井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

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井庭研究会 2008年夏休みの課題

2008年の井庭研の夏休みの課題は、デザインスキルの向上を目指し、読書と実践に取り組むというもの。以下が、その内容だ。


井庭研究会 2008年夏休みの課題

今年の夏休みの課題は、「複雑な情報を可視化・表現する」能力を高めることを目指します。つまり、ヴィジュアライゼーションやデザインの能力を向上させよう、ということです。デザインのコツに関する本を読み、実践してもらいます。

まず以下の3冊を購入し、読んでください。これらの本は、内容的にためになるだけでなく、見た目にも魅力的な本なので、楽しみながら読んでください。

『デザイン・ルールズ:デザインをはじめる前に知っておきたいこと』
『デザインする技術:よりよいデザインのための基礎知識』
『シンプリシティの法則』

そして、これらの文献で得た知見を活かして、

    「井庭研」を表現するポスター

をつくってください。

「井庭研」を表現といっても、井庭研の概念や方法をうまく表現することだと思ってください。井庭研のすべてを取り上げる必要はなく、メリハリをつけて表現してもらえればよいと思います(新規履修者の人は、「井庭研」を表現するのは難しいと思うので、井庭研関連の授業を表現してください。コラボ技法、モデシミュ、シミュレーションデザインなど、そこで学んだ概念や方法を表現してください)。


作成するポスターについて
ポスターのサイズは、A3とします(用紙の向きは縦でも横でも構いません)。

ポスターといっても、いろいろな種類がありますが、今回想定しているのは、商品の広告ポスターと、(ORFや学会でのポスター発表の)文字が多いポスターの間くらいのイメージです。(つまり、インパクトだけのヴィジュアライゼーションでもなく、文字での説明が過剰な展示でもなく、その間を狙ってください。)

必ず Adobe Illustrator や Photoshop などのツールを用いて、デザインしてください。(Power Pointは、ビジュアル的に美しくないので認めません。)

これらのツールを使えないという人は、秋学期に使うことになるので、夏休み中にマスターしておいてください。これらのソフトウェアをもっていないという人は、研究室や特別教室にもありますし、特にIllustratorはかなり便利なので、これを機に購入するといいと思います。アカデミックパックなら正規価格よりもかなり安く買えます(3万円弱)。


活用したコツをまとめる
また、ポスターの作成にあたり、上記の3冊のどのコツを活かしたのかを、具体的に取り上げて、まとめてください(WordもしくはPDF提出)。


締切&提出
2008年9月22日(月)までに、井庭研MLに提出してください。

ポスターについては、IllustratorやPhotoshopのオリジナルファイルと、PDF形式で保存したものの、両方を提出してください。(ファイルサイズが大きくなると思うので、どこかにアップして、URLをメールしてください。)

活用したコツについては、WordかPDFファイルをメールに添付してください。


提出されたものの公開
秋学期の最初に、提出されたポスターを一堂に展示する「『井庭研』ポスター展」を開催したいと思います。井庭研ホームページにも掲載したいと思います。


書籍の詳細情報
それぞれ早めに購入して読み始めてください。少し大き目の本屋さんで購入する必要があります。

『デザイン・ルールズ:デザインをはじめる前に知っておきたいこと』(伊達千代&内藤タカヒコ, MdN, 2006)
Book-DesignRules.jpg
Step 1 まとまりを持たせる
Step 2 変化を付ける
Step 3 強調する
Step 4 デザインのテクニック
Step 5 色について


『デザインする技術:よりよいデザインのための基礎知識』(矢野りん, MdN, 2006)
Book-DesignSkills.jpg
第1章 ものづくりの手がかり―「考」の技法
第2章 点と線とで家が建つ―「図」の技法
第3章 身近だから知らない―「文字」の技法
第4章 情報の舞台装置―「面」の技法
第5章 目に見えることのすべて―「色」の技法


『シンプリシティの法則』(ジョン・マエダ, 東洋経済新報社, 2008)

Book-Simplicity.jpgシンプリシティ=健全さ
法則1 削減
法則2 組織化
法則3 時間
法則4 学習
法則5 相違
法則6 コンテクスト
法則7 感情
法則8 信頼
法則9 失敗
法則10 1
鍵1 アウェイ
鍵2 オープン
鍵3 パワー
人生
井庭研だより | - | -

