトの初期メンバーとなった。

今年度は、震災の影響で、慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)は5月からスタートしたので、物語は、5月から始まることになる。
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