「創発する学び」について考える @PCカンファレンス

PCC0.jpg2008年8月6日(水)~8日(金)に開催された「2008 PC Conference」の初日に参加した。PCカンファレンスというのは、CIEC(コンピュータ利用教育協議会)と全国大学生活協同組合連合会が共同開催する教育系のカンファレンス。今年は、「創発する学び」をテーマに、慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)で開催された。

基調講演(佐伯先生)

PCC1.jpg最初の基調講演は、佐伯胖(ゆたか)先生(青山学院大学社会情報学部教授, CIEC会長)の講演だ。僕は昔から佐伯先生の本がすごく好きで、実際かなり影響を受けているので、講演をとても楽しみにしていた。講演タイトルは、「学習学ことはじめ ~勉強から学びと共感へ~」。

この講演で、佐伯先生は、“学習学”(学び学)という分野を提唱した。これまで「学び」(学習)については、「教育学」で主に研究されてきたが、それとは異なるアプローチで「学び」に迫っていこうというアプローチを提唱したわけだ。

「学び」は教育に従属するものではない。「教える」という意図的行為に拠らなくとも、人間は学ぶ。そうであるならば、「教育学」のように「教育」というジャンルにおいて「学習」を考えるのではなく、“学習学”というジャンルをまず設定し、そのなかで「学び」について考えるのがよいのではないか。こうして、人間の「学び」について明らかにし、「学び」を支援することを目的とする“学習学”が必要となるのだ。

“学習学”は、言葉的には似てはいるものの、認知科学における「学習科学」(Learning Sciences)とも異なる。学習科学では、学習について科学的な(特に認知科学的)な立場から考えるが、“学習学”では、いわゆる科学の枠を超えて、理論(学習論)、実践(学習実践)、臨床(学習臨床)から構成される。ここで提唱された“学習学”は、実は新しい考え方というよりは、これまで佐伯先生が言ってきたことを端的に言い表したものだといえる。しかし、端的に言い得た分、その論を知らない人にも伝わりやすくなったと思う。

これからの「学び」の具体的なイメージについては、佐伯先生は、「教え主義の教育」と「共感的参加型の学習」を比較し、後者が重要であるということを主張した。「参加型」というだけならば簡単であるが、そこには学習者の能動性がどうしても不可欠となる。このような能動性は、学習者自身の中だけから生まれる人依存の性質なのだろうか。佐伯先生は、そうではない、という。

「近年の状況的学習論や社会構成主義的学習論が示唆しているように,学習者の学習への能動性の源泉は『他者と共にいる』という協同性にある。何らかの『共同体』実践に加わることから,そこでの自律的参加が『いざなわれる』のである。そこでは,『他者と共にある』中での『自分らしさ(アイデンティティ)』の確立が促進されるのである。自分なりの参加に独自性が発揮され,そのことが共同体によって『よろこばれる(appreciateされる)』のである。」(佐伯胖, 2008 PC Conference 基調講演概要より)

「共感的参加型の学習」という指摘は重要だ。これは、従来からの「教え主義の教育」とは異なる目標をもつということにつながる。「『勉強』の世界では,学習の動機づけは個人能力の高揚だけにある」(佐伯胖, 2008 PC Conference 基調講演概要より)が、「共感的参加型の学習」では、関係性のなかの自分が高まっていく。そしてそれは、個人能力というよりは、関係性における能力なのだ。まさにSFCが設立当初から目指してる方向性であり、僕も「コラボレーション技法ワークショップ」や研究会で目指しているものだ。

この講演では、このほかにも、「学びを“関係論的”に見る」や「人は共感によって世界を知る」という魅力的な話が出た。興味深かったのは、ミラーニューロンの発見の意義についての話である。佐伯先生が70年代に提唱した「擬人的認識論」(自分の「分身」を世界に投入することで、世界を認識する)が、ミラーニューロンの発見によって科学的に裏付けされたという。そしてそこから、マイケル・ポランニーの個人的知識の話につながったりと、分野横断的に「学び」について語る語り口がとても魅力的な講演だった。


基調講演(熊坂先生)

PCC2.jpg2つ目の基調講演は、今回のPCカンファレンスの実行委員長である熊坂賢次先生(慶應義塾大学環境情報学部教授)の講演だ。
タイトルは、「SFCの挑戦:『未来からの留学生』から未来創造塾へ」。熊坂先生らしいトークで、笑いながら聞いた。

熊坂先生の講演では、1990年に開校したSFCが何を目指し、今後どこに向かうのか、ということが語られた。SFCの出発点は、佐伯先生の指摘と同様に、「知識の伝達」には限界がある、という問題意識だ。そこで、SFCでは「知識の伝達」ではなく、絶えざる「時代の変化」に対応していける「問題発見・解決の方法論」の開発と共有が目指された。それに応じて、知識の伝達のための「教育」体制ではなく、問題発見・解決を実践し、方法論を開発する「協働的な学習」体制の構築が行われてきた。

この精神は、「先端と創造のカリキュラム」と呼び得る現行カリキュラムにもしっかりと根づいている。このカリキュラムの特徴は、「階層(教養と専門)の打破」、および「時代性の<先端>と、時代性を超越する<創造>の対抗的相補性」だ。そして、その中核をなす「研究会」では「先端と創造の探究(研究)=研究の本質」が行われる。しかも、それをチームで行うということが重要であり、それこそが「半学半教の精神」につながるのだ。

今後SFCは、『未来創造塾』として研究と教育と生活の融合を目指していく。このように、この講演では「学び」という観点から、SFCがこれまで何を考え何を実践してきたのか、ということが語られた。興味深い講演だった。


パネルディスカッション(プロジェクトによる学び)

PCC3.jpg午後には、妹尾堅一郎先生(東京大学, CIEC副会長)の司会のもと、「プロジェクトによる学び」(Project Based Learning:PBL)のパネルディスカッションが行われた。パネルには、「プロジェクトによる学びの創発とメディア」の熊坂賢次先生(慶應義塾大学)、「経験学習とプロジェクト型授業」の長岡健先生(産業能率大学)、「ソフトウェア開発によるプロジェクトマネジメント教育」の松澤芳昭先生(静岡大学)、「eラーニングの専門家を養成するプロジェクト型実践演習」の北村士朗先生(熊本大学大学院)が登壇した。

全体としては、ひとえに「プロジェクトによる学び」といっても、いろいろなタイプがあるんだなぁ、ということがよくわかる展開だった。要は、みんな言いたいことを言って、それがズレあっているということなのだが。それでも、個別の考えやエピソードは、面白かった。

「プロジェクトによる学び」を実現するには、教員が「面白いプロジェクト」を思いつく必要がある、という指摘が長岡さんからあった。本当にそのとおりだと思う。プロジェクト型教育では、「プロジェクトが面白いかどうか」が重要であり、それゆえ教員が「面白いプロジェクトを思いつくかどうか」が決定的に重要となる。僕も、「コラボレーション技法ワークショップ」や研究会でプロジェクトの設定をするとき、「面白いか」を本気で考えている。参加するメンバーにとって、そのプロジェクトが魅力的にみえなければ、プロジェクトは単なるタスク以外の何ものでもない。それゆえ、プロジェクトの「面白さ」に対してのセンスが求められるのだ。

「プロジェクトによる学び」では、学生の方も求められることが違ってくる。妹尾さんの言葉だが、「知識伝達型では、皆と同じことが言えるかが問われるが、プロジェクト型では他と違うことが言えるかが問われる」のだ。同一化ではなく、差異化、しかも単なる差異化ではなく、プロジェクトという共通基盤の上での差異化である。これは、プロジェクトのみならず、社会においても重要となる能力だ。

熊坂先生が紹介した、評価を学生自身に申告させるという独自の成績評価方法も刺激的だ。「自分の評価は自分で決める。他の人に評価を決められるのはこんなに不幸なことはない」。ここで紹介されたものは、教育評価におけるかなり核心的な(そして革命的な)考え方だと思う。授業運営だけが、従来の知識伝達型と異なるだけではだめだ、というメッセージだからだ。これについては、僕もちゃんと考えていかないといけないと思った。

ところで、ステージ上の熊坂先生が、客席の僕に話を振ったので、僕もステージで一言話すことになった。そこで、「アウトプットから始まる学び」について話した。面白かったのは、妹尾先生がつけ加えてくれた「呼吸法も同じだ」という話。呼吸法では「まず、吐け」と言われるという。吐けば、自然と吸えからだ。そう、「アウトプットから始まる学び」というのは、まさにそういうことだ。SFCでは1年生のうちに創造実践科目において「アウトプットから始まる学び」を実践する。これは、大学入学時までに吸収してきたものを、一度吐き出して(創造・実践して)みることが求められる。その結果、今自分は何が出来て、何が出来ないのか。それを知ることが、それ以降のSFCでの学びに影響を及ぼす。吐き出した分、吸収できるようになる。この呼吸法の話は、かなり僕的にはヒットだった。


さて、今回のPCCは、熊坂先生が実行委員長だということで、井庭研のメンバーにも裏方のお手伝いをしてもらった。おつかれさま!ありがとう。
「研究」と「学び」について | - | -

地域行政にもっと創造性(クリエイティビティ)を!

Chigasaki1.jpg夕方から、茅ヶ崎市の産業振興課と農政課の方を対象に、発想支援ワークショップを行ってきた。みなさん、通常の仕事が終わってからの参加だったが、楽しみながら一生懸命取り組んでいただいた。おつかれさまです!

今回はまずイントロダクションとして、「コミュニケーションの連鎖」の観点から地域の活性化を考えるという視点と、地域活性における創造性(クリエイティビティ)の重要性についてお話しした。その上で、ブレインストーミング(略して「ブレスト」)の演習を行った。今回は、練習用のテーマで行ったが、最終的には未来像やヴィジョンを設定するために行う予定だ。目の前の問題・課題を処理していく通常の業務とは異なる頭の使い方をする演習になったと思う。

Collaboration.jpgブレストのコツは、まず第一に「とにかくたくさん出す」ことだ。質より量を目指す。「下手な鉄砲、数打ちゃ当たる」ではないが、アイデアもたくさんだせば、そのなかに優れたアイデアの原石が混じっているものだ。それを後で拾い上げ、磨いていくことになる。ブレストの段階では、そのアイデアが良いか悪いかの判断はしないのが鉄則だ。

ブレストの第二のコツは、「ポジティブの連鎖」ということ。他の人のアイデアを否定したり批判したりするのではなく、「いいねぇ」というポジティブな感じで反応するのがよい。たとえ実際にはあまりよいアイデアではなかったとしても、できるかぎり良い面を拾いあげる。このことは、たくさんのアイデアを出す上でとても大切なことなのだ。言ったアイデアがすぐに否定されたり批判されたりしたら、その人はもうそれ以上アイデアを出そうとは思わないだろう。そうではなく、お互いに「乗せ」合うことが重要となる。お互いに他の人の良いところを引き出し合いながら「ポジティブ」な流れができるようにするのだ。

第三のコツは、「増幅効果」だ。これは、他の人が言ったアイデアに対して「それなら・・・も」というように、アイデアを増幅させて連鎖させていく、ということだ。この増幅効果があるからこそ、複数人でブレストを行う意味がある。もし、一人一人が考えてきたアイデアを寄せ集めるだけでよいのであれば、ブレストをやる意味はない。グループレベルの非線形性が生まれ、創発が起こるためには、この増幅効果が不可欠だ。

Chigasaki4.jpgChigasaki2.jpg僕が、ブレストの場をファシリテートするときに必ず用いるツールは、大きな付箋(ポストイット)、太い黒ペン、ノリがいい音楽の3点だ。付箋は、正方形の大きいタイプのものを使う。細長いのでは、書けるスペースが小さいし、存在感が薄いのでだめ。正方形の大きな付箋であれば、描こうと思えば絵も描ける。

太い黒ペンは、ぺんてるの水性サインペン(S520-AD)が一番よく、そうでなければ、ゼブラのハイマッキー(の細い方を使う)か、マッキー極細(の太い方を使う)。でも、長時間書き続けることを考えると、水性の方が匂いが少なくてよいと思う。ある程度の太さがあると、テーブルを挟んだ遠い参加者にも読めるようになるし、書いたものに自信が出てよい。

音楽は、その「場」に勢いをつけるために不可欠だ。ノリの良い曲を選曲する。聴き流せるように洋楽の方がよい。そして、少し大きめにかける。これにもちゃんと理由がある。ブレストには勢いが必要だ。しかし、静かな空間では、人は比較的小さな声になってしまい、徐々にアイデア出しの連鎖も萎んでいってしまう。逆に、人は騒がしいところでは、相手に聴こえるようにと少し大きな声になる(騒がしい飲み屋を出た後に声が嗄れていた、なんてことを思い出してもらえればいい)。そういったしっかりとした発声は、自信にもつながる。もちろん、音楽がなっているので、周囲の人(他のグループやファシリテーター)のことを気にせず、くだらないアイデアも話してみることができる、というメリットもある。

そんなわけで、僕のこだわりとしては、ブレストには、大きな付箋、太い黒ペン、ノリがいい音楽の3点セットを必ず用意するのだ。

Chigasaki0.jpgさて、最終的に、たくさん出したアイデアのどこに着目するかというと、まずは、「普通に考えると意味がわからないアイデア」や、「実現方法が想像できないようなアイデア」だ。なぜそこに着目するかというと、それらは現実から演繹したアイデアではないからだ。その意味で、ブレストで出てきたアイデアとして価値がある。そして、それを一度眺めた上で、「それらよりは少しは現実味のある魅力的なアイデア」を探していく。さっきの意味や実現方法が想像できないものよりは理解しやすいが、現実には存在しないもの。このように、現実から遠いところから現実の方へと戻ってくる。

なぜこのようなアプローチをとるかというと、未来像やヴィジョンは、まさにこの方向で考えていくべきだからだ。未来像やヴィジョンを設定するときには、現状から演繹してはだめだ。現実を無視してよいわけではないが、最初から現状を踏まえて発想してしまうと、発想の飛躍が起きず、「想像の圏内」にあるそれなりの案しか出せない。未来像やヴィジョンは、発想を思いっきり飛躍させ、理想的なイメージを思い浮かべてから、現状にグラウンディングしてこなければならない。決して現状から演繹するのではないのだ。

Chigasaki3.jpgこのようにして、未来像やヴィジョンが見えてきた後に、今度は現在地点からそこにどうやって行くかを考える。いうならば、カーナビ方式と言うことができる。カーナビでは、目的地を設定してから、現在からの行き方を考える(カーナビがルート計算してくれる)。これと同じように、将来に達成したい未来像やヴィジョンを思い描き、そこに向かってどう進んでいけばよいかを考えるのだ。目的地が決まっているから、途中のルートが多少ずれても、最終的な到着にはさほど影響はない。また、他のメンバー(の車)も、それぞれにその目的地に向かうことができる。

問題発見・解決のアプローチではなく、想像力を飛躍させることが重要だということについて、ずいぶん以前に(博士時代に)書いたものがある。今回のワークショップでも資料として配った。興味がある人は、こちらも見てみてほしい。僕自身、久しぶりに読んでみて、昔から軸はブレていないなと思った。

● 井庭崇, 「思考のおもちゃ箱(1): 未来をデザインする」, 季刊 未来経営, 春季号, フジタ未来経営研究所 発行, 大学出版センター, 2001


というわけで、今回は地域政策や地域活性のワークショップとしてはかなり異色の(しかし本質的な)ワークショップになったと思う。今後もこのトーンで展開していきたい。


「地域行政にもっと創造性を。」

これが今回の僕らの究極のミッションだ。
「創造性」の探究 | - | -

幻のバンド !? リアル・ライフ・ファクトリー (その3)

僕が大学院生のときに組んだ即席バンド「リアル・ライフ・ファクトリー」の曲で、最後に紹介するのは「tsubomi」という曲。

この曲は、ライブの2週間ほど前に、植野が突然「1曲できた!」と持ってきたもの。恋の歌だ。ほかの曲と違って、この曲はアコースティックギター&ボーカルだけの曲。ライブでは、植野自らがギターを弾いた。


tsubomi

                       music by Ken UENO
                       words by Ken UENO & Takashi IBA

[1]tsubomi200.jpg
風に乗って あの星に代えて
光の粒を 水面に浮かべる
ふざけた恋なら どうでもよかった
占いなんかに うなされている

† せつない響きを
  たよりないコトバを
  君を想って
  そっと包み込む

‡ Ah はかない想いだけど
君に 咲かせてみせよう
Ah ささやき届くあたりで
君と 一緒に 一緒に

[2]
風を集めて ポケットにしまって
君の仕草を 夜空に浮かべる

やさしい声なら なんでもよかった
ふいにひとりで 微笑んでいる

†'せつない鼓動で
  たよりない両手で
  君の面影を
  キュっと包み込む

‡ Ah はかない想いだけど
  君に 咲かせてみせよう
  Ah ささやき届くあたりで
  君と 一緒に 一緒に

‡'Ah はかない想いだけど
  君に 咲かせてみせよう
  君に 咲かせてみせよう
  僕が 咲かせてみせよう

                 Copyright(C) 1999, The Real Life Factory


「tsubomi」の音源も、1999年の学園祭ライブで収録したもの。ちなみに、この曲は、「Sur Long Dayz」についで人気が高かった。

icon-face-mini.gif 「tsubomi」(MP3音源: The Real Life Factory, 1999)

僕らのバンドは、メンバー全員が大学院生だったので、昼間は各自研究や授業の手伝いなどでバタバタしていた。だから、活動はいつも夜中。メンバーの家で飲みながら作詞・作曲したり、スタジオでのバンド練習も、たいていは夜11時から朝4時まで、という感じで行われた。

初心者ばかりなので、演奏の良し悪しについては仕方がないところがある。それでもやはり、オリジナルの曲にチャレンジしてよかったと思う。このときつくった歌たちは、このときこのメンバーでなければつくれなかったものばかりだ。もしかすると、つくった張本人たちが、ほかの誰よりもこれらの歌のファンなのかもしれない。それでもいいかもしれない。

歌を自分たちでつくる。そして演奏する。こんな贅沢をさせてもらえたメンバーには感謝の気持ちでいっぱいだ。歌ってすごいな。ほんと。

band1-150.jpgband2-150.jpgband3-150.jpgband4-150.jpgband5-150.jpg
ちょっと昔の話 | - | -

幻のバンド !? リアル・ライフ・ファクトリー (その2)

僕が大学院生のときに組んだ即席バンド「リアル・ライフ・ファクトリー」で体験した「作詞」について書きたいと思う。そして、そのときの歌をあと2曲だけ紹介することしよう。

band6.jpg僕らは「曲先」(曲をつくった後、歌詞をあてる順番)で歌をつくっていった。まず植野がギターを引きながら、曲をつくる。ときに、僕らに相談したりしながら、少しずつつくっていく。そして、それをMDに吹き込む。僕は、そんな「できたて」の曲を、MDウォークマン(時代的にまだiPodではない)で何度も聴きながら、歌詞をあてていく。

実際にやってみると、歌詞をつくるのって難しいな、と痛感する。まだギターパートとメロディラインしかできていない曲を聴きながら、どういう世界観の歌詞が合うのかを考える(感じる)ことから始める。そして、そのメロディラインに言葉をのせていく。言葉選びのときは、イメージが合うかだけでなく、文字数も合っていないといけない。このときはまだ、歌いやすさを考える余裕はなかったが、本当はそういうことも考えないといけない。歌詞は、最終的には「音」として表現されるから、音としての響きは重要だ。

しかも、歌詞には2番があって、1番とトーンを統一するが、違う内容を歌わなければならない。これが難しい。とても難しい。あまりに難しいので、このころからJ-POPの歌詞を分析し始めた。ふだん僕らが聴いている歌の歌詞が、どのような構造・表現になっているのか、ということを分析してみるのだ。それでわかったことは、歌詞がうまい人たちは、本当にうまいということ。具体的な話はまた今度紹介したいと思うが、実に巧みにつくられていることがわかってくる。(ちなみに、このときわかったことを、僕は「コラボレーション技法ワークショップ」の授業で教えている。この授業には「J-POPの歌詞分析」の回があり、「共感」の仕組みについて考えるきっかけにしている。)

さて、今日紹介するのは、「Rail Way」。この歌は、僕が生まれて初めて作詞した歌だ。曲がとても素敵で、当時、こんな素敵な曲に歌詞をつけたり歌ったりできるなんて、なんて僕は幸せなんだ、と真剣に思った。それと同時に、これを作曲した植野は本当にすごい!と心から尊敬したものだ。(そして、この曲をライブでやったときの、おっちーのアドリブのギターもかっこいい。)


Rail Way
                                  music by Ken UENO
                                  words by Takashi IBA

[1]railway1-150.jpg
つめこまれた一本遅れの電車の中
奇妙な形で立ってる僕がいる

誰かの電話のベルで 夢から醒めては
背中の温かいものを 避けて向きを変える

僕もいつか 降りてみたいと思ってるんだ
すてきな場所(ところ) 光の射す世界

† だけど
 このままどこまで 僕は行けるんだろう?

 厳しい世界を 寝ぼけたままで
 でも今は もう少しだけ on the railway

[2]
あなたの言うことわかんない いつも言われる
君の言うこともわかんない そんなもんかな

誰かの軽い冗談で 意味に気づいては
左の温もりを抱いて 日々が過ぎていく

僕もいつか 見てみたいと思ってるんだ
君の奥に 広がる世界

†' だけど
 これからいつまで 僕らは行けるんだろう?railway2-150.jpg
 壊れそうな世界を 抱えたままで
 でも今は もう少しだけ on the railway

†'' このままどこまで 僕らは行けるんだろう?
 新しい世界を 夢見たままで
 そして もう少しだけ on the railway


                    Copyright(C) 1999, The Real Life Factory


「Rail Way」の音源も、前回同様、1999年の学園祭ライブで収録したもの。曲の最初の部分にノイズあり。後半演奏を間違ったりしているし、ボーカルの声の伸びも足りなかったりするけれども、そこは大目にみてね。

icon-face-mini.gif 「Rail Way」(MP3音源: The Real Life Factory, 1999)

この曲、すごくいい曲だと思うし、僕もいまだにすごく好きな曲だ。ちなみに、上の写真はアメリカで撮影したもの。大学院生らしく(笑)、学会発表に行ったときに、一緒に行ったバンドメンバーの島くんと撮影した。

当時、この歌詞を書くときに気にしていたのは、自分のことを歌うのではなく、聴き手のための歌を書くということだった。聴き手として考えたのは、僕と同じ年代の人たち。学部卒業後2、3年たって、だいぶ仕事にも慣れ、徐々に今後の人生のレールが見え始めた、そんな時期の僕らの世代に向けて書いたのだ。

「このまま定年までずっとこのレールに乗っているのかな?」「そういう安定は必要だけれど、もうずっと先まで決まっているというのも、少しさみしいな。」という声を、しばしば友達から聞いたりした。でも、「まだ勤めて2、3年だから、まだしばらくはこのレールの上をひたすら走るぞ」、そういう穏やかな決意も心に秘めているようだった。そんなことを、通勤ラッシュの電車のなかで思い出し、この「Rail Way」の歌詞が生まれたのだ。

そんなわけで、この曲は、僕から同世代のみんなへの応援歌なのである。
ちょっと昔の話 | - | -

井庭研OB初の結婚式に参加

wedding1.jpg井庭研OB初の結婚式に出席した。

新郎は、井庭研が出来てから2年目の卒業生だ。新婦の方は僕はほとんど存じ上げないので、これからのお付き合いとなる。

当たり前といわれるかもしれないけど、席次表の僕の名前の上には「恩師」と書かれている。これまで「友人」として結婚式に参加することはあっても、「恩師」というのは初めての経験。僕らの関係は、先生・学生というよりは、先輩・後輩という感じに近かったようにも思うが、改めてそういう言葉をみると、少しドキっとする。そして、そんなたいそうなもんじゃないけどね~、と照れてしまう。その名に恥じぬよう、もっともっとしっかりしなきゃ、とも思う。

披露宴では、カメラマン気取りで、一眼レフのデジカメで撮影しまくった。勝手にやっているので、気が楽だ。頼まれているわけではないので、プロが撮るようなベストショットを狙わなくて済む。そのかわり、オフィシャルなものとは少し違った視点から撮影する。

そうそう。僕はスピーチがないので安心していたら、お色直しのときに新郎をエスコート(?)する役に指名されて、とても驚いた。そんなこともあるんだね。びっくり。

2次会は白金台のレストランを貸し切って行われた。披露宴に出席していない研究会OB・OGも加わり、みんなで祝った。研究会OB・OG有志からのプレゼントも、ちょっぴりユーモアを交えながらも、実用的なものを贈った。

3jikai.jpg3次会は、近くのおしゃれなバーへ。3次会といっても、新郎・新婦がいるわけではないので、どちらかというとOB・OG会という感じで、いろいろな話ができた。ワインもボトルをあけ、かなりよい気分に。現役メンバーと一緒の「打ち上げ」ではなく、OB・OGだけとまったりと飲むという機会がこれまでなかったが、やっぱりこういうのもいいね。みんな徐々に大人になっているなぁ。そんなことを感じながら、とても素敵な時をすごすことができた。

ということで、なにはともあれ、結婚したお二人、おめでとう! お幸せに (^_-)☆
井庭研だより | - | -

幻のバンド !? リアル・ライフ・ファクトリー

最近ちょっとまじめな硬い話が多いので、少しくだけた昔話を。

僕が博士課程に入ったとき、先輩に「なにはともあれ、D1(博士1年)は遊べ」と言われた。それ以降は遊べなくなるから、という意味だったと思う。そうか、D1は遊んでいいのか、ということで、いろんな遊びをした(笑)。1999年だから、いまから約10年前のこと(いま思えば、この1年遊んだから、博士修了が遅れたのかもしれない)。

その遊びのひとつとして、即席の大学院生バンドを組んで学園祭(SFC秋祭)に出たことがある。メンバーは、同じ大学院プロジェクトのD1植野と、修士の島くん、ミゾエ、おっちー。僕は作詞とボーカルを担当した。このメンバーのなかで、バンド経験者は植野だけ。しかも、彼は本来はギタリストなのだけど、このときはドラムに初挑戦した。おっちーは趣味でギターを弾いていたが、バンド経験は無し。僕も、カラオケが好きという程度で、基本的に初心者(昔ロック研に半年だけいたけど)。ベースのミゾエは楽器経験全く無し、キーボード&コーラスの島くんも未経験者だ。

そんな未経験者ばかりの即席バンド(結成からライブまで3ヶ月!)にもかかわらず、僕らはオリジナル曲にこだわった。できるかわからないけど、とにかくやってみる。誰かがつくったありものの曲のコピーではなく、自分たちの言葉・音を届けよう。下手でもいいじゃないか、自分たちの言葉・音なんだから。そう考えて、自分たちで作詞・作曲した。なので、3ヶ月間は練習のためというよりも、曲づくりの時間となった。作曲は基本的には、植野がギターでつくっていった。本当にすごいと思う。曲をつくるということは、とてもすごいことだ。

TheRealLifeFactory420.jpg


僕らのバンドのバンド名は、「The Real Life Factory」(リアル・ライフ・ファクトリー)。「リアル」とか「ライフ」とか、僕の好きな言葉を入れたのと、歌を通じて「リアル」な「ライフ」(人生、生活、生命・・・)を生み出したいという思いがあった。だからこそ、僕らはリアルな日常を歌うし、歌によってライフがリアルになっていくことを願う。そんなイメージだ。

僕らの身の丈にあった僕らの生活圏を歌うということを、ある意味とことん突き詰めたのが、「Sur Long Dayz」という曲。これは、「シュール・ロング・デイズ」と読むのだけど、実際には歌では「シューロンデイズ」と聴こえる。そう、「修論」(しゅうろん)=修士論文の歌なのだ。僕らがこの歌を作る半年前に経験した修論執筆の日々を、歌にしてみたわけだ。半分以上冗談でつくった曲だけど、オーディエンスのなかでは一番人気だった。曲もメロディアスでいい感じだしね。僕もこの曲、お気に入りだ。本当の意味で自分たちの歌だしね。

あ、修論の日々を歌ったものなので、修論を抱えている修士2年生が聴くと「微妙にブルーになる曲」だということなので、ご注意を。提出してから聴きましょう(笑)。でも、提出したら、聴かないか。

歌詞は、こんな感じ。↓


Sur Long Dayz
シュール・ロング・デイズ

                   music by Ken UENO & Takashi IBA
                   arranged by Ken UENO & Tadashi OCHIDA
                   words by Takashi IBA

[1]
今日もいつもの寝癖のままで
つけっ放しの画面に臨む
とりあえずメールを軽く流して
平和な世間を抜け出すんだ

†きっと笑い話になるよなんて
 君の言葉を信じてみることにしよう

‡見えない記号が飛び交う中で
 見たことのない文字の流れを絞り出すけど
 曜日は僕らに何も伝えない
 のっぺりした 僕らの Sur Long Days

[2]
あの人に泣かされたあの夜の
カツ重弁当 ビミョウに旨かった
仲のいいレンジと一緒に
簡単ブランチ お茶漬け食べる

†きっと笑い話になるよなんて
 君の言葉を信じてみることにしよう

‡見えない記号が飛び交う中で
 見たことのない文字の流れを絞り出すけど
 曜日は僕らに何も伝えない
 のっぺりした 僕らの Sur Long Days

‡見えない記号が飛び交う中で
 見たことのない文字の流れを絞り出すけど
 曜日は僕らに何も伝えない
 のっぺりした 僕らの Sur Long Days


                   Copyright(C) 1999, The Real Life Factory


歌詞だけじゃ、あんまりよくわからないよね。「これ!」というよい音源がないのが残念なのだが、1999年の学園祭ライブの録音があるので、それを公開しよう。ビデオから採った音なので音質やバランスは、はっきりいってよくない。あと、あらかじめいっておくけど、僕ら、音をはずしたりするけど、それもまあ、ご愛嬌ということで(笑)。

icon-face-mini.gif 「Sur Long Dayz」(MP3音源: The Real Life Factory, 1999)

恥ずかしいけどさ、ま、昔のことだからいいかな、と思って。。
よかったら、聴いてみてね。そして感想をきかせて。

うーん、でも恥ずかしいな、やっぱり。。。(>_<)
ちょっと昔の話 | - | -
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